物理物理学・力学理科

5分で分かる「熱平衡」どうして平衡状態になるの?力学的エネルギーに着目して理系ライターがわかりやすく解説

よぉ、桜木建二だ。温かい物と冷たい物をくっつけておくとどちらも同じくらいの温度になるよな。冷たいコーヒーやお茶もずっと握っていると体温と同程度の温度になってしまう。これは温度が高い方から低い方に移動する性質があるためだ。

採取的にどちはも同じくらいの温度になり「見かけ上」熱の移動がなくなる状態が熱平衡。そもそもなぜ温かい方から冷たい方に熱が移動しようとするのか?力学的エネルギーに着目しながら理系ライターのR175と解説していく。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の教員免許も持っている。技術者の経験があり、教科書の内容では終わらず身近な現象と関連付けての説明を心掛ける。

1.熱の移動と熱平衡

image by iStockphoto

熱の移動は2物体間の温度差or温度勾配により発生するもの。熱の移動は熱伝導、熱伝達、輻射断熱の3パターンがありますが、ここでは熱伝導を例に熱の移動について触れておきましょう。

熱の移動〜熱伝導〜

熱の移動〜熱伝導〜

image by Study-Z編集部

熱伝導は主に固体で起きる熱の移動。物体は動かず熱だけ移動するのでイメージしやすいかもしれませんね。さて、温度が高い(Th)領域低い(Tl)領域があり、領域間の距離をhとしましょう。熱は温度が高い方から低い方に移動するものであり、面積当たりの熱の通過量は温度勾配に比例します。温度勾配とは温度差を距離で割ったもので、一定距離当たりどれだけ温度が変わるかを示すもの。

熱平衡

熱平衡

image by Study-Z編集部

温度が高い方から低い方に熱の移動が続くと、やがて元々低温側だった領域も温度が上がってきますね(Tlが大きくなる)。

一方、元々高温側だった領域は熱を奪われるので温度が下がってきます(Thが小さくなる)。領域の質量をm、比熱をc、温度変化をΔT、熱量変化をΔQとしたらお馴染みの公式通りΔQ=mcΔT、ΔT=ΔQ/mc。低温側は熱をもらうのでΔQが正の値、ΔTも正の値なのでどんどん温度が上がることを意味し、逆に熱を奪われる高温側はΔQが負の値なのでΔTも負の値であり温度は下がっていく。

すると温度差Th-Tlはどんどん小さくなっていき温度勾配も小さくなり、面積当たりの熱の通過量たる「熱流束」も小さくますね。つまり、熱の移動がなくなっていき、最終的にTh=Tl(温度が均一)とみなせるようになれば熱の移動はなくなり、これが熱平衡という状態。

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熱は温度が高い方から低い方に移動する。それを繰り返しているうちに両者の温度が平均化されて同じくらいの温度になる。そうなれば熱の移動がなくなり、これが熱平衡

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ここまであたかも「熱」という物質の形で移動しているかのように述べてきた。「熱平衡」という用語を検索してササっと出てくる解説もそうだし、熱力学の教科書でもそのようなイメージで書かれている。そうイメージをした方が分かりやすいから。しかし実際の現象は少しイメージが異なり、熱が移動したからと言って何か物質が移動するわけではない

\次のページで「2.運動エネルギーと熱」を解説!/

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