この記事では「斎戒沐浴」について解説する。

端的に言えば斎戒沐浴の意味は「飲食や行動を慎んで、体を洗って心身の汚れを取ること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「斎戒沐浴」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「斎戒沐浴」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「斎戒沐浴」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「さいかいもくよく」です。独特の意味合いがあるので、意味だけでなく語源にも注目していきますよ。

「斎戒沐浴」の意味は?

「斎戒沐浴」には、次のような意味があります。まずは辞書の意味をつかんでから、漢字一文字ずつの意味まで確認していきましょう。

1.神仏に祈ったり神聖な仕事に従事したりする前に、飲食や行動を慎み、水を浴びて心身を清めること。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「斎戒沐浴」

「斎戒」は物忌みをすることや神を祀るときに心身を清めて汚れを取り去ること、「沐浴」は髪やからだを湯水で洗い清めることを表しています。

神聖な儀式の前にあたって、行動を慎みながら心を整え、飲食を慎みながら体の中を清めて、湯水で自らの体の外も清めるということです。

身近な例でいうと、神社に参拝する前に手水で手をきれいにすることがあります。学校などで教育として受けていなくても、知識一般的な教養として知っている人は多いのではないでしょうか。

「斎戒沐浴」の語源は?

次に「斎戒沐浴」の語源を確認しておきましょう。

「斎戒沐浴」は、中国の戦国時代に著された『孟子(もうし)』の離婁(りろう)下に由来します。孟子は儒教においては論語(ろんご)で知られる孔子(こうし)に次ぐ存在とされており、孟子の言行をまとめたものが『孟子』です。

その中の孟子の言葉に、「どんな不器量な人であっても、斎戒沐浴して心身を清めていたなら、上帝(じょうてい、最高の神のこと)であってもその人のお祀りを快くうけてくださる」とあります。容姿は関係なく、心と体を清めることで安心して祀りをうけていただけるということですね。

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「斎戒沐浴」の使い方・例文

「斎戒沐浴」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。文法的な面から見た使い方もチェックしていきますよ。

1.資格取得のための大切な試験の前には、斎戒沐浴の気持ちで心を落ち着かせることが大切だ。
2.ついに当店の営業再開の日を迎えた。お客様に満足していただきながら事業を継続できるよう願って斎戒沐浴したところだ。

例文1.では、大切な試験に向けて、雑念を振り払う意味でも神仏に向かうような気持ちで心を落ち着かせて臨むといいということを表しています。例文の2.のほうは、営業再開という新たなスタートにあたって、気持も新たにしたいということを表現した文です。

文法的に見てみると、「斎戒沐浴の…」という名詞としての使い方と「斎戒沐浴した…」という動詞化した使い方をしています。いずれも一般的な使い方です。

「斎戒沐浴」の類義語は?違いは?

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それでは、「斎戒沐浴」の類義語についての説明です。「斎戒沐浴」に近い意味の四字熟語がいくつかあるので、一緒に見ていきましょう。

「沐浴杼溷」

「斎戒沐浴」の類義語には、「沐浴杼溷(もくよくじょこん)」があります。意味は、髪やからだを洗って身を清めて汚れを取り払うことです。「沐浴」は湯水を使ってからだを洗い清めること、「杼溷」は「杼」のすくい出すという意味と「溷」の汚れの意味で、汚れを取り除くことを表しています。

神聖な儀式などのために汚れを取りからだを清めるという意味があるので、「斎戒沐浴」とは非常に近い意味になっていますよ。

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「精進潔斎」

もう一つの類義語には、「精進潔斎(しょうじんけっさい)」があります。酒や肉食を断って行いを慎んで身を清めることという意味です。「精進」は仏道を修行することから肉や酒を口にせず心身を清めて不浄を避けることという意味につながっており、「潔斎」は心身を清めて欲望を慎むことを表していますよ。

もともとは継続的に修行する者に対する言葉であったものから転じており、飲食を慎み心身を清めるのは一定期間のうちのことになります。

「斎戒沐浴」の対義語は?

次に、「斎戒沐浴」の対義語についての説明です。「斎戒沐浴」に対してということなので、汚れているという四字熟語について詳しく見ていきましょう。

「蓬頭垢面」

「斎戒沐浴」の対義語には、「蓬頭垢面(ほうとうこうめん)」があります。意味は、身だしなみに無頓着でありむさくるしいようすのことです。「蓬頭」は蓬(よもぎ)のような形をしたボサボサの髪のようすのこと、「垢面」は垢まみれの顔のことを表しています。

蓬のような頭というのはイメージしづらいかもしれませんが、他にも「蓬頭乱髪(ほうとうらんぱつ)」という髪がボサボサであるようすを表す表現がありますよ。

「囚首喪面」

もう一つの対義語には、「囚首喪面(しゅうしゅそうめん)」があります。顔かたちを飾らないなど容姿を気に留めないことという意味です。「囚首」は囚人のように梳(と)かしたり整えられていない髪のこと、「喪面」は喪中の人が顔を洗わないことから汚れた顔のことを表しています。

実際は囚人でもなく喪中でもないわけですが、客観的な見た目のようすのことを表す四字熟語です。心身を清める「斎戒沐浴」とは反対の意味になっています。

「斎戒沐浴」の英訳は?

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最後に、「斎戒沐浴」の英訳についての説明です。言語の違いもあるので、特別な表現よりもわかりやすく正しく情報が伝わる英訳について見ていきましょう。

「having a ceremonial wash」

「斎戒沐浴」の英訳には、「having a ceremonial wash」があります。直訳すると「儀式的な沐浴をすること」です。「ceremonial」は「儀式的な」という意味を表す形容詞で、名詞の「ceremony(儀式、式典、儀礼)」と関連する英単語となっています。

他に近い意味を表す表現は、宗教的な沐浴を意味する「ablution」という単語です。「having a ceremonial wash」と比べると頻度の少ない表現ですが、正確に意味を荒らすことができます。

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「斎戒沐浴」を使いこなそう

今回の記事では「斎戒沐浴」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「斎戒沐浴」の基本の意味は、神聖な儀式などの前に飲食や行動を慎んで心身を清らかにするということです。「斎戒」については、「物忌(ものい)み」と言い換えられることもあり、ある期間に日常的な行為をひかえることという意味もあります。酒や肉をひかえるのも一つですが、地域によって文化が違いさまざまな行為や食べ物を禁止していることがあるので注意が必要です。

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国語言葉の意味

【四字熟語】「斎戒沐浴」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

「斎戒沐浴」の使い方・例文

「斎戒沐浴」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。文法的な面から見た使い方もチェックしていきますよ。

1.資格取得のための大切な試験の前には、斎戒沐浴の気持ちで心を落ち着かせることが大切だ。
2.ついに当店の営業再開の日を迎えた。お客様に満足していただきながら事業を継続できるよう願って斎戒沐浴したところだ。

例文1.では、大切な試験に向けて、雑念を振り払う意味でも神仏に向かうような気持ちで心を落ち着かせて臨むといいということを表しています。例文の2.のほうは、営業再開という新たなスタートにあたって、気持も新たにしたいということを表現した文です。

文法的に見てみると、「斎戒沐浴の…」という名詞としての使い方と「斎戒沐浴した…」という動詞化した使い方をしています。いずれも一般的な使い方です。

「斎戒沐浴」の類義語は?違いは?

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それでは、「斎戒沐浴」の類義語についての説明です。「斎戒沐浴」に近い意味の四字熟語がいくつかあるので、一緒に見ていきましょう。

「沐浴杼溷」

「斎戒沐浴」の類義語には、「沐浴杼溷(もくよくじょこん)」があります。意味は、髪やからだを洗って身を清めて汚れを取り払うことです。「沐浴」は湯水を使ってからだを洗い清めること、「杼溷」は「杼」のすくい出すという意味と「溷」の汚れの意味で、汚れを取り除くことを表しています。

神聖な儀式などのために汚れを取りからだを清めるという意味があるので、「斎戒沐浴」とは非常に近い意味になっていますよ。

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