この記事では「荒ぶる神」について解説する。

端的に言えば荒ぶる神の意味は「荒れ狂う神」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で5年間のライター経験を持つEastflowerを呼んです。一緒に「荒ぶる神」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

語学好きで英語、中国語が得意な5年目のライター。今回は、「荒ぶる神」を取り上げて言葉の起源や「神」の別の姿などをわかりやすく解説する。

「荒ぶる神」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「荒ぶる神」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「荒ぶる神」の意味は?

荒ぶる神」には、次のような意味があります。

1.荒々しく乱暴な神。天皇の支配に服さない神。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「荒ぶる神」

2.荒れ狂う国つ神。人に害を与える乱暴な神。天皇の命令に従わない神。
出典:大辞林 第三版(三省堂)「荒ぶる神」

日本神話の中に登場する「神」とは、奇跡を起こす存在でもなく、悟りを開いた存在でもなく、非常に人間的な存在でした。神々にも仕事があり、人のように日常を過ごしていました。日本の神話の中で主役として語られているのがアマテラスオオミカミ(天照大神)という女神で彼女を中心に多くのストーリーが語られています。日本の皇室はアマテラスオオミカミの子孫であると伝えられてもいるようですね。普通に生活をする日本の神々の中には、品行方正な神々もいましたし、乱暴で攻撃的な神もいたのです。

日本の神話が作り上げられた時代、アマテラスの身近な関係の人で「荒ぶる神」となった人もいましたし、また、別の「荒ぶる神」を良き神が退治しに行った話も語られています。時代が進むと最後に不遇な人生をたどった人を祀ることで死者の怒りの魂を鎮め、供養することで神格化された人も出てくるようになりました。

「荒ぶる神」とは、辞書に定義されているとおり、人々に災いと苦しみをもたらす神のことであり、アマテラスの統治する地域の神々やアマテラスの子孫である天皇に従わない神々のことなのです。

尚、「荒神」(こうじん)という言葉もありますが、この漢字は民間信仰において台所にやどる神として使われる言葉であり、「荒ぶる神」の使われ方とニュアンスが少し違いますね。

「荒ぶる神」の語源は?

次に「荒ぶる神」の語源を確認しておきましょう。

皆さんの中にも日本神話のひとつ、アマテラスオオミカミの「天岩戸(あまのいわど)」の話をご存知の方も多いのではないでしょうか?

アマテラスオオミカミが洞穴に引きこもってしまい、この世が真っ暗になってしまったと伝えられていますがアマテラスオオミカミが引きこもりになってしまった理由のひとつが、アマテラスの弟、スサノオが原因であったと伝えられています。思うように領地を得られなかったスサノオはちょっと荒れ気味でもあり、姉のアマテラスが暮らす高天原(たかあまはら)の地名を持つ場所へ移りたいと考えていました。弟の意向を聞いたアマテラスは、弟が自分の領地を奪いに来るのではないかとも思い、占いで見てもらったところスサノオは潔白であり邪心がないと判断され、アマテラスは弟のスサノオが自分の領地に住むことを許したのでした。

しかし、姉、アマテラスの地、高天原に移った後も、スサノオの乱暴な行動はやみませんでした。用水路を埋めたり、田畑をまき散らしたり、馬を殺し女神まで殺してしまったのです。弟、スサノオの乱暴な行動に悩んだアマテラスはどうしてよいのかわからず、洞穴に引きこもってしまいました。

いろいろな策を講じて、天岩戸(あまのいわど)からアマテラスを外に出すことに成功した神々は、スサノオの財産を没収し、高天原からスサノオを追放しました。

日本の神話の中で語られる「荒ぶる神」の代表がスサノオなのです。

もちろん、スサノオだけでなく日本神話の中には、他の「荒ぶる神」も登場しますし、後の時代になっても大きな災害や飢饉が起こると、「荒ぶる神」の「祟り(たたり)」だとして、新たに祀られることになった人も日本史には何人か登場します。今は天神様(てんじんさま)として祀られている「菅原道真」(すがわらのみちざね)や社会を変えようとした「平将門」(たいらのまさかど)二人についても、彼らの死後大災害が起こり、「荒ぶる神」になったのだと人々は思い心を鎮めるためにと二人とも祀られることになったのです。

\次のページで「「荒ぶる神」の使い方・例文」を解説!/

「荒ぶる神」の使い方・例文

荒ぶる神」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.「帝(みかど)、この度重なる天災地変(てんさいちへん)の原因は九州で非業の死をとげた菅原道真(すがわらみちざね)が「荒ぶる神」になったからに違いありません。道真を祀り道真の心を鎮めるしか手はございませぬ。」

2.「迷信だと思われるかもしれませんが、今回の関東大地震の原因は、大手町で行われた再開発工事で将門(まさかど)の塚を撤去したからだと私は考えています。将門塚を撤去したことで「荒ぶる神」としての将門の怒りの心を蘇らせてしまったのです。」

不遇な人生をおくった人が、後に神に祀り上げられることもあるのです。

「荒ぶる神」の類義語は?違いは?

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それでは、「荒ぶる神」の類義語を見ていきましょう。

「邪神」

「邪神」(じゃしん)も「荒ぶる神」の類語の一つになります。

「邪」(じゃ)とは、人に害を与える心や悪意のことで、「邪神」も「荒ぶる神」と同様に「人々に災いや苦しみをもたらす神」であり、「伝統的な神々に背き、神々の子孫である天皇家に従わない神」のことをいうのです。

\次のページで「「悪神」」を解説!/

「悪神」

「悪神」は「あくじん」と読み、やはり、意味は「荒ぶる神」や「邪神」と同様に「人々に災いや苦しみをもたらす神」のことです。しかし、語感からいうと、「悪神」は本質的に悪い神であり、「荒ぶる神」の方は多くの普通の人がそうであるようにある出来事や事件をきっかけに心がすさんでしまったという感じがでていて雰囲気のある言葉だと思うのですが、皆さんはどのように感じられますか?

「荒ぶる神」の対義語は?

次に「荒ぶる神」を対義語を見て行きましょう。

「守護神」

「荒ぶる神」のメインの意味は「人々に災いをもたらし苦しめる神様」ということです。適切な反対語のひとつは、「守護神」(しゅごしん)になるでしょう。

「守護神」は個人や町や村などの地域、場合によっては国家に加護を与える神のことで、「まもりがみ」とも言われる神様のことです。一般的に言えば、多くの神が「守護神」であり、「荒ぶる神」の方が少数派だ語られています。

「神様の御蔭(おかげ)で平和な暮らしができる。」というフレーズが使われることがありますが、ここで言う神様とは、「守護神」のことなのです。

「善神」

「悪神」(あくじん)の反対語に「善神」(ゼンシン)という言葉もあります。

文字通り「良い神」という意味ですが、「善神」という言葉そのものは仏教用語です。仏教の開祖、釈迦(しゃか)が生まれたのは紀元前5世紀ですが、日本に仏教が伝来したのは6世紀ですから日本神話の神々の時代とは合っていないかもしれません。「善神」は仏教の悟りをきちんと理解した神ということであり、地域の生活にとってよい神なのかと言われると疑問の部分はあります。

「荒ぶる神」の英訳は?

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それでは英語で「荒ぶる」を表現するとどんな言葉が適切なのかを見ていきましょう。

「Desperate」

多くの人が「荒ぶる」という言葉から連想するのは、「気性が激しく、暴走してしまって、乱暴な行動をしてしまう野性味のある男性」の姿ではないでしょうか?

そんな雰囲気を持った英単語に「Desperate」(デスパリット)(désp(ə)rət)というのがあります。18世紀以前に英語圏で使われていた言葉ですが、「Desperate」の意味は「自暴自棄で捨てばちになってしまった荒々しい状態」のことで「やけくそでやらかしてしまったときの人間の状態」のことです。

18世紀以降、この「Desperate」(デスパリット)の発音は徐々にスペイン語風に変化していき、「Desperado」(デスペラード)(dèspərάːdoʊ)と発音されるようになり、アメリカなどでも「Desperado」の方がよく使われているかもしれません。二つの単語の意味にそんなに大きな違いはありませんが、「Desperado」(デスペラード)は「ならず者」や「無法者」という意味でも使われています。

古い音楽ファンであればご存知かもしれませんが、「イーグルス」の代表曲の中にも同名、「Desperado(デスペラード)」という名の歌があり、今日(こんにち)でもいろんな歌手にカバーされているのです。

\次のページで「「荒ぶる神」を使いこなそう」を解説!/

1.Policemen surrounded the desperate criminal.
(警察官たちはやけくそになった犯人を取り囲んだ。)

2.A big fire expanded suddenly. He became so desperate that he jumped from the window on the 3rd floor.
(大きな火は突然拡がっていった。彼は無鉄砲にも3回の窓から飛び降りたのです。)

「荒ぶる神」を使いこなそう

ここまで「荒ぶる神」について見てきました。「荒ぶる神」の意味は、荒々しく乱暴で天皇の支配に従わない神のことでした。

自然の現象についてあまり知識がなかった当時の人々は、自然災害や飢饉が起こると「荒ぶる神」が怒っていると考えていたようですね。また、当時の日本人は人間と同じように神にも性別があり、また人間の生活に関わる「農神」、「狩猟神」、「漁労神」なども存在していると考えてもいました。昔の人たちは時には災害にあいひどい生活をしながらも「神の意向」であると理解して、「神」を尊重しながら、また畏れながら日々暮らしていたのかもしれませんね。

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【慣用句】「荒ぶる神」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「荒ぶる神」について解説する。

端的に言えば荒ぶる神の意味は「荒れ狂う神」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で5年間のライター経験を持つEastflowerを呼んです。一緒に「荒ぶる神」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

語学好きで英語、中国語が得意な5年目のライター。今回は、「荒ぶる神」を取り上げて言葉の起源や「神」の別の姿などをわかりやすく解説する。

「荒ぶる神」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「荒ぶる神」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「荒ぶる神」の意味は?

荒ぶる神」には、次のような意味があります。

1.荒々しく乱暴な神。天皇の支配に服さない神。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「荒ぶる神」

2.荒れ狂う国つ神。人に害を与える乱暴な神。天皇の命令に従わない神。
出典:大辞林 第三版(三省堂)「荒ぶる神」

日本神話の中に登場する「神」とは、奇跡を起こす存在でもなく、悟りを開いた存在でもなく、非常に人間的な存在でした。神々にも仕事があり、人のように日常を過ごしていました。日本の神話の中で主役として語られているのがアマテラスオオミカミ(天照大神)という女神で彼女を中心に多くのストーリーが語られています。日本の皇室はアマテラスオオミカミの子孫であると伝えられてもいるようですね。普通に生活をする日本の神々の中には、品行方正な神々もいましたし、乱暴で攻撃的な神もいたのです。

日本の神話が作り上げられた時代、アマテラスの身近な関係の人で「荒ぶる神」となった人もいましたし、また、別の「荒ぶる神」を良き神が退治しに行った話も語られています。時代が進むと最後に不遇な人生をたどった人を祀ることで死者の怒りの魂を鎮め、供養することで神格化された人も出てくるようになりました。

「荒ぶる神」とは、辞書に定義されているとおり、人々に災いと苦しみをもたらす神のことであり、アマテラスの統治する地域の神々やアマテラスの子孫である天皇に従わない神々のことなのです。

尚、「荒神」(こうじん)という言葉もありますが、この漢字は民間信仰において台所にやどる神として使われる言葉であり、「荒ぶる神」の使われ方とニュアンスが少し違いますね。

「荒ぶる神」の語源は?

次に「荒ぶる神」の語源を確認しておきましょう。

皆さんの中にも日本神話のひとつ、アマテラスオオミカミの「天岩戸(あまのいわど)」の話をご存知の方も多いのではないでしょうか?

アマテラスオオミカミが洞穴に引きこもってしまい、この世が真っ暗になってしまったと伝えられていますがアマテラスオオミカミが引きこもりになってしまった理由のひとつが、アマテラスの弟、スサノオが原因であったと伝えられています。思うように領地を得られなかったスサノオはちょっと荒れ気味でもあり、姉のアマテラスが暮らす高天原(たかあまはら)の地名を持つ場所へ移りたいと考えていました。弟の意向を聞いたアマテラスは、弟が自分の領地を奪いに来るのではないかとも思い、占いで見てもらったところスサノオは潔白であり邪心がないと判断され、アマテラスは弟のスサノオが自分の領地に住むことを許したのでした。

しかし、姉、アマテラスの地、高天原に移った後も、スサノオの乱暴な行動はやみませんでした。用水路を埋めたり、田畑をまき散らしたり、馬を殺し女神まで殺してしまったのです。弟、スサノオの乱暴な行動に悩んだアマテラスはどうしてよいのかわからず、洞穴に引きこもってしまいました。

いろいろな策を講じて、天岩戸(あまのいわど)からアマテラスを外に出すことに成功した神々は、スサノオの財産を没収し、高天原からスサノオを追放しました。

日本の神話の中で語られる「荒ぶる神」の代表がスサノオなのです。

もちろん、スサノオだけでなく日本神話の中には、他の「荒ぶる神」も登場しますし、後の時代になっても大きな災害や飢饉が起こると、「荒ぶる神」の「祟り(たたり)」だとして、新たに祀られることになった人も日本史には何人か登場します。今は天神様(てんじんさま)として祀られている「菅原道真」(すがわらのみちざね)や社会を変えようとした「平将門」(たいらのまさかど)二人についても、彼らの死後大災害が起こり、「荒ぶる神」になったのだと人々は思い心を鎮めるためにと二人とも祀られることになったのです。

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