大小様々な種類のナッツが入った「ミックスナッツ」。入っている容器を上下に振ると大きなナッツが上に集まってくる。ミックスナッツに入っている中で「ブラジルナッツ」が大抵は最も大きいことから、この現象を「ブラジルナッツ効果」と呼ぶ。大きなナッツほど重い、つまり下向きに働く重力が大きいはずなのになぜ上に集まってくるのでしょうか。理系ライターのR175と解説していこう。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の教員免許持ち。ほぼ全てのジャンルで専門知識がない代わりに初心者に分かりやすい解説を強みとする。

ブラジルナッツ効果とは何か?

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大小さまざまな粒子が混ざった状態で上下に振動させると「大きいモノほど上に集まる」という現象のことを「ブラジルナッツ現象」と言います。なぜ、ブラジルナッツという名称がついているかというと、それは色々と種類のナッツが混ざった「ミックスナッツ」ではしばしば「ブラジルナッツ」が一番大きいことが多いところからきているそうです。

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上の写真に写る中で一番大きな実がブラジルナッツです。手のひらとのスケール感比較からブラジルナッツが大きめであることが伺えますね。しかし、大きなナッツほど重いはずです。なぜ上に集まるのでしょうか?

1.ミックスナッツの力学

1.ミックスナッツの力学

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ミックスナッツにはオレイン酸やパルミトレイン酸、オメガ3脂肪酸といった良質な脂肪分が含まれているもの。免疫力を上げたり、悪玉コレステロールを減らしたりナッツの種類によってさまざまな効能を持つものがあります。

今回はそんなミックスナッツを入れた容器内での力学を考えていきましょう。ナッツを円に置き換えて作図してみましょう。大小さまざまな円が作図されます。ナッツの密度は同じとみなせるため、半径が大きなナッツほど質量が大きい。つまり大きな重力が働き、下向きの力が大きいと言えます。しかし、これは容器を上下に振ったとき、「大きいナッツほど上に集まる」という「ブラジルナッツ効果」の逆をいく内容。不思議ですね。なぜ大きな重力が働くものがそれに逆らって上に集まるのでしょうか。

2.大きいナッツは落ちていかない?

大きさの異なる粒が混在する状態で上下に振ってみましょう。小さい粒は粒は合間を縫うようにして落下していくことが出来ますが、大きな粒は粒と粒の間を通れず、落下できません。実際にどれくらい落下確率は変わってくるのでしょうか。

簡単なモデルで計算してみましょう。

\次のページで「順列組合せから考える落下確率」を解説!/

順列組合せから考える落下確率

小さい粒は小さな隙間でも通れるため、落下していきやすいのは直感的にうなずけますが、ここでは敢えて数字で語っていきましょう。まず大きなナッツと小さなナッツがランダムに並んでいて、そこにナッツが通れるか否かで落下確率を算出します。

大小さまざまなナッツがありそれらの動きを3次元的に追うことが出来れば面白いですね。一方で計算が複雑すぎるため、手計算はしづらく実感しづらい。そこでここでは簡単なモデルで計算していくことにしましょう。大きなナッツを直径2の大玉、小さなナッツを直径1の小玉2個と見立てます。大玉2個と小玉1個の中心が存在できる座標は1~6のいずれかのみとしましょう。1~6の座標6つから、大玉と小玉の中心座標を選ぶことになりますが、大玉の隣の座標に小玉が存在することは出来ません。

これら3個の玉が並んでいるところに上から大玉がやって来た時、大玉が通れる確率(玉と玉の、あるいは玉と壁の間隔を2以上空けられる並べ方になる確率)はどれくらいでしょうか。大玉が存在する位置別に見ていきましょう。

大玉の中心が1に存在する時

大玉の中心が1に存在する時

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小玉が存在し得る座標は3,4,5,6の4つから任意の2つであり、座標の取り方は6通りあり、どのような並べ方をしても、小玉は通ることが出来ます。このうち、玉と玉or玉と壁の間隔を2以上空けられるのは小玉を3と4に置いた場合の1通りのみです。

大玉の中心が2に存在する時

大玉の中心が2に存在する時

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小玉が存在し得る座標は4,5,6から任意の2つ、つまり3通り。どのような並べ方をしても、小玉は通ることが出来ます。このうち玉と玉or玉と壁の間隔を2以上空けられる置き方は存在しないので0通りです

大玉の中心が3に存在する時

大玉の中心が3に存在する時

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小玉が存在し得る座標は1,5,6から任意の2つ、つまり3通りですね。どのような並べ方をしても、小玉は通ることが出来ます。このうち玉と玉or玉と壁の間隔を2以上空けられるのは小玉を5,6に置いた場合の1通りのみです。

大玉の中心が4に存在する時

大玉の中心が4に存在する時

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小玉が存在し得る座標は1,2,6から任意の2つ、つまり3通りです。どのような並べ方をしても、小玉は通ることが出来ます。このうち玉と玉or玉と壁の間隔を2以上空けられるのは小玉を1,2に置いた場合の1通りのみですね。

大玉の中心が5に存在する時

小玉が存在し得る座標は1,2,3から任意の2つ、つまり3通りあります。どのような並べ方をしても、小玉は通ることが出来ます。このうち玉と玉or玉と壁の間隔を2以上空けられる置き方は存在しないので0通りになります。

\次のページで「大玉の中心が6に存在する時」を解説!/

大玉の中心が6に存在する時

小玉が存在し得る座標は1,2,3,4から任意の2つ、つまり6通り。どのような並べ方をしても、小玉は通ることが出来ます。このうち玉と玉or玉と壁の間隔を2以上空けられるのは小玉を1と2に置いた場合の1通りのみです。

大玉が通れる並び方

以上、大玉の中心座標が1~6の時の合計を考えると、小玉の並べ方は全部で6+3+3+3+3+6=24通りあるわけですが、このうち上から来た大玉が通れる並べ方は1+0+1+1+0+1=4通り

<p今回のケースでは小玉の落下確率は100%で、大玉の落下確率は4/24=16.7%。玉の並び方はランダムですが、大玉が通れるような並び方は少なく、大玉が落下出来る確率は低くなるわけです。

3.ナッツによる対流現象

3.ナッツによる対流現象

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対流とはイラストのように、中央付近のナッツが上に向かい壁付近のナッツが下に向かう状態。なぜこのような動きが起きるのでしょうか。

ナッツが入った容器を上下に振ると、ナッツが浮き上がっていきますね。容器の壁に近い範囲では容器壁との摩擦があるため浮き上がりにくい。結果的に、中央付近にあるナッツが浮かび上がりやすい。すると、容器中央部分は下側が空いてくることになりますね。この空いた部分に壁側のナッツが流入してきます。すると、壁に近い領域のは下向きに流れることに。このようにして、「対流」現象が起きるわけです。ただし壁側付近で下向きに流れるのは極狭い範囲。このため大きいナッツは上向きの流れには乗れますが、下向きの流れには乗れません。

大きいナッツが下向きに流れに乗ろうとしても、下から打ち上げられるナッツと衝突してしまいます。よって、大きなナッツは「上に向かう」ことは出来ますが、「下に向かう」ことはできません。このため、大きなナッツが上の方に溜まるわけです。

大きいものほど上へ

ミックスナッツのように密度がほぼ同じで大きさの異なる粒子が混ざっている場合、それを上下に振ると大きいものほど上に集まってくるもの。ミックスナッツで一番大きいのがブラジルナッツであることが多いため、これを「ブラジルナッツ効果」と呼びます。

このようになる原因は2つ考えられ、1つは大きい粒は他の粒子と干渉して、下に落ちていきにくいのに対し小さい粒子は合間を縫って落ちていくため、結果的に大きなモノが上に残るという説。

もう1つは容器内で粒子が対流していると考えた場合に、下向きの動きをするのは壁に近い狭い範囲のみであり、大きい粒子は下に向かう流れに乗れないと考えられるためです。

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物理物理学・力学理科

3分で簡単「ブラジルナッツ効果」大きいナッツが落ちないのは何故?理系大卒ライターがわかりやすく解説

大玉の中心が6に存在する時

小玉が存在し得る座標は1,2,3,4から任意の2つ、つまり6通り。どのような並べ方をしても、小玉は通ることが出来ます。このうち玉と玉or玉と壁の間隔を2以上空けられるのは小玉を1と2に置いた場合の1通りのみです。

大玉が通れる並び方

以上、大玉の中心座標が1~6の時の合計を考えると、小玉の並べ方は全部で6+3+3+3+3+6=24通りあるわけですが、このうち上から来た大玉が通れる並べ方は1+0+1+1+0+1=4通り

<p今回のケースでは小玉の落下確率は100%で、大玉の落下確率は4/24=16.7%。玉の並び方はランダムですが、大玉が通れるような並び方は少なく、大玉が落下出来る確率は低くなるわけです。

3.ナッツによる対流現象

3.ナッツによる対流現象

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対流とはイラストのように、中央付近のナッツが上に向かい壁付近のナッツが下に向かう状態。なぜこのような動きが起きるのでしょうか。

ナッツが入った容器を上下に振ると、ナッツが浮き上がっていきますね。容器の壁に近い範囲では容器壁との摩擦があるため浮き上がりにくい。結果的に、中央付近にあるナッツが浮かび上がりやすい。すると、容器中央部分は下側が空いてくることになりますね。この空いた部分に壁側のナッツが流入してきます。すると、壁に近い領域のは下向きに流れることに。このようにして、「対流」現象が起きるわけです。ただし壁側付近で下向きに流れるのは極狭い範囲。このため大きいナッツは上向きの流れには乗れますが、下向きの流れには乗れません。

大きいナッツが下向きに流れに乗ろうとしても、下から打ち上げられるナッツと衝突してしまいます。よって、大きなナッツは「上に向かう」ことは出来ますが、「下に向かう」ことはできません。このため、大きなナッツが上の方に溜まるわけです。

大きいものほど上へ

ミックスナッツのように密度がほぼ同じで大きさの異なる粒子が混ざっている場合、それを上下に振ると大きいものほど上に集まってくるもの。ミックスナッツで一番大きいのがブラジルナッツであることが多いため、これを「ブラジルナッツ効果」と呼びます。

このようになる原因は2つ考えられ、1つは大きい粒は他の粒子と干渉して、下に落ちていきにくいのに対し小さい粒子は合間を縫って落ちていくため、結果的に大きなモノが上に残るという説。

もう1つは容器内で粒子が対流していると考えた場合に、下向きの動きをするのは壁に近い狭い範囲のみであり、大きい粒子は下に向かう流れに乗れないと考えられるためです。

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