今回は金を生み出す「錬金術」について勉強していこう。別の何かを使って金が作れたら…。一度はこんなことを考えたことのあるやつもいるんじゃないか?

今回は錬金術の歴史と現実的な可否について化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.錬金術とは

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みなさんは「錬金術(れんきんじゅつ)」「錬金術師」にどんなイメージを持っていますか?有名な漫画のタイトルにもなっているので、言葉だけは聞いたことがあるという人も多いでしょう。魔術的なイメージを持っているかもしれませんが、今回解説するテーマは「科学技術をもって卑金属から貴金属を精錬しようとする試みについて」です。

1-1.なぜ人々は錬金術を試みるのか

まず、卑金属というものは容易に酸化してしまう金属を指します。つまりさびやすい金属、銅や鉄のことですね。私たちの生活の中では、複数の金属を組み合わせて加工した合金としてよく使われています。

一方で金やプラチナ(白金)、銀のようなものはさびにくく、結婚指輪のような直接肌に触れる(水に濡れやすく皮脂で汚れやすい=本来であればさびやすいはずの)アクセサリーにも用いられていますね。卑金属は貴金属に比べて安価であり、希少価値はそれほどないでしょう。そこで考えられたのが錬金術です。

「比較的安価で豊富に存在する材料金属から金が作れたら…。」一生お金に困らず暮らしていけそうですよね。

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1-2.錬金術の歴史

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錬金術の歴史は古く、紀元前の古代ギリシアや古代エジプトまでさかのぼります。こういった研究と実験の記録は各地に残っていて、その中には「金に別の金属を加えることで金を増量させる方法」などもありました。

もちろんこの方法には何の根拠もなく、生成物が本物の金であることの証拠はありません。もしかしたら当時の人々はこれが本物の金になったと本気で思っていた人もいるかもしれませんが、このように記された錬金術はニセモノだったと言わざるを得ませんでした。

2.錬金術師がもたらした成果

錬金術師の試みが全て失敗だったかといえば、決してそうではありません。錬金術自体はうまくいかずとも、科学技術の発展や別の物質の発見に貢献したことは間違いないからです。

2-1.蒸留技術

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錬金術を試みる錬金術師(科学者)であれば、誰もが試す方法があります。それは「複数の物質を混ぜ合わせること」「生成物を取り出すこと」です。何もないところから金は出てきませんから、必ず何かと何かと混ぜ、どうにか金として取り出そうとするというのが錬金術の原点でしょう。そこで大きく発展したのが蒸留技術です。

蒸留技術が進歩することでアルコールの製造が可能になりました。薬草を漬け込んで長寿の秘薬として飲まれたり、医薬品としても用いられていたといいます。種類は違えど今でも祭事や呪術、儀式にアルコールは欠かせないものですよね。

2-2.火薬の発明

錬金術の材料は様々ですが、中でも硝石や硫黄、木炭、鉛などの金属などが用いられていたようです。これらは黒色火薬の原材料でもあり、錬金術や薬を作ろうとする際の副産物として発見されたといわれています。

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2-3.強酸の発明

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強酸といえば硫酸、硝酸、塩酸、そして濃塩酸と濃硝酸を3:1の体積比で混合した王水でしょう。これらの強酸も錬金術師の多くの実験から生み出されたものであり、これには先述した蒸留技術や錬金術に用いられた材料の存在が大きく関わっています。

硫酸塩鉱物の乾留によって硫酸を、硫酸塩鉱物と硝石の混合・上流から硝酸を、硫酸と食塩から塩酸を、さらに塩酸と硝酸から王水を得たのです。

本来水やアルコールのような溶媒には溶けない金属ですが、王水を用いることで金やプラチナを含む多くの金属を溶解することができます。この特性を活かし、錬金術を成功させようとした人がたくさんいたと考えられますね。

2-4.磁器の製造技術

錬金術師は貴金属を精錬しようと、ありとあらゆる方法を試したことでしょう。混ぜたり溶かしたり、焼いたり乾かしたり…、試行錯誤によって得た知識を買われたのか、ある錬金術師は王様から白磁製造の命を受けました。

その当時、ヨーロッパにとって東洋の磁器は大変高価であこがれの品だったといいます。このときに建てられた磁器工場が今有名な「マイセン」の発祥となる工場なのです。

3.現代における錬金術

今回は卑金属から貴金属を、をテーマに解説してきました。しかし広義では「不完全なものを完全なものに変える試み」を意味します。例えば病気やけがのない健康な体、さらに不老不死を目指すといった思想を指すこともあるでしょう。また、錬「金」術を「お金を生む術」と解釈し、悪徳商法といった悪い意味で使用されることもあるので知っておくといいですね。

3-1.実際に錬金術は可能なのか

3-1.実際に錬金術は可能なのか

image by Study-Z編集部

現在の研究では、水銀から金を生成することが「可能」だとされています。その仕組みは上記の図をみてください。

周期表を見ればわかるように、金(Au)の隣に位置する水銀(Hg)は中性子の数が異なる7つの同位体をもっています。その中でもHg-196(電子80個、陽子80個、中性子116個)は同位体の中で最も中性子数が少なく、中性子の欠乏状態にあるといえるでしょう。このような状態の原子核は飛んできた中性子を捕まえやすくなっているため、中性子を照射すると、

Hg-197(電子80個、陽子80個、中性子117個)

となります。すると電子捕獲(電子が原子核に取り込まれ、捕獲された電子は陽子と反応して中性子になり、そのためにHg-197からAu-179になる過程で電子と陽子がそれぞれ1つずつ減り、中性子が1つ増える)とよばれる放射性崩壊が起こり、Au-179(電子79個、陽子79個、中性子118個)の金になるのです。(上記画像引用:原子力システム研究室_東京都市大学)

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もっと簡易的に解説したのがこの図です。この方法を用いれば確かに錬金術は成功といえますが、Hg-196自体が希少であり、現実的な方法とはいえないでしょう。しかし、確かに金を精錬する技術というものは存在していたのです。

錬金術は実現可能!しかし…

世界のいたるところで古くから研究されていた錬金術。黄金を生み出す方法が見つかればとたくさんの錬金術師が仕事に精を出したことでしょう。昔の書物などにその方法が残されていたものの、成功を証明できるものはありませんでした。

しかし現代の科学技術をもってすれば、錬金術は実現可能だということが発表されています。夢のある話ですよね。しかし現実はそう甘くありません。その方法はあまりにもコストがかかるため、そこまでして金を生成する価値があるのかという別の問題があるのです。とはいえ、昔の人が追い求めていた錬金術は確かに方法が存在していました。技術は進歩し続けています。もしかしたらいつの日にかこれ以上に簡単で効率のいい方法が見つかるかもしれませんよ。

画像引用:いらすとや

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化学

3分で簡単にわかる!「錬金術」とは?錬金術師がもたらした成果も元塾講師がわかりやすく解説

今回は金を生み出す「錬金術」について勉強していこう。別の何かを使って金が作れたら…。一度はこんなことを考えたことのあるやつもいるんじゃないか?

今回は錬金術の歴史と現実的な可否について化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.錬金術とは

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みなさんは「錬金術(れんきんじゅつ)」「錬金術師」にどんなイメージを持っていますか?有名な漫画のタイトルにもなっているので、言葉だけは聞いたことがあるという人も多いでしょう。魔術的なイメージを持っているかもしれませんが、今回解説するテーマは「科学技術をもって卑金属から貴金属を精錬しようとする試みについて」です。

1-1.なぜ人々は錬金術を試みるのか

まず、卑金属というものは容易に酸化してしまう金属を指します。つまりさびやすい金属、銅や鉄のことですね。私たちの生活の中では、複数の金属を組み合わせて加工した合金としてよく使われています。

一方で金やプラチナ(白金)、銀のようなものはさびにくく、結婚指輪のような直接肌に触れる(水に濡れやすく皮脂で汚れやすい=本来であればさびやすいはずの)アクセサリーにも用いられていますね。卑金属は貴金属に比べて安価であり、希少価値はそれほどないでしょう。そこで考えられたのが錬金術です。

「比較的安価で豊富に存在する材料金属から金が作れたら…。」一生お金に困らず暮らしていけそうですよね。

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