お湯の中にコーヒーの粉を入れると自然に広がっていき最終的に濃度がほぼ均一になる。これは物質の拡散という現象です。

では冷水の中にお湯を入れたら?いつの間にか生緩くなっていな。目には見えないけれど物質の拡散と同様に、熱も拡散している。理系ライターのR175と見ていこう。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の教員免許も持ち。ほぼ全てのジャンルで専門知識がない代わりに初心者に分かりやすい解説を強みとする。

1.拡散

image by iStockphoto

拡散とは何かが「広がっていく」現象。イメージしやすいのは、透明の水に色が付いた液体を入れた時徐々に広がっていき最終的に全体が均一に濁る現象でしょう。

上記の現象は物質の拡散ですが、温度も同じように「広がっていく」現象が観察されます。これが熱拡散です。

2.濃度の拡散

直接観察出来る「濃度の拡散」について解説していきましょう。熱の拡散でもほぼ同じことが起きているため、「濃度の拡散」を分析することがカギとなります。

2-1なぜ拡散する?

2-1なぜ拡散する?

image by Study-Z編集部

お湯(濃度0)にコーヒー(濃度100とする)を注ぎました。コーヒーの成分はコップの下方に沈んでしまうことなく、上方に浮かんでしまうこともなく、お湯の中に自然に広がっていきますね。インスタントコーヒーはこの現象を利用して、お湯を注ぐだけでコーヒーが入れられるようになっているわけです。

さてコーヒーが広がっていく原動力は何でしょうか?1つは濃度差でしょう。お湯に薄いコーヒーを注ぐよりも濃いコーヒーを注いだ方が勢いよく広がるでしょう。しかし、単純に濃度差だけではなさそうです。例えば、半径10wp_の大きめの円筒形容器Aと半径5wp_の小さめの容器B、どちらもお湯(濃度0)が入っているとして、濃度100のコーヒーを注いだとします。どちらが早く広がるでしょうか?

2-2濃度勾配

ここで濃度「勾配」という概念が力を発揮します。先ほどの例では、直感的なイメージ通り小さい容器の方が速く広がるもの。

お湯とコーヒーの濃度差はどちらも100ですが小さい容器の方が端までの距離が短い中心から5wp_で濃度差が100も変わってしまいます。大きい容器だと10wp_で濃度差が100。1wp_当たりの濃度変化は大きい容器Aで10、小さい方だと20。拡散の速さには1wp_当たりの濃度差が効いてきます。濃度勾配とは単位距離進むごとの濃度変化であり、今回容器Aの半径方向の濃度勾配は10/wp_、Bは20/wp_です。

2-3濃度拡散係数

2-3濃度拡散係数

image by Study-Z編集部

濃度の拡散は濃度勾配に比例、比例定数は拡散係数と呼ばれます。

\次のページで「3.熱の拡散」を解説!/

3.熱の拡散

熱の拡散は直接観察は出来ませんが、現象としては濃度の拡散と同じ熱→濃度と言い換えてみましょう。高温側を→濃度が濃い方、低温側を→濃度が薄いというイメージでOKです。

3-1熱伝導

3-1熱伝導

image by Study-Z編集部

濃度の拡散と同じく、熱の拡散も温度勾配というパラメータに比例し以下のような式で表されます。

今度は10℃の水に90℃のお湯を注いだ時の熱の広がり方を考えましょう。考え方は濃度の場合と同じです。熱の拡散が起きるのは「温度勾配」が原動力。温度勾配は一定距離当たりの温度差です。前述のコーヒーを注ぐと時の例と同様、同じ温度差であれば容器が小さい方が温度勾配は大きくなり速く拡散します。半径10wp_の大きい容器なら、温度差80℃(K)、距離10wp_より温度勾配は8(K/wp_)。半径5wp_のコップなら、温度差80℃の距離5wp_で温度勾配は16(K/wp_)。絶対温度の方が一般的なためケルビン表記にしています。ちなみに1℃差と1K差は同じです。 一体面積の熱の通過量である熱流束は温度勾配(前述の濃度勾配の温度ver)に比例し、その比例定数が熱伝導率。温度勾配が大きければ大きいほど熱流束が大きくなりますが、熱伝導伝導率(イラスト中のk)が大きいほど温度勾配にしたがってより熱流束が大きくなることを意味します。

3-2熱流束

3-2熱流束

image by Study-Z編集部

なぜ面積当たりの熱の通過量「熱流束」を考えるのでしょう。単に熱の通過量ではダメなのでしょうか。

熱の通過面の断面積が大きいと熱の通過量も多くなります。面積当たりの熱の移動量が少なくともその断面が無限大に広ければ、その断面の熱の通過量を全て足し合わせると大きな熱量となりますね。しかし、これが熱の移動が活発と言えるでしょうか答えはNoですね。熱の移動量を議論したい時は面積当たりで考えるのが妥当です。つまりイラストで言うところの、一定面積当たりの矢印の本数と言ったところでしょうか?熱量を断面積で割った「熱流束」というパラメータで議論するのが妥当。

熱流束=定数x温度勾配でこの定数こそ、熱拡散係数と言いたいところですが実はそうではありません。熱の移動量が100%拡散とは言い切れないからです。

3-3熱伝導率

温度勾配の前についている定数kは熱伝導率という物性値。ある温度勾配の時どれくらい熱が移動するかの指標で、ズバリ熱の伝わりやすさを表します。しかしこの値が大きいからと言って熱拡散係数も大きくなるとは限りません。なぜでしょう?

3-4温まってから隣へ伝熱

3-4温まってから隣へ伝熱

image by Study-Z編集部

温まってから伝わる」というタイトル通り、伝熱では濃度と違って隣の粒子に温度が伝播する前にまず自身の温度が高くなる必要があります。同じだけ熱流束が与えられても、物質によって1つ1つの粒子の温度の上がり方には差があるもの。1つ1つの粒子が温まりやすい物質のほど熱が早く拡散していくのです。

\次のページで「3-5物質の温まりやすさ」を解説!/

3-5物質の温まりやすさ

3-5物質の温まりやすさ

image by Study-Z編集部

粒子の温まり方の違いを考慮するため、熱拡散係数(温度拡散係数)は熱伝導率を(比熱×密度)で割っています。比熱cは単位質量(例えば1g)を単位温度(例えば1℃)上げるのに必要な熱量。 比熱cに密度ρがかかっているので分母のρcが意味するのは単位体積単位温度だけ上げるのに必要な熱流を意味します。熱伝導率が高ければ確かに熱の移動自体は多くなりますが、その熱量がどれだけ拡散に寄与しているかは別の問題。熱伝導率が高くても、ρcの値が大きいと、熱拡散係数は小さくなるかもしれません。熱の移動自体は多いのにその熱は物質粒子1つ1つを温めるのに使う割合が多く拡散にはあまり寄与しないからです。

逆に熱伝導率は小さくてもρcの値が小さければ熱拡散係数は大きくなるかもしれません。熱の移動量自体は少なくても、物質粒子1つ1つを温めるのにあまりエネルギーを必要としないた拡散に寄与する割合が高く、どんどん拡散していくかもしれません。以上の理由から熱伝導率を比熱×密度で割った値が熱拡散係数とされています。

3-6熱の拡散方程式

熱の拡散を表す式は以下の通り。結果的に濃度の拡散方程式と同じ形。ただし、熱拡散係数が少しくせもので、前述の通り熱伝導率とは異なります。熱拡散係数は「物質の温まりやすさ」を考慮したものであり、熱伝導の式に当てはめると比熱と密度がかかってきます。

拡散におけるキーワードは「勾配」

濃度の拡散は「濃度勾配」、温度の拡散は「温度勾配」に比例。単に、濃度差や温度差ではなく、それらが一定距離あたりどれくらい変化するのかという指標「勾配」が効いてきます。

" /> 3分で簡単「熱拡散」濃度勾配や温度勾配についても理系ライターがわかりやすく解説 – Study-Z
化学理科

3分で簡単「熱拡散」濃度勾配や温度勾配についても理系ライターがわかりやすく解説

お湯の中にコーヒーの粉を入れると自然に広がっていき最終的に濃度がほぼ均一になる。これは物質の拡散という現象です。

では冷水の中にお湯を入れたら?いつの間にか生緩くなっていな。目には見えないけれど物質の拡散と同様に、熱も拡散している。理系ライターのR175と見ていこう。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の教員免許も持ち。ほぼ全てのジャンルで専門知識がない代わりに初心者に分かりやすい解説を強みとする。

1.拡散

image by iStockphoto

拡散とは何かが「広がっていく」現象。イメージしやすいのは、透明の水に色が付いた液体を入れた時徐々に広がっていき最終的に全体が均一に濁る現象でしょう。

上記の現象は物質の拡散ですが、温度も同じように「広がっていく」現象が観察されます。これが熱拡散です。

2.濃度の拡散

直接観察出来る「濃度の拡散」について解説していきましょう。熱の拡散でもほぼ同じことが起きているため、「濃度の拡散」を分析することがカギとなります。

2-1なぜ拡散する?

2-1なぜ拡散する?

image by Study-Z編集部

お湯(濃度0)にコーヒー(濃度100とする)を注ぎました。コーヒーの成分はコップの下方に沈んでしまうことなく、上方に浮かんでしまうこともなく、お湯の中に自然に広がっていきますね。インスタントコーヒーはこの現象を利用して、お湯を注ぐだけでコーヒーが入れられるようになっているわけです。

さてコーヒーが広がっていく原動力は何でしょうか?1つは濃度差でしょう。お湯に薄いコーヒーを注ぐよりも濃いコーヒーを注いだ方が勢いよく広がるでしょう。しかし、単純に濃度差だけではなさそうです。例えば、半径10wp_の大きめの円筒形容器Aと半径5wp_の小さめの容器B、どちらもお湯(濃度0)が入っているとして、濃度100のコーヒーを注いだとします。どちらが早く広がるでしょうか?

2-2濃度勾配

ここで濃度「勾配」という概念が力を発揮します。先ほどの例では、直感的なイメージ通り小さい容器の方が速く広がるもの。

お湯とコーヒーの濃度差はどちらも100ですが小さい容器の方が端までの距離が短い中心から5wp_で濃度差が100も変わってしまいます。大きい容器だと10wp_で濃度差が100。1wp_当たりの濃度変化は大きい容器Aで10、小さい方だと20。拡散の速さには1wp_当たりの濃度差が効いてきます。濃度勾配とは単位距離進むごとの濃度変化であり、今回容器Aの半径方向の濃度勾配は10/wp_、Bは20/wp_です。

2-3濃度拡散係数

2-3濃度拡散係数

image by Study-Z編集部

濃度の拡散は濃度勾配に比例、比例定数は拡散係数と呼ばれます。

\次のページで「3.熱の拡散」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: