この記事では「鳶が鷹を生む(とびがたかをうむ)」ということわざ・慣用句について解説する。

端的に言えば「鳶が鷹を生む」の意味は「平凡な親が優秀な子供を生む」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「鳶が鷹を生む」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「鳶が鷹を生む」の意味や使い方のまとめ

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それでは早速「鳶が鷹を生む」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。このことわざ・慣用句にはいったいどのような意味・用法があるのでしょうか。

「鳶が鷹を生む」の意味は?

まずは、国語辞典での定義から。「鳶が鷹を生む」には、次のような意味があります。

平凡な親が優秀な子供を生むたとえ。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「鳶が鷹を生む」

「鳶(とび・とんび)」とは、タカ科の鳥で低山や海岸などで普通に見られます。その特徴のあるピーヒョロロという鳴き声や輪を描くような飛び方で覚えている方も多いことでしょう。

そんな「鳶」は、平凡な人物のたとえとして用いられています。一方の「鷹」は、タカ科の鳥を総称した言葉ですが、この慣用句では鷹狩りで用いられるオオタカを想定しているようです。

オオタカは極めて優れたハンターで、優秀な人物のたとえとして登場します。両者とも同じタカ科の鳥で似ていますが、平凡なものから優秀なものは生まれないとしたのがこの慣用句の表す意味です。

「鳶が鷹を生む」の使い方・例文

「鳶が鷹を生む」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「鳶が鷹を生む」の類義語は?違いは?」を解説!/

両親とも運動神経はあまり良くない方だったのに、息子は小さいころからスポーツ万能で、近所の人からは鳶が鷹を生んだとよくからかわれたものだ。

君は家庭の事情からやむをえず中卒で就職したわけなのだから、娘さんが東大へ入学したからといって鳶が鷹を生んだとはけっして考えてはいないよ。

鳶が鷹を生んだという表現はあまり適当ではなく、自分の場合はトンビがクマタカかイヌワシを生んだくらいのギャップを感じるとよく言われている。

「鳶が鷹を生む」という慣用句を正確に理解するには、平凡な親と優秀な子供という図式を押さえておくことが欠かせません。最初の例文では、けっして運動神経のいいとはいえない両親が「平凡」でスポーツ万能の息子が「優秀」なのは分かりやすい関係ですね。

二つめの例文では「中卒」=「学力が劣る」と考えられがちなところ、後半でそうではないと否定しています。最後の例文はやや変わっていて、「タカ」ではなく最大級の「クマタカ」「イヌワシ」とすることで、超優秀な子供の存在をたとえているのが特徴です。

#2 「鳶が鷹を生む」の類義語は?違いは?

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ところで、「鳶が鷹を生む」と意味のよく似たことわざ・慣用句にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、その中でも代表的なものを二つほどご紹介します。

「筍の親勝り」

「筍の親勝り(たけのこのおやまさり)」は、「鳶が鷹を生む」の類義語として十分に通用するものです。筍は非常に生長がはやいものとして知られています。

このことから、子どもである筍が親である竹よりも優れていることを表現しているわけですね。ただし、鳶と鷹のように似ているけれど別種のものではないことは、この慣用句ではみられません。

「出藍の誉れ」

「出藍の誉れ(しゅつらんのほまれ)」もまた、「鳶が鷹を生む」の類義語だといっていい存在です。この慣用句には、弟子が師匠よりも優れているという意味を表します。

本当の親子ではない場合が多いという点で「鳶が鷹を生む」とは異なる点にだけは注意をしておきましょう。では、これらの類義語を用いた例文を見ておきましょう。

\次のページで「「鳶が鷹を生む」の対義語は?」を解説!/

語彙力を増やすスピードにかけては息子は抜群に速く、親の私ですら到底及ばないのが現状でまさに筍の親勝りといった風情だ。

出藍の誉れとはよくいうが、教え子たちが各界の指導者として成果をあげていることは、かつての担任である私にとっても鼻が高い。

#3 「鳶が鷹を生む」の対義語は?

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では、「鳶が鷹を生む」対義語は一体どのようにとらえればよいのでしょうか。平凡な親から優秀な子どもが生まれることの反対は、平凡な親からは平凡な子どもしか生まれないことです。

もしくは、優秀な子どもは優秀な両親からしか生まれないと言い換えてもいいかもしれません。ここでは、そのような意味を持つ慣用句を二つほど紹介していきます。

「蛙(かえる)の子は蛙」

「蛙の子は蛙」は、「鳶が鷹を生む」の対義語の中でもいちばん典型的なもののひとつです。この慣用句には、子どもはたいていの場合親に似るものだという意味があります。

それは平凡な子どものことをいっているのかもしれませんし、優秀な子どもについて言及しているのかもしれません。

「瓜の蔓に茄子はならぬ」

「瓜(うり)の蔓(つる)に茄子(なすび)はならぬ」もまた、「鳶が鷹を生む」の対義語としてよく使われるものです。こちらの慣用句は、平凡な親からは非凡な子は生まれないことをたとえています。

こちらは、「瓜」を平凡な親に「茄子」を優秀な子どもにたとえていることを押さえておきましょう。では、これらの対義語を用いた例文も忘れずにチェックしておきます。

あくまでも蛙の子は蛙でしかないだから、自分たちの凡庸さを棚に上げて私にだけ過剰な期待をかけるのはやめてくれませんか。

息子は大学生の時分の私と考え方や行動パターンがそっくりで、瓜の蔓に茄子はならぬとはよくいったものだと心の中で思った。

#4 「鳶が鷹を生む」の英訳は?

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最後に、「鳶が鷹を生む」の英語訳についても忘れずにチェックしておきましょう。この慣用句は、英語でどのように表現すればよいのでしょうか。

\次のページで「「A black hen lays white eggs.」」を解説!/

「A black hen lays white eggs.」

「A black hen lays white eggs.」は、「鳶が鷹を生む」を平易な英語で分かりやすく言い表したものです。このフレーズを直訳すると「黒い雌鶏(めんどり)が白い卵を生んだ」となります。

つまり、黒い色をした自らの姿に似つかわしくない白い色の卵を生んだと言いたいわけですね。ただし、ここでは親と子のどちらが優秀なのかについては言及されていないことに注意しておきましょう。

「outstrip one's master」

「outstrip one's master」もまた、「鳶が鷹を生む」の英語訳として十分に通用するものです。このフレーズを直訳すると「師匠を追い越す」になります。

前述の「出藍の誉れ」同様に実際の親子関係まである場合は少ないでしょうが、その表す内容には十分に伝わることでしょう。

「鳶が鷹を生む」を使いこなそう

この記事では「鳶が鷹を生む」の意味・使い方・類語などを説明しました。この慣用句・ことわざには、「平凡な親からは優秀な子どもが生まれる」という意味がありましたね。

この慣用句とその対義語である「瓜の蔓に茄子はならぬ」は、どちらもおそらく真実の一部を表しているのでしょう。つまり、どちらとも正しいともいえるし、どちらとも正しいともいえません。

ある程度の才能や素質は両親から受け継ぐものの、その才能を開花させるかどうかは本人の意志や努力しだいなのです。みなさんも、この慣用句を用いる機会に恵まれたら、臆せずにどんどん使ってみてくださいね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「鳶が鷹を生む」の意味や使い方は?例文や類語も含めて現役文系講師が詳しくわかりやすく解説!

この記事では「鳶が鷹を生む(とびがたかをうむ)」ということわざ・慣用句について解説する。

端的に言えば「鳶が鷹を生む」の意味は「平凡な親が優秀な子供を生む」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「鳶が鷹を生む」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「鳶が鷹を生む」の意味や使い方のまとめ

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それでは早速「鳶が鷹を生む」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。このことわざ・慣用句にはいったいどのような意味・用法があるのでしょうか。

「鳶が鷹を生む」の意味は?

まずは、国語辞典での定義から。「鳶が鷹を生む」には、次のような意味があります。

平凡な親が優秀な子供を生むたとえ。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「鳶が鷹を生む」

「鳶(とび・とんび)」とは、タカ科の鳥で低山や海岸などで普通に見られます。その特徴のあるピーヒョロロという鳴き声や輪を描くような飛び方で覚えている方も多いことでしょう。

そんな「鳶」は、平凡な人物のたとえとして用いられています。一方の「鷹」は、タカ科の鳥を総称した言葉ですが、この慣用句では鷹狩りで用いられるオオタカを想定しているようです。

オオタカは極めて優れたハンターで、優秀な人物のたとえとして登場します。両者とも同じタカ科の鳥で似ていますが、平凡なものから優秀なものは生まれないとしたのがこの慣用句の表す意味です。

「鳶が鷹を生む」の使い方・例文

「鳶が鷹を生む」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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