この記事では「玩物喪志」について解説する。

端的に言えば玩物喪志の意味は「無用なものを過度に愛玩してしまい、本来の志を見失ってしまうこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「玩物喪志」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「玩物喪志」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「玩物喪志」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「がんぶつそうし」です。正確な意味を確認したあとに、語源や使い方など詳しいところまでチェックしていきますよ。

「玩物喪志」の意味は?

「玩物喪志」には、次のような意味があります。まずは、辞書の意味を確認してから、四字熟語の漢字それぞれの意味までチェックしていきましょう。

1.珍しいもの、風変わりなものをもてあそんで、本来の志を見失ってしまうこと。また、無用のものに熱中して、仕事や学業が疎かになること。

出典:四字熟語辞典(学研)「玩物喪志」

「玩物」はくだらないものでもてあそぶこと、「喪志」は志を失うことを表しており、「物を玩(もてあそ)べば心を喪(うしな)う」と訓読します。

そこから、くだらないものや変わったものなどの些末なことが気になってしまって、本当に大切なことや本質から遠ざかったままになってしまうという意味につながっていますよ。

「玩物喪志」の語源は?

次に「玩物喪志」の語源を確認しておきましょう。

「玩物喪志」は、中国の古典『書経(しょきょう)』の旅獒(りょごう)篇に由来します。『書経』とは儒教の経典として重要とされている五経のうちの一つで孔子による編纂と言われており、古代の君臣の言行の記録がまとまられたものです。

そこには、周の武王(ぶおう)が殷(いん)を滅ぼしたあとに、旅という国から獒という大きな犬を献上されたことが書かれています。貢物として獒を手に入れた武王が喜んで政治がおろそかになってしまうと、補佐官の召公(しょうこう)が「人を玩べば徳を喪い、物を玩べば志を喪う。」と諌めたということです。

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「玩物喪志」の使い方・例文

「玩物喪志」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。文法的な使い方についても、あわせてチェックしていきますよ。

1.プラモデルに夢中で勉強がすすまないようなら、それは玩物喪志というものだ。
2.人間はみんな趣味も興味もあるものなので、玩物喪志にならないよう意識が必要である。

例文1.は、趣味に夢中になりすぎて本来すべきことがおろそかになるようではいけないという意味になっています。例文の2.のほうは、人は誰でも趣味のほか興味や関心を持っているので、自分の志に影響しないように注意することが必要であるという文です。

文法的に見てみると、例文1.は「玩物喪志と…」、例文2.では「玩物喪志に…」と、いずれも四字熟語を名詞のカタマリとして使っています

「玩物喪志」の類義語は?違いは?

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それでは、「玩物喪志」の類義語についての説明です。近い意味合いやニュアンスを含む四字熟語について、いくつか一緒に見ていきましょう。

「釈根灌枝」

「玩物喪志」の類義語には、「釈根灌枝(しゃくこんかんし)」があります。意味は、些細なことにこだわりすぎて物ごとの基本を忘れてしまうことです。「釈」は捨てるということ、「灌」は水を注ぐということで、「根を釈(す)てて枝に灌(そそ)ぐ」と読み下します。

木の根に水をやらないで枝に水を注ぐことから、末節が気になり根本を忘れるという意味合いにつながっている表現です。「玩物喪志」とは非常に近い意味になっていますね。

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「舎本逐末」

もう一つの類義語には、「舎本逐末(しゃほんちくまつ)」があります。いちばん大事なことをおろそかにして、些細なことばかりに気を配ることという意味です。「舎」は捨てること、「本」は根本のこと、「逐末」はつまらないものを追い求めるということを表しています。

「玩物喪志」や「釈根灌枝」は具体的な場面を四字熟語にしたものですが、「舎本逐末」はやや抽象的な表現による四字熟語となっていますが、意味としてはほぼ同じです。

「玩物喪志」の対義語は?

次に、「玩物喪志」の対義語についての説明です。本来の志を見失うのが「玩物喪志」なので、対義語としては本来の志や本質を大切にするという意味合いの四字熟語を見ていきましょう。

「格物致知」

「玩物喪志」の対義語には、「格物致知(かくぶつちち)」があります。意味は、物事の本質をよく理解して知識を深めることです。「格物」は物ごとを極限まで突き詰めていくこと、「致知」は知識を極めることを表していますよ。

儒教の教書である『大学』に由来し、宋の朱熹(しゅき)は自己の知識を最大限に広げるためには客観的な事物に即して道理を極めることが先決だと解釈しています。

「牝牡驪黄」

もう一つの対義語には、「牝牡驪黄(ひんぼりこう)」があります。物ごとは、外見にとらわれず本質を見抜くことが大切であるという意味です。「牝牡」はおすとめすのこと、「驪黄」は黒と黄のことを表しています。

由来は中国戦国時代の道家の書である『列子(れっし)』です。名馬を探しに行かせたところ、連れてきた馬が性別も色も指定と違うことから憤りますが、十分な能力を持つ名馬であったため能力で判断すべきだと諌められた話があります。

「玩物喪志」の英訳は?

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最後に、「玩物喪志」の英訳についての説明です。「玩物喪志」の基本の意味が伝わるような英語表現について、一緒に見ていきましょう。

「forgetting one's serious objectives by becoming engrossed in trivial pursuits」

「玩物喪志」の英訳には、「forgetting one's serious objectives by becoming engrossed in trivial pursuits」があります。直訳すると「些細なことに夢中になって本来の目的を忘れること」です

「engrossed」は「夢中になって、熱中して」、「trivial」は「ささいな、つまらない」、「pursuits」には「追跡、追求、仕事、研究、趣味、すること」といった意味があります。

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「玩物喪志」を使いこなそう

今回の記事では「玩物喪志」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「玩物喪志」の基本の意味は、無用のものに熱中するあまり仕事や学業が疎かになることです。古代に生まれた言葉ですが、勉強しようと思っていながら気がつけば違うことをしていたなど、現代でもよくある話ですね。

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国語言葉の意味

【四字熟語】「玩物喪志」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

「玩物喪志」の使い方・例文

「玩物喪志」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。文法的な使い方についても、あわせてチェックしていきますよ。

1.プラモデルに夢中で勉強がすすまないようなら、それは玩物喪志というものだ。
2.人間はみんな趣味も興味もあるものなので、玩物喪志にならないよう意識が必要である。

例文1.は、趣味に夢中になりすぎて本来すべきことがおろそかになるようではいけないという意味になっています。例文の2.のほうは、人は誰でも趣味のほか興味や関心を持っているので、自分の志に影響しないように注意することが必要であるという文です。

文法的に見てみると、例文1.は「玩物喪志と…」、例文2.では「玩物喪志に…」と、いずれも四字熟語を名詞のカタマリとして使っています

「玩物喪志」の類義語は?違いは?

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それでは、「玩物喪志」の類義語についての説明です。近い意味合いやニュアンスを含む四字熟語について、いくつか一緒に見ていきましょう。

「釈根灌枝」

「玩物喪志」の類義語には、「釈根灌枝(しゃくこんかんし)」があります。意味は、些細なことにこだわりすぎて物ごとの基本を忘れてしまうことです。「釈」は捨てるということ、「灌」は水を注ぐということで、「根を釈(す)てて枝に灌(そそ)ぐ」と読み下します。

木の根に水をやらないで枝に水を注ぐことから、末節が気になり根本を忘れるという意味合いにつながっている表現です。「玩物喪志」とは非常に近い意味になっていますね。

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