今回は「衝撃波」について解説していきます。

突然ですが、衝撃波と聞いて何を想像するでしょうか。アクションアニメでは、キャラクターが衝撃波によって吹き飛ぶシーンがよく見られる。衝撃波を理解するためには圧力波、音速がキーワードになるぞ。この記事では衝撃波の現象として、「雷」、「航空機」、「水中」について解説した。衝撃波がより身近な現象として感じるでしょう。ぜひこの機に学んでみてくれ。

大学では熱流体力学分野で研究していたアヤコと一緒に解説していきます。

ライター/アヤコ

現役のプラントエンジニア。大学では熱流体分野の研究を行い、就職後もプラントエンジニアとして流体に関係する仕事を行っている。流体力学は多くの人が難しいと思い毛嫌いする分野の半面、身の回りの現象は多い。楽しく理解できるよう解説していく。

衝撃波とは?原理をみてみよう

image by iStockphoto

「ゴロゴロ」。大気が震えと共に伝わってくる雷鳴。この写真を見ると雷の恐怖を思い出します。実はこの落雷音は衝撃波によるものです。それではなぜ衝撃波と言われるのでしょうか。衝撃波の原理を説明していきましょう。

衝撃波のポイント1 圧力波の発生

衝撃波のポイント1  圧力波の発生

image by Study-Z編集部

衝撃波を理解するためには、圧力波の発生を理解しなければなりません。空気などの流体が爆発などにより膨大な圧力変化を生じた時は、その増加した圧力波は空気中を伝播していきます。

具体的に説明しましょう。上図に記した何が起きても壊れないピストンと爆弾を置くことを想像し、ピストンを押す箇所を爆発させることを考えます。爆発後、ピストンが空気を押していき、空気が圧縮され密度が上がることで圧力が高まり、その高い圧力波は低い圧力の方に伝播していくことが想像できますでしょうか。

衝撃波のポイント2 圧力波が超音速で伝播


次に理解のポイントとしては、圧力波が超音速で伝播することです。空気中での音速は常温、大気圧で約340m/sとされ、音速以上を超音速と言います。音速以上になる物の速さを評価するために、その速度を音速で割った値であるマッハ数(1が音速、1より大きい値は超音速)とされるのです。

まとめると衝撃波は圧力が急激に増加し、超音速で伝播する圧力波のことを言います。はじめに落雷を挙げましたが、雷の速さは約30万km/s と音速の約90万倍です。雷により超音速で空気が押しのけられた結果、衝撃波が生じると理解できます。

航空機における衝撃波

流体力学の専門書で衝撃波を調べると、航空機の例が初めに説明されます。まずは航空機における衝撃波を学びましょう。

\次のページで「翼回りに発生する衝撃波」を解説!/

翼回りに発生する衝撃波

翼回りに発生する衝撃波

image by Study-Z編集部

近年の航空機の巡回速度はマッハ0.8から0.85程度と言われています。音速以下だから衝撃波は起こらないかと思いますが、実は衝撃波が起きてもおかしくない速度で飛行しているのです。ここで注意として、先ほど大気圧での音速は340m/sでしたが、ここでは航空機の巡回する高度は約1万mとされているためその高さでの音速は約300m/sになります。そのため航空機のマッハ数をm/sに直す際には340m/sを掛けないようにしてください

上図に示す翼回りの流れ(流線)を見てみましょう。前縁部流線間隔狭くなっており、後縁部でその間隔は広くなっていることが分かります。これは前縁で流れが加速され、後縁で減速しているということです。このことから航空機が音速以下で飛行していたとしても、音速に近い時は図のように流れがが加速し超音速になるために衝撃波が発生する場合があります。

超音速旅客機の課題 ソニックブーム

Sonic boom.svg
I, Melamed katz, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

海外旅行の時など飛行機に長時間乗ると、もっと早く目的地に到着しないかなと思った人は多いのではないでしょうか。1969年に初飛行した超音速旅客機「コンコルド」はその速さがマッハ2.02でした。現在の航空機と比べ約2倍以上速いため乗りたいと思うのではないでしょうか。

しかし超音速旅客機の課題としては、発生する衝撃波が地上まで減衰せずに到達し、窓ガラスが割れるなど被害をもたらすソニックブームと呼ばれる現象が起こります。現在ではソニックブームの被害を考慮し、超音速で飛行できる空域は限定されているようです。

水中で発生する衝撃波

衝撃波は空気中だけではありません。水中でも衝撃波は発生します。次は水中で発生する衝撃波について学びましょう。

ウォーターハンマ(水撃)現象

Blown expansion joint.jpg
By Kajmal at English Wikipedia - Transferred from en.wikipedia to Commons by UNiesert using CommonsHelper., Public Domain, Link

壁の中の水道管から「ゴン」や「ガン」と音が聞こえたことはありませんか。それはウォーターハンマ(水撃とも呼ぶ)の可能性が考えられます。ウォーターハンマとは、勢いよく水が流れている時に水を急速に止めたことにより高圧になり、その圧力波が音速で伝播し、配管にぶつかった時ハンマーで叩いたような音が聞こえる現象です。ウォーターハンマ水中で発生する衝撃波と考えられたため、水撃とも言われると考えられます。ちなみに水道管内の音速は、鋼管であれば約1400m/sと空気での音速よりも約4倍速い速度です。

プラントでは高圧のポンプが多いため、ポンプの停止時にウォーターハンマが発生するかが頻繁に議論されます。ウォータハンマにより騒音や上記の写真のような配管の故障などの問題が発生するので注意しなければならない現象です。

キャビテーションによる衝撃波

Turbine Francis Worn.JPG
me - 投稿者自身による作品, CC 表示 2.5, リンクによる

キャビテーション(cavitation)とは、液体を減圧していき飽和蒸気圧以下になると沸騰し、気泡が発生する現象を言います。富士山頂上では気圧が下がるため、沸点が下がる原理と同じです。液体が静止せずに流れている場合は、流れの中に圧力の高い場所と低い場所が存在します。低圧部で発生した気泡が高圧部に移動すると、気泡が消滅し、消滅した箇所に液体を引き込むため液体の分子が衝突し、圧力が非常に高くなり衝撃波が発生するのです。その衝撃波はその周りの物体に衝突し、上記の写真のように表面が削りとられた虫食い状になります。虫歯を英語でcavityと言うのですが、キャビテーションはその派生語にみられるため妙名した人は虫歯を連想したのかもしれません。

\次のページで「キャビテーションの実用例」を解説!/

キャビテーションの実用例

これまで衝撃波による悪影響を挙げてきましたが、この技術は近年では家電製品や結石治療に応用されております。

一つ目は眼鏡の洗浄などに使用される超音波洗浄機です。その原理は、20kHz以上の超音波を水に照射することにより、キャビテーションを発生させ、その衝撃波で眼鏡に付着した汚れを除去します。結石治療においても同様です。その技術では、体外から超音波を当てることにより結石付近でキャビテーションを発生させ、その衝撃波により結石を除去します。

衝撃波について理解を深めよう!

この記事では、衝撃波が発生する仕組みや、雷、航空機、水中など身の回りで発生する衝撃波について紹介してきました。衝撃波の理解のポイントは、圧力波の発生と、超音速での伝播です。

また衝撃波技術の応用についても最後に説明しましたが、現在のところ応用数は少ないと感じます。衝撃波のエネルギーは大きいためそのエネルギーを自在に制御し、私たちの生活に活用できれば、生活の質の向上に繋がるのではないでしょうか。この記事により衝撃波について興味が湧きましたら、是非その理論を熱流体力学の専門書で学んで頂けると幸いです。

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流体力学物理理科

5分で分かる「衝撃波」身近なものには何がある?どんな原理?プラントエンジニアが分かりやすくわかりやすく解説

今回は「衝撃波」について解説していきます。

突然ですが、衝撃波と聞いて何を想像するでしょうか。アクションアニメでは、キャラクターが衝撃波によって吹き飛ぶシーンがよく見られる。衝撃波を理解するためには圧力波、音速がキーワードになるぞ。この記事では衝撃波の現象として、「雷」、「航空機」、「水中」について解説した。衝撃波がより身近な現象として感じるでしょう。ぜひこの機に学んでみてくれ。

大学では熱流体力学分野で研究していたアヤコと一緒に解説していきます。

ライター/アヤコ

現役のプラントエンジニア。大学では熱流体分野の研究を行い、就職後もプラントエンジニアとして流体に関係する仕事を行っている。流体力学は多くの人が難しいと思い毛嫌いする分野の半面、身の回りの現象は多い。楽しく理解できるよう解説していく。

衝撃波とは?原理をみてみよう

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「ゴロゴロ」。大気が震えと共に伝わってくる雷鳴。この写真を見ると雷の恐怖を思い出します。実はこの落雷音は衝撃波によるものです。それではなぜ衝撃波と言われるのでしょうか。衝撃波の原理を説明していきましょう。

衝撃波のポイント1 圧力波の発生

衝撃波のポイント1  圧力波の発生

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衝撃波を理解するためには、圧力波の発生を理解しなければなりません。空気などの流体が爆発などにより膨大な圧力変化を生じた時は、その増加した圧力波は空気中を伝播していきます。

具体的に説明しましょう。上図に記した何が起きても壊れないピストンと爆弾を置くことを想像し、ピストンを押す箇所を爆発させることを考えます。爆発後、ピストンが空気を押していき、空気が圧縮され密度が上がることで圧力が高まり、その高い圧力波は低い圧力の方に伝播していくことが想像できますでしょうか。

衝撃波のポイント2 圧力波が超音速で伝播


次に理解のポイントとしては、圧力波が超音速で伝播することです。空気中での音速は常温、大気圧で約340m/sとされ、音速以上を超音速と言います。音速以上になる物の速さを評価するために、その速度を音速で割った値であるマッハ数(1が音速、1より大きい値は超音速)とされるのです。

まとめると衝撃波は圧力が急激に増加し、超音速で伝播する圧力波のことを言います。はじめに落雷を挙げましたが、雷の速さは約30万km/s と音速の約90万倍です。雷により超音速で空気が押しのけられた結果、衝撃波が生じると理解できます。

航空機における衝撃波

流体力学の専門書で衝撃波を調べると、航空機の例が初めに説明されます。まずは航空機における衝撃波を学びましょう。

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