この記事では「頭寒足熱」について解説する。

端的に言えば頭寒足熱の意味は「頭を冷やして足を温める健康法のこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「頭寒足熱」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「頭寒足熱」の意味や語源・使い方まとめ

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頭寒足熱は「ずかんそくねつ」と読みます。それでは、さっそく「頭寒足熱」の意味や由来、使い方についてみていきましょう。

「頭寒足熱」の意味は?

頭寒足熱には、次のような意味があります。

頭部は冷やして、足元を暖めること。熟睡でき健康に良いとされる。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「頭寒足熱」

読んで字のごとく、「頭」を「寒」くする、つまり頭を冷やすことと、「足」を「熱」くする、つまり足を温めることです。古くからの健康法で、体調を整えたいときや、集中して勉強したいときに有効な方法とされています。

「頭寒足熱」の由来は?

いかにも、漢字の意味に重きを置いて生まれた中国の故事成語のような雰囲気がありますが、頭寒足熱の由来は西洋医学にあります。

15世紀ごろ、トーマス・パーというイングランド人がいました。のちにオールド・パーの異名で知られ、とても長生きだったという逸話で知られています。一説では、152歳まで生きたとか。長寿の象徴にあやかって、スコッチウィスキーの銘柄の名前にまでなっているほどです。ただし、実際には70歳くらいで亡くなっていたともいわれ、長寿の逸話が真実だったのかどうかは定かではありません。そのトーマス・パーが、長寿と健康の秘訣を聞かれた際、「Keep your head cool by temperance and your feet warm.(頭は冷たく、足は運動して温めなさい)」と答えたのが、頭寒足熱の最初です。この言葉は今日に至るまで、健康の基本のように世界中で広まってきました。

その後、18世紀のオランダ人の名医ヘルマン・ブールハーフェがこの言葉を取り上げます。ブールハーフェは大学で教鞭をとり、医学会における臨床教育で先進的な取り組みを展開して、多くの医師を育てました。そのブールハーフェの遺作となった著作「医学の無類にしてもっとも深い秘密」をめくると、最初のページに、あのトーマス・パーの言葉が記されており、あとは白紙だったのです。

オランダと交流のあった日本にも、何かのきっかけでこの言葉が伝わり、日本語で頭寒足熱と訳された、と考えられています。この翻訳がいつ行われたのかは、定かではありません。

\次のページで「「頭寒足熱」の使い方・例文」を解説!/

「頭寒足熱」の使い方・例文

頭寒足熱は、「頭を冷やして足を温める」という、実際の健康法を指した言葉です。それでは、頭寒足熱を使った例文をみていきましょう。

・あまり体調がよくないので、頭寒足熱にして早めに寝よう。

・試験まであと少し、頭寒足熱にして集中力を高めよう。

・日頃から頭寒足熱を意識して生活しているので、ここ数年は身体の不調を感じたことはないし、夜は快眠できている。

この例文のように、「頭寒足熱にした」という使い方をするのが一般的です。ただし、あくまでも頭寒足熱の意味は「頭を冷やして足を温める」という健康法のことで、健康法そのものを指す言葉ではありません。

・いろいろな頭寒足熱を試してみたが、どれもしっくりこない。

・我が家には独自の頭寒足熱がある。

・自分に合った頭寒足熱を選択することが大切だ。

この例文では、頭寒足熱の意味を健康法そのものの意味として使っていますが、これでは間違いです。頭寒足熱は健康法の一種だということに注意しましょう。

\次のページで「「頭寒足熱」の類義語は?違いは?」を解説!/

「頭寒足熱」の類義語は?違いは?

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頭寒足熱に限らず、健康に関する四字熟語はいくつかあります。ここで確認してみましょう。

「医食同源」

医食同源は「いしょくどうげん」と読みます。「医」は医術や医薬「食」は食事を意味していて、医術や医薬と食事は根源が同じ、という意味です。このことから、日ごろから食事に配慮することが、健康維持に大切だ、という意味で使われています。

「一病息災」

一病息災は「いちびょうそくさい」と読みます。「息災」は「元気で健康なこと」を意味する熟語です。まったく健康に不安がない人よりも、一つくらい持病のある人のほうが、かえって健康に気を遣うので体にいい、という意味になります。

「四百四病」

四百四病は「しひゃくしびょう」と読みます。古い中国の思想で、人の体が地・水・火・風の4つの元素から構成されており、これが変調をきたすと、それぞれの元素につき101の病を生じる、とされていました。このことから、四百四病とは、人がかかるすべての病気、という意味になります。

「頭寒足熱」の実際の効果は?

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頭を冷やして足を温める、という健康法をそのまま四字熟語にした頭寒足熱ですが、実際にこの健康法には効果があるのでしょうか。

\次のページで「「足を温める」」を解説!/

「足を温める」

まずはわかりやすいところで、「足熱」の部分から。結論からいうと、健康に良いといえる方法です。

人間は直立二足歩行する動物なので、常に足元に重力がかかります。そのため、何もしなければ全身の血液が足に集まってしまうのです。もちろん、心臓によって血液は循環しているので、足に血液がたまり続けることはありません。しかし、足から心臓は遠く、重力もかかるため、心臓の力だけでは血液が少しずつたまってしまうのです。

そのため、足にはたまった血液を体の上に向かって押し出す強力なポンプの機能が備わっていることがわかっています。このことから、足は「第二の心臓」とも呼ばれているのです。温水などに足を浸けて足を温めることで、足の血行を促進し、効率よく温かい血液を全身に送り出すことができます。結果的に、身体の血行が良くなる、ということです。血行が良くなることで代謝が上がり、免疫力も高くなります。

つまり、「足熱」の健康効果はある、といえるでしょう。特に冷え性の方には、まず足を温めることがおすすめです。

「頭を冷やす」

頭寒」については、意図的に頭を冷やすというよりも、寒いままの状態にしておく、つまり何もせず自然のままにしておく、というニュアンスが強いようです。

「足熱」と同じように、頭の血流を良くしようとして頭を温めてしまうと、脳血管が広がり、頭痛の原因となります。逆に、頭痛に悩んでいる場合は頭を冷やして脳内の血管を収縮させることで、痛みを和らげることができるのです。また、体に関するあらゆる指令を脳が発信しているので、頭を温めると脳が「体が熱くなっている」と錯覚し、必要以上に体温を下げてしまうこともあります。もちろん、全身の体温が下がれば身体が冷えて免疫力が下がり、風邪などにかかりやすくなってしまいますね。

特に頭痛などがないときに意図的に頭を冷やす必要はありませんが、少なくとも温めないほうがいい、ということになります。

「頭寒足熱」を使いこなそう

今回の記事では、頭寒足熱の意味や由来、使い方について説明しました。頭寒足熱は、「頭を冷やして足を温める」という健康法を示した四字熟語で、その語源はヨーロッパにある、ということを紹介しましたね。あくまでも「頭を冷やして足を温める」ことを指す熟語で、健康法そのものを指す言葉ではない、という点に注意しましょう。

また、頭寒足熱の類義語についてもいくつかご紹介しました。医術や健康に関する熟語はいくつもあるので、この機会に覚えておくといいでしょう。

一方、頭寒足熱を実践することでどんな効果があるのか、実際の効果についてもご紹介しました。特に足を温めることは、全身の血行を促進することにつながり、免疫力の増大など総合的な効果が期待できます。また、頭痛がする場合などに頭を冷やすことで、痛みを緩和することもできるのです。

このように、生活の知恵とも呼べる知見が詰まった四字熟語もたくさんあります。実生活で役立つものもあるので、言葉としてだけでなくひとつの知識として、その意味を押さえておくといいでしょう。

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【四字熟語】「頭寒足熱」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「頭寒足熱」について解説する。

端的に言えば頭寒足熱の意味は「頭を冷やして足を温める健康法のこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「頭寒足熱」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「頭寒足熱」の意味や語源・使い方まとめ

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頭寒足熱は「ずかんそくねつ」と読みます。それでは、さっそく「頭寒足熱」の意味や由来、使い方についてみていきましょう。

「頭寒足熱」の意味は?

頭寒足熱には、次のような意味があります。

頭部は冷やして、足元を暖めること。熟睡でき健康に良いとされる。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「頭寒足熱」

読んで字のごとく、「頭」を「寒」くする、つまり頭を冷やすことと、「足」を「熱」くする、つまり足を温めることです。古くからの健康法で、体調を整えたいときや、集中して勉強したいときに有効な方法とされています。

「頭寒足熱」の由来は?

いかにも、漢字の意味に重きを置いて生まれた中国の故事成語のような雰囲気がありますが、頭寒足熱の由来は西洋医学にあります。

15世紀ごろ、トーマス・パーというイングランド人がいました。のちにオールド・パーの異名で知られ、とても長生きだったという逸話で知られています。一説では、152歳まで生きたとか。長寿の象徴にあやかって、スコッチウィスキーの銘柄の名前にまでなっているほどです。ただし、実際には70歳くらいで亡くなっていたともいわれ、長寿の逸話が真実だったのかどうかは定かではありません。そのトーマス・パーが、長寿と健康の秘訣を聞かれた際、「Keep your head cool by temperance and your feet warm.(頭は冷たく、足は運動して温めなさい)」と答えたのが、頭寒足熱の最初です。この言葉は今日に至るまで、健康の基本のように世界中で広まってきました。

その後、18世紀のオランダ人の名医ヘルマン・ブールハーフェがこの言葉を取り上げます。ブールハーフェは大学で教鞭をとり、医学会における臨床教育で先進的な取り組みを展開して、多くの医師を育てました。そのブールハーフェの遺作となった著作「医学の無類にしてもっとも深い秘密」をめくると、最初のページに、あのトーマス・パーの言葉が記されており、あとは白紙だったのです。

オランダと交流のあった日本にも、何かのきっかけでこの言葉が伝わり、日本語で頭寒足熱と訳された、と考えられています。この翻訳がいつ行われたのかは、定かではありません。

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