この記事では「袖の下」について解説する。

端的に言えば「袖の下」の意味は「賄賂のこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「袖の下」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「袖の下」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「袖の下(そでのした)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「袖の下」の意味は?

「袖の下」には、次のような意味があります。

人目につかないように袖の下から贈る物。内密に贈る品物や金銭。そでした。わいろ。「袖の下を使う」「袖の下を握らせる」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「袖の下」

この言葉は「内緒で物をもらったり、贈ったりすること、もの」、転じて「賄賂(わいろ)」という意味を持つ慣用句です。「袖の下を握らせる」などというと、特にネガティブなイメージが強く伝わりますね。

辞典によっては、言葉通り「袖の下部」や、「心付け(ご祝儀などで金銭を与えること。悪い意味はない)」といった意味を紹介しているものもありますが、基本的には「賄賂」と覚えてしまっていいでしょう。

「賄賂」とはそもそも「不正な意図をもって、他者に金品を贈与すること。その金品のこと」。「不正」というニュアンスが最初から含まれていますので、この表現を使う場合は、その不正行為に対する批判的な意図が含まれることも多いでしょう。

「政治家が選挙で当選するために、有権者に袖の下を渡し~」など、耳にしたことがある人もいるかもしれません。時事問題やニュースなどでも頻出の表現ですので、しっかり押さえましょう。

「袖の下」の語源は?

次に「袖の下」の語源を確認しておきましょう。ここでいう「袖」とは現代の洋服ではなく、和服(着物)の袖を指しています。その袖下部分は、「袂(たもと)」とも呼び、ゆったりとした袋状で物を入れられるようになっているのです。

「袖の下」とはつまり、その部分から物を取り出して相手に渡すこと。堂々と渡すのではなく、こっそり取り出す場面を想像したら「不正」な感じが伝わりますね。

やや古臭いイメージですが、時代劇のお約束シーンを思い浮かべる人もいるでしょうか。江戸時代、越後屋(商人)と悪代官の密談シーン。お土産の箱を空けて、お菓子をどかすと下から小判が現れ、「お主も悪よのう」と笑い合う場面です。

この小判の黄金色を比喩して「山吹色のお菓子」とも言い、賄賂を指す言葉にもなりました。

\次のページで「「袖の下」の使い方・例文」を解説!/

「袖の下」の使い方・例文

「袖の下」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・次の人事会議で何とかして役職に就く為に、上司に袖の下を渡した同僚は、受け取った上司ともども懲戒解雇の処罰を受けた。

・普段から発注してもらっている業者に、お礼のつもりでお菓子を持っていったら、袖の下にあたるから止めて欲しいと注意されてしまった。

・有力な役人はいつも、裏金問題など袖の下に関するスキャンダルがないかマスコミに嗅ぎまわられて、誠実に働いている人にはいい迷惑だ。

取り計らいを期待して渡す、不正な金品。賄賂」のイメージが伝わりますでしょうか。

賄賂とは自分への見返りを期待して渡すものですから、誰がどんな意図で渡したのかを読み取れると、読解問題でも役に立つ力になります。政治家が選挙で有利になるようにだったり、大きな工事の発注を取り計らってもらったり。そうしたニュースには事欠かないため、意識して見てみましょう。

「袖の下」は金銭を指すことも多くありますが、例文二番目のように、お菓子などでも使えます。また、「こっそり、内緒で」渡すという意味がなくても使えるため、広く賄賂を指す言葉として押さえてください。

「袖の下」の類義語は?違いは?

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「袖の下」の類義語は「鼻薬(はなぐすり)」「裏金(うらがね)」などが考えられます。

「鼻薬」「裏金」

「鼻薬」は「少額の賄賂」のこと。「袖の下」にはありませんでしたが、こちらには「少額の」と意味が限定されています。「鼻薬をきかせる」という使い方をするため、鼻の薬をちょっと使うイメージでしょうか。「鼻薬(びやく)」ではありませんので、読みにも注意が必要です。

「裏金」は「取引などを有利に運ぶため、正式な金額とは別に渡す金銭」のこと。漢字からしても、いかにも黒いイメージがありますね。こちらは「金銭」に限定され、物には使わない点で「袖の下」とは違いがあります。

また、「賄賂」という言葉で使われる漢字。「賄」「賂」どちらも「まいない」と読むことができ、これだけでも「お礼」「賄賂」の意味を持ちます。一緒に押さえてしまいましょう。

\次のページで「「袖の下」の対義語は?」を解説!/

・ランキングサイトの人気レビュワーが、鼻薬をきかせてフォロワー数を稼いでいたことがわかり、アカウントが即日凍結された。

・国の政策の裏で、業者に大量の裏金が動いていたことが発覚して国会は大混乱に陥っている。

「袖の下」の対義語は?

「袖の下」の対義語には「金一封(きんいっぷう)」などが考えられます。

「金一封」

「金一封」は「賞金や寄付金などで、金額を明示せず、紙に包んで贈るお金」のこと。悪い意味を持たずに渡す金銭、ということで「袖の下」とは反対の意味になります。

慣用表現ではありませんが、「報酬」や「謝礼」なども、ネガティブな意味を持たない言葉として使えるでしょう。

新サービスの価値向上の為、大きな影響力を発揮してくれたユーザーに、賞賛とお礼の意味を込めて金一封を贈ることにした。

「袖の下」の英訳は?

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「袖の下」の英語訳は「under the table」がいいでしょう。

「under the table」

「under the table」は直訳すれば「テーブルの下」。和服の袖に対して、英語圏ではテーブルの下でこっそりと金品をやり取りするイメージなのですね。

「賄賂」という意味で使えるフレーズですが、もっと広く「こっそりと」あるいは「酔いつぶれて(テーブルの下に突っ伏す)」などの意味でも使える面白い表現です。みなさんも自分なりに、テーブルの下でやり取りをするとしたらどんな意味になるのか、想像してみるのも面白いでしょう。

\次のページで「「袖の下」を使いこなそう」を解説!/

That politician got a lot of money under the table.
あの政治家は、多額の袖の下を受け取っていた。

「袖の下」を使いこなそう

この記事では「袖の下」の意味・使い方・類語などを説明しました。

場合によっては単純な「お礼」としても使える言葉ですが、「こっそり」「見返りを期待して」渡していたら、良いイメージになるわけはありませんね。

そう考えると「賄賂」と「お礼」は紙一重なのかもしれません。結局は、普段からクリーンで誠実に行動できているかが、大切なのでしょうね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「袖の下」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「袖の下」について解説する。

端的に言えば「袖の下」の意味は「賄賂のこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「袖の下」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「袖の下」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「袖の下(そでのした)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「袖の下」の意味は?

「袖の下」には、次のような意味があります。

人目につかないように袖の下から贈る物。内密に贈る品物や金銭。そでした。わいろ。「袖の下を使う」「袖の下を握らせる」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「袖の下」

この言葉は「内緒で物をもらったり、贈ったりすること、もの」、転じて「賄賂(わいろ)」という意味を持つ慣用句です。「袖の下を握らせる」などというと、特にネガティブなイメージが強く伝わりますね。

辞典によっては、言葉通り「袖の下部」や、「心付け(ご祝儀などで金銭を与えること。悪い意味はない)」といった意味を紹介しているものもありますが、基本的には「賄賂」と覚えてしまっていいでしょう。

「賄賂」とはそもそも「不正な意図をもって、他者に金品を贈与すること。その金品のこと」。「不正」というニュアンスが最初から含まれていますので、この表現を使う場合は、その不正行為に対する批判的な意図が含まれることも多いでしょう。

「政治家が選挙で当選するために、有権者に袖の下を渡し~」など、耳にしたことがある人もいるかもしれません。時事問題やニュースなどでも頻出の表現ですので、しっかり押さえましょう。

「袖の下」の語源は?

次に「袖の下」の語源を確認しておきましょう。ここでいう「袖」とは現代の洋服ではなく、和服(着物)の袖を指しています。その袖下部分は、「袂(たもと)」とも呼び、ゆったりとした袋状で物を入れられるようになっているのです。

「袖の下」とはつまり、その部分から物を取り出して相手に渡すこと。堂々と渡すのではなく、こっそり取り出す場面を想像したら「不正」な感じが伝わりますね。

やや古臭いイメージですが、時代劇のお約束シーンを思い浮かべる人もいるでしょうか。江戸時代、越後屋(商人)と悪代官の密談シーン。お土産の箱を空けて、お菓子をどかすと下から小判が現れ、「お主も悪よのう」と笑い合う場面です。

この小判の黄金色を比喩して「山吹色のお菓子」とも言い、賄賂を指す言葉にもなりました。

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