この記事では「辛酸をなめる」について解説する。

端的に言えば辛酸をなめるの意味は「つらい経験をする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は広告会社で経験を積み、文章の基本と言葉の使い方を知るライターのHataを呼んです。一緒に「辛酸をなめる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/Hata

以前は広告会社に勤務しており、多くの企業の広告作成経験を持つ。相手に合わせた伝え方や言葉の使い方も学び、文章の作成や校正が得意。現在はその経験をいかし、ライターとして活動中。

「辛酸をなめる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「辛酸(しんさん)をなめる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「辛酸をなめる」の意味は?

「辛酸をなめる」には、次のような意味があります。

苦しく、つらい目にあう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「辛酸を嘗める」

「辛酸(しんさん)」とは「辛い(からい)」と「酸っぱい(すっぱい)」が組み合わさった言葉。「からくすっぱいもの」を味わうと、つらくて大変な思いをしてしまうことに由来して、「辛酸」は「つらい目や苦しい思い」「さまざまな苦労」という意味で用いられるようになりました。

そして「なめる」とは漢字で「嘗める」と書き、ここでは「経験する」という意味です。

これらの語句が組み合わさり、「辛酸をなめる」とは“苦しい思いを経験する”という意味の慣用句になりました。

「辛酸をなめる」の使い方・例文

「辛酸をなめる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「辛酸をなめる」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.大学の受験に失敗して辛酸をなめるような浪人時代を過ごしたが、挫折をバネに翌年第一志望に合格した。
2.今でこそ独特な画風で有名な漫画家だが、かつては売れずに辛酸をなめた時期があった。
3.昨年は試合に負け続け辛酸をなめる時期がチームに続いたが、今シーズンは見事優勝に至った。
4.辛酸をなめる時期が長く、彼女は苦労の絶えない日々を送っていた。

「辛酸をなめる」は、例文のように“一定の期間苦しい状態が続いた”というニュアンスを含み、ただ“苦しい思いをした”と言うよりも“耐え忍んできた”という意味で用いることが多いです。

また、ひどい経験をしたからこそ今があるというように、1~3のように現在と対比された形もよく見られるでしょう。過去や経験を思い出して語る際に、使われることが多い言葉です。

「辛酸をなめる」の類義語は?違いは?

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それでは次に、「辛酸をなめる」と似た意味を持つ類義語について見ていきましょう。

「苦汁をなめる」

「苦汁(くじゅう)をなめる」“いやな経験をする”という意味の慣用句。「苦汁」とは言葉の通り「苦いしる」のことで、「なめる」は「辛酸をなめる」同様に「経験する」という意味で用いられています。

「辛酸」ではなく「苦汁」を用いた表現ですが、言葉の成り立ち方も使い方も、ほぼ同様の類語と言えるでしょう。

なお似た言葉に「苦渋(くじゅう)を味わう」という言葉もあります。これもほぼ同じ意味の言葉ですが、「苦渋」では「苦い渋み」で、なめるのではなく「味わう」ものです。

どちらも読みが「くじゅう」のため混同されがちですが、漢字で表記する際は注意するようにしましょう。

「煮え湯を飲まされる」

「煮え湯(にえゆ)を飲まされる」とは、“信頼した相手から裏切られてひどい経験をする”という意味。とても飲めるものではない状態の湯を、飲み頃と騙されて飲んでしまい大変な目に合う、ということに由来したことわざです。

大変ひどい経験をした、という点で「辛酸をなめる」の類語表現のひとつと言われています。

ただし前述のとおり、「煮え湯を飲まされる」には“信頼していた相手に裏切られる”という意味が含まれているため、その点で使い分けが必要です。

\次のページで「「辛酸をなめる」の対義語は?」を解説!/

「辛酸をなめる」の対義語は?

「辛酸をなめる」とはつらい経験をすること。その反対の意味とはどんな言葉になるでしょうか。ここでは「辛酸をなめる」の対義語表現を見ていきます。

「順風満帆」

「順風満帆(じゅんぷうまんぱん)」とは“順調に物事が進むこと”を意味する四字熟語。

順調に船が進む様子をたとえた言葉で、「順風」は“船の進行方向に沿って吹く風”を、「満帆」は“船の帆に風をたくさん受けること”を意味しています。このことから、物事が滞りなく進むときや、障害なく順調にいくときに用いられる言葉です。

つらい経験をする「辛酸をなめる」に対し、苦い思いをすることなく物事が進むという点で、対義語表現のひとつと言えるでしょう。

「甘美」

「甘美(かんび)」とは、“程よく味が甘くてうまい様子”“うっとりする心地にさせること”を意味する言葉。「辛酸」が“からく酸っぱい”ものであるのに対し、同じ味覚で“甘くおいしい”ことをたとえた表現です。

そのため「辛酸をなめる」に対して、意味そのものというよりも、正反対の比喩関係にある対義語と言えます。

「辛酸をなめる」の英訳は?

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それでは「辛酸をなめる」を英語で表現するにはいったいどう訳すのがいいでしょうか。最後に英訳について確認していきましょう。

「go through a lot of hardships」

「go through a lot of hardships」“たくさんの困難を経験した”という英語表現。

「go through~」は“~を通過する、経る”という意味で、「hardship」は“困難”という意味の単語です。ただ大変だったというのであれば「hardship」だけでも伝わりますが、複数系を用いることでより強調する言い回しになっています。

また、大変な時を乗り越えてきたという意味合いになるため、「辛酸をなめる」の言葉が持つ“耐え忍んできた”というニュアンスにも近いでしょう。

\次のページで「「辛酸をなめる」を使いこなそう」を解説!/

「辛酸をなめる」を使いこなそう

この記事では「辛酸をなめる」の意味・使い方・類語などを説明しました。人によっては辛酸をなめた過去を味わっていたり、もしくは今現在そのような状況な人もいるかもしれません。

ですがそんな苦しい経験もバネに進むことで、人生の糧になる可能性はあります。辛酸をなめるだけではなく、その後の道につながるよう、日々前向きにがんばりたいものですね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「辛酸をなめる」の意味や使い方は?例文や類語を元広告会社勤務ライターがわかりやすく解説!

この記事では「辛酸をなめる」について解説する。

端的に言えば辛酸をなめるの意味は「つらい経験をする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は広告会社で経験を積み、文章の基本と言葉の使い方を知るライターのHataを呼んです。一緒に「辛酸をなめる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/Hata

以前は広告会社に勤務しており、多くの企業の広告作成経験を持つ。相手に合わせた伝え方や言葉の使い方も学び、文章の作成や校正が得意。現在はその経験をいかし、ライターとして活動中。

「辛酸をなめる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「辛酸(しんさん)をなめる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「辛酸をなめる」の意味は?

「辛酸をなめる」には、次のような意味があります。

苦しく、つらい目にあう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「辛酸を嘗める」

「辛酸(しんさん)」とは「辛い(からい)」と「酸っぱい(すっぱい)」が組み合わさった言葉。「からくすっぱいもの」を味わうと、つらくて大変な思いをしてしまうことに由来して、「辛酸」は「つらい目や苦しい思い」「さまざまな苦労」という意味で用いられるようになりました。

そして「なめる」とは漢字で「嘗める」と書き、ここでは「経験する」という意味です。

これらの語句が組み合わさり、「辛酸をなめる」とは“苦しい思いを経験する”という意味の慣用句になりました。

「辛酸をなめる」の使い方・例文

「辛酸をなめる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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