この記事では「噓から出たまこと」について解説する。

端的に言えば噓から出たまことの意味は「嘘だったことが結果的に真実になること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「噓から出たまこと」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。

「噓から出たまこと」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速、慣用句「噓から出たまこと」の意味や語源・使い方を確認していきましょう。

「噓から出たまこと」の意味は?

「噓から出たまこと」には、次のような意味があります。

嘘のつもりであったものが、結果的に、はからずも真実となること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「噓から出た実」

「噓から出たまこと」とは、初めは冗談や嘘・でたらめのつもりであったことが、結果として真実になってしまうことをいいます。たとえば最初は全く好きではなかった仕事も、上司の前で強がって「やりがいがあります」と言い続けているうちに、いつの間にか本当に好きになっていた、というような場合です。

言霊という言葉があるくらいですから、あり得ないと思っていることも言い続ければ叶う日が来るかもしれません。「噓から出たまこと」の意味を掴む上で重要なキーワードは、「意図せず・偶然・結果的に」です。そのつもりでなかったことが、最終的に真実(まこと)となることと覚えておきましょう。

※「噓から出た実」と表記されることもあります。

「噓から出たまこと」の語源は?

次に「噓から出たまこと」の語源を確認しておきましょう。

諸説あるのですが、有名な語源の一つが「江戸系いろはかるた(※)」によるものです。このかるたは江戸時代後期から江戸を中心に流行したもので、明治時代後期には全国に広まりました。多くが有名なことわざで構成されており、その中の「う」で始まる定番の札が「噓から出たまこと」だったのです。

「噓から出たまこと」のかるたの絵柄には遊女が描かれ、たとえば小指を切り落としたり、指を詰めようとする場面が採用されていました。これは、遊女と客との関係が冗談から本気の恋愛に発展したため、そこにけじめをつけるための場面だったのではないかと考えられています。

※いろはかるたの一番最初のことわざは「犬も歩けば棒に当たる」であり、現在でも「犬棒かるた」と呼ばれることがあるほどです。

\次のページで「「噓から出たまこと」の使い方・例文」を解説!/

「噓から出たまこと」の使い方・例文

「噓から出たまこと」の使い方を例文を通して確認しましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.同じ専門学校に通っていた友人は、卒業したら自分のお店をもって、いつかドキュメンタリー番組に出演したいと冗談交じりに話していた。その彼が、先日本当に取材を申し込まれたらしい。まさに噓から出たまことだ。

2.映画館でアルバイトをしているのだが、ある日友人に、次に流行しそうなおすすめの映画は何かと聞かれた。詳しくないので適当に目についた作品を答えると、公開後、一気に人気を集め、記録的なロングランとなり驚いた。噓から出たまこととはよく言ったものである。

3.全く勉強をしていないのに、両親にテストで満点を取ると嘘をついてしまった。ところが適当に答えた問題が全て正解し、結果は満点でクラスメートや先生からも驚かれ、噓から出たまこととなった。

「噓から出たまこと」は、自分・他人に対してついた嘘や冗談が本当になった場合に使うことができます。例文1・3では、「実現しないだろう」と思っていた願望が現実となっており、例文2では適当に返事をしたことが本当になっていますね。

落語「駒長」について

みなさんは「駒長(こまちょう)」という落語作品をご存知ですか?実は「噓から出たまこと」を題材とした演目なんですよ。

借金を抱えた夫婦(長兵衛とお駒)は、道具貸しの丈八をおどしてお金を巻き上げる計画を立てます。丈八がお駒に惚れていたので、長兵衛はその気持ちを利用しようと考えたのです。丈八が賃料の取り立てに来るタイミングを見計らって、夫婦は嘘の喧嘩を始めます。お駒が丈八に思いを寄せている、会いたがっているという設定で、怒った長兵衛がお駒に暴力をふるうというものです。しかしこれを茶番と知った丈八は、長兵衛のいない間にお駒と本当に駆け落ちしてしまいます。お駒も長兵衛の行き過ぎたやり方には納得しておらず、心優しい丈八に惹かれたのでした。

お駒と丈八が恋仲にあると計画をでっち上げた長兵衛自身が最後は一人になってしまうわけです。何とも皮肉な、まさに「噓から出たまこと」を体現したお話ですね。

「噓から出たまこと」の類義語は?違いは?

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それではここで「噓から出たまこと」の類義語を確認しましょう。

\次のページで「「瓢箪から駒が出る」」を解説!/

「瓢箪から駒が出る」

「瓢簞から駒が出る(ひょうたんからこまがでる)」とは、予想外であり得ないことが起きることのたとえです。これは、酒の容器である瓢箪から馬が飛び出す様子を思い浮かべたことに由来します。もちろん、実際に小さな瓢箪の口から大きな馬が出て来ることは不可能です。そんな不可能であり得ないことのたとえとして「瓢簞から駒が出る」が生まれました。ちなみに「噓から出たまこと」同様、江戸系いろはかるたに記載されたことわざの一つでもあります。

「虚は実を引く」

「虚は実を引く(きょはじつをひく)」とは、初めは嘘だったことが徐々に現実味を帯び、最終的に真実となることです。「虚」は嘘であり、「実」とは真実のことですね。また「引く」には近くへ引っ張る・引き寄せるという意味があります。

「噓から出たまこと」の英訳は?

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最後に「噓から出たまこと」の英語表現を確認しましょう。

「Mows may come to earnest.」

Mows may come to earnest. とは「冗談は本当になるかもしれない」ことを意味します。英語のことわざとして使われているものです。

「噓から出たまこと」を使いこなそう

この記事では「噓から出たまこと」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「噓から出たまこと」に関して
最初は嘘や冗談のつもりが、最終的には本当になってしまうこと
江戸系いろはかるたが語源の一つとされている
類義語に「瓢簞から駒が出る」などがある
上記のことなどが確認できましたね。

嘘が本当になる可能性はゼロではありませんが、それでも毎回いい加減なことを口にしていれば、周囲の信用を失ったり嘘つき呼ばわりされてしまうかもしれません。出来れば言葉は慎重に選びたいものですね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「嘘から出たまこと」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「噓から出たまこと」について解説する。

端的に言えば噓から出たまことの意味は「嘘だったことが結果的に真実になること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「噓から出たまこと」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。

「噓から出たまこと」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速、慣用句「噓から出たまこと」の意味や語源・使い方を確認していきましょう。

「噓から出たまこと」の意味は?

「噓から出たまこと」には、次のような意味があります。

嘘のつもりであったものが、結果的に、はからずも真実となること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「噓から出た実」

「噓から出たまこと」とは、初めは冗談や嘘・でたらめのつもりであったことが、結果として真実になってしまうことをいいます。たとえば最初は全く好きではなかった仕事も、上司の前で強がって「やりがいがあります」と言い続けているうちに、いつの間にか本当に好きになっていた、というような場合です。

言霊という言葉があるくらいですから、あり得ないと思っていることも言い続ければ叶う日が来るかもしれません。「噓から出たまこと」の意味を掴む上で重要なキーワードは、「意図せず・偶然・結果的に」です。そのつもりでなかったことが、最終的に真実(まこと)となることと覚えておきましょう。

※「噓から出た実」と表記されることもあります。

「噓から出たまこと」の語源は?

次に「噓から出たまこと」の語源を確認しておきましょう。

諸説あるのですが、有名な語源の一つが「江戸系いろはかるた(※)」によるものです。このかるたは江戸時代後期から江戸を中心に流行したもので、明治時代後期には全国に広まりました。多くが有名なことわざで構成されており、その中の「う」で始まる定番の札が「噓から出たまこと」だったのです。

「噓から出たまこと」のかるたの絵柄には遊女が描かれ、たとえば小指を切り落としたり、指を詰めようとする場面が採用されていました。これは、遊女と客との関係が冗談から本気の恋愛に発展したため、そこにけじめをつけるための場面だったのではないかと考えられています。

※いろはかるたの一番最初のことわざは「犬も歩けば棒に当たる」であり、現在でも「犬棒かるた」と呼ばれることがあるほどです。

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