この記事では「頭隠して尻隠さず」について解説する。

端的に言えば「頭隠して尻隠さず」の意味は「悪事や欠点を隠しきれていないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

年間60冊以上本を読み込んでいるヤマゾーを呼んです。一緒に「頭隠して尻隠さず」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマゾー

ビジネス本を中心に毎年60冊読破。本を通じて心に響く生きた日本語を学ぶ。誰にでも分かりやすい説明で慣用句を解説していく。

「頭隠して尻隠さず」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「頭隠して尻隠さず」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「頭隠して尻隠さず」の意味は?

「頭隠して尻隠さず」には、次のような意味があります。

悪事・欠点の一部を隠して全部を隠したつもりでいる愚かさをあざける言葉。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「頭隠して尻隠さず」

「頭隠して尻隠さず」は文字通り、本人は隠れているつもりでも、周りからはお尻が丸見えの状態だといってよいでしょう。そのような様子から転じて、悪事や欠点を全て隠したつもりでも、一部しか隠れていない状態のこと「頭隠して尻隠さず」と表現するようになりました。「あざける」とは、人を軽蔑して悪く言ったり笑ったりすること。本人は周囲に気づかれていると思っていないわけですから、必死に隠す行動を、皮肉を込めて遠回しに非難している慣用句といえるでしょう。

近年では、顔だけ隠してお尻だけ出しているような、可愛らしい動物写真や動画などに対しても用いられています。ただし「頭隠して尻隠さず」は、本来は隠しきれていない愚かさをあざける言葉。状況によっては相手を不愉快にさせてしまうかもしれません。組織や他人に対して使う場合は注意しましょう。

「頭隠して尻隠さず」の語源は?

次に「頭隠して尻隠さず」の語源を確認しておきましょう。「頭隠して尻隠さず」の由来は「雉(きじ)」の習性からだといわれています。雉は、主に林や草原に住んでおり、オスは色鮮やかで長い尾が特徴。天敵が現れると急いで草むらに隠れますが、長い尾は丸見えの状態になってしまいます。そのような滑稽な姿から「頭隠して尻隠さず」という慣用句が生まれました。ほかにも、「江戸いろはかるた」の札としても「頭隠して尻隠さず」は使われています。

\次のページで「「頭隠して尻隠さず」の使い方・例文」を解説!/

「頭隠して尻隠さず」の使い方・例文

「頭隠して尻隠さず」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.ケーキを食べたのはあなたね。頭隠して尻隠さずで、口の周りにクリームがついているわよ。

2.建前だけの対策をして解決したつもりか。まさに頭隠して尻隠さずとはこのことだな。

3.頭隠して尻隠さずでは意味がない。徹底的に原因を追究していこう。

「頭隠して尻隠さず」は、可愛らしいものから笑えない悪事まで、様々な場面で使うことができます。たとえば、お留守番をしている小さな子供に、買っておいたケーキを食べないように約束したとしましょう。ところが、帰りを待ちきれず、その子供は兄弟の分までケーキを食べてしまいました。親は子供を注意しますが、本人は「食べていない」と否定。しかし、子供の顔にはクリームがべったりついています。まさに「頭隠して尻隠さず」といえますね。

ほかにも、たとえば「弊社は衛生面に自信があります」と豪語する工場があったとしましょう。しかし、メイン通路以外は、どう見ても衛生的な環境とはいえません。少し調査すれば明らかになってしまうことでも、相手が気づかれていると思っていない、もしくは欠点と認めていないなら「頭隠して尻隠さず」といえるでしょう。

「頭隠して尻隠さず」の類義語は?違いは?

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では、「頭隠して尻隠さず」の類義語や違いをみていきましょう。

「雉の草隠れ」

「雉(きじ)の草隠れ」は、「頭隠して尻隠さず」の語源から生まれた言葉だといってよいでしょう。意味は、一部だけ隠して、隠れたつもりになっていること。雉が草むらに隠れているつもりになっているわけですから、まさに「頭隠して尻隠さず」といえますね。「雉の草隠れ」は、「雉の隠れ」と言っても問題ありません。

\次のページで「「蔵頭露尾」」を解説!/

「蔵頭露尾」

「蔵頭露尾」は四字熟語で「ぞうとうろび」と読みます。もしくは、「頭を蔵(ぞう)して尾を露(あらわ)す」と読んでも構いません。意味は、完全に隠れているつもりでも、弱点や証拠が気づかないうちに周りにあらわれていること。「頭隠して尻隠さず」と同様の意味だといってよいでしょう。

「団子隠そうより跡隠せ」

「団子隠そうより跡隠せ」は、ことわざになります。団子を食べると、刺していた串が残りますよね。だからこそ、団子を食べたことが見つかりそうなら、残りの団子を隠すよりも串などの痕跡を隠すほうが良いといえるでしょう。隠し事は、どこから露見するか分かりません。「団子隠そうより跡隠せ」は、秘密は念には念を入れて隠すべきだと、戒めの言葉として使われるようになりました。

「頭隠して尻隠さず」の対義語は?

「頭隠して尻隠さず」は「悪事や欠点を全部隠したつもりでいる」という意味でした。反対の意味となると、そもそも「隠すつもりがない」もしくは「周囲に悪事や欠点を気づかれていない」となるはずです。そこで今回は、「隠す気がない」や「隠し通す」といった意味合いで「頭隠して尻隠さず」の対義語をみていきましょう。

「歯に衣着せぬ」

「頭隠して尻隠さず」は、悪事や欠点を隠していますが、「歯に衣着せぬ」は、最初から隠す気などありません。「歯に衣着せぬ」の意味は、つつみ隠すことなく、思ったままをハッキリ言うこと。本来であれば、欠点や悪事を指摘されたら多少は動揺するものですよね。ところが、「それが何か問題でも?」と返されたらどうでしょうか。

悪びれることもなく、「歯に衣着せぬ」物言いで堂々とされたら、こちらもあざけにくいものです。自分が間違っていないと自信があるならば、「歯に衣着せぬ」発言で、相手に正論をぶつけてみるのも一つの方法ではないでしょうか。

「おくびにも出さない」

「頭隠して尻隠さず」は、悪事や欠点が周囲に気づかれていますが、「おくびにも出さない」は、情報が外に漏れることはないと言ってよいでしょう。「おくびにも出さない」の意味は、ある物事を隠すために、決して口にださず、それらしい素振りも見せないこと。「おくび」とは「げっぷ」のことです。「げっぷ」が出てしまいそうな時、我慢している様子が表情に出やすいものですよね。しかし、そのような様子を一切表に出さないとしたら、周囲は我慢していることすら気づかないのではないでしょうか。

「おくびにも出さない」は、秘密や情報だけではありません。苦労や大変な出来事があったとしても、普段と変わらない様子であれば、「おくびにも出さない」といえます。「頭隠して尻隠さず」は、相手をあざける言葉ですが、「おくびにも出さない」は、相手を称賛している言葉といえますね。

「臭いものに蓋をする」

「頭隠して尻隠さず」と言われてしまうのは、「臭いものに蓋(ふた)をした」のが原因だといってよいでしょう。「臭いものに蓋をする」の意味は、悪事や失敗など、都合が悪い事柄を一時しのぎで隠そうとすること。悪臭を消すためには、蓋をすれば臭いを防ぐことができます。しかし、臭いものを片付けない限り、悪臭が消えることはありません。そのような様子から転じて、悪事や失敗を「一時しのぎ」でごまかすことを「臭いものには蓋をする」と表現するようになりました。

臭いものに蓋をしても、問題が解決することはありませんよね。むしろ、放置すればするほど悪臭はひどくなるばかり。蓋がいらないくらい、きれいな状態を維持しようとする行動が理想的ではないでしょうか。

\次のページで「「頭隠して尻隠さず」の英訳は?」を解説!/

「頭隠して尻隠さず」の英訳は?

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では、「頭隠して尻隠さず」を英訳すると、どのような表現があるのでしょうか。

「ostrich policy」

英語でも「頭隠して尻隠さず」と同じ意味の言葉が存在します。「ostrich policy(オストリッチ ポリシー)」は、「事なかれ主義」や「現実逃避者」という意味。「ostrich」とは「ダチョウ」のこと。「policy」は「方針」や「やり方」という意味になります。ダチョウは、追い詰められると砂に頭を突っ込む習性があるそうですね。ダチョウは隠れたつもりでも、大きな体は隠れていません。そのような様子から「ostrich policy」を「頭隠して尻隠さず」として用いるようになりました。日本では「きじ」でしたが、英語では「ダチョウ」でたとえているのが面白いですね。

「The foolish ostrich buries his head in the sand and thinks he is not seen」

「The foolish ostrich buries his head in the sand and thinks he is not seen」は、英語のことわざになります。直訳すると「愚かなダチョウは頭を砂に埋めて見つからないと思っている」になり、「頭隠して尻隠さず」として使うことができるでしょう。「The foolish ostrich」は「愚かなダチョウ」という意味。「buries his head in the sand」は「頭を砂に埋めている」という意味になります。「thinks he is not seen」は「彼は見られないと思っている」と直訳することができますね。

「頭隠して尻隠さず」を使いこなそう

この記事では「頭隠して尻隠さず」の意味・使い方・類語などを説明しました。「頭隠して尻隠さず」は、文章からして状況が想像しやすいことから、年代問わず親しまれている慣用句といえます。ただし、本来の意味を知っているならば、言葉の裏に隠れた指摘に気づくのではないでしょうか。一時しのぎで悪事や欠点を隠したとしても、根本的な解決にはなりません。さらに「頭隠して尻隠さず」といわれている時点で、周囲には気づかれているわけです。見て見ぬ振りをするよりは、問題と向き合って少しでも改善していくほうが健全といえるのではないでしょうか。

「頭隠して尻隠さず」は、愚かさをあざける言葉ですが、近年では可愛らしい様子を表す言葉としても使われるようになってきました。プライベートならば問題ありませんが、ビジネスで使う場合は注意したほうがいい慣用句といえます。身近に放置できない問題があるのなら、「頭隠して尻隠さず」を使って指摘してみてはいかがでしょうか。

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国語言葉の意味

【慣用句】「頭隠して尻隠さず」の意味や使い方は?例文や類語を本の虫ライターがわかりやすく解説!

この記事では「頭隠して尻隠さず」について解説する。

端的に言えば「頭隠して尻隠さず」の意味は「悪事や欠点を隠しきれていないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

年間60冊以上本を読み込んでいるヤマゾーを呼んです。一緒に「頭隠して尻隠さず」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマゾー

ビジネス本を中心に毎年60冊読破。本を通じて心に響く生きた日本語を学ぶ。誰にでも分かりやすい説明で慣用句を解説していく。

「頭隠して尻隠さず」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「頭隠して尻隠さず」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「頭隠して尻隠さず」の意味は?

「頭隠して尻隠さず」には、次のような意味があります。

悪事・欠点の一部を隠して全部を隠したつもりでいる愚かさをあざける言葉。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「頭隠して尻隠さず」

「頭隠して尻隠さず」は文字通り、本人は隠れているつもりでも、周りからはお尻が丸見えの状態だといってよいでしょう。そのような様子から転じて、悪事や欠点を全て隠したつもりでも、一部しか隠れていない状態のこと「頭隠して尻隠さず」と表現するようになりました。「あざける」とは、人を軽蔑して悪く言ったり笑ったりすること。本人は周囲に気づかれていると思っていないわけですから、必死に隠す行動を、皮肉を込めて遠回しに非難している慣用句といえるでしょう。

近年では、顔だけ隠してお尻だけ出しているような、可愛らしい動物写真や動画などに対しても用いられています。ただし「頭隠して尻隠さず」は、本来は隠しきれていない愚かさをあざける言葉。状況によっては相手を不愉快にさせてしまうかもしれません。組織や他人に対して使う場合は注意しましょう。

「頭隠して尻隠さず」の語源は?

次に「頭隠して尻隠さず」の語源を確認しておきましょう。「頭隠して尻隠さず」の由来は「雉(きじ)」の習性からだといわれています。雉は、主に林や草原に住んでおり、オスは色鮮やかで長い尾が特徴。天敵が現れると急いで草むらに隠れますが、長い尾は丸見えの状態になってしまいます。そのような滑稽な姿から「頭隠して尻隠さず」という慣用句が生まれました。ほかにも、「江戸いろはかるた」の札としても「頭隠して尻隠さず」は使われています。

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