この記事では「手を切る」という慣用句について解説する。

端的に言えば「手を切る」の意味は「関係を断つ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「手を切る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「手を切る」の意味や使い方のまとめ

image by iStockphoto

それでは早速「手を切る」の意味や使い方を見ていきましょう。この慣用句には、いったいどのような意味や用法があるのでしょうか。

「手を切る」の意味は?

まずは、国語辞典での定義から。「手を切る」には、次のような意味があります。

それまであった関係を断つ。縁を切る。

出典:大辞林(第三版)「手を切る」

「手を切る」といっても、実際に包丁かガラスの破片か何かで手指に切り傷をつくってしまうこととは異なります。ですから、もちろん傷口を消毒したり止血をしてガーゼを巻いておく必要もありません。

今回の「手を切る」という表現はあくまでも慣用句としてのそれであり、「手」というのはたとえに過ぎないからです。ここでいう「手」とは、人と人のつながり・結びつきのことを意味します。

ちょうど手をつないで、つまり協力して事にあたっている様子を想像してみてください。「手を切る」はそのような協力関係を終わらせるという意味があるのです。

「手を切る」の使い方・例文

「手を切る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「手を切る」の類義語は?違いは?」を解説!/

会社は今回長年付き合いのあった業者と手を切ったらしいのだが、末端の構成員である健太にはほとんど何の関係もない出来事だった。

彼女のことがそんなに大切ならば、早いとこ怪しげな業者とは手を切ってマルチまがいのビジネスをやめるよう忠告するのがいいだろうね。

いまだに著作権のことを無視したまま運営しているサイトなど危なっかしくて仕方ないので、早めに手を切ってしまって正解だと思うよ。

「手を切る」が関係を断つという意味であることは、すでに述べたとおりです。ただし、それは「相手が関係を保つにふさわしくない」という理由であることが多いように思われます。

たとえば、二番目と三番目の例文からはそのことがうかがえるのではないでしょうか。それぞれに「悪徳業者」「著作権のことを無視」というフレーズがあることからも、そのことは十分にうかがえます。

最初の例文には明記こそないものの、おそらくは同様の理由が背景にはあるはずです。契約満了など、いわゆる円満に業務提携を終える際には「手を切る」という表現はあまり使用されないと考えて差し支えありません。

#2 「手を切る」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

ところで、「手を切る」と意味のよく似た表現にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、その中でも代表的なものを二つほど紹介していきます。

「袂を分かつ」

「袂を分かつ(たもとをわかつ)」は、「手を切る」の類義語の中でもやや難しめの表現なのかもしれません。というのも、現代社会では「袂」というものにあまりなじみがないからです。

「袂」とは、ざっくりと上着の袖のあたりのことだと理解してください。その袖が触れ合うくらい親密に付き合っていた人と別れてしまうのが、この慣用句の持つ意味です。

「縁を切る」

「縁を切る」もまた、「手を切る」の類義語として十分に通用するものです。こちらの慣用句には、関係を断ち切るという意味があります。

それは「親子の縁」かもしれませんし、あるいは「友達の縁」かもしれません。いずれにしても、一度切れた縁を戻すのはなかなか難しそうです。

では、ここでこれらの類義語を用いた例文をチェックしておきましょう。

\次のページで「「手を切る」の対義語は?」を解説!/

子どもたちにも人気の情報番組ではあったが、どういうわけか制作会社がテレビ局と袂を分かってしまい、春からは打ち切られることになった。

多少苦労もして危険な目にもあったが、これで以前から存在価値を疑っていた某コミュニティとはきれいさっぱり縁を切ることができそうだ。

#3 「手を切る」の対義語は?

image by iStockphoto

では、「手を切る」の対義語は一体どのようにとらえればよいのでしょうか。関係を断つことの反対は、関係を持つことにほかなりません。

ここでは、そのような意味を持つ慣用句を二つほどチェックしていきます。

「手を結ぶ」

「手を結ぶ」は、「手を切る」の対義語の中ではもっともよく使われるものでしょう。人間関係を「ひも」や「糸」にたとえるならば、それを切れば関係はなくなりますし、それを結べば関係を築くことになりますよね。

また、「手を結ぶ」は当然ながら「握手」を連想させることばです。このことからも、非常に意味のとらえやすい慣用句だといえるのではないでしょうか。

「スクラムを組む」

「スクラムを組む」もまた、「手を切る」の対義語として十分に通用するものです。ここに出てくる「スクラム」とは、ラグビーの用語で選手が密集して隊形を組むことをいいます。

この慣用句中にある「スクラム」はたとえとして使われているといえるでしょう。実際にラグビーをしているわけではなく、みんなで集まって力を合わせて前進するという意味合いだけを使用していますので。

では、ここでこれらの対義語を用いた例文も忘れずにチェックしておきましょうね。

あなたがオススメするサイトの過去ログを見せてもらったが、どうやら私どもが手を結ぶ相手としてはあまりふさわしくないようです。

時代の最先端をいく我々が多少の利害には目をつぶりがっちりとスクラムを組んでこそ、この国難ともいえる難局を乗り切れるのですよ。

#4 「手を切る」の英訳は?

image by iStockphoto

最後に「手を切る」の英語訳についても忘れずにチェックしておきましょう。この慣用句は、英語でどのように表現すればいいのでしょうか。

\次のページで「「cut one's connection with ~」」を解説!/

「cut one's connection with ~」

「cut one's connection with ~」は、「~と手を切る」の表す意味をもっとも忠実に英訳したものかもしれません。なぜならば、このフレーズを直訳すると「~と関係を断ち切る」になるからです。

日本語ではこの「関係」を「手」と表現しましたが、英語では「connection」と直接的な表現を使っています。

「break away with ~」

「break away with ~」もまた、「手を切る」の英語訳として十分に通用するものです。こちらも直訳すると、「~との関係を断ち切る」となります。

「break away」という句動詞には、他にも「千切れる」や「離反する」といった意味合いもあるので押さえておきましょう。

「手を切る」を使いこなそう

この記事では「手を切る」の意味・使い方・類語などを説明しました。この慣用句には、「関係を断つ」という意味がありましたね。

人間はけっして独りでは生きていけない存在です。つまり、そこにはかならず人間関係というものが生じます。

良好な関係ばかりを築けるならばいいのですが、世の中そんなに甘くはありません。悪い関係だと気づいた時点で、相手を手を切る勇気をもつことも大切でしょう。

さて、今回の解説はいかがだったでしょうか。みなさんもこの慣用句を使う機会に恵まれたら、臆せずにどんどん使ってみてくださいね。

" /> 【慣用句】「手を切る」の意味や使い方は?例文や類語も含めて現役文系講師が詳しくわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「手を切る」の意味や使い方は?例文や類語も含めて現役文系講師が詳しくわかりやすく解説!

この記事では「手を切る」という慣用句について解説する。

端的に言えば「手を切る」の意味は「関係を断つ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「手を切る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「手を切る」の意味や使い方のまとめ

image by iStockphoto

それでは早速「手を切る」の意味や使い方を見ていきましょう。この慣用句には、いったいどのような意味や用法があるのでしょうか。

「手を切る」の意味は?

まずは、国語辞典での定義から。「手を切る」には、次のような意味があります。

それまであった関係を断つ。縁を切る。

出典:大辞林(第三版)「手を切る」

「手を切る」といっても、実際に包丁かガラスの破片か何かで手指に切り傷をつくってしまうこととは異なります。ですから、もちろん傷口を消毒したり止血をしてガーゼを巻いておく必要もありません。

今回の「手を切る」という表現はあくまでも慣用句としてのそれであり、「手」というのはたとえに過ぎないからです。ここでいう「手」とは、人と人のつながり・結びつきのことを意味します。

ちょうど手をつないで、つまり協力して事にあたっている様子を想像してみてください。「手を切る」はそのような協力関係を終わらせるという意味があるのです。

「手を切る」の使い方・例文

「手を切る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「手を切る」の類義語は?違いは?」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: