この記事では「日常茶飯」について解説する。

端的に言えば日常茶飯の意味は「ありふれた日常」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「日常茶飯」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「日常茶飯」の意味や語源・使い方まとめ

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日常茶飯は「にちじょうさはん」と読みます。それでは、さっそく「日常茶飯」の意味や由来、使い方についてみていきましょう。

「日常茶飯」の意味は?

日常茶飯には、次のような意味があります。

ありふれたこと。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「日常茶飯」

日常茶飯の「茶飯」は、日ごろから当たり前に飲んでいるお茶や食べているごはんのことです。特別でない、日常的なお茶や食事という意味から転じて、ありふれたことがらという意味になりました。なお、四字熟語としては日常茶飯ですが、最後に「事」をつけて「日常茶飯事」ということもあります。この場合も、意味はまったく同じです。

「日常茶飯」の由来は?

日常茶飯は、「日常的に飲んでいるお茶や食べている食事」という意味が転じて「身の回りにありふれたこと」という意味になった熟語です。「日常」という言葉もそれこそ日常的に使われているので、割と意味を想像しやすい熟語ですが、実はその由来は仏教にあります。

もともと日常茶飯という言葉が生まれたときの使われ方としては、「釈尊(お釈迦様)が説いた高尚な真理は、私たちの日常の中にこそ深く結びついている」「仏教で説かれる真理はどんなに優れていても、ありふれた日常に結びつかなければ意味がない」という意味でした。逆に、「仏教で説かれた高尚な真理とはいっても、しょせんは日常生活の域を出ない」というやや皮肉めいた意味もあったようです。

仏教の浸透に関連して、仏教で使われていた言葉も日常生活の中に溶け込んでいきましたが、日常茶飯もそういった仏教由来の言葉のひとつであるといえます。ちなみに禅宗では、同様の意味で「家常事」ともいうようですね。

\次のページで「「日常茶飯」の使い方・例文」を解説!/

「日常茶飯」の使い方・例文

日常茶飯は「(日常生活のなかで)ありふれた普通のこと」という意味の熟語ですが、その使い方にはある程度の広がりがあります。日常茶飯の例文をみていきましょう。

・私の実家では、毎回の食事に味噌汁が出るのは日常茶飯だった。

・兄弟げんかは日常茶飯だったが、思い返せば楽しい毎日だった。

・この時間帯、どの電車も満員なのは日常茶飯だ。

・グルメライターにとっては、お店やカフェの情報を仕入れて食べ歩きするのは日常茶飯だ。

・食べログでランキング上位のお店では、取材依頼を受けることも日常茶飯となっている。

日常茶飯の直訳としては、日常的に楽しむお茶や食べている食事のことですが、日常茶飯を使う場面を食事に関わる物事に限定する必要はありません。この例文のように、日常的に行われている、または起こる出来事を指すのであれば、どんな場面でも使えます。

さらに、応用的な使い方もできるので、確認しましょう。

・戦車の轟音が日常茶飯など、聞いたこともない。

・母親の家出は特別なことなのかもしれないが、私にとっては日常茶飯だった。

・その授業では毎回、信じられないような量の課題が日常茶飯のように出される。

これらの例文では、「戦車の轟音」「母親の家出」「大量の課題」といった、日常では考えにくい出来事を示すために、あえて日常茶飯という表現を使っています。

このように、あえて「日常茶飯であるはずがない」ことを示すために使うこともできるのがポイントです。どちらかといえば、このような使い方のほうが一般的かもしれません。

\次のページで「「日常茶飯」の類義語は?違いは?」を解説!/

「日常茶飯」の類義語は?違いは?

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日常茶飯は、日常的にありふれたことを、日々のお茶や食事にたとえて表現した熟語です。このように、日常的な物事を示す熟語はいくつかあります。

「平々凡々」

平々凡々は「へいへいぼんぼん」と読みます。ありふれていて何の特徴もない、という意味の「平凡」という熟語がありますが、それぞれの漢字を重ねて意味を強調した四字熟語です。意味を強調したとはいっても、そもそもの意味が「ありふれていて何の特徴もないこと」なので、「平凡」と「平々凡々」では意味の違いはありません。

日常茶飯は基本的に出来事や物事に対して使われるのに対して、平々凡々は人物の性格や特徴に対しても使われるため少しニュアンスが違いますが、「平々凡々とした日々」のような使い方をすることもできるので、そういった場面では日常茶飯と同じ意味であるといえるでしょう。

「家常茶飯」

家常茶飯は「かじょうさはん」と読みます。先に述べた通り、日常茶飯はもともと、仏教に由来する言葉です。禅宗では日常茶飯のことを「家常事」と表現することもある、という点もご紹介しました。そのことから、禅宗的な表現では日常茶飯を家常茶飯ということもあります。意味は日常茶飯とまったく同じです。

「行住坐臥」

行住坐臥は「ぎょうじゅうざが」と読みます。行は歩くこと、住はとどまること、坐は座ること、臥は寝ることをそれぞれ意味する漢字です。

つまり、日々の行動や振る舞いそのもの、という意味となります。そこから転じて、日常生活や何気ない日々、といった意味をもつようになりました。日常茶飯と同じ意味ですが、行住坐臥はその人物の行動や立ち居振る舞いに視点を向けていることがポイントです。

「日常茶飯」の対義語は?

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ありふれた日常のことを指す日常茶飯の対義語は、非日常を指す言葉、ということになります。どんな対義語があるか、みていきましょう。

\次のページで「「一世一代」」を解説!/

「一世一代」

一世一代は「いっせいいちだい」または「いっせいちだい」と読みます。人の一生を表現した言葉のひとつに「一世代」という言葉がありますが、この言葉を漢字一文字ずつに分けて強調した四字熟語です。一世も一代も、意味は一世代と同じ「人の一生」で、要するに一生に一度あるかないかの大事件、という意味になります。進学や独立、就職、結婚など、人生の大きな節目のことを一世一代と表現することも多く、まさに日常茶飯の対局といえるでしょう。

「前代未聞」

前代未聞は「ぜんだいみもん」と読みます。「前代」と「未聞」の2つの熟語からなる言葉で、前代は前の世代や前の時代、未聞は「いまだ(未だ)に聞いたことがない」という意味です。つまり、これまでに聞いたことがないような、尋常でなく珍しい出来事や物事のことをいいます。こちらも、まさに非日常を象徴するような四字熟語ですから、日常茶飯とは正反対の意味です。

「空前絶後」

空前絶後は「くうぜんぜつご」と読みます。ある芸人さんのネタで有名になった言葉ですが、きちんとした四字熟語です。空前は「前に空しく」と読み、以前に同様の例がないことを意味します。絶後は「後は絶えて」と読み、その後も例を見ないという意味です。つまり、その一度限りの大変珍しいできごとであることを意味します。一世一代や前代未聞と同様の意味です。

「日常茶飯」を使いこなそう

今回の記事では、日常茶飯の意味や由来、使い方についてご紹介しました。日常茶飯はありふれたこと、何の変哲もないことを、日々のお茶や食事にたとえて表現した言葉です。語源はお茶や食事ですが、この言葉そのものの使用場面が食事の場に限定されるわけではありません。むしろ、普段通りの日常、という意味で使うのならとても使い勝手のいい言葉といえるでしょう。具体的な使用例については、先に紹介した例文を参考にしてみてくださいね。

さらに、類義語や対義語についてもいくつか例を挙げて紹介しました。特に対義語については、「ありふれていない」「日常的ではない」という意味になるため、たくさんの言葉があります。ここでご紹介したのはそんな対義語の一例ですので、ぜひほかにどんな表現があるか、自分でも探してみてください。

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【四字熟語】「日常茶飯」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「日常茶飯」について解説する。

端的に言えば日常茶飯の意味は「ありふれた日常」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「日常茶飯」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「日常茶飯」の意味や語源・使い方まとめ

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日常茶飯は「にちじょうさはん」と読みます。それでは、さっそく「日常茶飯」の意味や由来、使い方についてみていきましょう。

「日常茶飯」の意味は?

日常茶飯には、次のような意味があります。

ありふれたこと。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「日常茶飯」

日常茶飯の「茶飯」は、日ごろから当たり前に飲んでいるお茶や食べているごはんのことです。特別でない、日常的なお茶や食事という意味から転じて、ありふれたことがらという意味になりました。なお、四字熟語としては日常茶飯ですが、最後に「事」をつけて「日常茶飯事」ということもあります。この場合も、意味はまったく同じです。

「日常茶飯」の由来は?

日常茶飯は、「日常的に飲んでいるお茶や食べている食事」という意味が転じて「身の回りにありふれたこと」という意味になった熟語です。「日常」という言葉もそれこそ日常的に使われているので、割と意味を想像しやすい熟語ですが、実はその由来は仏教にあります。

もともと日常茶飯という言葉が生まれたときの使われ方としては、「釈尊(お釈迦様)が説いた高尚な真理は、私たちの日常の中にこそ深く結びついている」「仏教で説かれる真理はどんなに優れていても、ありふれた日常に結びつかなければ意味がない」という意味でした。逆に、「仏教で説かれた高尚な真理とはいっても、しょせんは日常生活の域を出ない」というやや皮肉めいた意味もあったようです。

仏教の浸透に関連して、仏教で使われていた言葉も日常生活の中に溶け込んでいきましたが、日常茶飯もそういった仏教由来の言葉のひとつであるといえます。ちなみに禅宗では、同様の意味で「家常事」ともいうようですね。

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