今回のテーマ「コイル」と「磁界」の関係についてみていこう。

コイルは目に見えるが、磁界ってのは目に見えないよな。見えないものを理解するってのはなかなか難しいかもしれませんね。

今回は、コイルと磁界の関係と、それを利用した実用例も踏まえて理系大学院卒のこーじと解説していきます。

ライター/こーじ

元理系大学院卒。小さい頃から機械いじりが好きで、機械系を仕事にしたいと大学で工学部を専攻した。卒業後はメーカーで研究開発職に従事。物理が苦手な人に、答案の答えではわからないおもしろさを伝える。

コイルと磁界とは?

Spider coil.jpg
Spider coil(kit of w:ja:科学教材社), CC 表示-継承 3.0, リンクによる

そもそもコイルと磁界とはどのようなものでしょうか?
現象を理解するには、まずは定義を知ることが重要です。始めに、コイルと磁界について学んでいきましょう。

コイルとは

コイルとは、針金や銅線などの線状のものをらせん状やうずまき状に巻いたものです。
機械分野では、圧縮コイルばねや、引張コイルばね、ねじりコイルばねと機械部品として使用されます。電気分野では、電子回路の基本となる部品の一つです。種類は多岐にわたり、バーアンテナや、RFチョークコイルといったものもあります。1つのコアに2本の導線を巻いたトランスもコイルの一種です。

このように、コイルは電流を流すことで磁界を発生させ様々な機能を発現していきます。

磁界とは

image by iStockphoto

磁界とは電気や磁気現象を表すための物理的概念のことです。磁石を動かす力の源のことを磁界といい、磁界の強さ(磁場)H[A/m](ヘンリー)という単位で表記されます。磁界の強さはベクトル量です。大きさと向きを持つベクトルであることは、小学校や中学校で行う実験からでもわかります。

一つ目は、豆電球を使用した実験です。電池につないだ豆電球のコードを、方位磁針に巻き付け電流を流すと方位磁針が動くことが観察できます。二つ目は、磁石と砂鉄を使用した実験です。小学生のころに、理科の実験で厚紙の上に磁石と砂鉄を置き、砂鉄の模様を見たことがないでしょうか。磁石のN極とS極を曲線を描くように、砂鉄の模様ができます。この砂鉄の模様が磁力線です。

このように、方位磁針や砂鉄を動かす力を磁界と呼びます。

\次のページで「コイルと磁界の関係」を解説!/

コイルと磁界の関係

コイルに電流を流すと電線の周囲に磁界が生じます。以前、電気と磁界は無関係の現象であると考えられていましたが、エルステッドにより、電流が磁界を発生させるということをが明らかにされました。

磁界の強さは、電流の大きさと導線からの距離によって変わります。これを公式化したのがアンペールの法則です。導線の形状により一般化された式は異なります。

次は、導線の形状の違いによる磁界の発生の仕方と強さを見ていきましょう。

コイルに発生する磁界の向きと強さ

次に、コイルに発生する磁界の向きと強さを考えてみましょう。

導線に発生する電流と磁界の関係性を示す有名な法則に右ねじの法則というものがあります。この法則を学びながら、コイル周囲の磁界の向き視覚化しましょう。

右ねじの法則

コイルの周囲に生じる磁界の向きを判別するには、右ねじの法則が良く使用されます。右ねじの法則というのは、コイルに流れる電流と磁界が発生する向きを記憶しやすくするものです。この法則では電流の流れる向きをねじの進む方向、ねじ先のとがっている方向としたとき、ねじを回す方向が磁界の向きに一致します

これは、自分の右手を使える簡単な方法です。ハンドサインのグッジョブを使います。親指を電流の向きとした時、握っている指の付け根から指先に向かう方向が磁界の向きです。

では、この右ねじの法則の法則を使用してコイルに発生する磁界の向きを見ていきましょう。

直線電流がつくる磁界

直線電流がつくる磁界

image by Study-Z編集部

最初は、一番簡単なもの下の図のような一本の導体を考えてみましょう。電流が下から上に流れるときは、導体を中心に時計回りに磁界が発生します。

実際に右ねじの法則を使用して試してみましょう。電流の流れる向きと親指を合わせ、他の指を軽く握ります。そうすると、握った指の付け根から指先まで時計回りのようになっていますね。逆に上から下に流れるときは反時計回りに発生し、右ねじの法則を使用しても同じ結果です。

導体の周りの磁界の強さは、アンペールの法則により次の式で表されます。

image by Study-Z編集部

Hは、磁界の強さ(H)、Iは電流値(A)、rは、導線からの距離です。磁界の強さは、電流値が大きいほど大きくなり導線からの距離が遠くなるほど小さくなることがわかります。

円形コイルがつくる磁界

円形コイルがつくる磁界

image by Study-Z編集部

次にまっすぐに流れる電流が作る磁界を、丸めて円を作ったらどのような磁界ができるのか注目します。
円形コイルに生じる磁界の向きを考えるときも、右ねじの法則を使用しましょう。円周の一部を直線と考えます。図のように円形コイルの中心部では、磁界の向きは鉛直上向き方向です。これは、コイルの導線どの位置で考えても変わりません。
ここで、すべての導線から生じる磁界成分を合成してみましょう。すると円の中心部では、上向きの磁界成分であることがわかります。

つまり、円形コイルの内部中心に生じる磁界は直線状の磁界です。また、円形コイルのアンペールの式は以下の式で表すことができます。

image by Study-Z編集部

ソノレイドコイルが作る磁界

Solenoid-1.png
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最後にソレノイドコイルを説明します。ソレノイドコイルは、導体を円筒状に巻いたものです。円形コイルと同様に、コイル中心の磁界の向きは直線になり、強さは巻き数が多くなるほど増加します。
長さLに導体をN回巻いたのソレノイドコイルの磁界の強さは、次の式です。また、1mあたりの巻き数をn〔回/m〕とすると、n=N/Lと表すことができるため、次のようにも表記されます。

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\次のページで「コイルと磁界が使用されている例」を解説!/

コイルと磁界が使用されている例

コイルと磁界を利用した実例を紹介します。今回は、皆さんの家庭でも使っている人もいるでしょう。家庭用のIHヒーターを紹介します。

IHクッキングヒーター

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このコイルを利用した実用例の一つが、家庭用製品のIHヒーターです。これは、コイルの内側に生じる磁界を活用するのではなくコイルから出ていく磁界を利用しています。

コイルに電流を流し発生した磁界が鍋に影響することで、誘導電流が発生。誘導電流によって鍋に発生した電気抵抗でジュール熱が発生し加熱されるという仕組みです。

昔はIHヒーターを利用するには、鉄などが一般的でした。最近では土なべでもIHヒーターを使えるといった宣伝もあります。これは土なべの下に鉄系の材料をとりつけているからです。

コイルと磁界は切っても切れない関係である

一番大事なことは、コイルに電流を流すと磁界が発生するということです。私たちの周りにある製品にはこの現象を利用した様々な技術があります。

今回は、IHヒーターを紹介しました。高周波焼き入れや、マイク、スピーカーも、コイルを利用したものです。学校の授業で学んだことで終わるのではなく身近などんなものに使われているのかを調べてみてください。

そうすると物理がもっと楽しくなります。

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物理理科電磁気学・光学・天文学

3分で簡単「コイル」と「磁界」の関係!向きや強さ・実用例を理系大学院卒ライターがわかりやすく解説

今回のテーマ「コイル」と「磁界」の関係についてみていこう。

コイルは目に見えるが、磁界ってのは目に見えないよな。見えないものを理解するってのはなかなか難しいかもしれませんね。

今回は、コイルと磁界の関係と、それを利用した実用例も踏まえて理系大学院卒のこーじと解説していきます。

ライター/こーじ

元理系大学院卒。小さい頃から機械いじりが好きで、機械系を仕事にしたいと大学で工学部を専攻した。卒業後はメーカーで研究開発職に従事。物理が苦手な人に、答案の答えではわからないおもしろさを伝える。

コイルと磁界とは?

Spider coil.jpg
Spider coil(kit of w:ja:科学教材社), CC 表示-継承 3.0, リンクによる

そもそもコイルと磁界とはどのようなものでしょうか?
現象を理解するには、まずは定義を知ることが重要です。始めに、コイルと磁界について学んでいきましょう。

コイルとは

コイルとは、針金や銅線などの線状のものをらせん状やうずまき状に巻いたものです。
機械分野では、圧縮コイルばねや、引張コイルばね、ねじりコイルばねと機械部品として使用されます。電気分野では、電子回路の基本となる部品の一つです。種類は多岐にわたり、バーアンテナや、RFチョークコイルといったものもあります。1つのコアに2本の導線を巻いたトランスもコイルの一種です。

このように、コイルは電流を流すことで磁界を発生させ様々な機能を発現していきます。

磁界とは

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磁界とは電気や磁気現象を表すための物理的概念のことです。磁石を動かす力の源のことを磁界といい、磁界の強さ(磁場)H[A/m](ヘンリー)という単位で表記されます。磁界の強さはベクトル量です。大きさと向きを持つベクトルであることは、小学校や中学校で行う実験からでもわかります。

一つ目は、豆電球を使用した実験です。電池につないだ豆電球のコードを、方位磁針に巻き付け電流を流すと方位磁針が動くことが観察できます。二つ目は、磁石と砂鉄を使用した実験です。小学生のころに、理科の実験で厚紙の上に磁石と砂鉄を置き、砂鉄の模様を見たことがないでしょうか。磁石のN極とS極を曲線を描くように、砂鉄の模様ができます。この砂鉄の模様が磁力線です。

このように、方位磁針や砂鉄を動かす力を磁界と呼びます。

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