この記事では「破邪顕正」について解説する。

端的に言えば破邪顕正の意味は「誤った思想や邪説を否定して正しい思想を広めること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「破邪顕正」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「破邪顕正」の意味や語源・使い方まとめ

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破邪顕正は「はじゃけんしょう」と読みます。それでは、さっそく「破邪顕正」の意味や由来、使い方についてみていきましょう。

「破邪顕正」の意味は?

破邪顕正には、次のような意味があります。

誤った考えを否定し、正しい考えを示すこと。不正を破って正義をあきらかにすること。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「破邪顕正」

仏教で使用される言葉で、読み下すと「邪(よこしま)を破り、正しきを顕す」となります。邪とは、よくない考えや思想のことです。そのような誤った考えや思想を打破して、正しい物事を示すのが、破邪顕正の意味となります。

「破邪顕正」の由来は?

破邪顕正は仏教由来の言葉ですが、正確な出典は吉蔵が著した「三論玄義」という書物です。仏教には様々な宗派がありますが、そのひとつに「三論宗」があります。三論玄義を著した吉蔵は、三論宗を大成させた人物として知られている仏僧です。

その三論玄義の中で、「論三有りと雖も、義は但だ二轍。一に曰はく顕正、二に曰はく破邪。破邪は則ち下沈淪を拯ひ、顕正は則ち上大法を弘む」と述べられている箇所があり、この一文から一部を抜粋してできたのが破邪顕正です。

この文は三論玄義の中でも重要な部分について述べられた一説で、簡単にいえば「重要な論が3つあるが、本当に大切なことは顕正と破邪である。破邪は誤った論を退け、顕正は正しい法を広める」と述べられています。破邪顕正は、三論宗においてもっとも重要な思想であるともいえるでしょう。

\次のページで「「破邪顕正」の使い方・例文」を解説!/

「破邪顕正」の使い方・例文

破邪顕正は仏教用語で、誤った考えを破り、正しい考えを示すことです。それでは、破邪顕正を使った例文をみていきましょう。

破邪顕正を座右の銘としていた彼は、その志のまま警察官になった。

・大切な友人だからこそ、破邪顕正の思いで誤りを正さなければいけない。

破邪顕正を体現する裁判官でありたい。

先に述べた通り破邪顕正は仏教用語なので、あまり仕事や日常会話などで登場する機会はありません。もし使うとしたら、こういった使い方ができる、ということです。

なお、破邪顕正における「邪」と「正」は、思想的、あるいは道義的な意味になります

・漢字の書き順が間違っているので、破邪顕正の精神で教えてあげよう。

・間違えた問題を復習しないのは、破邪顕正とはいえない。

破邪顕正のため、反復練習が欠かせない。

この例文のような、勉強や技術習得の場面で破邪顕正を使うことはありません。人として正しいか間違っているか、という尺度で使う言葉なので、注意しましょう。

\次のページで「「破邪顕正」の類義語は?違いは?」を解説!/

「破邪顕正」の類義語は?違いは?

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破邪顕正と意味が似ている四字熟語はいくつか存在します。ここで確認しましょう。

「勧善懲悪」

勧善懲悪は「かんぜんちょうあく」と読みます。冗談のような間違いで「完全超悪」と書かれていることがありますが、もちろん間違いなので気を付けましょう。勧善懲悪は「善を勧め、悪を懲らしめる」と書きます。その字の通り、善人や良い行いを誉め、悪人や悪い行いを戒めることをいう熟語です。また、物語の構成のひとつとしても知られており、ヒーローものや時代劇などのストーリーは勧善懲悪の典型といえるでしょう。

「天網恢恢」

天網恢恢は「てんもうかいかい」と読みます。もともと、孟子の言葉に由来する熟語です。天網は天に張られた(または天が張った)悪人や悪事を逃がさないための網で、恢恢は大きく広く広がっていることを意味します。語源となった孟子の言葉は、「天網恢恢疎にして失わず」「天網恢恢疎にして漏らさず」で、天に張られた網は大きく、目が粗いように思うかもしれないが、悪人や悪事を決して見逃さない、という意味です。天道は厳正でいつでも見ており、悪人や悪事が見逃されることはない、という戒めの言葉となっています。

破邪顕正や勧善懲悪と似た意味ですが破邪顕正や勧善懲悪では人が主体となっているのに対して、天網恢恢は天が主体となっているところがポイントです。「〇〇(人名など)は天網恢恢だ」のような使い方は間違いなので、注意しましょう。

「勧奨懲戒」

勧奨懲戒は「かんしょうちょうかい」と読みます。勧奨懲戒は「勧奨」と「懲戒」の2つの熟語からなる四字熟語です。勧奨は推奨と同じ意味で、他者に何かを勧める、という意味があります。懲戒はよくない行いなどを懲らしめ、戒めることで、社会人の方であれば「懲戒処分」などの形で見聞きしたことのある言葉かもしれません。

つまり、勧奨懲戒は直訳すると、誰かに何かを勧め、誰かの何かを戒める、という意味になります。これでは何のことかわかりませんが、熟語としての意味は「善い行いを勧め、悪い行いを戒める」という、勧善懲悪と同じような意味です。「勧奨」と「懲戒」のそれぞれの前に善と悪が入っていて、「(善を)勧奨(悪を)懲戒」だと考えれば、分かりやすくなるでしょう。本来の意味を暗にほのめかすような、珍しい四字熟語であるといえます。

「破邪顕正」の対義語は?

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悪い思想を破り、正しい思想を表すのが破邪顕正です。それでは、その破邪顕正の対義語をみていきましょう。

「跳梁跋扈」

跳梁跋扈は「ちょうりょうばっこ」と読みます。跳梁は跳ね回ること跋扈は悪人が我が物顔で振る舞い、悪事が横行することです。つまり、悪人が幅を利かせる状況や世の中のことをいいます。理不尽で悲惨な世の中を憂うような場面でよく使われる熟語です。正しい思想や良い行いがまったく行われない状況を指す言葉ですから、破邪顕正とは正反対といえます。

\次のページで「「悪逆無道」」を解説!/

「悪逆無道」

悪逆無道は「あくぎゃくむどう」と読みます。悪逆と無道のふたつの熟語からなっていますが、悪逆も無道も同じような意味です。悪逆は道理に背いた著しく悪い行いのことをいい、無道は人の道から外れたひどい行いのことをいいます。つまり、悪逆無道の意味は、人の道に外れた著しくひどい行い、のことです。

まさしく、破邪顕正によって破られる「邪な思想」そのものといえるでしょう。

「破邪顕正」を使いこなそう

今回の記事では、破邪顕正の意味や由来などについて説明しました。破邪顕正は読んで字のごとく、「邪(よこしま)な思想や行いを破り、正しい思想を顕す」という意味の言葉で、元々は仏教用語です。そのため、あまり一般的な文章や会話で見かける機会の多い言葉とはいえません。

また、破邪顕正の使い方についても解説しました。破邪顕正で「間違い」「正しい」といっているのはあくまでも思想的な正邪であって、設問に対する正解と不正解を表現するのには使えない、という点に注意が必要です。同様に、技術習得に関する内容についても破邪顕正を使うのは間違いなので、注意しましょう。この点も、破邪顕正があまり一般的な熟語になっていない一因かもしれません。

さらに、破邪顕正の類義語、対義語についてもご紹介しました。類義語や対義語の中には、破邪顕正よりも一般的な文章での使用場面が多い熟語もあるので、破邪顕正を使いたいと思ったときに、よりその場面にふさわしい方を選択できるようにしておくといいでしょう。

破邪顕正そのものは、本来の意味としては「正しい思想を広めるために誤った思想を破る」という意味合いが強く、仏教的な思想が色濃く反映された言葉なので、積極的に使用するのは難しいかもしれません。

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【四字熟語】「破邪顕正」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「破邪顕正」について解説する。

端的に言えば破邪顕正の意味は「誤った思想や邪説を否定して正しい思想を広めること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「破邪顕正」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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「破邪顕正」の意味や語源・使い方まとめ

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破邪顕正は「はじゃけんしょう」と読みます。それでは、さっそく「破邪顕正」の意味や由来、使い方についてみていきましょう。

「破邪顕正」の意味は?

破邪顕正には、次のような意味があります。

誤った考えを否定し、正しい考えを示すこと。不正を破って正義をあきらかにすること。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「破邪顕正」

仏教で使用される言葉で、読み下すと「邪(よこしま)を破り、正しきを顕す」となります。邪とは、よくない考えや思想のことです。そのような誤った考えや思想を打破して、正しい物事を示すのが、破邪顕正の意味となります。

「破邪顕正」の由来は?

破邪顕正は仏教由来の言葉ですが、正確な出典は吉蔵が著した「三論玄義」という書物です。仏教には様々な宗派がありますが、そのひとつに「三論宗」があります。三論玄義を著した吉蔵は、三論宗を大成させた人物として知られている仏僧です。

その三論玄義の中で、「論三有りと雖も、義は但だ二轍。一に曰はく顕正、二に曰はく破邪。破邪は則ち下沈淪を拯ひ、顕正は則ち上大法を弘む」と述べられている箇所があり、この一文から一部を抜粋してできたのが破邪顕正です。

この文は三論玄義の中でも重要な部分について述べられた一説で、簡単にいえば「重要な論が3つあるが、本当に大切なことは顕正と破邪である。破邪は誤った論を退け、顕正は正しい法を広める」と述べられています。破邪顕正は、三論宗においてもっとも重要な思想であるともいえるでしょう。

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