「突沸」と「沸騰」にはどのような違いがあるか知っているか?

電子レンジに「温めすぎによる突沸にご注意ください」と書いてあるのは、液体が突然爆発的に沸騰する「突沸」による事故が何件も起こったからなんです。

今回は突沸とはどんな現象か?から突沸を防ぐ方法について、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に解説していきます。

ライター/wing

元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!

1.突沸とは何か

image by iStockphoto

突沸とはどんな現象なのでしょう?液体を加熱し続けると沸点に到達し、沸騰するのは当たり前のことだと思いますよね。

温度は目に見えないから突然沸騰が始まったように見えるのはいつものことじゃないの?と思われるかもしれません。

しかし沸騰と突沸は別の現象なんです。まずは液体が沸騰する時に何が起きているか?からお話しましょう。

1-1.沸騰する温度と圧力の関係

純粋な液体には固有の沸点があります。この沸点とは沸騰する温度の事です。さらに沸点とは液体の飽和蒸気圧が外圧と等しくなる温度であり、外圧が高い場所に行くと沸点は高くなり、外圧が低い場所に行くと沸点は低くなります。

標高が高い山の上では気圧が低いため、水は 100 ℃ より低い温度で沸騰するのです。このことより実際に沸騰する温度と圧力には関係があるという事が分かります。

日常生活の中では圧力が極端に高くなったり低くなったりはしないのですが、圧力が下がると沸点が低くなるということを覚えておきましょう。

1-2.液体が気体になる現象には 2 種類ある

次に液体が気体になる現象について学んでいきましょう。液体が気体になる現象を気化(きか)といい、この気化には 2 つの種類があります。

その 2 種類とは洗濯物が乾く「蒸発」と、お湯が沸く「沸騰」です。

蒸発とは液体の表面から気化した分子が空気中に移動する現象で、沸点より低い温度でも起こります。

そして沸騰は沸点付近まで液体の温度が上がることにより、液体の内部で気化が起こり気泡となって絶え間なく沸き上がる現象なのです。

1-3.突沸という現象

1-3.突沸という現象

image by Study-Z編集部

蒸発と沸騰の違いがわかったところで、今回のテーマである突沸について解説していきましょう。

過加熱の状態にある液体が、突発的に沸騰を起こす現象のことを突沸といいます。

液体を加熱する時、沸点を超えても沸騰が起こらず液体のまま温度が上がり続けることがあるのです。この時の液体を過熱された液体と呼び、見た目は加熱前の液体と変わらないのに、いつ爆発的に沸騰してもおかしくない危険な液体と化しています。

そして過熱された液体はとっくに沸騰していてもおかしくない不安定な状態なので、ほんの少しの衝撃で突沸するのです。容器を揺らしたり、何かを入れたりするだけでも突沸が起こります。

もしコップに入れた液体が突沸した場合、周囲に高温の液体が爆発したように飛び散る危険な現象です。

1-4.なぜ突沸が起こるのか

ではなぜ過熱された液体は沸点を超えているのに沸騰しなかったのでしょうか。

沸騰は液体の内部で気化が起こり、ブクブクと液体の表面に気泡が沸き上がる現象だと説明しました。

しかし液体の内部で起こる気化は、液体の中に溶けている気体がなかったり、液体に不純物がなかったり、液体をいれている容器にでこぼこがなかったりすると、気化を促してくれる要因がなくなってしまうことで沸騰が起こりにくくなってしまいます。

つまり液体の内部に気泡や不純物がない状態だと、突沸が起こってしまう危険性は高まると考えられるのです。またとろみのある液体を混ぜないで加熱する時、一部だけ激しく温度が上がっているのに気泡が出にくく突沸するということもあります。

\次のページで「2.突沸を防ぐには」を解説!/

2.突沸を防ぐには

では、見た目だけでは判断できない過熱による突沸事故を防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。

2-1.家庭で突沸を防ぐ

家庭で液体を加熱することはよくあります。突沸を防ぎたい時は液体をお鍋などに移し、弱火にかけるか IH 調理器を弱にセットし、お玉などでかき混ぜながらだんだん温度を上げていく方法なら、まず突沸は起こりません。

しかし少量の液体をコップに入れ、電子レンジで加熱したいという時もありますよね。電子レンジで液体を加熱する時は、一気に高温になるまで加熱するのではなく、少なめの加熱時間を何回か繰り返し徐々に温めましょう。

加熱する前にスプーンなどで液体をかき混ぜて、ある程度液体の中に気泡を含ませてから加熱するのも良い方法です。

もし加熱しすぎて突沸するかもしれないと思ったときは、とにかく触らず動かさず、温度が下がるのをそのまま待ちましょう。

2-2.実験室で突沸を防ぐ

では次に、実験室で突沸を防ぐにはどうしたらいいでしょう。実験室で液体を加熱して実験をすることはとても多いです。

しかも実験室で加熱するのは、水だけではなく酸やアルカリもあり、もし突沸して酸やアルカリの高温の液体が周囲に飛び散れば大惨事になります。さらに液体を入れているガラス器具が割れて飛び散ることにもなりかねません。

突沸してしまってから後悔しても遅いので、実験室で液体を加熱する時は、できるだけ沸騰石を液中に入れておいてから加熱を始めましょう。

2-3.沸騰石でなぜ突沸を防ぐことができるか

沸騰石は小中学校で理科の実験をする時にも登場するので、使ったことがある方もいらっしゃると思います。

多くの場合小さな白い粒で、触ってみると表面がざらざらしていて、石より軽いような感じがしますよね。

沸騰石の正体は多孔質の素焼きの粒であり、材質は液体の性質を左右しないそれ自体が分解されないものならなんでも構いません。市販されている沸騰石は、酸にもアルカリにもほとんど溶けないアルミナ(Al2O3)やフッ素樹脂が使われています。

なぜ沸騰石をいれると突沸しなくなるかというと、材質は関係なく、表面に空いている多数の穴に空気を含んでいるため液体の内側から気泡を発生させるのを助ける働きをするからです。

\次のページで「突沸とは過熱された液体が突然爆発的に沸騰する危険な現象」を解説!/

突沸とは過熱された液体が突然爆発的に沸騰する危険な現象

液体が気体になる現象には「蒸発」と、「沸騰」の 2 種類があります。蒸発とは液体の表面から気化した分子が空気中に移動する現象で、沸騰は沸点付近まで液体の温度が上がることにより、液体の内部で気化が起こり気泡となって絶え間なく沸き上がる現象です。

液体を加熱する時、沸点を超えても沸騰が起こらず液体のまま温度が上がり続けることがあります。この時の液体は見た目は加熱前の液体と変わらないのに、ほんの少しの衝撃で周囲に高温の液体が爆発したように飛び散る「突沸」を起こす大変危険な液体です。

液体の中に溶けている気体がなかったり不純物がなかったり容器にでこぼこがなかったりすると、沸騰が起こりにくくなり突沸を引き起こしてしまうと考えられます。

家庭では液体をかき混ぜながらゆっくり温度を上げていくことで、液中に気泡をできやすくして沸騰を促し突沸を防ぎましょう。電子レンジで加熱する時は、少なめの加熱時間を何回か繰り返し徐々に温めるようにします。

実験室で突沸が起こると大変危険なので、実験で液体を加熱する必要がある時は必ず加熱前に沸騰石を入れておきましょう。

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化学物質の状態・構成・変化理科

3分で簡単「突沸」液体を加熱しすぎると起こる?防ぐ方法は?元研究員がわかりやすく解説

「突沸」と「沸騰」にはどのような違いがあるか知っているか?

電子レンジに「温めすぎによる突沸にご注意ください」と書いてあるのは、液体が突然爆発的に沸騰する「突沸」による事故が何件も起こったからなんです。

今回は突沸とはどんな現象か?から突沸を防ぐ方法について、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に解説していきます。

ライター/wing

元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!

1.突沸とは何か

image by iStockphoto

突沸とはどんな現象なのでしょう?液体を加熱し続けると沸点に到達し、沸騰するのは当たり前のことだと思いますよね。

温度は目に見えないから突然沸騰が始まったように見えるのはいつものことじゃないの?と思われるかもしれません。

しかし沸騰と突沸は別の現象なんです。まずは液体が沸騰する時に何が起きているか?からお話しましょう。

1-1.沸騰する温度と圧力の関係

純粋な液体には固有の沸点があります。この沸点とは沸騰する温度の事です。さらに沸点とは液体の飽和蒸気圧が外圧と等しくなる温度であり、外圧が高い場所に行くと沸点は高くなり、外圧が低い場所に行くと沸点は低くなります。

標高が高い山の上では気圧が低いため、水は 100 ℃ より低い温度で沸騰するのです。このことより実際に沸騰する温度と圧力には関係があるという事が分かります。

日常生活の中では圧力が極端に高くなったり低くなったりはしないのですが、圧力が下がると沸点が低くなるということを覚えておきましょう。

1-2.液体が気体になる現象には 2 種類ある

次に液体が気体になる現象について学んでいきましょう。液体が気体になる現象を気化(きか)といい、この気化には 2 つの種類があります。

その 2 種類とは洗濯物が乾く「蒸発」と、お湯が沸く「沸騰」です。

蒸発とは液体の表面から気化した分子が空気中に移動する現象で、沸点より低い温度でも起こります。

そして沸騰は沸点付近まで液体の温度が上がることにより、液体の内部で気化が起こり気泡となって絶え間なく沸き上がる現象なのです。

1-3.突沸という現象

1-3.突沸という現象

image by Study-Z編集部

蒸発と沸騰の違いがわかったところで、今回のテーマである突沸について解説していきましょう。

過加熱の状態にある液体が、突発的に沸騰を起こす現象のことを突沸といいます。

液体を加熱する時、沸点を超えても沸騰が起こらず液体のまま温度が上がり続けることがあるのです。この時の液体を過熱された液体と呼び、見た目は加熱前の液体と変わらないのに、いつ爆発的に沸騰してもおかしくない危険な液体と化しています。

そして過熱された液体はとっくに沸騰していてもおかしくない不安定な状態なので、ほんの少しの衝撃で突沸するのです。容器を揺らしたり、何かを入れたりするだけでも突沸が起こります。

もしコップに入れた液体が突沸した場合、周囲に高温の液体が爆発したように飛び散る危険な現象です。

1-4.なぜ突沸が起こるのか

ではなぜ過熱された液体は沸点を超えているのに沸騰しなかったのでしょうか。

沸騰は液体の内部で気化が起こり、ブクブクと液体の表面に気泡が沸き上がる現象だと説明しました。

しかし液体の内部で起こる気化は、液体の中に溶けている気体がなかったり、液体に不純物がなかったり、液体をいれている容器にでこぼこがなかったりすると、気化を促してくれる要因がなくなってしまうことで沸騰が起こりにくくなってしまいます。

つまり液体の内部に気泡や不純物がない状態だと、突沸が起こってしまう危険性は高まると考えられるのです。またとろみのある液体を混ぜないで加熱する時、一部だけ激しく温度が上がっているのに気泡が出にくく突沸するということもあります。

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