今回は「蒸気船」について解説していきます。

蒸気船は、産業革命期に誕生した船の一種です。蒸気船の誕生前は、安定した速度で航行できる船は存在しなかった。そのため、洋上を自由自在に航行できる蒸気船は、まさに革命児とも言える存在だったに違いない。今回は、このように19世紀・20世紀で大活躍した蒸気船の仕組みについて徹底解説する。ぜひ、この機会に蒸気船についての理解を深めてくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

蒸気船とは?

image by iStockphoto

河川や洋上を航行する船舶は、人だけではなく、多くの資源や物資を運んでいます。そのため、船は陸の鉄道、空の飛行機などと同じように重要な交通の1つです。船は、動力の違いにより分類することができ、その分類の1つが蒸気船になりますよ。現在、古典的な蒸気船の多くは引退し、役目を終えています

この記事では、蒸気船の仕組みを工学の視点から解説していきますね。蒸気船に用いられている科学技術には、どのようなものがあるかを学びましょう。また、蒸気船が登場した経緯活躍した時代についても簡単に説明しますね。

蒸気船が登場した経緯

蒸気船が登場した経緯

image by Study-Z編集部

最初に、蒸気船が登場した経緯を説明します。18世紀半ばから19世紀前半にかけて、英国(イギリス)を皮切りに、産業革命が起こりました。産業革命の中で、それまで人力が中心であった諸産業に、蒸気機関という動力源を導入したのです。工場内での機械の普及にとどまらず、蒸気機関車が誕生し、陸での輸送に鉄道を利用するようになりました。同じ発想で、人力ではなく機械による動力で船を動かそうという考えられるようになり、蒸気船が誕生したのです

蒸気船が誕生する前、長距離を航行する船としては、帆船が主流でした。帆船は、ヨットと同じように風を帆で受けて駆動力を得るものです。しかしながら、進みたい方向に風が吹いているとは限りません。また、風が弱い場合、帆船の速度は小さくなります。そのため、一部の帆船は人力も併用していました。このような問題は、蒸気船の登場によって、解消されました。蒸気船は蒸気機関という機械によって推進力を得るので、安定した速度で航行できるようになったのです

蒸気船が活躍した時代

RMS Titanic 3.jpg
F.G.O. Stuart (1843-1923) - http://www.uwants.com/viewthread.php?tid=3817223&extra=page%3D1, パブリック・ドメイン, リンクによる

蒸気船は誕生後、貨物船客船戦艦などに採用され、世界中の海や河川、海峡を往来しました。日本に襲来したアメリカの黒船乗客を乗せたまま沈没してしまったタイタニック号も蒸気船だったのです。日本国内でも、明治維新の後、蒸気船が数多く建造されました。日露戦争で活躍した戦艦の多くは蒸気船です。

このように、蒸気船は産業革命によって誕生し、大型船の主流となっていました。その後、タービン船ディーゼルエンジンで駆動する船などの登場により、蒸気船の活躍の場は少なくなったのです。現在、電気によって動くEV船の開発もなされています。

また、蒸気船が淘汰された理由の1つに、燃料に使用する石炭が原因で環境中に有害な物質を放出するからというものもありますよ。ですが、遊覧船やテーマパークのアトラクションの船などには、アンティークな雰囲気を演出するためにあえて蒸気船を採用している場合もあるそうですよ

\次のページで「蒸気船の仕組み」を解説!/

蒸気船の仕組み

ここからは、蒸気船がどのような仕組みで動いているかを考えていきましょう。蒸気船の機構は、大きく2つに分けることができます。1つは動力源である蒸気機関、もう1つは外輪やスクリューといった動力を推進力に変換する装置です。

以下では、蒸気機関と外輪・スクリューについて詳しく説明していきます。蒸気機関の説明には熱力学の知見を用いますよ。また、外輪・スクリューの説明には流体力学の知見が必要となります。

蒸気機関

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蒸気機関は、多くの技術者・科学者によって産業革命の百年以上前から実験がなされていました。ですが、いずれも実用的なものには至らなかったようです。そのような中、1769年にジェームズ・ワット従来のものよりも効率が高い蒸気機関を発明し、ようやく蒸気機関が実用化されました。

蒸気機関では水蒸気をシリンダーに送り、シリンダー内の圧力を変化させ、ピストン運動をつくりだします。水蒸気は水の入ったボイラーを加熱してつくりだされますよ。膨張した水蒸気がシリンダーに送り込まれると、シリンダーの体積は大きくなり、外側への仕事が生じます。その後シンリンダーを冷却し、シリンダー内の水蒸気を圧縮することで、内側への仕事を生じさせるのです。

これらの操作を繰り返すことによって、ピストン運動が生じます。そして、ピストン運動は特殊な機構を使用して、回転運動に変換されますよ

外輪・スクリュー

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蒸気機関によってつくりだされた回転運動を、推進力に変換する装置が、外輪やスクリューです初期の蒸気船には、外輪が取り付けられていました外輪は、写真に示したように、水車のような形状をしています。外輪に回転運動を伝え、羽によって、水をかくのです。これによって、船が前に進むような力が生じますよ。

一方、スクリューはプロペラのような形状をした機構です。スクリューは、外輪より後に登場しました。スクリューの誕生により、船舶の航行速度は格段に向上しましたよ。スクリューの場合、静謐性の確保も容易であり、軍事的な面でも有利だとされています。以上が、蒸気汽船の仕組みの説明となりますよ。

蒸気船に関する話題

ここまで、古典的な蒸気船についての説明をしてきました。この章では、蒸気船の派生形であるとも言える原子力船について、ご紹介します。また、身近な例として、蒸気の力を利用して駆動するおもちゃの船についても解説していきますよ。両者とも、蒸気船と似ている部分があるのです。

蒸気船の技術やアイデアが、どのようにして原子力船に応用されているのか」、「おもちゃの蒸気船はどのような原理で駆動しているか」といった点に注目して記事を読み進めてみてくださいね。

\次のページで「原子力船」を解説!/

原子力船

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U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Nicholas Hall - この画像データはアメリカ合衆国海軍が ID 110129-N-3885H-179 で公開しているものです。 これはライセンスタグではありません!別途、通常のライセンスタグが必要です。詳しくはライセンシングをご覧ください。 العربية | বাংলা | Deutsch | English | español | euskara | فارسی | français | italiano | 日本語 | 한국어 | македонски | മലയാളം | Plattdüütsch | Nederlands | polski | پښتو | português | svenska | Türkçe | українська | 中文 | 中文(简体)‎ | +/−, パブリック・ドメイン, リンクによる

原子力船は、船内に原子炉が設置されていますよ。原子炉内では、ウラン235の核分裂連鎖反応を生じさせ、熱エネルギーを発生させますこの熱エネルギーにより、水を沸騰させ、水蒸気をつくりだすのです水蒸気は蒸気タービンに送り込まれ、回転運動に変換されますこの回転運動を、スクリューに伝え、船を動かしますよ

また、原子炉が生み出すエネルギーは莫大なものになります。そのため、回転運動でスクリューを動かすだけでなく、発電機を動かし電気を作ることなども可能なのです。とくに、電力を大量に消費する空母などに、原子力船の仕組みが採用されています。

おもちゃの船

蒸気船に近い原理で動くおもちゃの船があります。このおもちゃは、ポンポン船という名前で親しまれていますよ。小さいボート状の船で、火をつけたロウソクや固形燃料を設置することで動きます小さなボイラーと水中を結ぶガラス管などのパイプが付属していますよ

このボイラーとパイプが、蒸気機関と同じような振る舞いをみせますよ。ボイラーが加熱され、内部にある水蒸気の圧力が高くなった際に、一部の水蒸気がパイプを通じて外側に放出されます。これによって、ボート状の船は推進力を得るのです。

蒸気船の活躍

産業革命期に蒸気船が登場したことにより、世界中の海を自由自在かつ素早く、船が航行できるようになりました。これにより、海上の貨物輸送、旅客輸送は格段に便利なったはずですよね。このようなことが実現したのは、蒸気機関の発明により、人類が機械による動力を手に入れたからです。

この記事では、蒸気船の仕組みはもちろんのこと、蒸気船がどの時代にどのように活躍したかということも解説しています。ぜひ、蒸気船が活躍していた様子を思い浮かべながら、蒸気船についての理解を深めてみてくださいね。

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熱力学物理理科

3分で簡単蒸気船の仕組み!具体例を交えて理系学生ライターがわかりやすく解説

今回は「蒸気船」について解説していきます。

蒸気船は、産業革命期に誕生した船の一種です。蒸気船の誕生前は、安定した速度で航行できる船は存在しなかった。そのため、洋上を自由自在に航行できる蒸気船は、まさに革命児とも言える存在だったに違いない。今回は、このように19世紀・20世紀で大活躍した蒸気船の仕組みについて徹底解説する。ぜひ、この機会に蒸気船についての理解を深めてくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

蒸気船とは?

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河川や洋上を航行する船舶は、人だけではなく、多くの資源や物資を運んでいます。そのため、船は陸の鉄道、空の飛行機などと同じように重要な交通の1つです。船は、動力の違いにより分類することができ、その分類の1つが蒸気船になりますよ。現在、古典的な蒸気船の多くは引退し、役目を終えています

この記事では、蒸気船の仕組みを工学の視点から解説していきますね。蒸気船に用いられている科学技術には、どのようなものがあるかを学びましょう。また、蒸気船が登場した経緯活躍した時代についても簡単に説明しますね。

蒸気船が登場した経緯

蒸気船が登場した経緯

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最初に、蒸気船が登場した経緯を説明します。18世紀半ばから19世紀前半にかけて、英国(イギリス)を皮切りに、産業革命が起こりました。産業革命の中で、それまで人力が中心であった諸産業に、蒸気機関という動力源を導入したのです。工場内での機械の普及にとどまらず、蒸気機関車が誕生し、陸での輸送に鉄道を利用するようになりました。同じ発想で、人力ではなく機械による動力で船を動かそうという考えられるようになり、蒸気船が誕生したのです

蒸気船が誕生する前、長距離を航行する船としては、帆船が主流でした。帆船は、ヨットと同じように風を帆で受けて駆動力を得るものです。しかしながら、進みたい方向に風が吹いているとは限りません。また、風が弱い場合、帆船の速度は小さくなります。そのため、一部の帆船は人力も併用していました。このような問題は、蒸気船の登場によって、解消されました。蒸気船は蒸気機関という機械によって推進力を得るので、安定した速度で航行できるようになったのです

蒸気船が活躍した時代

RMS Titanic 3.jpg
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蒸気船は誕生後、貨物船客船戦艦などに採用され、世界中の海や河川、海峡を往来しました。日本に襲来したアメリカの黒船乗客を乗せたまま沈没してしまったタイタニック号も蒸気船だったのです。日本国内でも、明治維新の後、蒸気船が数多く建造されました。日露戦争で活躍した戦艦の多くは蒸気船です。

このように、蒸気船は産業革命によって誕生し、大型船の主流となっていました。その後、タービン船ディーゼルエンジンで駆動する船などの登場により、蒸気船の活躍の場は少なくなったのです。現在、電気によって動くEV船の開発もなされています。

また、蒸気船が淘汰された理由の1つに、燃料に使用する石炭が原因で環境中に有害な物質を放出するからというものもありますよ。ですが、遊覧船やテーマパークのアトラクションの船などには、アンティークな雰囲気を演出するためにあえて蒸気船を採用している場合もあるそうですよ

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