この記事では「冷たい戦争」について解説する。

端的に言えば「冷たい戦争」の意味は「武力は用いないものの第二次世界大戦後の米・ソの二大陣営の対立状態のこと。」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で5年間のライター経験を持つEastflowerを呼んです。一緒に「冷たい戦争」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

語学好きで英語、中国語が得意な5年目のライター。今回の「冷たい戦争」は第二次世界大戦後の20世紀の世界情勢を示す慣用句です。言葉の起源を含めて、どんな場面で使えるのかを解説していきましょう。

「冷たい戦争」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速、国語辞典に記載されている意味から見ていきましょう。

「冷たい戦争」の意味は?

「冷たい戦争」には、次のような意味があります。

《cold war》武力は用いないが、激しく対立・抗争する国際的な緊張状態。第二次大戦後の米・ソ二大陣営の厳しい対立を表した語。人間関係などに用いる場合もある。冷たい戦争。

[補説]顕在化したのは1947年のトルーマン‐ドクトリンからとされる。1949年のドイツ分裂とNATO成立、1962年のキューバ危機など幾度かの国際緊張をもたらしたが、1989年、マルタ島において米国のG=H=W=ブッシュ・ソ連のゴルバチョフ両首脳が冷戦終結を共同宣言した。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「冷たい戦争」

「冷たい戦争」(つめたいせんそう)は「冷戦」(れいせん)とも呼ばれ、1945年、第二次世界大戦は終結したものの、大戦中からアメリカを中心とする自由主義の国々共産党が主導する旧ソビエト連邦(現在のロシア)を中心とする共産国の考え方の違いは顕在化していきました。戦後、世界のすべての国々が望んだのが、戦争で荒廃した都市の復興であり、早く戦争前の経済状態にもどしたいという想いでした。戦争中、比較的被害が少なく戦争需要の支えもあって潤沢な経済力を持っていたのはアメリカ合衆国のみでした。

アメリカは国務長官マーシャルの提案に基づき、疲弊したヨーロッパ大陸の諸国に対して巨額の復興援助をする計画を立案し、支援すべき対象国の中に西ヨーロッパ諸国のみでなく旧ソ連や東欧諸国も含めた計画でした。しかし、最終的にソ連はアメリカからの援助を受けることを拒絶したのです。自由主義を掲げるアメリカの内政干渉を回避したいというのが旧ソ連の援助を断った大きな理由のひとつだったと考えられています。

これを契機にアメリカをリーダーとする自由主義国と旧ソ連を中心とする社会主義国は、政治面のみでなく、経済面、軍事面においても対抗する姿勢を打ち出していきました。

「冷たい戦争」の語源は?

次に「冷たい戦争」の語源を確認しておきましょう。

「冷戦」は英語では「Cold War」(コールド・ウォー)と言われますが、第二次世界大戦後、アメリカと旧ソ連が直接戦闘することはなかったものの、アメリカを中心とする自由主義国(西側)と旧ソ連を中心とする社会主義国(東側)の「二つの世界」があらゆる面で激しく対立した状態について、アメリカのジャーナリストである「ウォルター・リップマン」が1947年『冷戦』(The Cold War: A Study in U. S. Foreign Policy,)を刊行したことにより一般的に「冷戦」あるいは「冷たい戦争」と呼ばれるようになりました。この東西対立の状態は戦後直後から顕在化して、1980年代の終わりまで続くこととなりました。

\次のページで「「冷たい戦争」の使い方・例文」を解説!/

「冷たい戦争」の使い方・例文

「冷たい戦争」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.「冷たい戦争」状態の世界では、東西両陣営が、お互いのグループによる経済的な協力体制、軍事的な同盟協定を結んでいきました。この双方の対立の根の深さは誰の目からも明らかでした。

2.「冷たい戦争」の状態にあった世界は旧ソ連が原爆実験に成功したことにより、以降東西の核兵器やミサイルの軍事開発競争はより激しくなっていきました。

3.中国の技術面、経済面での発展は目覚ましく、ハイテク部門でも多くの特許を獲得するようにもなっている。アメリカと旧ソビエト間の「冷たい戦争」は終わったが、今後、米中間で新しい「冷たい戦争」に発展するのではないかと危惧している人々も多い。

冷たい戦争は、第二次世界大戦後を象徴する世界情勢だったのです。

「冷たい戦争」の類義語は?違いは?

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それでは次に「冷たい戦争」の類義語を見ていきましょう。

「コールド・ウォー」

「コールド・ウォー」は、「冷戦」や「冷たい戦争」という言葉が使われるようになったもともとの原語で、アルファベットでは、「Cold War」になります。「Cold War」の「Cold」(コールド)は「冷たい」という意味であり、「War」(ウォー)は「戦争」の意味です。アメリカのジャーナリストがその著書の中で使ったのが最初と言われていますが、「コールド・ウォー」は世界中で使われている言葉であり、この言葉を聞いたら、相手が米ソが対立していた20世紀の中ごろから1990年代末までの世界の状況のことを言っているのだと考えればよいでしょう。

\次のページで「「東西問題」」を解説!/

「東西問題」

「東西問題」(とうざいもんだい)は、第二次世界大戦後の東側諸国(旧ソ連を中心とする社会主義、共産主義諸国)と西側(アメリカを中心とする資本主義国、自由主義国)との政治的、軍事的、経済的な対立問題のことを言います。

「冷戦」と「東西問題」との言葉のニュアンスで異なる点は、「冷戦」には、戦後、東西が対立していた状態にあったことの他に、両陣営のリーダーである旧ソビエトとアメリカが直接戦争に突入することがなかった意味を含むのに対して、「東西問題」の方は直接戦争に発展しなかったことは必ずしも意味せず、東側と西側の一連の問題のことをさしているのです。

「冷たい戦争」の対義語は?

それでは、対義語についてご紹介しましょう。

「熱い戦争」

「冷戦」が経済、軍事の協定を結び、軍備の増強を行う一方で直接戦争はしない状態であったのに対して、「熱い戦争」(あついせんそう)は、実際に武器を使って戦う戦争のことを指します。「冷戦」に対して反対語として、「熱戦」(ねっせん)や「熱い戦い」を使えるかと言えば、「冷戦」が話題になっている話の脈絡では、相手にも意味が通じるかと思いますが、それまでの話となんの脈絡もなく「熱戦」や「熱い戦い」のことばを使ってしまうと多くの人は高校野球やサッカーやラグビーの試合の話だと勘違いしてしまうおそれもあることから「冷戦」の反対語として使いたいのであれば、やはり、「熱い戦争」という単語をを使った方が適切でしょう。

「冷たい戦争」の英訳は?

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それでは「冷たい戦争」は、英語ではどう表現されるのでしょうか?

「Cold War」

「冷たい戦争」は英語では「Cold War」(コールド・ウォー)と言われています。

アメリカのジャーナリストであるウォルター・リップマン(=Walter Lippmann)が自身の著作の中で、戦後の世界情勢は、アメリカと旧ソ連は直接戦争は行わないものの、実際には、両陣営が競って軍備を増強し、それぞれの主義の陣営に第三国を組み入れようとしている時代だと、戦後の状態を説明しました。リップマンは生涯で2度ピューリッツァー賞を受賞し、20世紀において、「最も影響力のあったジャーナリスト」とも「現代ジャーナリズムの父」とも評されています。

それではいくつか、例文をご紹介しましょう。

1.The world situation called ”the cold war” had been continuing since the end of the World War 2, but the cold war ended when the Soviet Union collapsed.
(冷戦と呼ばれる状況は世界の情勢は、第二次世界大戦後以来続いてきました。冷戦が終了したのはソビエト連邦が崩壊したときでした。)

2.During the Cold War, Europe was divided into the eastern and western sides leaded by two huge power countries, America and Soviet Union
(冷戦の間、ヨーロッパは二つの巨大国であるアメリカとソビエト連邦によって東側と西側に分けられていきました)

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「冷たい戦争」を使いこなそう

ここまで、「冷たい戦争」について見てきました。第二次世界大戦後の世界は米ソの超大国のもと自由主義を掲げる西側諸国と社会主義を掲げる東側諸国に分かれていき、米ソが直接対決することはなかったもののいろいろな分野で対抗、対立していきました。「冷たい戦争」は戦後から1990年代末までの世界状況を表した非常に的を得た言葉ですが、この言葉は、直接争うことはなくても反目し合う冷えた人間関係を表す言葉としても使われますし、また、戦後、特に経済面において台頭してきた中国と、1900年以降、常に経済力で1位の立場を維持してきたアメリカとの現在の関係を「新冷戦」と例える人も少なくありません。

みなさん、今後の世界情勢はどうなっていくのでしょうね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「冷たい戦争」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「冷たい戦争」について解説する。

端的に言えば「冷たい戦争」の意味は「武力は用いないものの第二次世界大戦後の米・ソの二大陣営の対立状態のこと。」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で5年間のライター経験を持つEastflowerを呼んです。一緒に「冷たい戦争」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

語学好きで英語、中国語が得意な5年目のライター。今回の「冷たい戦争」は第二次世界大戦後の20世紀の世界情勢を示す慣用句です。言葉の起源を含めて、どんな場面で使えるのかを解説していきましょう。

「冷たい戦争」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速、国語辞典に記載されている意味から見ていきましょう。

「冷たい戦争」の意味は?

「冷たい戦争」には、次のような意味があります。

《cold war》武力は用いないが、激しく対立・抗争する国際的な緊張状態。第二次大戦後の米・ソ二大陣営の厳しい対立を表した語。人間関係などに用いる場合もある。冷たい戦争。

[補説]顕在化したのは1947年のトルーマン‐ドクトリンからとされる。1949年のドイツ分裂とNATO成立、1962年のキューバ危機など幾度かの国際緊張をもたらしたが、1989年、マルタ島において米国のG=H=W=ブッシュ・ソ連のゴルバチョフ両首脳が冷戦終結を共同宣言した。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「冷たい戦争」

「冷たい戦争」(つめたいせんそう)は「冷戦」(れいせん)とも呼ばれ、1945年、第二次世界大戦は終結したものの、大戦中からアメリカを中心とする自由主義の国々共産党が主導する旧ソビエト連邦(現在のロシア)を中心とする共産国の考え方の違いは顕在化していきました。戦後、世界のすべての国々が望んだのが、戦争で荒廃した都市の復興であり、早く戦争前の経済状態にもどしたいという想いでした。戦争中、比較的被害が少なく戦争需要の支えもあって潤沢な経済力を持っていたのはアメリカ合衆国のみでした。

アメリカは国務長官マーシャルの提案に基づき、疲弊したヨーロッパ大陸の諸国に対して巨額の復興援助をする計画を立案し、支援すべき対象国の中に西ヨーロッパ諸国のみでなく旧ソ連や東欧諸国も含めた計画でした。しかし、最終的にソ連はアメリカからの援助を受けることを拒絶したのです。自由主義を掲げるアメリカの内政干渉を回避したいというのが旧ソ連の援助を断った大きな理由のひとつだったと考えられています。

これを契機にアメリカをリーダーとする自由主義国と旧ソ連を中心とする社会主義国は、政治面のみでなく、経済面、軍事面においても対抗する姿勢を打ち出していきました。

「冷たい戦争」の語源は?

次に「冷たい戦争」の語源を確認しておきましょう。

「冷戦」は英語では「Cold War」(コールド・ウォー)と言われますが、第二次世界大戦後、アメリカと旧ソ連が直接戦闘することはなかったものの、アメリカを中心とする自由主義国(西側)と旧ソ連を中心とする社会主義国(東側)の「二つの世界」があらゆる面で激しく対立した状態について、アメリカのジャーナリストである「ウォルター・リップマン」が1947年『冷戦』(The Cold War: A Study in U. S. Foreign Policy,)を刊行したことにより一般的に「冷戦」あるいは「冷たい戦争」と呼ばれるようになりました。この東西対立の状態は戦後直後から顕在化して、1980年代の終わりまで続くこととなりました。

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