タイムトラベルをしてみたい。特に過去に戻ってやり直したい。誰しもタイムトラベルに憧れたことがあると思う。結論から言うと現代の科学では過去への時間旅行は原理上説明不可、未来一方通行の時間旅行は原理上は説明できる。

さて実現可否は置いといて、タイムトラベルを成立させるためにはどんな条件が必要なのか見ていこう。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の教員免許も持ち。ほぼ全てのジャンルで専門知識がない代わりに初心者に分かりやすい解説を強みとする。

1.タイムトラベル

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結論から言うと、過去へのタイムトラベルは不可能であり、未来一方通行のタイムトラベルのみ可能です。ここで言う可or不可は「物理学的に説明可能かどうか」であり、実際にそれを実現する設備が準備できるかどうかは別問題。さて、なぜ過去へのタイムトラベルが不可能かというと、アインシュタインの相対性理論に反するから。

タイムトラベルする方法の一つに「高速移動をする」という方法が考えられますが、過去へのタイムトラベルを実現するためには光速度より速く移動するor虚数速度を発生させる必要があります。一方、相対性理論によれば、光速度より速い物体はないとのことであり、「高速移動」をすることによる過去へのタイムトラベルは不可能です。

一方、未来一方通行のタイムトラベルなら原理上は可能。なぜなら、こちらは光速度より遅くても実現するため。ただし、「未来一方通行」ということは一度未来に行ったら帰ってこれないということ。未来の情報を知ることは出来ますが、それを現在にフィードバックすることは出来ません。

2.タイムトラベルの原理~時間遅れ~

タイムトラベルの原理としてよく語られるのが「時間遅れ」です。簡単に言うと、超高速移動をすれば高速移動している系では時間の進み方がゆっくりになるという現象。静止系では1秒経っていても、高速移動する系では実は0.9秒しか経ってないとか、全く時間が経過していないという現象が起こり得ます。ゆっくりに感じるではなく、本当にゆっくり進みむものでその系に時計を持っていくと時計が遅れていく。これは時計が壊れたのではなく、本当に時間の進行がゆっくりになっているということ。

3.なぜ速度を持った系では時間が遅れるのか?

本来は1秒経っているのに、動いてる系では1秒経っていない=時間が遅れるのです。なぜでしょうか?順を追って見ていきましょう。

系とは?

系とは?

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系とは「観測する基準」のこと。例えば、踏切で待ってAさんから見た場合を系A、電車に乗っているBさんから見た場合を系Bとしましょう。時速10kmで電車と同じ方向に進む自転車は系Aから見ると右向きに時速10km、系Bから見ると左向きに時速50km。距離や時間、速度を議論する時はどこ基準で見るかを決める必要があり、その基準のことを系と呼びます。系は静止状態とか電車の中とか自転車だとイメージしてください。

相対性理論

簡単に言うと、速度を持った系では静止した系より時間が短く観測されるという話。

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光速度不変の原理原理

どんな系でも共通なのは光速度のみで、時間は系によって辻褄を合わせるかのように変化してしまいます。なぜ辻褄を合わせる必要が出てくるのでしょうか?

4.時間遅れを語る上での大前提

速度を持つ系では時間が遅れますが、その解説に入る前に予備知識を整理しておきましょう。

4-1.距離、速さ、時間の関係

算数で出てくる公式である「距離=速さ×時間」。これはどんな場合も例外なしです。速さが一定で距離が長くなれば時間もは長くなります。ちなみに光速度(30万km/秒、1秒間で地球7周半進む速さ)はcで表されることが多いです。この光速度は宇宙で最も速い速度であり、これ以上速いモノはないとされています。

4-2.相対速度

4-2.相対速度

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同じ動きを観測していても、観測する基準によって速度や移動距離が変わってきます。例えば、Aさんが時速21kmで壁と平行に走りながら時速72kmで壁に向かってボールを投げたとしましょう。Aさんからみるとボールの速度は?時速72kmですね。では止まっている人から見たボールの速度は?そもそも止まっている人から見たらボールは壁に真っ直ぐ向かっておらずAさんと共に横方向にも時速21kmで動いていますね。イラストに示す斜め方向に向かっておりその速度は三平方の定理から時速75kmとなります。このように、同じ動きを捉えていても系(観測する基準)によって速度は異なるもの。

4-3.異なる系から見た移動距離

4-3.異なる系から見た移動距離

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前項で壁までの距離が24mだったとしましょう。ボールが壁にぶつかるまでの移動距離は何mでしょうか?まずAさんから見るとボールは真っ直ぐ壁に向かって行ったように観測されるためボールの移動距離は24m。一方静止状態から観測するとボールは斜めに投げられたのだから作図より移動距離は25mと求まりますね。横方向に動いているAさんからしたら、横方向の動きは無視出来るため速度も移動距離も壁なら垂直な向きのみとなりますが、静止している人から見ると横方向の動きも考慮する必要があり速度も移動距離も長く観測されます。

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5.時間の収縮

5.時間の収縮

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なぜ速度を持っていると時間の流れがゆっくりになるか?

イラストのように、速度vで進む系の垂直方向に光を発射します。Lだけ離れた鏡で反射させ戻って来るまでの時間を考えましょう。速度がゼロの静止系の観測者は壁に到達するまで速度vの系にいる人はt=L/cだと言っており、静止系の観測者はそれより長いと言っております。速度vの系から見ると光の移動距離は短いですが、速度はどちらもc。速度vの系からからだと移動距離が短く観測されるため、辻褄を合わせるため経過時間も短くなるのです。

あれれ?さっきのボール壁当ての例では時間は同じでボールの速さを変えていたのに今回はなぜ時間が違っているのか?それは今回移動しているのは光だから。光の速さcはどんな系から見ても変わりません。ボールのように静止系と運動系で速度が変わることはあり得ません。その代わり、辻褄を合わせるかのように移動時間が変わる必要があるのです。

単純に光速度以上の実数速度を出せばどうなるか

単純に光速度以上の実数速度を出せばどうなるか

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仮に光速度を超えることが出来たらどうなるか。速度vは実数とします。時間遅れの数式での平方根の中は負の値、つまり時間が虚数となりますね。まさに時空が歪んでいる感じがします。

宇宙船Bの速度vを光速度の√2倍としましょう。静止系で1秒経過する時、宇宙船Bではi秒経過しますね。

虚数時間での自由落下

虚数時間での自由落下

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宇宙船Bでの自由落下を見てみましょう。iも2乗すれば-1という分かりやすい数字。初速度0で自由落下させたとき時刻t秒後の位置は次式の通り。

静止系で1秒経過すると変位は-4.9、約4.9m落下することを意味します。この時宇宙船Bでは時刻がi秒経過し変位はまさかの逆方向+4.9m、自由落下中なのに変位が上昇していますね。もちろんこの系でも重力の向きは下向き。よって、通常起こり得る現象に関し、あたかも時間経過が逆向きになったかのように進む、言い換えれば過去に巻き戻っていると捉えることも出来ますね。

仮に何らかの方法で外界のみを秒速40万キロなどといった光速度を超える速度で動かし、タイムマシンのみを静止系に置いておけば過去へのタイムスリップが実現するかもしれません。

過去へのタイムスリップは極めて困難

速度を持つ系では必ず「時間遅れ」が発生します。これは速度を持つ系からだと静止系から観測するより光の移動距離が短く観測されるためです。光の速度はどの系でも同じであるため、移動距時間遅れが発生離が短く観測されると移動時間も短く観測される=します。

日常生活では考えられないようなとてつもないスピードを出せば未来一方通行のタイムトラベルは理論上可能ですが、過去へのタイムトラベルは理論上も説明するのが困難です。

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物理理科統計力学・相対性理論

3分で簡単「時間の遅れ」タイムトラベルを実現するためには?理系ライターがわかりやすく解説

光速度不変の原理原理

どんな系でも共通なのは光速度のみで、時間は系によって辻褄を合わせるかのように変化してしまいます。なぜ辻褄を合わせる必要が出てくるのでしょうか?

4.時間遅れを語る上での大前提

速度を持つ系では時間が遅れますが、その解説に入る前に予備知識を整理しておきましょう。

4-1.距離、速さ、時間の関係

算数で出てくる公式である「距離=速さ×時間」。これはどんな場合も例外なしです。速さが一定で距離が長くなれば時間もは長くなります。ちなみに光速度(30万km/秒、1秒間で地球7周半進む速さ)はcで表されることが多いです。この光速度は宇宙で最も速い速度であり、これ以上速いモノはないとされています。

4-2.相対速度

4-2.相対速度

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同じ動きを観測していても、観測する基準によって速度や移動距離が変わってきます。例えば、Aさんが時速21kmで壁と平行に走りながら時速72kmで壁に向かってボールを投げたとしましょう。Aさんからみるとボールの速度は?時速72kmですね。では止まっている人から見たボールの速度は?そもそも止まっている人から見たらボールは壁に真っ直ぐ向かっておらずAさんと共に横方向にも時速21kmで動いていますね。イラストに示す斜め方向に向かっておりその速度は三平方の定理から時速75kmとなります。このように、同じ動きを捉えていても系(観測する基準)によって速度は異なるもの。

4-3.異なる系から見た移動距離

4-3.異なる系から見た移動距離

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前項で壁までの距離が24mだったとしましょう。ボールが壁にぶつかるまでの移動距離は何mでしょうか?まずAさんから見るとボールは真っ直ぐ壁に向かって行ったように観測されるためボールの移動距離は24m。一方静止状態から観測するとボールは斜めに投げられたのだから作図より移動距離は25mと求まりますね。横方向に動いているAさんからしたら、横方向の動きは無視出来るため速度も移動距離も壁なら垂直な向きのみとなりますが、静止している人から見ると横方向の動きも考慮する必要があり速度も移動距離も長く観測されます。

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