この記事では「拳拳服膺」について解説する。

端的に言えば拳拳服膺の意味は「人の教えや言葉などを決して忘れないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「拳拳服膺」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「拳拳服膺」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「拳拳服膺」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。「拳々服膺」とも書くこともあり、読み方は「けんけんふくよう」です。まずは意味を正確につかんだあとに、語源などについて詳しく見ていきますよ。

「拳拳服膺」の意味は?

「拳拳服膺」には、次のような意味があります。最初に辞書の意味を確認して、漢字ごとの意味など、さらに詳細の意味について一緒に見ていきましょう。

1.常に心にとめて、決して忘れないこと。

出典:四字熟語辞典(学研)「拳拳服膺」

「拳拳」は両手で物を大切に捧げ持つようすのこと、「服膺」は胸につけるということから常に心に留めておくということを表しています。こういったことから、心に刻んで忘れないようにするという意味につながっていますよ。

捧げ持つということですから、今で言うなら校長先生から表彰状をもらったり、なにか偉い人から賞や授かりものをいただくイメージですね。それぐらいの気持ちで心に銘記するということです。

「拳拳服膺」の語源は?

次に「拳拳服膺」の語源を確認しておきましょう。

「拳拳服膺」は儒教における「四書」のひとつ『中庸(ちゅうよう)』に由来します。『中庸』は孔子(こうし)の孫である子思(しし)の作と言われており、中庸の「徳」について詳しく解説されている儒教の中心的な概念がまとめられた書です。『論語(ろんご)』の中にも「中庸」という表現が出てきますよ。

その中に、孔子が弟子の顔回(がんかい)の人柄について述べた話が書かれています。「顔回は中庸の徳を選び出して、これというよいことが得られると慎重に身につけてなくすことがない。」とあり、原文では「慎重に身につけて」のところで「拳拳服膺」という表現が使われていますよ。

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「拳拳服膺」の使い方・例文

「拳拳服膺」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。文法的な側面からも見ていきますよ。

1.あのとき拳拳服膺の思いで先輩に聞いたことが、現在は事業を展開するまでになった。
2.人気のお酒をつくる達人に酵母熟成の極意をうかがい、拳拳服膺すると同時に報恩謝徳を誓った。

例文の1.では、先輩の言葉を必死で心に刻んだことが実を結んで事業を展開するまでになったことを振り返っているようすを表しています。

例文2.のほうは、お酒造りの達人に造り方のコツを聞くことができて、心に刻みたい気持ちと感謝の気持がわいてきたという文です。いいお酒を開発してみんなに提供することが恩返しになるのかもしれませんね。

文法的に見てみると、例文1.は「拳拳服膺の…」と名詞として、例文の2.では「拳拳服膺する…」と動詞化した表現で使われています

「拳拳服膺」の類義語は?違いは?

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それでは、「拳拳服膺」の類義語についての説明です。非常に近い意味の四字熟語など、いくつかの関連する表現について一緒に見ていきましょう。

「銘肌鏤骨」

「拳拳服膺」の類義語には、「銘肌鏤骨(めいきるこつ)」があります。意味は、深く心に刻み込んで忘れないことです。「銘肌」は肌に刻み込むこと、「鏤骨」は骨に刻み込むことを表しています。「肌に銘じ骨に鏤(きざ)む」と読み下すことができる表現です。

「覚えておく」や「身につける」ではなく「刻み込む」という意味合いであることから、意味の強さからすると非常に強いものであることがわかりますね。

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「一言芳恩」

もう一つの類義語には、「一言芳恩(いちごんほうおん)」があります。ちょっと声をかけてもらったことに対して忘れずに感謝するという意味です。「一言」はひとことやちょっとした言葉のこと、「芳恩」は人から受けた親切や恩義についての敬称を表していますよ。

「一言芳恩」はちょっとした言葉に対する反応であることや感謝するという意味まで含まれている点では、「拳拳服膺」に比べて意味の幅は広くなっていると言えます。

「拳拳服膺」の対義語は?

次に、「拳拳服膺」の対義語についての説明です。決して忘れないという「拳拳服膺」の対義語として、忘れてしまったり、そもそも頭に入らないという四字熟語を見ていきましょう。

「馬耳東風」

「拳拳服膺」の対義語には、「馬耳東風(ばじとうふう)」があります。意味は、周囲の意見や批判をまったく気に留めず聞き流すことです。「東風」は春に吹く心地よい春風のことで、馬の耳には心地よい春風が吹いても何も感じないということからきています。

また、そこから他人の忠告や批判を聞いたとしても、少しも反省がなかったり、無関心で反応がないという意味にもつながっていますよ。

「貴人多忘」

もう一つの対義語には、「貴人多忘(きじんたぼう)」があります。高い地位を得たり人の上に立つようになると、傲慢になって過去のことを忘れてしまうことが多いという意味です。「貴人」は身分の高い人のこと、「多忘」はよく物忘れすることを表しています。

「貴人多忘」はよく忘れるということですから、いつも心にとめて決して忘れないようにするという「拳拳服膺」とは完全に反対の意味になっていますね。

「拳拳服膺」の英訳は?

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最後に、「拳拳服膺」の英訳についての説明です。「拳拳服膺」そのものを表すような特別な表現はありませんが、意味が近い英語表現について一緒に見ていきましょう。

「firmly bear in mind」

「拳拳服膺」の英訳には、「firmly bear in mind」があります。直訳すると「しっかりと心にとめておく」です。「心にとめておく、覚えておく」という意味の「bear in mind」に、「堅く、堅固に、しっかりと」という意味の「firmly」を組み合わせた表現になっています。

ほかには、「and never forgetting」を付け足して「しっかり心にとめて忘れないこと」とすると、強調した表現になりますよ。表現を限定的に考えず、場面に合わせて微調整するといいですね。

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「拳拳服膺」を使いこなそう

今回の記事では「拳拳服膺」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「拳拳服膺」の基本の意味は、しっかりと心にとめて忘れないようにすることです。何らかのニュースや情報、人の言葉や書籍、ときには絵本を見てハッとすることがあるかもしれません。何かに対して心にとめる習慣を持てたり、受け止めるだけの心と時間の余裕を持てるといいですね。

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国語言葉の意味

【四字熟語】「拳拳服膺」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

「拳拳服膺」の使い方・例文

「拳拳服膺」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。文法的な側面からも見ていきますよ。

1.あのとき拳拳服膺の思いで先輩に聞いたことが、現在は事業を展開するまでになった。
2.人気のお酒をつくる達人に酵母熟成の極意をうかがい、拳拳服膺すると同時に報恩謝徳を誓った。

例文の1.では、先輩の言葉を必死で心に刻んだことが実を結んで事業を展開するまでになったことを振り返っているようすを表しています。

例文2.のほうは、お酒造りの達人に造り方のコツを聞くことができて、心に刻みたい気持ちと感謝の気持がわいてきたという文です。いいお酒を開発してみんなに提供することが恩返しになるのかもしれませんね。

文法的に見てみると、例文1.は「拳拳服膺の…」と名詞として、例文の2.では「拳拳服膺する…」と動詞化した表現で使われています

「拳拳服膺」の類義語は?違いは?

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それでは、「拳拳服膺」の類義語についての説明です。非常に近い意味の四字熟語など、いくつかの関連する表現について一緒に見ていきましょう。

「銘肌鏤骨」

「拳拳服膺」の類義語には、「銘肌鏤骨(めいきるこつ)」があります。意味は、深く心に刻み込んで忘れないことです。「銘肌」は肌に刻み込むこと、「鏤骨」は骨に刻み込むことを表しています。「肌に銘じ骨に鏤(きざ)む」と読み下すことができる表現です。

「覚えておく」や「身につける」ではなく「刻み込む」という意味合いであることから、意味の強さからすると非常に強いものであることがわかりますね。

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