今回は「金属結晶」について解説していきます。

金属結晶は、結晶の種類の1つです。主に金属元素がこの結晶構造をとるぞ。「金属光沢がある」、「電気をよく通す」、「熱が伝わりやすい」といった金属の特徴がみられる理由は、金属結晶内の電子にある。ぜひ、この機会に金属結晶について理解を深めてみてくれ。

環境工学、エネルギー工学を専攻している理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

金属結晶とは?

金属結晶とは?

image by Study-Z編集部

物質を構成する原子は、希ガス原子を除いて、電気的に不安定な存在です多くの原子は、不安定な状態を解消するために、原子同士で集合体を形成し、分子や結晶を構成します。このとき、原子間には結合が生じますね。

金属元素も、原子単独では不安定であることから、金属特有の結晶を作ります。この結晶のことを、金属結晶というのです。そして、金属結晶を構成する原子間の結合のことを金属結合と呼びます。金属結合は、金属原子の価電子が別のエネルギー準位に移り、自由電子になることで生じますよ。自由電子は、金属結晶内の空間を自由に移動することができます

また、金属結晶内の原子は、規則正しい繰り返し構造を成していますよ。金属の特徴である金属光沢展性および延性電気伝導性熱伝導性といった性質は、自由電子の存在と結晶内の繰り返し構造に起因するのです。これらの話題は、記事の後半で詳しく解説します。

金属結晶の構造

金属結晶は、規則正しい繰り返し構造をもつことを先ほど述べました。ここでは、この繰り返し構造の種類について解説していきます。金属結晶の繰り返し構造には、体心立方格子面心立方格子六方最密構造の3種類がありますよ。

体心立方格子は、原子を2つ含む立方体を最小単位とする繰り返し構造です。この構造では、配位数(1つの原子に隣り合う原子の数)は8個なります。ナトリウムや鉄が、この構造をとりますよ。また、面心立方格子は、原子を4つ含む立方体を最小単位とする繰り返し構造です。アルミニウムや銅が、この構造をとります。この構造では、配位数は12個です。そして、六方最密構造は、原子を2つ含む六角柱を最小単位とする繰り返し構造ですよ。マグネシウムや亜鉛が、この構造をとります。この構造では、配位数は12個ですよ。

繰り返し構造の種類は、金属結晶の密度や機械的強度などに結び付く要素の1つです。材料力学といった学問では、このような点をより深く解明していきますよ。興味を持たれた方は、ぜひ学んでみてください。

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金属の特徴

金属光沢

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ここからは、金属の特徴について解説していきます。1つ目は、金属光沢です。金属結晶内にある自由電子に、光が入射すると、強い反射をおこします。光の正体は電磁波であり、そのエネルギーを自由電子が吸収するのです。エネルギーを吸収した電子は、そのエネルギーを放出しようとします。このエネルギーが、反射光となるのです。このような理由から、金属には特有の光沢が見られます

また、金や銅は可視光の一部を吸収するため、反射光の色が特有なものとなりますよ。他の金属は、可視光線をほとんど吸収しないので、反射光の色には特徴はありません。

展性および延性

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続いて、展性および延性について、解説していきます。金属は薄く広げることができるという特徴を持っていますよ。この特徴のことを、展性というのです。金属に展性があることを活かして、金箔やアルミホイル、薄い鉄板などを作っています。また、金属には延性がありますよ。延性とは、細く長く延ばすことができるという特徴のことをさします。この性質を利用して、針金やワイヤー、電線などを作っているのです

金属結晶に対して、せん断応力や圧力などを加えた場合も、破壊が起こらずに、展性および延性により変形するのはなぜでしょうか。その理由の1つとして、金属結晶内にすべり面が存在することが挙げられます。すべり面をまたいで、両側の原子は左右に移動することができるのです。したがって、金属結晶はすべり面が途切れない限り、変形を続けます。

ただし、実際はすべり面が途切れる前に、結晶内に転位と呼ばれる原子配列の乱れが生じることがありますよ。転位が蓄積されると、金属材料は破壊へ至ります

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電気伝導性

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金属の特徴の一つに、電気伝導性があります。金属は電気をよく通すのですね。金属の中で最も電気伝導度が高いのは銀です。その次に、電気を通しやすいのが銅ですよ。銅は、家庭内の配線や家電製品の本体からコンセントに至る電気コードなどに利用されています。ただ、写真に示したような送電線などには銅線は使用されていません。銅は密度が高く、電柱に負担がかかるからです。送電線には、密度が低く、電気伝導性が比較的高いアルミニウムが使用されています

金属結晶内に存在する自由電子は、電流の担い手になることができますよね。金属が電気を通しやすい理由は、ここにあります。金属結晶に電圧がかけられると、電場の影響を受けて自由電子が次々と移動を始めるのです。

熱伝導性

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熱伝導性も、金属の特徴の1つです。金属が熱を伝えやすい理由は、自由電子の運動を用いて説明できますよ。金属結晶内において、熱は自由電子の振動として伝わります。自由電子は、結晶内を自由に移動できるので、隅から隅まで熱が迅速に伝わるのです。金属以外の場合は、結晶内において電子が動くことができる範囲が決まっているので、振動が伝わりにくいのですね。

また、金属は融点が高いものが多いです。融点が高く、熱が伝わりやすいので、金属がフライパンや鍋などの調理器具の材料として用いられていますよね。近年は、金属に代わる材料として、セラミックが使用される機会も増えました。実際、セラミックのフライパンなどが販売されています。

合金について

ここまで、すべての金属に共通する特徴を述べてきましたが、各金属元素は異なる融点や強度、色などを持っており、個性とも言える部分も多くあります2種類以上の金属がもつ良い部分を互いに生かすために、古い時代から合金が使われてきました

単体の鉄は、湿度の高い場所で、さびやすいという欠点がありますよね。しかしながら、鉄にクロムやニッケルをまぜると、さびに強い合金が出来上がります。その合金とは、ステンレスです。また、合金にすることで結晶構造が変わり、機械的な強度が増すという例もあります。アルミニウムに銅やマンガン、マグネシウムなどを加えたジェラルミンは、軽くて強いことから、航空機の機体などに使用されていますよ

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金属結晶について学ぼう!

金属結晶について学ぶと、金属の光沢、展性、延性、電気伝導性、熱伝導性などが生じる理由がよくわかります。多くの工業製品は、金属のこうような特徴を活かして、作られていますよ。

この記事には、結晶の構造についてなどの難しい話題も含まれていますが、豆知識として頭の隅に覚えておいて損はないはずです。ぜひ、この機会に金属結晶について学んでみてくださいね。

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化学無機物質理科

3分で簡単金属結晶!どんな構造になってる?特徴は?理系学生ライターがわかりやすく解説

今回は「金属結晶」について解説していきます。

金属結晶は、結晶の種類の1つです。主に金属元素がこの結晶構造をとるぞ。「金属光沢がある」、「電気をよく通す」、「熱が伝わりやすい」といった金属の特徴がみられる理由は、金属結晶内の電子にある。ぜひ、この機会に金属結晶について理解を深めてみてくれ。

環境工学、エネルギー工学を専攻している理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

金属結晶とは?

金属結晶とは?

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物質を構成する原子は、希ガス原子を除いて、電気的に不安定な存在です多くの原子は、不安定な状態を解消するために、原子同士で集合体を形成し、分子や結晶を構成します。このとき、原子間には結合が生じますね。

金属元素も、原子単独では不安定であることから、金属特有の結晶を作ります。この結晶のことを、金属結晶というのです。そして、金属結晶を構成する原子間の結合のことを金属結合と呼びます。金属結合は、金属原子の価電子が別のエネルギー準位に移り、自由電子になることで生じますよ。自由電子は、金属結晶内の空間を自由に移動することができます

また、金属結晶内の原子は、規則正しい繰り返し構造を成していますよ。金属の特徴である金属光沢展性および延性電気伝導性熱伝導性といった性質は、自由電子の存在と結晶内の繰り返し構造に起因するのです。これらの話題は、記事の後半で詳しく解説します。

金属結晶の構造

金属結晶は、規則正しい繰り返し構造をもつことを先ほど述べました。ここでは、この繰り返し構造の種類について解説していきます。金属結晶の繰り返し構造には、体心立方格子面心立方格子六方最密構造の3種類がありますよ。

体心立方格子は、原子を2つ含む立方体を最小単位とする繰り返し構造です。この構造では、配位数(1つの原子に隣り合う原子の数)は8個なります。ナトリウムや鉄が、この構造をとりますよ。また、面心立方格子は、原子を4つ含む立方体を最小単位とする繰り返し構造です。アルミニウムや銅が、この構造をとります。この構造では、配位数は12個です。そして、六方最密構造は、原子を2つ含む六角柱を最小単位とする繰り返し構造ですよ。マグネシウムや亜鉛が、この構造をとります。この構造では、配位数は12個ですよ。

繰り返し構造の種類は、金属結晶の密度や機械的強度などに結び付く要素の1つです。材料力学といった学問では、このような点をより深く解明していきますよ。興味を持たれた方は、ぜひ学んでみてください。

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