この記事では「花鳥諷詠」について解説する。

端的に言えば花鳥諷詠の意味は「自然界や人間界の現象をありのままに歌うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「花鳥諷詠」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「花鳥諷詠」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「花鳥諷詠」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「かちょうふうえい」です。まずは正確な意味をつかんでから、語源や使い方などについて詳しく見ていきますよ。

「花鳥諷詠」の意味は?

「花鳥諷詠」には、次のような意味があります。最初に辞書の意味を確認して、そのあとで、さらに詳しい意味まで見ていくようにしましょう。

1.自然界と人間界の現象をそのまま客観的に歌いあげること。

出典:四字熟語辞典(学研)「花鳥諷詠」

「花鳥」は自然の美しい風物をたとえた表現のこと、「諷詠」は詩歌を歌いつくることです。

また、歌をつくったり、歌い上げたりすることだけでなく、四季の移り変わりによる自然界や人間界のあらゆる現象に対して、そのまま客観的に歌うべきであるとする俳句理念を表すこともあります。

「花鳥諷詠」の語源は?

次に「花鳥諷詠」の語源を確認しておきましょう。

「花鳥諷詠」は高浜虚子(たかはまきょし)の造語であり、1928年に自身が提唱した俳句理念のことです。この理念は雑誌『ホトトギス』の理念でもあり、高浜虚子のほか正岡子規(まさおかしき)や河東碧梧桐(かわひがしへきごとう)らが選者となっていました。

その内容は、従来の俳句理念を捨てて、自然や人について客観的にあるがままに詠み、さらに、十七字の形式を尊重して季題の約束を守ることによって叙景詩としての俳句が成り立つとしたものです。

\次のページで「「花鳥諷詠」の使い方・例文」を解説!/

「花鳥諷詠」の使い方・例文

「花鳥諷詠」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。文法的な使い方についても確認していきますよ。

1.花鳥諷詠を意識して客観的に歌をつくることで、人に理解してもらいやすい句ができた。
2.彼の絵は風景の叙景的な描写が素晴らしく、俳句にたとえるなら花鳥諷詠といったところだ。

例文1.では、「花鳥諷詠」の考え方を十分に取り入れることによって、結果として周囲に理解される句ができたということを表しています。例文の2.のほうは、叙景的な絵について、そのようすから俳句でいうところの「花鳥諷詠」を思わせるものだったという文です。

文法的には、例文1.の「花鳥諷詠を…」も例文の2.の「花鳥諷詠として…」もそのまま名詞のカタマリとして使っています

「花鳥諷詠」の類義語は?違いは?

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それでは、「花鳥諷詠」の類義語についての説明です。よく似た意味合いを持つ表現はいくつかあるので、一緒に詳しく見ていきましょう。

「嘯風弄月」

「花鳥諷詠」の類義語には、「嘯風弄月(しょうふうろうげつ)」があります。意味は、風に吹かれて詩歌を口ずさんだり月を眺めることや自然に囲まれて詩歌や風流を楽しむことです。「嘯風」は歌を口ずさんだり口笛を吹くこと、「弄月」は月を眺めて鑑賞することを表していますよ。

「風にうそぶき月をもてあそぶこと」ということで、大きな意味で言うと「自然の情趣を楽しみながら風流な暮らしをすること」となります。

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「雪月風花」

もう一つの類義語には、「雪月風花(せつげつふうか)」があります。四季折々の自然の美しい景色のことや四季の景色を見ながら詩や歌をつくったりする風流なようすという意味です。冬の「雪」、秋の「月」、夏の「嵐」、春の「花」のことを表しています。

さらには、四季の自然を鑑賞して楽しみ、詩を詠んだりするような優雅な暮らしのことを言うこともありますよ。自然を楽しむことに加えて、あわせて自然を楽しむ余裕がある状況や暮らしのこと表すニュアンスが含まれます。

「花鳥諷詠」の対義語は?

次に、「花鳥諷詠」の対義語についての説明です。四字熟語の意味のとらえ方により対義語は変わってきますが、複数の意味合いから見た対義語について見ていきましょう。

「悲歌慷慨」

「花鳥諷詠」の対義語には、「悲歌慷慨(ひかこうがい)」があります。意味は、社会の荒廃や自らの悲劇について悲しげに歌いつつ世を憤り嘆くことです。「悲歌」は悲しげに歌うこと、「慷慨」は憤り嘆くことを表しています。

自然界や人間界を客観的に歌う「花鳥諷詠」に対し、「悲歌慷慨」は自らの不幸を悲しげに歌うということなので対義語と考えることができますね。

「談林俳諧」

もう一つの対義語には、「談林俳諧(だんりんはいかい)」があります。道理の撹乱や発想の意外性を重視する俳句の流派のことです。江戸時代前期の貞門俳諧の保守性を打破し、自由奔放であり俳諧の裾野を広げることに貢献しました。一方では、内容や形式が乱雑になったとも言われます。

「談林俳諧」が高浜虚子らの「花鳥諷詠」と対立しているというわけではありませんが、タイプが比較的反対である俳諧の流派を対義語としての紹介です。

「花鳥諷詠」の英訳は?

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最後に、「花鳥諷詠」の英訳についての説明です。「花鳥諷詠」は独特の意味合いを持つ四字熟語ですが、関連する意味合いの英語訳について見ていきましょう。

「beauties of nature and the harmony between nature and man」

「花鳥諷詠」の英訳には、「beuties of nature and the harmony between nature and man」があります。直訳すると「自然の美と自然と人の調和」で、大きな意味でとらえた表現です。

また、俳句理念のひとつという意味でとらえると、「the attitude of objectively composing the beauties of nature」という表現もあります。直訳すると「自然の美を客観的に構成する姿勢」です。

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「花鳥諷詠」を使いこなそう

今回の記事では「花鳥諷詠」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「花鳥諷詠」の基本の意味は、自然界と人間界の現象を客観的に歌いあげることであり、もとは俳句理念を表現した高浜虚子による造語になっています。高浜虚子は一定の考え方示していますが、何事もどの程度ルールを決めて、どの程度自由を確保するかによって楽しみ方が変わってきますね。

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【四字熟語】「花鳥諷詠」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「花鳥諷詠」について解説する。

端的に言えば花鳥諷詠の意味は「自然界や人間界の現象をありのままに歌うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「花鳥諷詠」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「花鳥諷詠」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「花鳥諷詠」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「かちょうふうえい」です。まずは正確な意味をつかんでから、語源や使い方などについて詳しく見ていきますよ。

「花鳥諷詠」の意味は?

「花鳥諷詠」には、次のような意味があります。最初に辞書の意味を確認して、そのあとで、さらに詳しい意味まで見ていくようにしましょう。

1.自然界と人間界の現象をそのまま客観的に歌いあげること。

出典:四字熟語辞典(学研)「花鳥諷詠」

「花鳥」は自然の美しい風物をたとえた表現のこと、「諷詠」は詩歌を歌いつくることです。

また、歌をつくったり、歌い上げたりすることだけでなく、四季の移り変わりによる自然界や人間界のあらゆる現象に対して、そのまま客観的に歌うべきであるとする俳句理念を表すこともあります。

「花鳥諷詠」の語源は?

次に「花鳥諷詠」の語源を確認しておきましょう。

「花鳥諷詠」は高浜虚子(たかはまきょし)の造語であり、1928年に自身が提唱した俳句理念のことです。この理念は雑誌『ホトトギス』の理念でもあり、高浜虚子のほか正岡子規(まさおかしき)や河東碧梧桐(かわひがしへきごとう)らが選者となっていました。

その内容は、従来の俳句理念を捨てて、自然や人について客観的にあるがままに詠み、さらに、十七字の形式を尊重して季題の約束を守ることによって叙景詩としての俳句が成り立つとしたものです。

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