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石灰石に塩酸を加えると何が発生する?実験や化学反応式も元研究員が簡単にわかりやすく解説
今回は石灰石と塩酸の化学的性質から実験の詳しい内容について、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に解説していきます。
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ライター/wing
元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!
1.石灰石と塩酸の化学的性質
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石灰石に塩酸を加えるとどうなると思いますか?何か気体が発生する?それとも液体が発生する?化学実験で起こる現象について考える時、使用する物質について知る事はとても重要です。まず石灰石というあまりなじみがないものについて、どのような物質なのかを学んでいきましょう。
1-1.石灰石とは何か?
石灰石は炭酸カルシウム(CaCO3)を主成分とする堆積岩です。サンゴや貝類など、海の生物の骨や殻に由来する化石を多く含む岩として産出されます。
石灰石はガラスやセメントの材料として重要な資源です。熱をかけて再結晶したものは大理石と呼ばれ、住宅の玄関などに使われることもあります。
石灰石とは炭酸カルシウムを主成分とする岩石の通称ということです。化学的に物質名で呼ぶなら炭酸カルシウムということになります。そして他に炭酸カルシウムを主成分とする物質は、上にあげたサンゴの骨格や貝がらや大理石以外にも、卵の殻やチョークや鍾乳石があることを覚えておきましょう。
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1-2.塩酸とは何か?
塩酸とは塩化水素(HCl)を水に溶かした水溶液です。強い1価の酸で純粋なものは無色ですが、不純物を含むものは薄い黄色がかった液体になります。
塩酸として市販されているものは、通常35~37%と濃く猛毒なので、蒸気を吸ったりしないよう取り扱いには十分注意が必要です。実験で使用する時は薄めて(希釈して)使用しましょう。
濃いままで使うと取り扱いに特に気をつけなければならないですし、反応が爆発的に起こって危険な事もあります。薄めても強い酸であることは変わりないので注意しましょう。塩酸というのも通称です。正確に呼ぶなら塩化水素と水の混合物となります。
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2.石灰石に塩酸を加えて気体を発生させる実験
石灰石と塩酸がどのようなものか分かったところで、実験に移りましょう。石灰石つまり炭酸カルシウムと塩酸つまり塩化水素を混ぜると、どのような反応が起こるのでしょうか?
2-1.炭酸カルシウムと塩化水素を混ぜると何が起こるか
炭酸カルシウムに塩化水素を少しづつ加えていくと炭酸カルシウムが解け始め、気体が発生します。発生した気体は皆さんが毎日はき出している気体ですが、なんだか分かりますか?そう、二酸化炭素です。そして塩化水素と結びついた炭酸カルシウムは塩化カルシウムとなり、さらに水も発生します。化学式は下記のとおりです。
CaCO3 (炭酸カルシウム)+ 2HCl(塩化水素)→ CaCl2(塩化カルシウム)+ CO2 (二酸化炭素)+ H2O(水)
なぜ塩化水素の係数が2になっているかというと、カルシウムイオンが2価(Ca2+)で塩化物イオン(Cl–)2個と結びつくので、両辺の数を調整したためといえます。
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2-2.実験装置を考えて組んでみよう
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この実験で起こる反応が分かったので、次は実験装置を組んでみましょう。
まず、石灰石に少しずつ塩酸を加えたいので、石灰石を三角フラスコに入れます。三角フラスコの上部に2つ穴が開いたゴム栓をつけ、穴にL字のガラス管1本とコック付き注入ろうと(分液ろうとでも可)をつなぎましょう。
ろうとの先はなるべく三角フラスコの底にある石灰石に近くなるようにし、ガラス管の先は液体が増えてきても気体だけを捕集したいのでなるべくゴム栓に近くなるようにします。次に、L字ガラス管と新しいL字ガラス管をゴムチューブでつなぎ、水上置換法で気体を集める準備をしましょう。
大きな水槽に水を入れ、捕集ビンを水で満たします。水槽の水の中で捕集ビンを逆さまにしてL字ガラス管の先を捕集瓶の中に入れ、発生する気体を捕集しましょう。最後にろうとの栓が閉まっているのを確認し、こぼさないように注意して薄い塩酸を入れます。
全ての器具の準備ができたら注入ろうとのコックを開け、実験スタートです。
2-3.実験開始後に何が起こる?
石灰石に塩酸を少しずつかけると石灰石が解け始め、二酸化炭素が発生します。水で満たされている捕集ビンにL字ガラス管を通って、ブクブクと気体が集まる様子が目視でも確認できるでしょう。
この時、最初にブクブクと出てくる気体は三角フラスコやガラス管の中に残っていた空気なので、純度の高い二酸化炭素を集めたい場合は最初に出てくる気体を集めず、しばらくしてから出てきた気体だけを回収します。
この見えない気体が二酸化炭素なのか確認したい時は石灰水を使いましょう。石灰水は二酸化炭素を加えると白く濁って、気体が二酸化炭素なのかを確認できる水溶液です。
上の実験装置は発生した二酸化炭素を集めたいので複雑なものになりましたが、ただ石灰石と塩酸を反応させたいだけなら、ビーカーに石灰石を入れ塩酸を加えるだけでも実験できます。
ビーカーと石灰石と加える塩酸の質量をあらかじめ量っておき、反応後は発生した二酸化炭素が空気中に混ざって質量が減ることで、気体が発生したことが分かるでしょう。
2-4.二酸化炭素を集める方法
二酸化炭素を集める方法として、上の実験では水上置換法を使いました。しかし二酸化炭素は「水に少し溶ける」「空気より重い」という性質があります。
この条件であるなら、下方置換法を選ぶべきだと思われる方もいるかもしれません。ではなぜ下方置換法を選ばなかったのでしょうか?
二酸化炭素を水に溶かしたものは炭酸水として売られています。しかし、二酸化炭素を水に接触させただけでは炭酸水はできません。家庭で炭酸水を作ることができる機械をご覧になったことがあるでしょうか?炭酸水は圧力をかけて二酸化炭素を水に溶かすことで作られています。
この事からわかるのは、二酸化炭素は常圧では水に少ししか溶けないということです。空気より重いので下方置換法でも回収はできますが、やはり少し空気が混ざってしまいます。
一方、水上置換法は他の気体と混ざることを防ぐことができ、水が押しだされて気体がたまっていくことで、どのくらい気体が捕集できたかも目視できるのです。水にとても溶けやすい気体以外は水上置換法を使うとよいでしょう。
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石灰石に塩酸を加える実験は二酸化炭素を発生させる有名な実験
石灰石は炭酸カルシウム(CaCO3)が主成分の岩石です。そして塩酸とは塩化水素(HCl)を水に溶かした水溶液の通称になります。
炭酸カルシウムに塩化水素を少しづつ加えていくと炭酸カルシウムが解け始め、二酸化炭素が発生するのです。そして塩化水素と結びついた炭酸カルシウムは塩化カルシウムとなり、さらに水も発生します。
この事を化学式で書くと CaCO3 (炭酸カルシウム)+ 2HCl(塩化水素)→ CaCl2(塩化カルシウム)+ CO2 (二酸化炭素)+ H2O(水)となるのです。
実感装置を考える時、二酸化炭素を捕集したいなら水上置換法で捕集できるように組みましょう。二酸化炭素は空気より重いですが水に少ししか溶けないため、水上置換法で捕集するのがより良いといえます。