この記事では「命あっての物種」について解説する。

端的に言えば「命あっての物種」の意味は「命を粗末にしてはいけない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

年間60冊以上本を読み込んでいるヤマゾーを呼んです。一緒に「命あっての物種」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマゾー

ビジネス本を中心に毎年60冊読破。本を通じて心に響く生きた日本語を学ぶ。誰にでも分かりやすい説明で慣用句を解説していく。

「命あっての物種」の意味・使い方まとめ

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それでは早速「命あっての物種」の意味・使い方を見ていきましょう。

「命あっての物種」の意味は?

「命あっての物種」には、次のような意味があります。

何事も命あってできることで、死んでは何にもならない。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「命あっての物種」

「物種(ものだね)」とは、物事の元となるもの。つまり「物事の根源」だと考えるとよいでしょう。ほかにも、野菜や花などの植物の種のことを「物種」と言うことがあります。当たり前のことではありますが、命がなければ物事に取り組むことはできません。命は一度失ってしまえば、取り戻すことはできませんよね。だからこそ「命の危険にさらされるような行為は止めましょう」といった意味合いで「命(いのち)あっての物種」が用いられるようになりました。

また、近年ではあまり使われませんが、語呂合わせで「命あっての物種、畑あっての芋種」と表現することもあります。どちらにせよ「命あっての物種」だけで十分伝わりますので、知識として覚えておき、使いやすいほうを選ぶとよいでしょう。

「命あっての物種」の使い方・例文

「命あっての物種」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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1.いくら趣味のキャンプを楽しむためとはいえ、そんな危険な作業はやりたくないよ。命あっての物種だからね。

2.命あっての物種だ。投稿のために、素手でエミューやカンガルーを捕まえるなんてやめなよ。

3.昔から命あっての物種と言うように、これからの人生きっといいこともあるさ。

「命あっての物種」は、「危険な行為」を注意する際によく使われています。たとえば、人に注目されたいがために危険な行為に及ぶ場合。ほかにも、無謀ともいえる無茶な挑戦に対して、引き止めるために「命あっての物種」を使います。また、安全装置がしっかりしていない場所で危険な作業を強要された際に、「命が大切だから私はやりたくない」という気持ちを込めて、断るために使ってもよいでしょう。

さらに、「命あっての物種」は「何事も生きていればこそ」という意味が含まれているため、励ましの言葉として用いられることがあります。やはり、生きていれば苦しいことも辛いこともたくさんありますよね。それでも、嬉しさや喜びを感じられるのも生きていればこそ。諦めずに前を向いていれば良いことが待っているかもしれません。「命を粗末に扱ってはいけない」という思いを込めて「命あっての物種」を使ってみてください。

「命あっての物種」の類義語は?違いは?

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では、「命あっての物種」の類義語や違いをみていきましょう。

「命は法の宝」

「命あっての物種」は「物事」でしたが、「命は法の宝」は「仏法」になります。意味は、ありがたい仏の教えが聞けるのも、命あればこそできるということ。「命は法の宝」の由来は、江戸前期に作られた俳句集「毛吹草(けふきぐさ)」からだといわれています。注目すべきポイントは、「命あっての仏法」ではなく「命は法の宝」と表現した点ではないでしょうか。「仏法」以上に「命」は宝ともいうべき「大切なもの」という、俳人の強い思いが伝わってきますね。

「死んで花実が咲くものか」

多くの植物は花が咲いて散っていき、そのあとに立派な実をつけます。植物自体が枯れてしまっては、きれいな花を咲かせることも、大きな実をつけることもないでしょう。そのような植物の様子から、意味は死んでしまったら全ておしまいであるということ。生きていれば良い時もあるはずなのに、先に命を落としては意味がありません。「命あっての物種」に比べて、より励ましの言葉に近い言葉といえますね。「死んで花実が咲くものか」でなくとも「死んで花実が生るものか」という言い方でも問題ありません。

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「命あっての物種」の対義語は?

では、次に「命あっての物種」の対義語をみていきましょう。

「命は鴻毛より軽し」

「鴻毛(こうもう)」とは「鴻(おおとり)の羽毛」のこと。「鴻」とは、主にオオハクチョウやヒシクイといった大型の鳥のことを差します。鳥の羽毛は大変軽く、ガチョウやアヒルなどの羽は羽毛布団として使われているほど。そのような「鴻毛」よりも「命」は軽いと解釈できますね。「命は鴻毛より軽(かる)し」の意味は、命を捨てることは少しも惜しくないということ。すなわち、命は重んじる時と、潔く捨てる時があるといっているわけです。

「命は鴻毛より軽し」は、司馬遷が記した「報任少卿書」が由来。司馬遷(しばせん)は中国の歴史家であり、「史記」を完成させた者としても有名です。戦国時代だったからこそ、戦争で勝つために兵士に呼びかけた言葉だといえますね。

「虎穴に入らずんば虎子を得ず」

「虎穴(こけつ)に入らずんば虎子(こじ)を得ず」は、危険を冒さなければ、大きな成功はえられないという意味。虎は巣穴で出産し、1年半かけて子育てするのが特徴です。そのため、虎の子供を捕まえるには巣穴に潜りこまなくてはいけません。もちろん、巣穴を目指すということは、母親の虎に命を狙われる危険性が高いといえるでしょう。そのような様子から転じて、成功のためには危険を冒さなくてはいけないという教訓が生まれました。

「虎穴に入らずんば虎子を得ず」は、中国の歴史書「後漢書」が由来だといわれています。こちらも戦国時代に作られた言葉で、兵士の士気を高めるために武将が呼びかけた言葉だといえますね。

「命あっての物種」の英訳は?

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では、「命あっての物種」を英語訳すると、どのような表現があるのでしょうか。

「While there's life, there's hope」

While there's life, there's hope」は「命あっての物種」と同様の意味となる英語のことわざになります。「While there's life」は直訳すると「命がある間」という意味。「there's hope」は「希望がある」という意味になります。単語を繋げると「生きている限り希望がある」となり「命あっての物種」として使うことができるでしょう。

「be not worth risking my life」

「worth」とは「~の価値があって」や「~に値して」という意味。「risking」は「risk」の現在分詞で「危険」や「恐れ」という意味になります。「It is not worth risking  my life」は直訳すると「それは私の命をかける価値がない」となり「命あっての物種」として使うことができるでしょう。危険な行為を強要されそうになった際、断りたい時に使ってみてください。

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「命あっての物種」を使いこなそう

この記事では「命あっての物種」の意味・使い方・類語などを説明しました。「命あっての物種」は、決して忘れてはならない命の大切さを訴えた慣用句になります。日々の生活に追われていると、不思議と命の儚さを忘れて無茶をしてしまいがちです。ところが、いざ死を身近に感じた時、今までが当たり前でなかったのだと痛感するのではないでしょうか。

物は失っても作り直すことができます。失敗しても、何度でもやり直して挽回すれば問題ありません。お金を失ったなら、また頑張って稼げばよいでしょう。しかし、あなたの命はひとつだけ。誰も代わりはいません。チャレンジすることも大切ですが、命あっての物種です。もしも、自分をぞんざいに扱うような人に出会ったら、ぜひ「命あっての物種」を使って「命の尊さ」を訴えてみてください。

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国語言葉の意味

【慣用句】「命あっての物種」の意味や使い方は?例文や類語を本の虫ライターがわかりやすく解説!

1.いくら趣味のキャンプを楽しむためとはいえ、そんな危険な作業はやりたくないよ。命あっての物種だからね。

2.命あっての物種だ。投稿のために、素手でエミューやカンガルーを捕まえるなんてやめなよ。

3.昔から命あっての物種と言うように、これからの人生きっといいこともあるさ。

「命あっての物種」は、「危険な行為」を注意する際によく使われています。たとえば、人に注目されたいがために危険な行為に及ぶ場合。ほかにも、無謀ともいえる無茶な挑戦に対して、引き止めるために「命あっての物種」を使います。また、安全装置がしっかりしていない場所で危険な作業を強要された際に、「命が大切だから私はやりたくない」という気持ちを込めて、断るために使ってもよいでしょう。

さらに、「命あっての物種」は「何事も生きていればこそ」という意味が含まれているため、励ましの言葉として用いられることがあります。やはり、生きていれば苦しいことも辛いこともたくさんありますよね。それでも、嬉しさや喜びを感じられるのも生きていればこそ。諦めずに前を向いていれば良いことが待っているかもしれません。「命を粗末に扱ってはいけない」という思いを込めて「命あっての物種」を使ってみてください。

「命あっての物種」の類義語は?違いは?

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では、「命あっての物種」の類義語や違いをみていきましょう。

「命は法の宝」

「命あっての物種」は「物事」でしたが、「命は法の宝」は「仏法」になります。意味は、ありがたい仏の教えが聞けるのも、命あればこそできるということ。「命は法の宝」の由来は、江戸前期に作られた俳句集「毛吹草(けふきぐさ)」からだといわれています。注目すべきポイントは、「命あっての仏法」ではなく「命は法の宝」と表現した点ではないでしょうか。「仏法」以上に「命」は宝ともいうべき「大切なもの」という、俳人の強い思いが伝わってきますね。

「死んで花実が咲くものか」

多くの植物は花が咲いて散っていき、そのあとに立派な実をつけます。植物自体が枯れてしまっては、きれいな花を咲かせることも、大きな実をつけることもないでしょう。そのような植物の様子から、意味は死んでしまったら全ておしまいであるということ。生きていれば良い時もあるはずなのに、先に命を落としては意味がありません。「命あっての物種」に比べて、より励ましの言葉に近い言葉といえますね。「死んで花実が咲くものか」でなくとも「死んで花実が生るものか」という言い方でも問題ありません。

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