熱力学物理理科

5分で簡単に分かる「エンタルピー」エントロピーとの違いや内部エネルギー・状態量も理系ライターがわかりやすく解説

よぉ、桜木建二だ。エントロピーとよく似ているけれど別モノのエンタルピー。日本語では熱含量(ねつがんりょう)とも呼ばれ単位は熱量と同じく[ジュール、J]を使う。意味としては含熱量という文字通り気体物質が含んでいる正味の熱量と考えてよい。空気湿り線図からエンタルピーを求めることもある。さて、このエンタルピーを用いるメリットについて理系ライターのR175と解説していこう。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の教員免許も持ち。ほぼ全てのジャンルで専門知識がない代わりに初心者に分かりやすい解説を強みとする。

1.熱量の出入りとエンタルピー

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熱力学第一法則によると気体に与えられた熱量は内部エネルギーの変化と外部への仕事とに分かれるもの。エンタルピーを用いる意義はエネルギーの収支を表したこの関係式を状態量のみで表示出来る点にあります。これについて順を追って見ていきましょう。

エントロピーとは全く別物

まず最初に、エンタルピーと似た用語にエントロピーがありますが、こちらは全くの別物。エンタルピーの語源はギリシア語で内部を表す(en)+を表す(thalp)。エントロピーは内部を表す(en)+変化を表す(trope)。本記事ではエンタルピーの解説を進めます。

エンタルピーの解釈

エンタルピーは直訳すると、内部の熱。また、エンタルピーは熱含量とも呼ばれています。内部という言葉が入っていますがエンタルピーは後述する内部エネルギーとは別物です。ここではざっくり気体が持つ「トータルの熱量とイメージしておきましょう。

熱力学第一法則

熱力学第一法則

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エネルギー収支を表す関係式です。気体に与えたエネルギー=内部エネルギー+気体が外にする仕事という形です(以下)。エネルギーが与えられたら内部に蓄える分外に還元する分とに分かれるわけです。

内部エネルギーとは?

内部エネルギーとは?

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気体分子が持つ力学的エネルギーのこと。具体的には運動エネルギーと位置エネルギーの総和です。運動エネルギーが大きいほど温度が高いので、内部エネルギーが大きい=温度が高いとイメージしましょう。

ちなみに、位置エネルギーは分子間力によるもの。分子間に相互作用があれば位置によっての大きさが異なってくるのです。理想気体では分子間力を無視するため、内部エネルギーがそのまま運動エネルギーとなり、内部エネルギーは温度に比例します。

気体がする仕事

気体がその場にある限り、ある圧力で周囲に力をかけて押しのけていて、その状態で膨張すれば周囲に仕事を加えたことになります。

例えば圧力P、表面積S、体積Vの気体が圧力Pを保ったまま体積がΔVだけ増えて膨張したとしましょう。気体から周囲に働く力はPS気体の形を球形だとすると、Δrだけ押すので仕事はPSΔrここでSΔrはΔVに相当するので、気体が周囲にする仕事はPΔVとなります。仮に、気体が球形ではないとしても、表面積×押した距離は体積変化ΔVを表すので、気体膨張で周囲にする仕事はPΔVです。

因みに、圧力Pが一定で気体が圧縮される場合は体積変化ΔVが負の値となるため気体が周囲にする仕事も負の値(周囲から気体仕事される)となります。

経路により異なる

経路により異なる

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気体が周囲にする仕事ですが、これは経路により異なります経路とは?例えば圧力P1、体積V1の気体を圧力P2、体積V2にするまで途中どのように圧力、体積等を変えたかということ。

前述では圧力一定条件で考えましたがそうでない場合、気体が周囲にする仕事はどうなるか?仕事は圧力Pを体積で積分した値、グラフで塗りつぶしたエリアの面積となります。縦がP、横がΔVの無数の小さな長方形の面積を足し合わせたものです。圧力一定であれば仕事はPΔVですが、途中で圧力を変化させていれば異なる値に。

仕事をした後の気体の圧力や体積、温度を測定したところで途中の経路が分からないと仕事Wはいくらか分かりませんね。

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お馴染みの式、熱力学第一法則に出てくる気体が「外部にした仕事」が状態量ではない。どんな変化を辿ってきたのか経路によって値が変わってしまうため、気体の「今測れる」物性値(圧力、温度、体積など)を測ったところで式を書くことが出来ない。ところで、そもそも状態量とは何なのか?

2.状態量

状態量とは気体が辿ってきた変化に関わらないパラメータ。例えば温度、圧力、体積、質量などこれらの数値は気体がどんな変化を辿ってきたかに関わらず、今現在圧力P2、体積V2であれば経路によって違う値になることはありません。

内部エネルギーは状態量?

内部エネルギーは分子の運動エネルギーと位置エネルギーの総和。関係するのは質量と速度と変位。これらは経路に関わらず同じなので状態量であり、その組み合わせで表される内部エネルギーも状態量です。

 

\次のページで「理想気体の内部エネルギー」を解説!/

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