この記事では「応急手当」について解説する。

端的に言えば応急手当の意味は「けが人や急病人に対してとりあえず施す手当」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「応急手当」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「応急手当」の意味や語源・使い方まとめ

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応急手当は「おうきゅうてあて」と読みます。それでは、さっそく「応急手当」の意味や由来、使い方についてみていきましょう。

「応急手当」の意味は?

応急手当には、次のような意味があります。

急病人やけが人に対して、とりあえず施す手当て。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「応急手当」

突然のけがや急病の際、その場でできる手当のことをいいます。「応急」とは、「急(に発生した状況)に応える」という意味で、急場にとりあえず間に合わせることです。手当は「事態に応じた必要な処置を施す」という意味があります。

応急と手当の組み合わせでできた熟語です。

「応急手当」の使い方・例文

それでは、応急手当を使った例文をみていきましょう。

1、キャンプに行くなら、簡単な応急手当くらいは覚えておいたほうがいい。

2、迅速な応急手当のおかげで、大事に至らずに済んだ。

3、応急手当はきちんと学ばないと、かえって事態を悪化させてしまうこともある。

ここで挙げた三つの例文は、それぞれ微妙にニュアンスが異なります。

1の例文では、応急手当は「応急手当の方法」を指していますね。つまり、この例文での「応急手当」は応急手当の具体的な方法を指した名詞的なニュアンスになっているのです。

2の例文では、応急手当を行ったことまでが意味に含まれています。「応急手当」という四字熟語の中に、名詞的な意味での「応急手当」を「行う」ことまで含めた動詞的なニュアンスとなっているのです。

3の例文では、名詞的な意味と動詞的な意味の両方が含まれています。「きちんと学ぶ」内容に、応急手当そのものの技術を習得することと、応急手当を使うことを学ぶ、という意味が含まれているからです。

ややこしい説明だったかもしれませんが、使い方の幅が広い、と考えればいいでしょう。

1、倒れていた人に応急手当を行った。

2、倒れていた人を応急手当した。

このどちらの用法も間違いではありません。

「応急手当」の類義語は?違いは?

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応急手当とよく似た言葉はいくつかあります。それらの意味と違いについて、ここで確認しておきましょう。

「応急措置」

応急措置は「おうきゅうそち」と読みます。緊急の際に差し当たって行う、とりあえずの処置のことです。「措置」とは、「うまく取り計らう」という意味になります。応急手当と非常に似ていますが、応急措置はけがや急病人に限らない、つまり相手が人でなくても使う場合がある言葉です。

・ロープが切れてしまったので、応急措置として固く結ぶことにした。

・転倒してけがをした人に、応急措置として消毒薬と絆創膏を使用した。

この例文では、人でないものに対して応急措置を使っているケースと、人に対して応急措置を使っているケースになっていますが、どちらも間違いではありません。

「応急処置」

応急処置は「おうきゅうしょち」とよみます。「処置」には、「物事を取り計らい、かたをつけること」と「傷や病気の手当てをすること」の二つの意味がありますが、ここで使われているのは二つ目の「傷や病気の手当てをすること」という意味です。応急処置の意味は「けがや急病人に対して、とりあえず行う手当て」で、応急手当と意味は同じとなります。この二つの違いは、実施する人の違いです。一般人が行うのが「応急手当」で、医師や救急隊員など専門家が行うのが「応急処置」なので、使い分けられるように覚えておきましょう。

1、意識不明で倒れている人に対して、勇気ある市民が応急処置を行った。

2、救急隊員による必死の応急手当で、九死に一生を得た。

これらの例文は一見、間違いがないように見えますが、1の例文では市民が応急処置を行ったことになっています。また、2の例文はせっかく救急隊員がいるのに応急手当しかしなかったということです。具体的には、救急隊員や医師などの専門家でないとできないような処置まで含まれているのが応急処置、あくまでも一般市民レベルの処置が応急手当、と覚えておくといいでしょう。

「救命処置」

救命処置は「きゅうめいしょち」と読みます。救命とは読んで字のごとく「命を救う」行為のこと、逆にいえば命に関わるような物事です。つまり、救命処置とは応急手当と応急処置のうち、命に関わる処置のことをいいます。具体的には、心肺蘇生、AEDの使用、気道異物除去のことを指す言葉です。心肺蘇生、AEDの使用、気道異物除去は専門家でなくても行えますが、専門家も実施する緊急性と専門性の高い処置だといえます。そのため、救命処置には応急手当と応急処置の両方が含まれている、といえるのです。

応急手当と救命処置について正しく知ろう

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類義語の項でも説明しましたが、「応急手当」「応急措置」「応急処置」「救命措置」と、よく似ていて意味が混同されている医療関係の言葉は多くあります。ここでは、事故現場などに救急車が到着して病院に搬送される前までの状況、つまり応急手当や応急処置が行われる状況でよく使われる言葉について整理しましょう。

\次のページで「「人工呼吸」」を解説!/

「人工呼吸」

人工呼吸は「じんこうこきゅう」と読みます。自力での呼吸が停止してしまっている人に対して、ほかの人や機械によって肺に空気を送り込み、呼吸を促す処置です。たとえわずかであっても、自力で呼吸できている人に対して人工呼吸を行うと、本人が息を吐くタイミングと息を吹き込むタイミングが重なってしまい、かえって呼吸を阻害してしまうことがあります。人工呼吸はあくまでも、自発呼吸が止まっている人に対して行う処置です。

「心肺蘇生」

心肺蘇生は「しんぱいそせい」と読みます。心肺蘇生と心臓マッサージが混同されることがありますが、人工呼吸と心臓マッサージを組み合わせて心肺機能を復活させることが心肺蘇生です。ちなみに、心臓マッサージも正式な名称ではありません。胸骨、いわゆる「みぞおち」を強く圧迫して外部から心臓を動かす処置のことを心臓マッサージと呼ぶことがありますが、正しくは「胸骨圧迫」です。こちらも、心臓が動いている人に対して実施すると致命的になりかねない上に、胸骨が折れる可能性もあります。傷病者が心停止し、一刻を争う事態で行うべき処置です。

「気道確保」

気道確保は「きどうかくほ」と読みます。気道とは、呼吸する際に空気が出入りする道筋のことです。先に説明した人工呼吸を行う際、まずは気道を確保してから行わないと、せっかく吹き込んだ息が外側に漏れてしまいます。異物を取り除き、スムーズに空気が出入りするよう姿勢を整えてから人工呼吸を行うことが大切です。

「応急手当」を使いこなそう

今回の記事では、「応急手当」の意味や由来、使い方について説明しました。特に、応急措置、応急処置との違いについて正しく認識し、使いこなせるようにしましょう。これを知っておくことで、自分が読んでいる文章に「応急手当」や「応急処置」が出てきた際の意味合いを理解することができます。

最後に、応急手当や応急処置、特に救命処置は、正しい知識と技術をもって実施することが大切です。いざというときに正しく行えば相手の命を救うことができますが、間違ったやり方ではかえって命を奪うことにもなりかねません。もし興味があれば、各地で行われている救命講習などの講習会を受講するといいでしょう。

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【四字熟語】「応急手当」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「応急手当」について解説する。

端的に言えば応急手当の意味は「けが人や急病人に対してとりあえず施す手当」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元塾講師で、解説のわかりやすさに定評のあるgekcoを呼んです。一緒に「応急手当」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/gekco

本業では出版物の校正も手がけ、一般教養に強い。豊富な知識と分かりやすい解説で好評を博している。

「応急手当」の意味や語源・使い方まとめ

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応急手当は「おうきゅうてあて」と読みます。それでは、さっそく「応急手当」の意味や由来、使い方についてみていきましょう。

「応急手当」の意味は?

応急手当には、次のような意味があります。

急病人やけが人に対して、とりあえず施す手当て。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「応急手当」

突然のけがや急病の際、その場でできる手当のことをいいます。「応急」とは、「急(に発生した状況)に応える」という意味で、急場にとりあえず間に合わせることです。手当は「事態に応じた必要な処置を施す」という意味があります。

応急と手当の組み合わせでできた熟語です。

「応急手当」の使い方・例文

それでは、応急手当を使った例文をみていきましょう。

1、キャンプに行くなら、簡単な応急手当くらいは覚えておいたほうがいい。

2、迅速な応急手当のおかげで、大事に至らずに済んだ。

3、応急手当はきちんと学ばないと、かえって事態を悪化させてしまうこともある。

ここで挙げた三つの例文は、それぞれ微妙にニュアンスが異なります。

1の例文では、応急手当は「応急手当の方法」を指していますね。つまり、この例文での「応急手当」は応急手当の具体的な方法を指した名詞的なニュアンスになっているのです。

2の例文では、応急手当を行ったことまでが意味に含まれています。「応急手当」という四字熟語の中に、名詞的な意味での「応急手当」を「行う」ことまで含めた動詞的なニュアンスとなっているのです。

3の例文では、名詞的な意味と動詞的な意味の両方が含まれています。「きちんと学ぶ」内容に、応急手当そのものの技術を習得することと、応急手当を使うことを学ぶ、という意味が含まれているからです。

ややこしい説明だったかもしれませんが、使い方の幅が広い、と考えればいいでしょう。

1、倒れていた人に応急手当を行った。

2、倒れていた人を応急手当した。

このどちらの用法も間違いではありません。

「応急手当」の類義語は?違いは?

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応急手当とよく似た言葉はいくつかあります。それらの意味と違いについて、ここで確認しておきましょう。

「応急措置」

応急措置は「おうきゅうそち」と読みます。緊急の際に差し当たって行う、とりあえずの処置のことです。「措置」とは、「うまく取り計らう」という意味になります。応急手当と非常に似ていますが、応急措置はけがや急病人に限らない、つまり相手が人でなくても使う場合がある言葉です。

・ロープが切れてしまったので、応急措置として固く結ぶことにした。

・転倒してけがをした人に、応急措置として消毒薬と絆創膏を使用した。

この例文では、人でないものに対して応急措置を使っているケースと、人に対して応急措置を使っているケースになっていますが、どちらも間違いではありません。

「応急処置」

応急処置は「おうきゅうしょち」とよみます。「処置」には、「物事を取り計らい、かたをつけること」と「傷や病気の手当てをすること」の二つの意味がありますが、ここで使われているのは二つ目の「傷や病気の手当てをすること」という意味です。応急処置の意味は「けがや急病人に対して、とりあえず行う手当て」で、応急手当と意味は同じとなります。この二つの違いは、実施する人の違いです。一般人が行うのが「応急手当」で、医師や救急隊員など専門家が行うのが「応急処置」なので、使い分けられるように覚えておきましょう。

1、意識不明で倒れている人に対して、勇気ある市民が応急処置を行った。

2、救急隊員による必死の応急手当で、九死に一生を得た。

これらの例文は一見、間違いがないように見えますが、1の例文では市民が応急処置を行ったことになっています。また、2の例文はせっかく救急隊員がいるのに応急手当しかしなかったということです。具体的には、救急隊員や医師などの専門家でないとできないような処置まで含まれているのが応急処置、あくまでも一般市民レベルの処置が応急手当、と覚えておくといいでしょう。

「救命処置」

救命処置は「きゅうめいしょち」と読みます。救命とは読んで字のごとく「命を救う」行為のこと、逆にいえば命に関わるような物事です。つまり、救命処置とは応急手当と応急処置のうち、命に関わる処置のことをいいます。具体的には、心肺蘇生、AEDの使用、気道異物除去のことを指す言葉です。心肺蘇生、AEDの使用、気道異物除去は専門家でなくても行えますが、専門家も実施する緊急性と専門性の高い処置だといえます。そのため、救命処置には応急手当と応急処置の両方が含まれている、といえるのです。

応急手当と救命処置について正しく知ろう

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類義語の項でも説明しましたが、「応急手当」「応急措置」「応急処置」「救命措置」と、よく似ていて意味が混同されている医療関係の言葉は多くあります。ここでは、事故現場などに救急車が到着して病院に搬送される前までの状況、つまり応急手当や応急処置が行われる状況でよく使われる言葉について整理しましょう。

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