この記事では「棒にふる」について解説する。

端的に言えば「棒にふる」の意味は「努力が無駄になってしまうこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

年間60冊以上本を読み込んでいるヤマゾーを呼んです。一緒に「棒にふる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマゾー

ビジネス本を中心に毎年60冊読破。本を通じて心に響く生きた日本語を学ぶ。誰にでも分かりやすい説明で慣用句を解説していく。

「棒にふる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「棒にふる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「棒にふる」の意味は?

「棒にふる」には、次のような意味があります。

それまで積み重ねてきたものを無にしてしまう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「棒に振る」

「棒に振る」の「棒」は、今までの「努力」や「苦心」だと考えてみてください。「振(ふ)る」には、様々な意味がありますが、今回の場合は地位や立場をあっさり捨ててしまう意味だと捉えるとよいでしょう。せっかく積み上げてきたものを、あっさり手離してしまうわけです。「棒に振る」は、努力して積み上げきたものを、ある出来事によって一瞬で無駄にしてしまう様子を表す慣用句として使われるようになりました。

また、「棒に振る」は、ほかの言葉と組み合わせて使うこともできます。たとえば「命を棒に振る」は、無駄に命を捨ててしまうこと。「身代(しんだい)を棒に振る」は、無駄に財産を使い切ってしまうという意味になります。どちらも、有益な使い方をしたのではなく、「無駄に使ってしまった」という点が共通しているといえますね。

「棒にふる」の語源は?

次に「棒にふる」の語源を確認しておきましょう。「棒にふる」は、「棒手振り」と呼ばれる仕事が由来だといわれています。「棒手振り」とは、店を構えず、天秤棒(てんびんぼう)を使って魚や野菜を担ぎ、声をあげながら売りさばく行商人のこと。「ぼてふり」や「ふりうり」とも呼ばれ、平安時代から江戸時代にかけて広く普及した商売方法になります。

「棒手振り」は、「天秤棒」と呼ばれる棒の両端に商品をつるし、棒の中央を肩に当てて担ぎ商品を売り歩きました。全て売りさばいて商品がなくなる様子から、「棒にふる」という慣用句が生まれたといわれています。ほかにも、「棒手振り」という仕事が、労力に対して稼ぎが少ないことから、「棒にふる」と表現したという説もあるようですね。どちらにせよ、ずっと商品を担いで売り歩くのは、大変な重労働だったのではないしょうか。

\次のページで「「棒にふる」の使い方・例文」を解説!/

「棒にふる」の使い方・例文

「棒にふる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.お客様に無責任な行動をとったせいで、店長になれるチャンスを棒に振ってしまう。

2.苦労して研究の成果をあげたのに、上司に反論して昇進を棒に振ることとなった。

3.軽い気持ちで犯罪に手を染めてしまい、人生を棒に振ってしまった。

「棒に振る」は、「無駄にする」という意味が含まれていることから、他人に対して使う場合は注意したほうがよいといえます。たとえば、選手が猛練習をしていたにも関わらず、怪我をして大事な試合に出られなかったとしましょう。このような場合も「棒に振った」と表現して問題ありません。しかし、出場できないからといって、選手自身の地位や立場に影響がないならば、「棒に振る」を使うのは不適切です。それよりも、選手が不祥事を起こしたことで、大事な試合に出られない場合にこそ「棒にふる」を使うべきではないでしょうか。

ある出来事によって一生を棒に振ってしまうのは、自身の力を買い被り、傲慢さが行動にでてしまったからといえます。そのため、大抵は本人に原因があるといってよいでしょう。大きなチャンスを台無しにしてしまった場合に「棒に振る」を使ってみてください。

「棒にふる」の類義語は?違いは?

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では、「棒にふる」の類義語や違いをみていきましょう。

「元の木阿弥」

「元の木阿弥」は「もとのもくあみ」と読みます。意味は、一度よくなったものが、再び前の状態に戻ってしまうこと。つまり、振り出しに戻ったと考えるとよいでしょう。たとえば、体を鍛えるために筋トレをしていたとします。ところが、ついトレーニングを怠ってしまい、元の体に戻ってしまいました。このような状況を「元の木阿弥で、すっかり筋肉が衰えてしまった」と表現することができます。

では、なぜ「元の木阿弥」と表現するのでしょうか。語源は、戦国時代にあった替え玉作戦が由来だといわれています。城主が病死したと敵に知られたら困るため、城主と声がよく似た「木阿弥」を替え玉にしました。そして、敵の目を欺き、役目が終わったあとに「木阿弥」は元の身分に戻ったとされています。そのような様子から転じて、以前の状態に戻ってしまうことを「元の木阿弥」と表現するようになりました。

\次のページで「「水泡に帰する」」を解説!/

「水泡に帰する」

「水泡(すいほう)に帰(き)する」の意味は、せっかく努力してきたことが無駄に終わること。もしくは「水の泡になる」と言ってもよいでしょう。意味は「棒に振る」と同じですが、「水泡に帰する」は、自身に原因がない場合でも使うことができます。たとえば、災害に遭ったことにより、人生計画が白紙に戻ってしまうことを「水泡に帰す」と表現してもよいでしょう。

ほかにも、せっかくパソコンで資料を作り上げたのに、突然の停電によってデータを消失。「努力が水泡に帰してしまった」と表現してもいいですね。「水泡に帰する」だけで使うというよりは、「努力」や「苦労」といった言葉と組み合わせて使ってみてください。

「棒にふる」の対義語は?

では、次に「棒にふる」の対義語をみていきましょう。

「奏功」

「奏功(そうこう)」は、仕事をして功績をあげること。もしくは、目標通りの成果をあげられるという意味になります。訓読みにして「功(こう)を奏(そう)する」といってもよいでしょう。努力した通りに結果を得られたわけですから、「棒に振る」とは正反対の意味だといえますね。

「実を結ぶ」

「実を結ぶ」には、2つの意味があります。1つ目は、植物の実がなること。2つ目は、努力が実って良い結果を得るという意味になります。「実を結ぶ」は、まさに努力が報われた瞬間を表すのに適した慣用句といえるでしょう。

「物になる」

「物になる」は、普段から使っている方が多いのではないでしょうか。たとえば、将来優秀になりそうな人物に対して「彼は物になりそうだ」と表現しますよね。このような「立派な人になる」という意味のほかに、「物事が成就する」という意味も含まれています。成就とは、物事を成し遂げること。もしくは、物事が望んだ通りに完成するという意味。つまり「物になる」ということは、望んだ通りの結果が得られたということになります。「練り上げた計画が物になる」といったように、以前から取り組んでいた物事が成功した時に使ってみてください。

「棒にふる」の英訳は?

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では、「棒にふる」を英語訳すると、どのような表現があるのでしょうか。

\次のページで「「wasted」」を解説!/

「wasted」

「棒に振る」は「無になる」という意味にですから、「無駄になる」を英訳したほうが分かりやすいはずです。「wasted」は「waste」の過去形で、「無駄」や「無益」という意味。「I wasted a chance」といえば「私はチャンスを棒に振ってしまった」と伝えることができるでしょう。

「finished」

人生を「棒に振った」と表現したい場合は「finished」を使ってみてはいかがでしょうか。「finished」は「finish」の過去形で「終えた」や「絶たれた」という意味になります。たとえば「The scandal finished his career」といえば「彼はスキャンダルで人生を棒に振った」と伝えることができるでしょう。「career」は「生涯」や「経歴」という意味になります。

「棒にふる」を使いこなそう

この記事では「棒にふる」の意味・使い方・類語などを説明しました。「棒に振る」は、よくない意味であることから、日常会話で使うというよりはニュースなどで目にすることが多い慣用句です。そのため、どこか他人事で、積み上げて来たことを無駄にしてしまうなど、滅多にないことだと思われるのではないでしょうか。しかし、「棒に振ってしまう」機会というものは、意外と身近に転がっています。自覚がなかったとしても、周囲から普段の行いを注意されているようであれば、人生を棒に振らないためにも指摘に耳を傾けるべきだといえるでしょう。

転がり落ちる時はあっという間ですが、再び這い上がるためには多くの時間と労力を必要とします。「棒に振った」人生と言われないように、普段の行いを見直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

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【慣用句】「棒にふる」の意味や使い方は?例文や類語を本の虫ライターがわかりやすく解説!

この記事では「棒にふる」について解説する。

端的に言えば「棒にふる」の意味は「努力が無駄になってしまうこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

年間60冊以上本を読み込んでいるヤマゾーを呼んです。一緒に「棒にふる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマゾー

ビジネス本を中心に毎年60冊読破。本を通じて心に響く生きた日本語を学ぶ。誰にでも分かりやすい説明で慣用句を解説していく。

「棒にふる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「棒にふる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「棒にふる」の意味は?

「棒にふる」には、次のような意味があります。

それまで積み重ねてきたものを無にしてしまう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「棒に振る」

「棒に振る」の「棒」は、今までの「努力」や「苦心」だと考えてみてください。「振(ふ)る」には、様々な意味がありますが、今回の場合は地位や立場をあっさり捨ててしまう意味だと捉えるとよいでしょう。せっかく積み上げてきたものを、あっさり手離してしまうわけです。「棒に振る」は、努力して積み上げきたものを、ある出来事によって一瞬で無駄にしてしまう様子を表す慣用句として使われるようになりました。

また、「棒に振る」は、ほかの言葉と組み合わせて使うこともできます。たとえば「命を棒に振る」は、無駄に命を捨ててしまうこと。「身代(しんだい)を棒に振る」は、無駄に財産を使い切ってしまうという意味になります。どちらも、有益な使い方をしたのではなく、「無駄に使ってしまった」という点が共通しているといえますね。

「棒にふる」の語源は?

次に「棒にふる」の語源を確認しておきましょう。「棒にふる」は、「棒手振り」と呼ばれる仕事が由来だといわれています。「棒手振り」とは、店を構えず、天秤棒(てんびんぼう)を使って魚や野菜を担ぎ、声をあげながら売りさばく行商人のこと。「ぼてふり」や「ふりうり」とも呼ばれ、平安時代から江戸時代にかけて広く普及した商売方法になります。

「棒手振り」は、「天秤棒」と呼ばれる棒の両端に商品をつるし、棒の中央を肩に当てて担ぎ商品を売り歩きました。全て売りさばいて商品がなくなる様子から、「棒にふる」という慣用句が生まれたといわれています。ほかにも、「棒手振り」という仕事が、労力に対して稼ぎが少ないことから、「棒にふる」と表現したという説もあるようですね。どちらにせよ、ずっと商品を担いで売り歩くのは、大変な重労働だったのではないしょうか。

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