
「ゆとり教育」により導入された新しい授業

ゆとり教育とは、単に勉強量を減らすためではなく、考える力を備えるために行われました。そのため以前とは異なる新しいタイプの授業が導入されるようになります。授業のスタイルは現在の学校でも継続されており、馴染みがある人も多いかもしれません。
総合的な学習の時間
ゆとり教育により新しく取り入れられた代表的な授業が、総合的な学習の時間です。この授業では、先生の話を一方的に聞いて物事を暗記するのではなく、自分の頭で考えたり判断したりすることが重視されました。
総合的な学習の時間の内容はバリエーションに富んでいます。与えられたテーマについて自分で調べる、農業の収穫体験をして自然と触れ合う、地域の人たちと交流するなど。先生は状況に合わせた創意工夫が求められました。
総合的な学習の時間で積極的に行われたのが「調べ学習」です。この時期の子どもたちは、小さいことからインターネットに触れており、たくさんの情報にさらされるようになりました。そのため、どの情報が正しくて、どの情報が誤っているのか、必要なのか必要じゃないのか、自分で判断しなければならなくなります。そこで、情報を覚えるのではなく、情報を集める方法や真意を見定めるインターネットリテラシーを、授業で教えるようになりました。インターネット教育は、SNSの普及により必要性が高まり、現在も続けられています。
進路指導を充実させる傾向も
社会の変化とともに、選択できる企業、職業、生き方が多様化。そこで、新しいタイプの授業に加えて進路指導を充実させたことも、ゆとり教育の特色です。
進路指導では、高校や大学などの進学先を選択させるだけではありません。どのようにキャリアを積みたいのか、どのような生き方をしたいのかまで考えさせることが推奨されました。

社会の変化により、男性は企業で終身雇用、女性は結婚後の専業主婦というパターンは時代遅れとなった。また、がむしゃらに働くことだけがすべてでもなくなった。自分で生き方を選択するという時代になったんだな。
「ゆとり教育」に対する評価は分かれる

ゆとり教育は、実施されているあいだも、それが廃止されたあとも、そのメリットやデメリットの議論が続きました。新しい教育の内容が、生徒たちにいい影響を与えたのか、その評価は今でも分かれています。
学力が本当に低下したのかは定かではない
ゆとり教育の是非が議論されるときに問題となるのが学力です。意見の大多数は、ゆとり教育により生徒の学力がそうとう低下したというもの。授業時間の削減により習っていないことも増えました。
しかし、PISAのような学力を図る調査によると、全体的な順位は徐々にあがっており、とくに読解力は一気に伸びる結果となりました。暗記による知識量は減ったものの、ゆとり教育により考える力は向上したと評価する声もあります。
ベンチャー起業家やクリエイターの排出を促した一面も
ゆとり教育は、職業の選択肢の多様性を認めるもの。そこで、これまでの王道であった企業勤めとは異なる選択をする若者を増やしました。その代表的な例が起業家。とくに大学在学中に会社をおこす学生起業家が目立ち始めます。
インターネットが生活に浸透することでビジネスチャンスの可能性が拡大。ウェブサイトやアプリなどの新サービスを提供するベンチャー企業や、それらを構築するクリエイターが成功を収めるようになりました。
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