今日は生徒たちにちょっと厳しい話をしました。最近どうもタルんでしまっている生徒が多く、「このままだと志望大学の問題に歯が立たなくなるぞ!」とキツメに言ったんです。ほとんどの生徒にはこちらの意図は伝わったと思いますが。ところで、あなたは「歯が立たない」という表現の意味は理解できていますね。

この「歯が立たない」は、簡単に言えば「立ち向かうことができない」という意味です。今回は、この「歯が立たない」について、院卒日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で働いている日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「歯が立たない」の意味や使い方は?

image by iStockphoto

「歯が立たない」という言葉、ドラマや小説などの物語の中でよく出てくる言葉ですよね。意味や使い方はしっかりと把握できていますか?把握できていない場合は、この記事を読んでマスターしましょう。まずは「歯が立たない」の意味や使い方を確認していきましょう。

「歯が立たない」の意味は「立ち向かうことができない」

最初に、「歯が立たない」の辞書での意味を確認していきましょう。「歯が立たない」は次のような意味が国語辞典に掲載されています。

1.固くてかめない。
2.力量の差がありすぎたり、程度が高すぎたりして、立ち向かうことができない。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「◆歯が立たな・い」

「歯が立たない」は「固くてかめない」「力量の差がありすぎたり、程度が高すぎたりして、立ち向かうことができない」という2つの意味を持つ表現です。1番目の表現が大元の意味で、比喩的に多用されるのが2つ目の意味ですね。この記事では2つ目の意味について解説していきます。

なお、この「歯が立たない」の「立つ」は、「とがったものが真っすぐ突き刺さる」という意味です。「立たない」ですので、「真っすぐ突き刺さらない」という意味になりますね。

「歯が立たない」の使い方を例文とともに確認!

続いて、「歯が立たない」の使い方を例文とともに確認していきましょう。「歯が立たない」は文末で使用されることが多い表現です。また、「全く」と共に使用されることも多いですね。

1.今日の自分は調子は良かったが、前回優勝校の打線相手には全く歯が立たなかった
2.受験勉強をサボって遊んでばかりいたせいで、滑り止めの大学の問題にも歯が立たなかった
3.織田軍は歯が立たないだろうと思われていたが、予想に反して今川軍を撃破した。(桶狭間の戦い)

例文1は野球の話ですね。「前回優勝校の打線相手に全く自身の力が通じず、打ち込まれてしまった」という文脈で、「歯が立たない」が使用されています。相手打線に「歯が立たなかった」ことから、たくさん打たれてしまったことが想像できますね。

例文2では、「滑り止めの大学の入試問題も全く分からなかった」という文脈で、「歯が立たない」が使用されています。「歯が立たない」が使用されていることで、ほとんどの問題が解けなかったことが想像できますね。

例文3は、戦国時代に織田信長が今川義元を撃破した、桶狭間の戦いについて言及した文です。織田軍の兵力や実力では、今川軍に敵うはずもなく飲み込まれてしまうだろう(つまり、「歯が立たないだろう」)…というのが戦前の大方の見方でした。しかし、織田軍は奇襲をかけ、大将である今川義元を討ち取りました。

\次のページで「「歯が立たない」の類義語は?」を解説!/

「歯が立たない」の類義語は?

image by iStockphoto

続いて、「歯が立たない」の類語語を確認しましょう。「歯が立たない」の類義語は「太刀打ちできない」「手も足も出ない」「手が出ない」「足下にも及ばない」です。意味などを確認し、「歯が立たない」と比較してみてください。

「太刀打ちできない」:まともに勝負することができない

「太刀打ちできない(たちうちできない)」は「まともに勝負することができない」という意味の表現です。実力や力量が相手よりもはるかに劣り、勝負にならないような場合に使用されます。よって、意味やニュアンスは「歯が立たない」と同じと言えますね。

「手も足も出ない」:力不足で手段が全てなくなる

「手も足も出ない」は「力不足で手段が全てなくなる」という意味の表現です。相手がいない事象に対しても使用可能ですが、相手がいる事象に対して用いる場合は、「相手よりもはるかに力量が劣るため、対抗できる手段がない」という意味を表します。こちらも「歯が立たない」とよく似ていますね。

「手が出ない」:自分の能力では力及ばず、使える手段がない

「手が出ない」は「自分の能力では力及ばず、使える手段がない」という意味の表現です。相手がいる事象については、「相手よりもはるかに力量が劣るため、対抗できる手段がない」という意味を表します。「歯が立たない」や「手も足も出ない」とよく似ていますね。

「手が出ない」はその他に、「自分の支払い能力では高すぎて購入することができない」という意味も持っています。

「足下にも及ばない」:相手が優れていて、とてもかなわない

「足下にも及ばない」は「相手が優れていて、とてもかなわない」という意味の表現です。相手の実力を評価するときによく用いられる表現ですね。相手に力が及ばない様子を表す点において、「歯が立たない」と共通していると言えるでしょう。

\次のページで「「歯が立たない」の英語表現は?」を解説!/

「歯が立たない」の英語表現は?

image by iStockphoto

最後に、「歯が立たない」の英語表現について見ていきましょう。「歯が立たない」の英語表現は「no match for」です。意味や例文を確認していきましょう。

「no match for ~」:~にかなわない

「no match for」は「~にかなわない」という意味の英語表現です。「~にかなわない」ということは、「~に対して力が及ばず、立ち向かうことができない」という意味にもつながります。実際、「歯が立たない」の翻訳表現として使用されていますね。例文を見てみましょう。

1.The enemy has 30,000 men and we have 1,000. This is no match for the enemy.
敵の兵力は3万。我らは1000人。これでは敵に歯が立たない

2.The entrance examinations of the University of Tokyo were so difficult that as I was no match for them.
東京大学の入試問題はあまりにも難しく、私は歯が立たなかった

相手に「歯が立たない」時は…

今回は「歯が立たない」について解説しました。「歯が立たない」は「力量の差がありすぎたり、程度が高すぎたりして、立ち向かうことができない」という意味で使用されることが多い表現です。相手に対して全く力が及ばないことを表します。

相手に対して歯が立たない…でも、勝ちたい、立ち向かいたい…!そのような時があると思います。入試や就活でもそのような場面があるかもしれませんね。必要なのは努力です。自分を信じて、悔いがなくなるまで努力しましょう。

" /> 何で“立たない”?「歯が立たない」の意味や類義語などを院卒日本語教師がわかりやすく解説 – Study-Z
国語言葉の意味

何で“立たない”?「歯が立たない」の意味や類義語などを院卒日本語教師がわかりやすく解説

今日は生徒たちにちょっと厳しい話をしました。最近どうもタルんでしまっている生徒が多く、「このままだと志望大学の問題に歯が立たなくなるぞ!」とキツメに言ったんです。ほとんどの生徒にはこちらの意図は伝わったと思いますが。ところで、あなたは「歯が立たない」という表現の意味は理解できていますね。

この「歯が立たない」は、簡単に言えば「立ち向かうことができない」という意味です。今回は、この「歯が立たない」について、院卒日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で働いている日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「歯が立たない」の意味や使い方は?

image by iStockphoto

「歯が立たない」という言葉、ドラマや小説などの物語の中でよく出てくる言葉ですよね。意味や使い方はしっかりと把握できていますか?把握できていない場合は、この記事を読んでマスターしましょう。まずは「歯が立たない」の意味や使い方を確認していきましょう。

「歯が立たない」の意味は「立ち向かうことができない」

最初に、「歯が立たない」の辞書での意味を確認していきましょう。「歯が立たない」は次のような意味が国語辞典に掲載されています。

1.固くてかめない。
2.力量の差がありすぎたり、程度が高すぎたりして、立ち向かうことができない。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「◆歯が立たな・い」

「歯が立たない」は「固くてかめない」「力量の差がありすぎたり、程度が高すぎたりして、立ち向かうことができない」という2つの意味を持つ表現です。1番目の表現が大元の意味で、比喩的に多用されるのが2つ目の意味ですね。この記事では2つ目の意味について解説していきます。

なお、この「歯が立たない」の「立つ」は、「とがったものが真っすぐ突き刺さる」という意味です。「立たない」ですので、「真っすぐ突き刺さらない」という意味になりますね。

「歯が立たない」の使い方を例文とともに確認!

続いて、「歯が立たない」の使い方を例文とともに確認していきましょう。「歯が立たない」は文末で使用されることが多い表現です。また、「全く」と共に使用されることも多いですね。

次のページを読む
1 2 3 4
Share: