化学物質の状態・構成・変化理科

3分で簡単「分圧」全圧との違いは?混ざっているのに圧力は分けられる?元研究員がわかりやすく解説

よぉ、桜木建二だ。混合気体の「分圧」って言葉を聞いたことがあるか?

2種類以上の気体の混合物の場合、同一の体積でそれぞれ単独に存在する状態に分けたときの圧力が分圧になるんだが、混ざっている気体を分けるってよくわからないよな。

今回は気体とはどういうものなのかから混合気体の全圧と分圧について、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/wing

元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!

1.気体の体積と圧力

image by iStockphoto

気体はほとんどの場合目に見えません。固体や液体と違って、ここにこれだけの量あるという事が認識しにくいですよね。それなのでまず、気体を頭の中でイメージできるようになるためのお話をしたいと思います。

少し遠回りだと思われるかもしれませんが、今回のテーマである「分圧」を理解する上で重要なのでお付き合いください。

ではまず、気体とはどういうものかについて解説していきましょう。

1-1.気体は熱運動をしている

わたしたちは少し離れた場所からでも匂いを感じて、今日の晩御飯を予測する事ができます。それは気体となった物質が空気中に混ざり広がり届くからです。

このように気体の分子は空間をたえず動いています。

この分子の不規則な運動を熱運動といい、熱運動によって分子が空間に広がることを拡散というので用語を覚えておきましょう。

1-2.気体が混ざるとはどういうことか

1-2.気体が混ざるとはどういうことか

image by Study-Z編集部

ここに気体 A が入った容器 UA と気体 B が入った容器 UB があるとします。気体 A が入った容器 UA と気体 B が入った容器 UB をくっつけて間の壁を取り払ったとき、それぞれの気体はどうなるでしょう?

気体Aはそれまでは容器 UA の中で熱運動により均一に拡散していました。しかし、容器 UA と容器 UB がくっつけられたことで動ける範囲が広くなり、壁を取り払った瞬間から徐々に容器 UB の中へも熱運動により拡散していき、ある程度の時間が経つと容器 UA + UB 内(今はくっついて大きな容器となっている)に均一に拡散します。

他の気体の分子があっても化学反応しない気体同士であれば、互いに独立し互いの存在は無視して空間内を動き回るのです。

気体 B も同様に壁を取り払った瞬間から徐々に容器 UA の中へも拡散していき、容器 UA + UB 内に均一に拡散します。

そして容器 UA + UB 内には気体 A と気体 B がそれぞれ互いに干渉せず均一に拡散して熱運動している状態になり、気体 A と気体 B は混ざり合った混合気体となったのです。

1-3.混ざっている気体のそれぞれの体積と圧力

1-3.混ざっている気体のそれぞれの体積と圧力

image by Study-Z編集部

では次に気体の体積と圧力についてお話していきましょう。

1-2.で登場した気体 A が入っている容器 UA について考えていきます。気体の体積というのは、その気体が動き回ることができる空間を指すのです。という事は気体 A の体積は容器 UA の容積ということになります。

そして気体 A の圧力とは、気体 A の粒子が容器 UA にぶつかって押す力のことです。気体 A は容器 UA に圧力 PA をかけていると仮定しましょう。

ここで、先ほどと同じように気体 A の入った容器 UA と気体 B の入った容器 UB をくっつけて間の壁を取り払ってみます。ある程度の時間が経って、容器 UA + UB 内に気体 A と気体 B が拡散した時、気体 A の体積はどうなったでしょうか。

気体の体積はその気体が動き回ることができる空間なので、気体 A の体積容器 UA + UB の容積になります。気体 B の体積も同様に、容器をくっつける前は容器 UB の中に入っていたので、もとの体積は容器 UB の容積でした。容器 UA と容器 UB をくっつけた後は、気体 B の体積は容器 UA + UB の容積になります。

では圧力はどうなるでしょうか?気体 A の圧力は気体の粒子が容器を押す力なので、動き回ることのできる範囲が広くなっても同じ力で容器を押すので、容器 UA + UB に対して圧力 PA をかけるのです。同様に気体 B の圧力についても、容器をくっつける前は容器 UB に圧力PB をかけていましたが、容器をくっつけた後は容器 UA + UB に対して圧力 PB をかけます。

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空気も窒素と酸素とその他成分の混合気体だな。気体は粒子で飛んでいて常に動き回っており、動ける範囲が体積、粒子が容器の壁にぶつかって押す力を圧力というイメージを忘れないようにしよう。

\次のページで「2.全圧と分圧」を解説!/

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