この記事では「図に乗る」について解説する。

端的に言えば「図に乗る」の意味は「つけあがること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「図に乗る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「図に乗る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「図に乗る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「図に乗る」の意味は?

「図に乗る」には、次のような意味があります。

いい気になって勢いづく。調子に乗る。つけあがる。「少しでもほめるとすぐ―・る」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「図に乗る」

この言葉は「調子に乗ってつけあがる」という意味の慣用表現です。辞典によっては、「予想した通りに、うまくことが運ぶ」という意味も記載されているものもあります。「予想通り」だったため「調子に乗っていい気に」なる、と一連の流れで理解できますね。合わせて覚えてしまいましょう。

ただ、やはり現在では「うまくいった」という意味よりも「調子に乗っている、つけあがっている」というニュアンスが主流です。「あいつは図に乗っている」と言った場合、その人が自信過剰だったり、傲慢だったりすることを批判する目的も出てきます。

基本的にはネガティブな意味合いの言葉と思っていいでしょう。その為、使い方には注意が必要な表現です。

「図に乗る」の語源は?

次に「図に乗る」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、もともと仏教用語でした。

一般的なお経とは違う、音階や節をつけて唱える「声明(しょうみょう)」や「梵唄(ぼんばい)」というものがあります。その音や節の変化を表した記号のようなものが「図」と呼ばれ、お経の横に書いてあるそれを見て、声の調子を変えるそうです。

それが上手く唄えれば「図に乗る」ことができたということ。実は、もともとは褒め言葉だったということですね。上の意味の項でご紹介した「予想した通りに、うまくことが運ぶ」という意味は、ここからきたものだったのでしょう。

「調子に乗る」の「調子(ちょうし)」も、音楽における音の高低のこと。演奏の巧さを表すなら悪い意味はなかったはずですが、「上手くいって自慢しすぎてしまった人」を妬むような気持ちもあって、現在の使われ方をするようになったのかもしれませんね。

\次のページで「「図に乗る」の使い方・例文」を解説!/

「図に乗る」の使い方・例文

「図に乗る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・初中級向けの参考書があまりに簡単だったので、図に乗って上級レベルに手を出したら、まったく歯が立たなかった。

・最新動画コンテンツのランキングでずっと一位だったユーチューバーが、図に乗って無茶なことをしたら炎上してあっという間に消えていった。

・あなたたち最近図に乗り過ぎじゃないかしら?と、年々売り上げが落ちている隣の編集チームのリーダーが、いちゃもんをつけてきた。

調子に乗っている、良い気になっている」というイメージがつきますでしょうか。「良い気になる」と軽率な行動をしてしまうことも多く、例文一、二番目のように何か失敗に繋がってしまった、という文章になることも。よくある使われ方のため、覚えておきましょう。

また、「調子に乗らないように」と誰かに対して言った場合、「良い気になりすぎて失敗しないように注意している」だけではなく、例文三番目のように「その良い感じをひがんでいる」といった意味合いまで帯びてくることもあるでしょう。親や目上の人だったらともかく、ライバル関係だったら尚更ですね。

これだけで人と人との関係性も推測できる慣用句のため、見かけた場合しっかりと読み込むようにしてくださいね。

「図に乗る」の類義語は?違いは?

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「図に乗る」の類義語は「付け上がる(つけあがる)」「自惚れる(うぬぼれる)」などがあります。

「付け上がる」「自惚れる」

「付け上がる」は「相手が甘いのをいいことに、良い気になること」。「図に乗る」は自分一人でも出来ますが、こちらには「相手が甘いから」という意味合いが強くあります。「優しくしてたら付け上がりやがって~」など、映画で怖い人が言ったりするのを聞いたことがあるかもしれませんね。

「自惚れる」は「自分で自分のことを、実際以上に優れていると思うこと」。この「実際以上に」というニュアンスがポイントです。漢字の通り「自分に惚れる」ですから、自信過剰とか、ナルシスト的な傾向で正しく自己評価ができていないイメージになりますね。

「図に乗る」とは、細かいニュアンスの違いで使い分けができると表現が豊かになるでしょう。

\次のページで「「図に乗る」の対義語は?」を解説!/

・ちょっと仕事が出来るからと言って、遅刻に無断欠勤にと、付け上がるような社員は会社にはいられないだろう。

・ベンチャー企業の社長には若くして大金を稼いだことで、自惚れるような人物も少なくはない。

「図に乗る」の対義語は?

「図に乗る」の対義語は「慎み深い(つつしみぶかい)」「節度のある(せつどのある)」などが考えられます。

「慎み深い」「節度のある」

「慎み深い」は「図々しいところがなく、控え目であること」。「節度のある」は「度を越さず、よいところを保つこと」。

「礼儀正しい、丁寧である」という感じで、良いイメージで使われることが多い言葉ですね。特に、礼儀を重んじる日本などではこうした態度が良しとされるのではないでしょうか。

逆に国が変われば、「図に乗る」ような押しが強いことが評価されることもあるかもしれません。自分が言葉に持っているイメージについて改めて考えてみるのも面白いでしょう。

「図に乗る」の英訳は?

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「図に乗る」の英語表現には「push one's luck」があります。

「push one's luck」

ギャンブルなどで調子が良い時に、掛け金を更に吊り上げたりすることを「プッシュする」などと言ったりもします。このフレーズの「push」はこれに近く、「one's luck=その人の幸運」にさらに賭けるぜ、とまさに「図に乗っている」感じがわかるでしょう。

英語圏は、日本よりもギャンブルが盛んなイメージで思わず納得してしまう表現ですね。「図に乗って」、痛い目を見た人も多くいたのでは、なんて想像までしてしまいます。

代名詞の「one's」を主語によって変えれば様々に使うことが出来ますので、覚えておくと便利な表現ですよ。

Don't push your luck, you'll have a terrible experience.
図に乗るなよ、痛い目を見るぜ。

\次のページで「「図に乗る」を使いこなそう」を解説!/

「図に乗る」を使いこなそう

この記事では「図に乗る」の意味・使い方・類語などを説明しました。もともとは褒め言葉だった表現が、現在ではネガティブな意味合いで使われることになったというのがわかりましたね。

もちろん「図に乗り」すぎてイタイ行動をしている人は目に余るものですが、上手くいっていることに対して、うらやましさや妬ましさを感じてしまうのは、ある意味で自然なことなのかもしれません。

どちらの立場にせよ、時には自分の行いを冷静に見つめられることが一番大切なのではないでしょうか。

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国語言葉の意味

【慣用句】「図に乗る」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「図に乗る」について解説する。

端的に言えば「図に乗る」の意味は「つけあがること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「図に乗る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「図に乗る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「図に乗る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「図に乗る」の意味は?

「図に乗る」には、次のような意味があります。

いい気になって勢いづく。調子に乗る。つけあがる。「少しでもほめるとすぐ―・る」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「図に乗る」

この言葉は「調子に乗ってつけあがる」という意味の慣用表現です。辞典によっては、「予想した通りに、うまくことが運ぶ」という意味も記載されているものもあります。「予想通り」だったため「調子に乗っていい気に」なる、と一連の流れで理解できますね。合わせて覚えてしまいましょう。

ただ、やはり現在では「うまくいった」という意味よりも「調子に乗っている、つけあがっている」というニュアンスが主流です。「あいつは図に乗っている」と言った場合、その人が自信過剰だったり、傲慢だったりすることを批判する目的も出てきます。

基本的にはネガティブな意味合いの言葉と思っていいでしょう。その為、使い方には注意が必要な表現です。

「図に乗る」の語源は?

次に「図に乗る」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、もともと仏教用語でした。

一般的なお経とは違う、音階や節をつけて唱える「声明(しょうみょう)」や「梵唄(ぼんばい)」というものがあります。その音や節の変化を表した記号のようなものが「図」と呼ばれ、お経の横に書いてあるそれを見て、声の調子を変えるそうです。

それが上手く唄えれば「図に乗る」ことができたということ。実は、もともとは褒め言葉だったということですね。上の意味の項でご紹介した「予想した通りに、うまくことが運ぶ」という意味は、ここからきたものだったのでしょう。

「調子に乗る」の「調子(ちょうし)」も、音楽における音の高低のこと。演奏の巧さを表すなら悪い意味はなかったはずですが、「上手くいって自慢しすぎてしまった人」を妬むような気持ちもあって、現在の使われ方をするようになったのかもしれませんね。

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