この記事では「三綱五常」について解説する。

端的に言えば三綱五常の意味は「儒教の教えであり、人として守り重んずべき道徳のこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「三綱五常」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「三綱五常」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「三綱五常」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「さんこうごじょう」です。正確な意味をつかんでから、語源や使い方について詳しくチェックしていきますよ。

「三綱五常」の意味は?

「三綱五常」には、次のような意味があります。もともとは儒教の教えではありますが、まずは基本的な意味合いを確認しておきましょう。

1.儒教で、人として常に踏み行い、重んずべき道のこと。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「三綱五常」

「三綱五常」は「三綱」と「五常」がセットになった表現で、三つの基本的な道徳と五つの守るべき正しい行いのことを表しています。

「三綱」とは、君臣・父子・夫婦間の道徳のことで、中国では人間社会の秩序を定める人としての道の根本として重要なものと考えられてきました。

「五常」は仁・義・礼・智・信の五つの道義のことです。仁は他人の不幸を見過ごせない心、義は不善を恥じにくむ心、礼は権威に服従する心、智は善悪を弁別する心の四つは孟子が説いたものであり、これに信を加えて五常となっています。

「三綱五常」の語源は?

次に「三綱五常」の語源を確認しておきましょう。

「三綱五常」の由来は、中国前漢時代の董仲舒(とうちゅうじょ)という儒学者の書物や言葉などです。

君臣の関係について最初に「三綱」と呼んだのは、董仲舒が書いた『春秋繁露(しゅんじゅうばんろ)』であるとされています。「五常」のほうは、孟子が説いた「仁・義・礼・智」の四徳に「信」を加えたものを董仲舒が王者が修めるべき「五常の道」と唱えたということです。孟子は、『論語』で有名な孔子に次いで儒学では有名な人ですね。

とくに中国では、受け継がれてきた教育や文化の一つでもあり、重要な言葉となっています。

\次のページで「「三綱五常」の使い方・例文」を解説!/

「三綱五常」の使い方・例文

「三綱五常」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。使い方では、文法的な見方からもチェックしていきますよ。

1.彼は、三綱五常の教えの通り人道を大切にしているため、みんなに信頼されている。
2.日本人は、ときには地震や台風、水害などの被災地域に配慮や援助ができる三綱五常が身についた国民性を持っている。

例文1.は、人道上の教えを大切にしている誠実な人だけに周囲の人に信頼されているということです。例文の2.では、各地で災害があったときに、日本人は被災地域への理解があり正しい情報を持ってそれぞれに配慮や援助をする人が多いということを表しています。

文法上の使い方としては、例文1.は「三綱五常の…」、例文2.は「三綱五常が…」となっており、いずれも四字熟語をそのまま名詞として使っていますよ。形容動詞のように「三綱五常な…」や動詞のように「三綱五常する…」という特別な使い方は一般的ではありません。

「三綱五常」の類義語は?違いは?

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それでは、「三綱五常」の類義語についての説明です。儒教の考えがもとになっている「三綱五常」ですが、意味の近い四字熟語について紹介していくので一緒に見ていきましょう。

「五倫五常」

「三綱五常」の類義語には、「五倫五常(ごりんごじょう)」があります。意味は、儒教の教えであり、人として常に守るべき道徳のことです。「五倫」は基本的に人間関係を規律するもので「君臣の義」「父子の親」「夫婦の別」「長幼の序」「朋友の信」の五つがあります。「五常」は「三綱五常」と同じく「仁・義・礼・智・信」の五つです。

ちょうど「三綱五常」に「長幼の序」と「朋友の信」を加えたのが「五倫五常」となり、意味は殆ど同じになります。

\次のページで「「世道人心」」を解説!/

「世道人心」

もう一つの類義語には、「世道人心(せどうじんしん)」があります。世の中の道徳とそれらを守る人々の心のことという意味です。「世道」は人として守るべき同義や社会道徳のこと、「人心」は人々の心のことを表していますよ。

道徳そのものを表す「三綱五常」とは違って、「世道人心」は道徳と人々の心までが意味に含まれていますが、概ね意味は近く類義語として紹介しました。

「三綱五常」の対義語は?

次に、「三綱五常」の対義語についての説明です。「三綱五常」の対義語なので、人としてこれではいけないという内容の対義語を詳しく見ていきましょう。

「五濁悪世」

「三綱五常」の対義語には、「五濁悪世(ごじょくあくせ)」があります。仏教語であり、意味は五つの汚れに満ちている悪い世のことです。「五濁」とは、貪りや怒りなど人の浅ましさがはびこる「煩悩濁(ぼんのうじょく)」や誤った悪い考えや思想の「見濁(けんじょく)」などの五つがあります。

人として守るべき道徳を表す「三綱五常」に対して、「五濁悪世」は天災などの人為的なこと以外の内容も含まれていますが、基本的には反対の意味合いになっていますよ。

「阿修羅道」

もう一つの対義語には、「阿修羅道(あしゅらどう)」があります。六道の一つで阿修羅が住み争いや怒りが絶えない世界という意味です。六道とは、あらゆる生き物がその行いの結果として輪廻転生する六つの世界のことを表しています。

「三綱五常」の通りに人が道徳を守っていれば争いは起きにくいので、争いが絶えない世界である「阿修羅道」は対義語となりますね。

「三綱五常」の英訳は?

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最後に、「三綱五常」の英訳についての説明です。漢字で表現される四字熟語とは、言語の違いはありますが意味に関連性のある英語表現を見ていきましょう。

「Confucian ethics」

「三綱五常」の英訳には、「Confucian ethics」があります。直訳すると「儒教的な道徳観」です。「Confucian」は儒教のことを表しており、「ethics」のほうは「倫理、道義、道徳観」などを表しています。

「ethics」の代わりに「morality」を使ってもよいですし、学問的であることを強調すると「moral phylosophy(道徳哲学)」という言い方もありますね。

\次のページで「「三綱五常」を使いこなそう」を解説!/

「三綱五常」を使いこなそう

今回の記事では「三綱五常」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「三綱五常」の意味は、人として守るべき道徳のことです。基本的にはよいことではあるのですが、三綱の秩序の部分で「服従」というニュアンスがあり、今日では「パワハラ」や「男女平等」といったところでマイナスのイメージを持たれる可能性があります。そのため、あらゆる場合におすすめできる表現とは言えません。

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【四字熟語】「三綱五常」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「三綱五常」について解説する。

端的に言えば三綱五常の意味は「儒教の教えであり、人として守り重んずべき道徳のこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「三綱五常」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「三綱五常」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「三綱五常」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「さんこうごじょう」です。正確な意味をつかんでから、語源や使い方について詳しくチェックしていきますよ。

「三綱五常」の意味は?

「三綱五常」には、次のような意味があります。もともとは儒教の教えではありますが、まずは基本的な意味合いを確認しておきましょう。

1.儒教で、人として常に踏み行い、重んずべき道のこと。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「三綱五常」

「三綱五常」は「三綱」と「五常」がセットになった表現で、三つの基本的な道徳と五つの守るべき正しい行いのことを表しています。

「三綱」とは、君臣・父子・夫婦間の道徳のことで、中国では人間社会の秩序を定める人としての道の根本として重要なものと考えられてきました。

「五常」は仁・義・礼・智・信の五つの道義のことです。仁は他人の不幸を見過ごせない心、義は不善を恥じにくむ心、礼は権威に服従する心、智は善悪を弁別する心の四つは孟子が説いたものであり、これに信を加えて五常となっています。

「三綱五常」の語源は?

次に「三綱五常」の語源を確認しておきましょう。

「三綱五常」の由来は、中国前漢時代の董仲舒(とうちゅうじょ)という儒学者の書物や言葉などです。

君臣の関係について最初に「三綱」と呼んだのは、董仲舒が書いた『春秋繁露(しゅんじゅうばんろ)』であるとされています。「五常」のほうは、孟子が説いた「仁・義・礼・智」の四徳に「信」を加えたものを董仲舒が王者が修めるべき「五常の道」と唱えたということです。孟子は、『論語』で有名な孔子に次いで儒学では有名な人ですね。

とくに中国では、受け継がれてきた教育や文化の一つでもあり、重要な言葉となっています。

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