この記事では「破れ鍋に綴じ蓋」について解説する。

端的に言えば「破れ鍋に綴じ蓋」の意味は「二人の相性がいいこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「破れ鍋に綴じ蓋」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「破れ鍋に綴じ蓋」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「破れ鍋に綴じ蓋(われなべにとじぶた)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「破れ鍋に綴じ蓋」の意味は?

「破れ鍋に綴じ蓋」には、次のような意味があります。

破損した鍋にもそれ相応の蓋があること。どんな人にも、それにふさわしい伴侶があることのたとえ。また、両者が似通った者どうしであることのたとえ。
[補説]「綴じ蓋」を「閉じ蓋」と書くのは誤り。「綴じる」は縫い合わせるの意で、「綴じ蓋」は修繕した蓋のこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「破れ鍋に綴じ蓋」

この言葉は、「二人が似た者同士であること」を意味する慣用表現です。特に夫婦に対して使うことが多く、「私たちは割れ鍋に綴じ蓋で~」などと言うことも。心からそう思って言っている場合は、配偶者への感謝や、ありがたいという気持ちが表れることでしょう。

ただし、「割れた鍋」などと例えているわけですから、物としては上等とは言い難いですよね。そのため、第三者が誰かに対して使うと失礼にも感じられてしまうかもしれません。自分で謙遜して言うのがベストな使い方でしょう。

また、気を付けたいのは漢字の表記。「破れ」を「やぶれ」と読んだり、「綴じ蓋」を「閉じ」とする間違いが頻出します。問題としても使われやすいポイントでしょうから、しっかり押さえましょう。

「破れ鍋に綴じ蓋」の語源は?

次に「破れ鍋に綴じ蓋」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、文字通り「割れた鍋」には「修理した蓋」が合う・丁度良い、という意味で使われるようになった例えの表現です。

鍋と蓋のどちらかがボロボロで、どちらかが新品だったりしたら、少しちぐはぐに感じますね。上手くセットになるものを見つけて物を長く大切に使おうとする、昔からの日本人の価値観が現れている表現とも言えそうです。

「割れ」「綴じ」という言葉が使われてはいますが、特別にその傷や欠点に注目しているわけではないこともポイント。人は何かしら完璧とは言いにくいところがあるのだから、それを理解して自分に合う人に出会えたことに感謝しなさい、という考えが背景にあるのかもしれません。

\次のページで「「破れ鍋に綴じ蓋」の使い方・例文」を解説!/

「破れ鍋に綴じ蓋」の使い方・例文

「破れ鍋に綴じ蓋」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・結婚なんて絶対無理と思っていた私だが、日頃からその気持ちに正直に生きていたら、割れ鍋に綴じ蓋で、同じ価値観の相手と結ばれることができた。

・喧嘩ばかりしているあの夫婦だが、相性はいいらしくすぐに仲直りしている。ああいうのを、割れ鍋に綴じ蓋というのだろう。

・せっかく先生にご紹介頂いたお見合いの機会でしたが、僕にはもったいなさ過ぎる方で、割れ鍋に綴じ蓋の相手を探そうと思います。

相性がいい、マッチしている」というイメージがつきますでしょうか。

基本的には人間二人の関係性について言われる言葉で、たとえばチームや団体など、片方が非人間であることはまずありません。「落ちこぼればかりのチームだったけれど、僕には割れ鍋に綴じ蓋でとても過ごしやすかった。」とは使いません。

また、先に述べた通り基本的には自身が謙遜して、あるいは自分の伴侶に対して感謝の意味を表す為に使うべき言葉です。「あなたたちは割れ鍋に綴じ蓋ですね」などと言うと、「それってどういう意味で言ってるの?」とカチンとされてしまうかも。

夫婦など深い関係になった二人だからこそ、欠点も受け入れることができるもの。第三者が簡単に口を出すと失礼に取られてしまいますね。使い方には注意が必要な表現です。

「破れ鍋に綴じ蓋」の類義語は?違いは?

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「破れ鍋に綴じ蓋」の類義語には「蓼(たで)食う虫も好き好き」があります。慣用表現でなければ、「似たもの夫婦」「似た者同士」と言ってもいいでしょう。

「蓼(たで)食う虫も好き好き」

「蓼食う虫も好き好き」は、「人の好みも様々である」という意味の慣用表現です。「蓼(たで)」とは、お刺身のツマなどにして食べることもある、独特の辛味がある植物のこと。

「そんなものを食べる虫もいるのだ」というニュアンスで、「相性がいい」ことよりも「そんな組み合わせがあるのか」ということに意味が寄っています。使い方によっては、「割れ鍋に綴じ蓋」よりも失礼な言い方になってしまうかもしれません。使用する際は気を付けましょう。

\次のページで「「破れ鍋に綴じ蓋」の対義語は?」を解説!/

まさか彼と彼女がくっつくなんて驚きだ。お互いに、蓼食う虫も好き好きだね。

「破れ鍋に綴じ蓋」の対義語は?

「破れ鍋に綴じ蓋」の対義語には、「月とすっぽん」などが考えられます。

「月とすっぽん」

「月とすっぽん」は、「二つのものに大きな差があること。まったく合っていないこと」を意味します。どちらも丸いところは同じなのに、それ以外は全くかけ離れているということから生まれた言葉です。

それだけ違っていても上手くいく関係というものもあるでしょうが、この表現を使う場合は「両者の違いが大きすぎる」という意味にスポットが当たることを押さえましょう。

箱入り娘のお嬢様で召使までいる彼女と、一般家庭で育った僕とでは月とすっぽんだ。

「破れ鍋に綴じ蓋」の英訳は?

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「破れ鍋に綴じ蓋」の英語訳は「Every Jack has his Jill」があります。

「Every Jack has his Jill」

「Every Jack has his Jill」は「どんな男にも、お似合いの女がいるものだ」という慣用表現です。

英語における「Jack(ジャック)」は一般的な男性を、「Jill(ジル)」は女性を指すのにも使われる単語。「ジャックと豆の木」など童話にも見ることができますね。もし知らない英語表現で「Jack」や「Jill」がいきなり登場したら、この可能性を疑ってみてもいいでしょう。

それにしても、英語圏でも同じ発想があるというのは、男女についての認識に共通しているものがあることがわかって面白いものですね。

\次のページで「「破れ鍋に綴じ蓋」を使いこなそう」を解説!/

Every Jack has his Jill, everyone was satisfied with their marriage.
割れ鍋に綴じ蓋ということで、彼らの結婚にはみんなが納得した。

「破れ鍋に綴じ蓋」を使いこなそう

この記事では「破れ鍋に綴じ蓋」の意味・使い方・類語などを説明しました。

傷を欠点と見るのか愛すべき点と見るのか、それだけで自身の夫婦観というものがわかってしまうような面白い言葉でした。

男女の関係、特に夫婦に関する言葉は調べてみると本当にたくさんあって驚きます。今も昔も、人々の関係というものは、考える必要のある重要な事柄だったのですね。

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【慣用句】「破れ鍋に綴じ蓋」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「破れ鍋に綴じ蓋」について解説する。

端的に言えば「破れ鍋に綴じ蓋」の意味は「二人の相性がいいこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「破れ鍋に綴じ蓋」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「破れ鍋に綴じ蓋」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「破れ鍋に綴じ蓋(われなべにとじぶた)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「破れ鍋に綴じ蓋」の意味は?

「破れ鍋に綴じ蓋」には、次のような意味があります。

破損した鍋にもそれ相応の蓋があること。どんな人にも、それにふさわしい伴侶があることのたとえ。また、両者が似通った者どうしであることのたとえ。
[補説]「綴じ蓋」を「閉じ蓋」と書くのは誤り。「綴じる」は縫い合わせるの意で、「綴じ蓋」は修繕した蓋のこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「破れ鍋に綴じ蓋」

この言葉は、「二人が似た者同士であること」を意味する慣用表現です。特に夫婦に対して使うことが多く、「私たちは割れ鍋に綴じ蓋で~」などと言うことも。心からそう思って言っている場合は、配偶者への感謝や、ありがたいという気持ちが表れることでしょう。

ただし、「割れた鍋」などと例えているわけですから、物としては上等とは言い難いですよね。そのため、第三者が誰かに対して使うと失礼にも感じられてしまうかもしれません。自分で謙遜して言うのがベストな使い方でしょう。

また、気を付けたいのは漢字の表記。「破れ」を「やぶれ」と読んだり、「綴じ蓋」を「閉じ」とする間違いが頻出します。問題としても使われやすいポイントでしょうから、しっかり押さえましょう。

「破れ鍋に綴じ蓋」の語源は?

次に「破れ鍋に綴じ蓋」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、文字通り「割れた鍋」には「修理した蓋」が合う・丁度良い、という意味で使われるようになった例えの表現です。

鍋と蓋のどちらかがボロボロで、どちらかが新品だったりしたら、少しちぐはぐに感じますね。上手くセットになるものを見つけて物を長く大切に使おうとする、昔からの日本人の価値観が現れている表現とも言えそうです。

「割れ」「綴じ」という言葉が使われてはいますが、特別にその傷や欠点に注目しているわけではないこともポイント。人は何かしら完璧とは言いにくいところがあるのだから、それを理解して自分に合う人に出会えたことに感謝しなさい、という考えが背景にあるのかもしれません。

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