
詰め込み教育から生きる力を育む教育へ
ゆとり教育が目指したのは、生きる力を育むこと。生きる力とは学力とは異なるもので、激しく変化する社会を生き抜ける、人間としての能力を指します。
生きる力という考え方が初めて公式の場で使われたのは1996年。文部科学省のなかにある中央教育審議会の答申のなかでした。
「生きる力」とは、子供たちが社会で生きていくうえで必要な力のこと。世界は急激に変化する環境にあることから、卒業したあとも学校で学んだことを生かせるように、学習指導要領が改定されました。文部科学省は「生きる力」を備えるために必要な力として、次の3つをあげています。
学びに向かう人間性:主体的に学ぶ力や、自分の感情や行動をコントロールする力
知識・技能:複数の知識を組み合わせながら応用したり、社会で知識を活用したりする力
思考力・判断力・表現力:ものごとから問題を見出し、解決するための方法を考え、実行する力
これらの力を備えるために、現在の小学校、中学校、高等学校、大学の多くは、アクティブラーニングを導入するようになりました。
小学校から完全週5日制を導入
生きる力を育むために実施されたのが学校の週5日制。土曜日に通常の授業が行われることがなくなりました。また、この時期を境に学校のイベントが一気に減らされます。
ただ、土曜日は完全に自由になったのかと言うと、そうではありませんでした。土曜日は、体験学習、調べ学習、地域連携教育などに充てられました。

高校3年生になると大学受験がある。そこで土曜日に大学受験に向けた補習授業が行われることも多かった。予備校や塾も欠かせない。当時の学生は意外と時間がなかったと言われている。
自分で考え、行動する力のこと
生きる力とは、どのように社会が変化しようとも生き抜くことができる普遍的な力のこと。自分で考える、課題を発見する、解決に向けて行動する力を備えることが目指されました。
同時に、生きる力として他人と関わる能力も重視。コミュニケーション力、チームワーク力、協調性、共感性などが教育目標として掲げられます。それに合わせて、グループ学習、ディスカッション、ボランティア活動など、他者と一緒に取り組む活動が増えていきました。
健康や体力も重視される
ゆとり教育が開始されたきっかけのひとつが子供の健康。ここでいう健康とは、心と体の両方を指します。とくに、いじめや不登校が目立ち始めたことで、心の健康を維持することが大きな課題となりました。
くわえてインターネットが浸透することで、外で遊ぶ機会が少なくなります。とくに都会に住む子供は、近くに公園などの遊び場がないため、部屋に引きこもることが増加。そこで体力増進のカリキュラムの必要性も指摘されました。

子どもを取り巻く環境が変わり、これまでになかった問題が生じた。そこでゆとり教育が行われるようになる。とくにインターネットの普及は大きな環境の変化だと思うな。情報が多くなったぶん、自分で考える力が求められる。
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