今回は「共有結合結晶」について解説していきます。

共有結合結晶とは、結晶の種類の1つです。結晶とは、物質がとりうる形態の1つです。結晶共有結合結晶になる物質は、融点が高い、硬いといった特徴があり、工業的な価値が高い。中には、宝石として扱われるものもあるほどです。ぜひこの機会に、共有結合結晶について学んでみてくれ。

環境工学、エネルギー工学を専攻している理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。 

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

共有結合結晶について学ぶ前に

共有結合とは?

共有結合結晶について学ぶ前に、共有結合について復習しておきましょう。物質を構成しているのは、原子と呼ばれる非常に小さな粒です。物質の性質は原子の種類や構成によって決定されています。ただ、希ガスと呼ばれる原子以外は、電気的な中性を保っておらず、不安定な状態にあるのです。そのため、不安定な原子同士が何個か集合して電気的に中性である塊を作ることがあります

複数の原子が集まって塊を作るとき、原子間には結合が作られますよ。結合は、原子による塊の安定性を向上させるために必要になるのです。結合の種類には、共有結合イオン結合金属結合などがあります。これらはすべて、原子の外側にある電子という粒子の原子間におけるやり取りがあることで実現しますよ

今回は、共有結合に焦点を当てて解説しますね共有結合は、複数の原子間で価電子を共有することで作られます。例外もありますが、主に非金属元素同士の結合の際に、共有結合が生じますよ。共有結合によって構成された原子の塊のことを分子といいます。

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結晶とは?

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続いて、結晶についても簡単に復習しておきましょう。結晶は、ある程度の大きさのをもつ原子や分子の集合体です。また、原子や分子が規則正しい繰り返し構造をとっていることも、結晶の特徴ですよ。結晶の種類には、共有結合結晶イオン結晶金属結晶分子結晶などがあります。また、原子や分子が規則正しい繰り返し構造をとらずに集合している場合も考えられますよね。このような塊は、アモルファス(非結晶)と呼ばれており、結晶とは区別されています。

そして、単結晶多結晶の違いについても理解しておきましょう。単結晶とは、1つの原子や分子の集合体において、隅から隅へと連続的な規則正しい繰り返し構造をとっているものです。一方、多結晶は複数の単結晶から構成された1つの原子や分子の集合体のことをさします。

共有結合結晶について学ぼう!

共有結合結晶について学ぼう!

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それでは、いよいよ共有結合結晶について解説していきますね。共有結合結晶は、名前の通り、全体が共有結合のみで構成された結晶のことをさします結晶を構成する原子同士が、すべて共有結合がつながっていることから、共有結合結晶は非常に大きな分子であると捉えることもできますよ

共有結合結晶は、ほかの種類の結晶と比べて、非常に硬く融点が高いという特徴があります。また、反応性も低い傾向がありますよ。このようなことから、共有結合結晶をとる物質は、工業的な価値などが高く、高い値段で取引されることが多いです。共有結合結晶をとる代表的な物質は、炭素二酸化ケイ素ケイ素などですよ。この後、これらの物質について紹介していきますね。

共有結合結晶の例

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ダイヤモンド(炭素)

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共有結合結晶の中で最も有名なものは、ダイヤモンドでしょう。ダイヤモンドは炭素の共有結合結晶であり、炭素原子間が四面体状の共有結合で結ばれています。また、ダイヤモンドは天然に存在する物質の中で最も硬いとされており、電気を通しません。そのため、工業的価値は高く、研磨剤切断用の刃などに用いられています。見た目が非常に美しいことから、ダイヤモンドは宝石としての価値も高いですよね

天然のダイヤモンドは、地面奥深くの高温高圧条件下で時間をかけて出来上がります。最近は、このような条件を機械で再現することにより、人工ダイヤモンドも作られるようになりました。ちなみに、現在、ダイヤモンドの総産出量はロシアが最も多いとされていますよ。

実は、身近なところにも炭素からなる材料はあります。それは、鉛筆やシャープペンシルなど芯です。しかしながら、鉛筆の芯は、ダイヤモンドとは似て非なるものですよね。それもそのはず、鉛筆の芯は黒鉛と呼ばれるもので、完全な共有結合結晶ではありません。そのため、黒鉛はダイヤモンドに比べて、強度は劣ります。そして、黒鉛は平面構造をもち、その平面上に自由電子が存在するので、電気伝導性がありますよ。このように、同じ元素から成るが、構造や性質が異なるもののことを同素体と呼びます

クリスタル・水晶・石英(二酸化ケイ素)

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続いて、二酸化ケイ素を紹介ますね。二酸化ケイ素は、共有結合結晶となることが知られています酸素原子とケイ素原子が四面体状の共有結合で結びついているのです。二酸化ケイ素は、クリスタルの主成分ですよ。クリスタルの別名は水晶石英です。二酸化ケイ素は、ダイヤモンド同様、工業的な価値が高いとされています。

二酸化ケイ素の結晶に、電気を通すと、高周波で振動するのです。このとき、振動数が一定であることから、時計に利用されていますよ。このような時計のことを、クォーツ時計といいます。また、近年では、コンピュータや無線通信などにも、二酸化ケイ素の結晶は用いられるようになりました。

また、二酸化ケイ素が原料となる工業生産は多くあります。例えば、ガラスです。ガラスの主な原料は、珪砂、ソーダ灰、石灰ですが、珪砂の主成分は二酸化ケイ素ですよ。また、食品用の乾燥材として使われているシリカゲルも、二酸化ケイ素から作られていますよ。

 

シリコン(ケイ素)

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最後に、シリコンについて学びましょう。シリコンは、単体のケイ素で、共有結合結晶となることが知られています。ダイヤモンドや二酸化ケイ素と同様に、四面体状の共有結合でケイ素原子同士が結びついていますよ。シリコンは、半導体の原料であり、工業的な価値は非常に高いです

半導体部品には、電気を一方向にしか流さない素子であるダイオード、電流増幅素子であるトランジスタ、スイッチング素子であるMOSFETなどがあります。これらは、PCやスマートフォンの頭脳であるCPUに組み込まれていますよ最新のCPUに内蔵されている半導体素子の数は1億個を超えるようです

また、これらの半導体はインバータコンバータにも使用されています。インバータやコンバータは、モーター制御などに用いられており、今や電気自動車や鉄道車両には不可欠な回路です。これらに加えて、太陽光発電に用いる太陽電池(ソーラーパネル)にも、シリコンが使用されていますよ

\次のページで「共有結合結晶について理解を深めよう!」を解説!/

共有結合結晶について理解を深めよう!

この記事では、共有結合結晶とは一体何なのかということを説明した後、共有結合結晶になる物質についても詳しく説明しました。今回紹介したダイヤモンド、二酸化ケイ素、シリコンは、いずれも工業的な価値が高く、身近な製品の原料にもなっていますよ。

共有結合結晶についての解説は多くの書籍などでなされていますが、共有結合結晶になる物質についてまで踏み込んだ解説は少ない印象があります。ぜひ、この機会に共有結合結晶について理解を深めてみてくださいね。

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化学物質の状態・構成・変化理科

3分で簡単共有結合結晶!どんな結晶のこと?例えば何がある?理系学生ライターがわかりやすく解説

今回は「共有結合結晶」について解説していきます。

共有結合結晶とは、結晶の種類の1つです。結晶とは、物質がとりうる形態の1つです。結晶共有結合結晶になる物質は、融点が高い、硬いといった特徴があり、工業的な価値が高い。中には、宝石として扱われるものもあるほどです。ぜひこの機会に、共有結合結晶について学んでみてくれ。

環境工学、エネルギー工学を専攻している理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。 

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

共有結合結晶について学ぶ前に

共有結合とは?

共有結合結晶について学ぶ前に、共有結合について復習しておきましょう。物質を構成しているのは、原子と呼ばれる非常に小さな粒です。物質の性質は原子の種類や構成によって決定されています。ただ、希ガスと呼ばれる原子以外は、電気的な中性を保っておらず、不安定な状態にあるのです。そのため、不安定な原子同士が何個か集合して電気的に中性である塊を作ることがあります

複数の原子が集まって塊を作るとき、原子間には結合が作られますよ。結合は、原子による塊の安定性を向上させるために必要になるのです。結合の種類には、共有結合イオン結合金属結合などがあります。これらはすべて、原子の外側にある電子という粒子の原子間におけるやり取りがあることで実現しますよ

今回は、共有結合に焦点を当てて解説しますね共有結合は、複数の原子間で価電子を共有することで作られます。例外もありますが、主に非金属元素同士の結合の際に、共有結合が生じますよ。共有結合によって構成された原子の塊のことを分子といいます。

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