今回の記事では「うだつが上がらない」という慣用句について解説する。

端的に言えば「うだつが上がらない」の意味は「出世できない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「うだつが上がらない」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「うだつが上がらない」の意味や使い方のまとめ

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それでは早速「うだつが上がらない」の意味や使い方を見ていきましょう。この慣用句には、いったいどのような意味・用法があるのでしょうか。

「うだつが上がらない」の意味は?

まずは、国語辞典での定義から。「うだつが上がらない」には、次のような意味があります。

出世したり、金銭に恵まれたりしない。よい境遇になれない。 

出典:大辞林 第三版(三省堂)「うだつが上がらない」

「うだつが上がらない」が、どうして「出世できない」に結びつくのでしょうか。その謎を解くカギは「うだつ」という言葉そものにあります。

「うだつ」とは、屋根よりも一段高いところに作られた小さな屋根付きの土壁のことを示す言葉です。本来、この土壁は火事の際に延焼を防ぐための防火壁でした。

それが、しだいに装飾が施されてどんどん豪華なものになっていき、しまいには家の「格」を示すものになったといいます。したがって、並の暮らしをしている者には到底手が届かず、お金持ちの象徴のような取り扱いになっていったという話です。

現代では「うだつ」を持つ家はめっきり少なくなってしまいましたが、「うだつが上がらない」や「うだつが上がる」といった慣用句の中で生き続けています。

「うだつが上がらない」の使い方・例文

「うだつが上がらない」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「うだつが上がらない」の類義語は?」を解説!/

仕事は女性誌にイラストを描くだけでうだつが上がらずにいたが、メディアに取り上げられたことで検索ランキングの上位に私の名前が入り、それまでとは生活が一変することになった。

あなたもうだつが上がらないのはすべてクソ上司のせいだなんて言っていないで、たくさんのサイトの立派なコンテンツを研究して、自分の役割というものを見直してみたらどうだろうか。

最高の笑顔になれる場面を写真や動画に残してお届けするというアイデアはよかったが、いつまでもうだつが上がらない原因は多数の同業他社による値引き合戦にあるという見方が大勢だ。

「うだつが上がらない」を含む文を手早く大まかに理解するには、「出世しない」「お金が稼げない」などの表現に置き換えてみるのがおすすめです。こうすることにより、難解そうに見える文も一気に身近なものに感じることでしょう。

初めの例文では、イラストを描く仕事だけでは十分なお金が稼げていなかった様子がうかがえます。報酬単価が低かったのか仕事の依頼数が足りなかったのかは、この文だけでは分かりません。

二つめの文では、自分が昇進できずにいることを上司のせいにしているようです。また、三番目の例文では、お金が稼げない理由として同業他社の存在に言及しています。

#2 「うだつが上がらない」の類義語は?

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ところで、「うだつが上がらない」と似た意味を持った言葉にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、その中でも代表的なものを二つほど見ていきます。

「下積み」

「下積み」は、「うだつが上がらない」の類義語として十分に通用するものです。この慣用句は、人に使われる身分で目立たない場所にいることを表します。

主に新入社員や親方に弟子入りした新米の職人・芸人に対して使われる言葉です。「下積み」自体はネガティブな使われ方だけでなく、基本・基礎を身に着ける必要不可欠な時期ととらえる場合も珍しくありません。

「冷や飯を食う」

「冷や飯を食う」もまた、「うだつが上がらない」の類義語といっても差し支えのない存在です。こちらの慣用句には、冷遇される、または他人の家に居候になるという意味があります。

もちろん、「うだつが上がらない」の対義語なのは前者の方です。では、これらの類義語を用いた例文をここでチェックしておきましょう。

\次のページで「「うだつが上がらない」の対義語は?」を解説!/

東京にある小さな美術館での長い下積み期間を経て、このたび晴れて京都の大きな美術館へ赴任することが決定いたしましたので、とりあえずご報告まで。

けっして裕福とはいえない家庭に生まれ長い間冷や飯を食わされてきた私だが、財力のある女医と付き合い始めてからは金回りもよくなり生き方も変わった。

#3 「うだつが上がらない」の対義語は?

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では、「うだつが上がらない」の対義語はどのようにとらえればよいのでしょうか。出世できないでいることの反対は、まさしく出世することでしょう。

ここでは、そのような意味を持つ慣用句を二つほど紹介していきます。

「成り上がる」

「成り上がる」は、「うだつが上がらない」の対義語の中でももっとも典型的なものです。この慣用句は、地位や身分の低い者が高い地位に就いたりお金持ちになったりすることを表します。

この慣用句の中心である「成る」は、将棋の世界からきた言葉です。これは、いちばん弱い駒である「歩」が敵陣に入り、強い駒である「と金」に「成る」ことに由来しています。

「浮かび上がる」

「浮かび上がる」もまた、「うだつが上がらない」の対義語として十分に通用するものです。こちらの慣用句には、恵まれない環境下にあったものがより良い状態になるという意味があります。

「浮かぶ」わけですから、それまでは水面下に沈んでいることが大前提です。この水面下にいたという状況は、もちろん辛い環境にいたことをたとえているものに他なりません。

では、これらの対義語を用いた例文も忘れずにチェックしておきましょう。

新着情報によると、ライバル会社の社長は増税直後の景気が冷え込んでいた時期に商機を見出して、一気に事業を拡大して成り上がってきたそうだ。

ネット関連の著書がなかなか売れずに悶々とした日々を送ってきたが、ヒットした近著のおかげで私が苦しい生活から浮かび上がる日も遠くないだろう。

#4 「うだつが上がらない」の英訳は?

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では、最後に「うだつが上がらない」の英語表現についても忘れずに押さえておきましょう。この慣用句は英語でどのように表現するのでしょうか。

\次のページで「「can't get on in the world」」を解説!/

「can't get on in the world」

「can't get on in the world」は、「うだつが上がらない」の英語訳の中でもっともよく用いられるもののひとつです。このフレーズを構成している「get on」には、出世するという意味があります。

つまり、直訳すると「出世できない」になるというわけです。

「never get ahead」

「never get ahead」もまた、「うだつが上がらない」の英語訳として十分に通用するものです。こちらのフレーズは直訳すると、「ビジネスで成功しない」になります。

ビジネスで成功することを出世すると訳すことも可能ですね。

「うだつが上がらない」を使いこなそう

この記事では「うだつが上がらない」の意味・使い方・類語などを説明しました。この慣用句は、出世できなかったり金銭的に恵まれていなかったりする様子を表すものでしたね。

うだつが上がらない現状を嘆いて、他人や環境のせいにしている人は少なからず存在します。しかしながら、それではいつまでたっても状況を打破するのは難しいでしょう。

たとえ外的な要因があったとしても、原因を自らの内側に求めて改善策を練っていくことがときには必要な場合だってあるでしょう。みなさんも、この慣用句を用いる場面に遭遇したら、臆せずにどんどん使ってみてくださいね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「うだつが上がらない」の意味や使い方は?例文や類語も含めて現役文系講師が詳しくわかりやすく解説!

今回の記事では「うだつが上がらない」という慣用句について解説する。

端的に言えば「うだつが上がらない」の意味は「出世できない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「うだつが上がらない」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「うだつが上がらない」の意味や使い方のまとめ

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それでは早速「うだつが上がらない」の意味や使い方を見ていきましょう。この慣用句には、いったいどのような意味・用法があるのでしょうか。

「うだつが上がらない」の意味は?

まずは、国語辞典での定義から。「うだつが上がらない」には、次のような意味があります。

出世したり、金銭に恵まれたりしない。よい境遇になれない。 

出典:大辞林 第三版(三省堂)「うだつが上がらない」

「うだつが上がらない」が、どうして「出世できない」に結びつくのでしょうか。その謎を解くカギは「うだつ」という言葉そものにあります。

「うだつ」とは、屋根よりも一段高いところに作られた小さな屋根付きの土壁のことを示す言葉です。本来、この土壁は火事の際に延焼を防ぐための防火壁でした。

それが、しだいに装飾が施されてどんどん豪華なものになっていき、しまいには家の「格」を示すものになったといいます。したがって、並の暮らしをしている者には到底手が届かず、お金持ちの象徴のような取り扱いになっていったという話です。

現代では「うだつ」を持つ家はめっきり少なくなってしまいましたが、「うだつが上がらない」や「うだつが上がる」といった慣用句の中で生き続けています。

「うだつが上がらない」の使い方・例文

「うだつが上がらない」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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