この記事では「水天一碧」について解説する。

端的に言えば水天一碧の意味は「水平線上で空と海の青い色が融け合いひと続きに見えること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「水天一碧」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「水天一碧」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「水天一碧」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「すいてんいっぺき」です。意味を確認したあとは、語源や使い方まで詳しく見ていきますよ。

「水天一碧」の意味は?

「水天一碧」には、次のような意味があります。まずは、辞書での基本的な意味をとらえてから、言葉を正確にとらえて詳しいところまで見ていきましょう。

1.遠く水平線上で、空と海の青色がひとつに融け合って、一続きに見えること。

出典:四字熟語辞典(学研)「水天一碧」

「水天」とは水と空ということから海と空のこと、「一碧」は一面が青い色になることです。また、「碧」は「みどり」とも読み、深い青やあおみどりのような色合いを表しています。雲もなく晴れ渡った水平線を臨んだときに、空も海も真っ青で一続きに見える光景のことですね。

「水天一碧」の語源は?

次に「水天一碧」の語源を確認しておきましょう。

「水天一碧」の由来は、中国唐代初期の詩人である王勃(おうぼつ)が著した『滕王閣序(とうおうかくのじょ)』です。滕王閣とは実在の楼閣で、武漢の黄鶴楼、岳陽の岳陽楼と並んで江南の三大楼閣として知られています。

そこには「落霞(らっか)と孤鶩(こぶ)と斉(なら)び飛び、秋水は長天と共に一色なり」とあり、「夕焼けに鴨が一羽が並んで飛び、秋水と長天はまさに一色に見える」ということを表した表現です。これが、「水天一碧」のもととなったとされていますよ。

\次のページで「「水天一碧」の使い方・例文」を解説!/

「水天一碧」の使い方・例文

「水天一碧」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。意味合いとしての使い方と文法的に見た使い方についても見ていきますよ。

1.海岸の砂浜からぼんやり海を眺めると、空と海面の色が境目なく融け合い水天一碧の景色だった。
2.防波堤から見た水天一碧である景色は、自然の偉大さが感じられ人間をちっぽけに思わせるものがあった。

例文1.は、海を眺めた景色が空と海の青色が融け合って見えたことを表現しています。例文の2.では、水天一碧に見えた景色によって、自然が雄大であることを感じさせられたということを述べた文です。

文法的に見てみると、「水天一碧の…」「水天一碧である…」など四字熟語そのものを名詞として使っています。「水天一碧する」というような動詞化した表現をすることはありません。

「水天一碧」の類義語は?違いは?

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それでは、「水天一碧」の類義語についての説明です。ほぼ同じ意味を表す四字熟語が複数あるので、類義語についていくつか見ていきましょう。

「水天彷彿」

「水天一碧」の類義語には、「水天彷彿(すいてんほうふつ)」があります。意味は、遠くの水平線で空と海の青色が接していて一つに融け合っていることです。「水天」は空と海のこと、「彷彿」はぼんやりとしていてはっきりしないようすのことを表しています。

「水天彷彿」の「彷彿」は「髣髴」とも書き、由来と言われている頼山陽の『泊天草洋(天草洋に泊す)』という漢文でも「髣髴」と書かれていますよ。『泊天草洋』は1818年に頼山陽が九州旅行をした際に書いた七言古詩です。

\次のページで「「上下天光」」を解説!/

「上下天光」

もう一つの類義語には、「上下天光(しょうかてんこう)」があります。空と水が一つになって明るく輝いていることという意味です。「上下」は天地のことや空と海のこと、「天光」は空一面に輝く日の光のことを表しています。

日の光が海面にも光り輝き、どちらも光って見えるということです。どちらも青く見えるという「水天一碧」とは少し違いはありますが、いずれも美しく見えるということでは同じですね。

「水天一碧」の対義語は?

次に、「水天一碧」の対義語についての説明です。「水天一碧」とは対象的に、空と海がはっきり見えなかったり、違った見え方をするようすを表す四字熟語について見ていきましょう。

「煙波縹渺」

「水天一碧」の対義語には、「煙波縹渺(えんぱひょうびょう)」があります。意味は、水面が遠くまで煙って空と水面の境界がはっきりしないようすのことです。「煙波」は水面がもやなどで煙るように波立っていること、「縹渺」はぼんやりしていてかすかなようすを表しています。

晴れ渡った水平線について述べたのが「水天一碧」でしたので、遠くまで煙って見えないような状態の「煙波縹渺」は反対の意味を表していると言えますね。

「水光接天」

もう一つの対義語には、「水光接天(すいこうせってん)」があります。月光に照らされた川面の輝きが遠く広がって空まで続いているという意味です。「水光、天に接す」と読み下すことができ、長江の雄大な夜景について詠んだと言われています。

昼間の青く美しい景色を表す「水天一碧」に対して、夜景を表す「水光接天」です。美しい景色であることは共通していますが、昼と夜ということで対義語として紹介しました。

「水天一碧」の英訳は?

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最後に、「水天一碧」の英訳についての説明です。言語は違いますが、意味が伝わりやすい英語表現について詳しく見ていきましょう。

「unity of the sky and the sea」

「水天一碧」の英訳には、「unity of the sky and the sea」があります。直訳すると「空と海の統一」です。「unity」には、「単一であること、統一、一致、結束」という意味があります。

ほかには、「what the sky and the sea merge」とすると「空と海が融け合うこと」という意味です。「merge」は「併合する、溶け合わせる」という意味があり、こちらも同じような意味で使うことができます。

\次のページで「「水天一碧」を使いこなそう」を解説!/

「水天一碧」を使いこなそう

今回の記事では「水天一碧」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「水天一碧」の基本的な意味は、水平線上で空と海の青い色が融け合うことです。語源となった『泊天草洋』は、頼山陽が長崎から天草に移動した旅の途中で書かれたものと言われています。長崎から天草というと、美しい景色であるほか、野生のイルカが生息する地域でもありますよ。もしかしたら、頼山陽はイルカの群れも目にしていたかもしれませんね。

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国語言葉の意味

【四字熟語】「水天一碧」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「水天一碧」について解説する。

端的に言えば水天一碧の意味は「水平線上で空と海の青い色が融け合いひと続きに見えること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「水天一碧」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「水天一碧」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「水天一碧」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「すいてんいっぺき」です。意味を確認したあとは、語源や使い方まで詳しく見ていきますよ。

「水天一碧」の意味は?

「水天一碧」には、次のような意味があります。まずは、辞書での基本的な意味をとらえてから、言葉を正確にとらえて詳しいところまで見ていきましょう。

1.遠く水平線上で、空と海の青色がひとつに融け合って、一続きに見えること。

出典:四字熟語辞典(学研)「水天一碧」

「水天」とは水と空ということから海と空のこと、「一碧」は一面が青い色になることです。また、「碧」は「みどり」とも読み、深い青やあおみどりのような色合いを表しています。雲もなく晴れ渡った水平線を臨んだときに、空も海も真っ青で一続きに見える光景のことですね。

「水天一碧」の語源は?

次に「水天一碧」の語源を確認しておきましょう。

「水天一碧」の由来は、中国唐代初期の詩人である王勃(おうぼつ)が著した『滕王閣序(とうおうかくのじょ)』です。滕王閣とは実在の楼閣で、武漢の黄鶴楼、岳陽の岳陽楼と並んで江南の三大楼閣として知られています。

そこには「落霞(らっか)と孤鶩(こぶ)と斉(なら)び飛び、秋水は長天と共に一色なり」とあり、「夕焼けに鴨が一羽が並んで飛び、秋水と長天はまさに一色に見える」ということを表した表現です。これが、「水天一碧」のもととなったとされていますよ。

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