この記事では「虚虚実実」について解説する。

端的に言えば「虚虚実実」の意味は「技を尽くして戦う様子のこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「虚虚実実」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「虚虚実実」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「虚虚実実(きょきょじつじつ)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「虚虚実実」の意味は?

「虚虚実実」には、次のような意味があります。

《「虚」は備えにすきがあり、「実」は備えが堅い意》相手の備えの堅いところを避け、すきをねらい、互いに計略や秘術の限りを尽くして戦うこと。虚実。「虚虚実実の駆け引き」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「虚虚実実」

この言葉は、「計略や技を尽くして戦うこと」の意味を持つ四字熟語です。この漢字からどうしてそんな意味に?と思うかもしれませんね。まずはそれぞれの漢字の意味を確認してみましょう。

「虚」は「虚構(きょこう)」「虚空(こくう)」という言葉あるように、「いつわり、むなしい」という意味があります。「実」は「実体(じったい)」「実物(じつぶつ)」と、「たしかな、まことな」という意味です。

戦いの際、この「虚=隙のある箇所」を狙い、「実=守りの堅いところ」を避けるというのは、納得できる戦術だと思います。このように狙いを定め、見極めて戦うことから、「手の限りを尽くして戦う」という意味で使われるようになったのです。

「虚虚実実」の語源は?

次に「虚虚実実」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、紀元前500年頃の中国の兵法書『孫子』にみることができます。

そこにあるのが「兵の形は実を避けて虚を撃つ」という記述で、「(相手の)兵力が充実している所を避け、隙がある所を攻撃するのだ」という教え。ここから「虚実(きょじつ)」という言葉が生まれ、「虚虚実実」はこれを強めた言い方なのです。

「相手の弱いところを狙え」なんて当たり前、と思うかもしれませんが、この記述の直前に「水は高いところを避けて低い方へ流れていく(ように~)」とも書かれていて、これが基本的な考え方であることが示されています。そんな紀元前の教えが、現代にも通じるものだと考えたら驚きではないでしょうか。

\次のページで「「虚虚実実」の使い方・例文」を解説!/

「虚虚実実」の使い方・例文

「虚虚実実」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・「虚虚実実」というタイトルのオープニングテーマのアニメがあったが、その作品の中でも虚虚実実のバトルが披露されていた。

・商品開発と発売にあたって、A社とB社の間では、CMで使うタレントの起用からマスコミへの情報開示など、虚虚実実のかけひきが行われている。

・わたしは野球の事なんて全然わからないけれど、リトルリーグの監督をしている父に言わせると、虚虚実実の試合が多くて全く退屈しないらしい。

手を尽くして戦うこと、またその勝負ごと」というイメージが付くでしょうか。

調べてみても「虚虚実実の駆け引き・攻防」といった用例が多くみられます。健全なスポーツの試合などに使えば、その勝負に対する敬意や、面白く思う気持ちが含まれるでしょう。どんな戦いが繰り広げられているのか、ちょっと興味が湧きますね。

一方で「手や技を尽くして戦う」のですから、たとえば子供の喧嘩などは激しかったとしても、これは「虚虚実実」とは呼べないでしょう。もともとが兵法書から生まれた言葉であることを思い出して、プロ同士が専門的な領域で競い合うイメージを忘れないでくださいね。

正誤問題などで、正しい使われ方をしているかどうか判断させられることがあるかもしれませんよ。

「虚虚実実」の類義語は?違いは?

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「虚虚実実」の類義語は、「権謀術数(けんぼうじゅっすう」「手練手管(てれんてくだ)」などが考えられます。

「権謀術数」「手練手管」

「権謀術数」は「巧みに人を欺いて、だますこと」。「謀る(はかる=だます)」という漢字が使われていることからも、意味が想像できるでしょう。

「手練手管」は「人を操ったりごまかすこと、その技」。「手練」と「手管」は同じ意味で、言葉を重ねて強調したものがこの四字熟語です。「手練手管」自体には「巧みな、上手な」という意味はありませんが、この言葉が使われる場合はまずその腕前を評価しています。

どちらも「だます、操る」といったネガティブなニュアンスがありますが、それが上手過ぎて、ある種の尊敬を集めてしまう部分もあるのかもしれません。また、両方とも読み書き問題として頻出です。しっかり押さえてくださいね。

\次のページで「「虚虚実実」の対義語は?」を解説!/

・新しく当選した役員の権謀術数によって、会社の初期メンバーのほとんどが辞めさせられ会社乗っ取りの危機となった。

・相手チームの新監督の手練手管に長けた戦術で、うちのチームは成す術もなくやられてしまった。

「虚虚実実」の対義語は?

「虚虚実実」の対義語には「平凡陳腐(へいぼんちんぷ)」などが考えられます。

「平凡陳腐」

「平凡陳腐」は「特に優れたところもなく、面白みもないこと」。たとえばスポーツなどの勝負ごとに対して使うと「全く駆け引きもなくて、見どころもない試合」というイメージになり、「虚虚実実」の対義語として使えるでしょう。

プロの技を見に来ているのに見どころがなくてガッカリという、期待を裏切られたニュアンスも感じられる表現になりますね。

選手の覇気があがらなかったのか、試合は平凡陳腐な展開が続いて観客は呆れて帰ってしまった。

「虚虚実実」の英訳は?

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「虚虚実実」の英語訳は「use shrewd tactics」がいいでしょう。

「use shrewd tactics」

これは直訳すれば「巧みな(shrewd)戦術(tactics)を用いる」。「shrewd」はやや難しい単語ですが「やり手な、意地の悪い」といった意味も持つ形容詞です。

文脈によって良い・悪いのニュアンスは変化しますが、どちらにも使えるため便利なフレーズになります。日本語訳する場合は、類義語でご紹介した「権謀術数」「手練手管」などと入れ替えても良いでしょう。

\次のページで「「虚虚実実」を使いこなそう」を解説!/

He used shrewd tactics to quit many unfavorable opponents.
彼は虚虚実実の方法で、多くの気に入らない相手を辞めさせた。

「虚虚実実」を使いこなそう

この記事では「虚虚実実」の意味・使い方・類語などを説明しました。

紀元前の兵法書で使われていた戦術指南の言葉が、現代でも様々に使われていることがわかりました。時代は変わって複雑な知識が必要となった今でも、戦いの基本は変わっていないのかもしれません。

自分の弱いところ、強いところを把握して、鍛えていくのも大切かもしれませんね。

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【四字熟語】「虚虚実実」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「虚虚実実」について解説する。

端的に言えば「虚虚実実」の意味は「技を尽くして戦う様子のこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「虚虚実実」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「虚虚実実」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「虚虚実実(きょきょじつじつ)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「虚虚実実」の意味は?

「虚虚実実」には、次のような意味があります。

《「虚」は備えにすきがあり、「実」は備えが堅い意》相手の備えの堅いところを避け、すきをねらい、互いに計略や秘術の限りを尽くして戦うこと。虚実。「虚虚実実の駆け引き」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「虚虚実実」

この言葉は、「計略や技を尽くして戦うこと」の意味を持つ四字熟語です。この漢字からどうしてそんな意味に?と思うかもしれませんね。まずはそれぞれの漢字の意味を確認してみましょう。

「虚」は「虚構(きょこう)」「虚空(こくう)」という言葉あるように、「いつわり、むなしい」という意味があります。「実」は「実体(じったい)」「実物(じつぶつ)」と、「たしかな、まことな」という意味です。

戦いの際、この「虚=隙のある箇所」を狙い、「実=守りの堅いところ」を避けるというのは、納得できる戦術だと思います。このように狙いを定め、見極めて戦うことから、「手の限りを尽くして戦う」という意味で使われるようになったのです。

「虚虚実実」の語源は?

次に「虚虚実実」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、紀元前500年頃の中国の兵法書『孫子』にみることができます。

そこにあるのが「兵の形は実を避けて虚を撃つ」という記述で、「(相手の)兵力が充実している所を避け、隙がある所を攻撃するのだ」という教え。ここから「虚実(きょじつ)」という言葉が生まれ、「虚虚実実」はこれを強めた言い方なのです。

「相手の弱いところを狙え」なんて当たり前、と思うかもしれませんが、この記述の直前に「水は高いところを避けて低い方へ流れていく(ように~)」とも書かれていて、これが基本的な考え方であることが示されています。そんな紀元前の教えが、現代にも通じるものだと考えたら驚きではないでしょうか。

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