翼回りに発生する衝撃波
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近年の航空機の巡回速度はマッハ0.8から0.85程度と言われています。音速以下だから衝撃波は起こらないかと思いますが、実は衝撃波が起きてもおかしくない速度で飛行しているのです。ここで注意として、先ほど大気圧での音速は340m/sでしたが、ここでは航空機の巡回する高度は約1万mとされているためその高さでの音速は約300m/sになります。そのため航空機のマッハ数をm/sに直す際には340m/sを掛けないようにしてください。
上図に示す翼回りの流れ(流線)を見てみましょう。前縁部で流線間隔が狭くなっており、後縁部でその間隔は広くなっていることが分かります。これは前縁で流れが加速され、後縁で減速しているということです。このことから航空機が音速以下で飛行していたとしても、音速に近い時は図のように流れがが加速し超音速になるために衝撃波が発生する場合があります。
超音速旅客機の課題 ソニックブーム
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海外旅行の時など飛行機に長時間乗ると、もっと早く目的地に到着しないかなと思った人は多いのではないでしょうか。1969年に初飛行した超音速旅客機「コンコルド」はその速さがマッハ2.02でした。現在の航空機と比べ約2倍以上速いため乗りたいと思うのではないでしょうか。
しかし超音速旅客機の課題としては、発生する衝撃波が地上まで減衰せずに到達し、窓ガラスが割れるなど被害をもたらすソニックブームと呼ばれる現象が起こります。現在ではソニックブームの被害を考慮し、超音速で飛行できる空域は限定されているようです。
水中で発生する衝撃波
衝撃波は空気中だけではありません。水中でも衝撃波は発生します。次は水中で発生する衝撃波について学びましょう。
ウォーターハンマ(水撃)現象
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壁の中の水道管から「ゴン」や「ガン」と音が聞こえたことはありませんか。それはウォーターハンマ(水撃とも呼ぶ)の可能性が考えられます。ウォーターハンマとは、勢いよく水が流れている時に水を急速に止めたことにより高圧になり、その圧力波が音速で伝播し、配管にぶつかった時にハンマーで叩いたような音が聞こえる現象です。ウォーターハンマは水中で発生する衝撃波と考えられたため、水撃とも言われると考えられます。ちなみに水道管内の音速は、鋼管であれば約1400m/sと空気での音速よりも約4倍速い速度です。
プラントでは高圧のポンプが多いため、ポンプの停止時にウォーターハンマが発生するかが頻繁に議論されます。ウォータハンマにより騒音や上記の写真のような配管の故障などの問題が発生するので注意しなければならない現象です。
キャビテーションによる衝撃波
キャビテーション(cavitation)とは、液体を減圧していき飽和蒸気圧以下になると沸騰し、気泡が発生する現象を言います。富士山頂上では気圧が下がるため、沸点が下がる原理と同じです。液体が静止せずに流れている場合は、流れの中に圧力の高い場所と低い場所が存在します。低圧部で発生した気泡が高圧部に移動すると、気泡が消滅し、消滅した箇所に液体を引き込むため液体の分子が衝突し、圧力が非常に高くなり衝撃波が発生するのです。その衝撃波はその周りの物体に衝突し、上記の写真のように表面が削りとられた虫食い状になります。虫歯を英語でcavityと言うのですが、キャビテーションはその派生語にみられるため妙名した人は虫歯を連想したのかもしれません。
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