この記事では「下手の考え休むに似たり」について解説する。

端的に言えば「下手の考え休むに似たり」の意味は「考えるだけ時間の無駄」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教材系のライターを10年経験した梨子なしこ太朗吉を呼んです。一緒に「下手の考え休むに似たり」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/梨子なしこ太朗吉

本や雑誌を作り続ける文章職人。参考書から音楽誌まで、娯楽と言葉と実用をむすびつけることを自らも楽しみつつ、分かりやすく伝える。

「下手の考え休むに似たり」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「下手の考え休むに似たり」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「下手の考え休むに似たり」の意味は?

「下手の考え休むに似たり」には、次のような意味があります。

よい考えも浮かばないのに長く考え込むのは何の役にも立たず、時間の無駄だということ。

出典:故事ことわざ辞典

なんとかよい知恵を出そうと頑張っているのに、それは無駄だというのですから残酷なものです。努力こそが大事という面も人生にはありますが、考えているばかりではだめで、手を動かして働け、という圧力もたしかに世間にはあります。

一方、三年寝太郎のように、ときが経って、役に立つ働きができるようになる場合もありますね。下手の考えのように見えて、そのじつ賢い知恵なのかも。そう反発したくなることわざがこの「下手の考え休むに似たり」と言えましょうか。

「下手の考え休むに似たり」の語源は?

次に「下手の考え休むに似たり」の語源を確認しておきましょう。

この言葉は、もともとは囲碁や将棋から来たようです。対局中、よい手を探して長いこと考えこんでいても結局、下手な指し手では妙手は生まれない、一生懸命に考えてはいるんだろうが、結果を見れば、なにもしないで休んでいるのとかわらない、という意味で、相手が待ちくたびれていらいらしている様子がうかがえる言葉ですね。

でも、一生懸命に手を探して考えるから囲碁でも将棋でも上達をする、これもまた真理のように思いますがいかがでしょうか。

\次のページで「「下手の考え休むに似たり」の使い方・例文」を解説!/

「下手の考え休むに似たり」の使い方・例文

「下手の考え休むに似たり」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.転職して仕事をかえるつもりなら、誰かに相談をすれば解説や知恵、ヒントをもらえるかもしれないのだから、ここは下手の考え休むに似たりだよ、一人で答えを出さず、まずこの先生に会って安心できる方法や必要な保険についても教えてもらった方がいいね。

2.表現活動もつまるところ人気商売だから、あれこれ思いをめぐらしても下手の考え休むに似たりということで、それよりも実践のための営業活動のマナーこそ最初に知っておくべきだろう。

3.相手の実力もわからずに対策を練っても、下手の考え休むに似たり、つまり時間の浪費だから、ワールドカップでは、相手国が決まってのちにその国の実力と自国の比較をして戦略を立て直すことになる。

考えてばかりでは埒が明かないのであって、そんなことよりも別のことをした方がよい、そういう文脈で使われることが多いようです。

「下手の考え」ですからしかたがないのかもしれませんし、考えるべき時期、機会というのもたしかにあるのでしょう。考えるという経験を積んで、下手が上手になっていくということはこの際考慮されないようです。悲しいかな、これは現実の世界の話でもありますね。

「下手の考え休むに似たり」の類義語は?違いは?

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「下手の考え休むに似たり」と似た意味を持つ言葉として、「下手の長談義」や「小人閑居して不善をなす」があります。

「下手の長談義」

話の下手な人は、だらだらと無意味な内容を延々話し続けるという意味です。

下手の考え休むに似たりの場合は、黙って考え込んでいるだけかもしれませんが、相手をいらいらさせるというところが共通しています。どちらも思慮の足りない人が無駄な時間を過ごしており、また相手にも無駄な時間を強要しているということです。

\次のページで「「小人閑居して不善をなす」」を解説!/

「小人閑居して不善をなす」

人間として価値の低い者は、暇でいると良くない行いをする、という意味です。

「下手の考え休むに似たり」では、相手に積極的に害を及ぼそうとしているわけではありませんが、どちらも、価値の低い人間が時間を無駄にして良くない行いをしているという点で共通しているように思えます。

「下手の考え休むに似たり」の対義語は?

「下手の考え休むに似たり」と反対の意味を持つ言葉としては、以下のようなものがあります。

「岡目八目」

当事者よりも傍観者の方が状況をよく見通せる、という意味です。

囲碁から来た言葉で、碁を打っている当事者はなかなか良い手を思いつかないものだが、周りで対局を見ていると状況がはっきりと見えて、良い手を思いつきやすいところから。

たとえば国際情勢を見ていても、自国のことよりも他国の状況の方がよくわかるものではないでしょうか。状況を知るには、他国や他国民の視点で自国を見るというのがよいかもしれません。ときに辛いこともありますが。

「三人寄れば文殊の知恵」

下手の考えでは休んでいるに等しい、時間の無駄である、たしかにそういう場合も多いでしょうが、これが何人か人が集まれば状況が違ってくるものです。

「三人寄れば文殊の知恵」というのは、一人ひとりは下手であっても、三人も集まれば文殊菩薩のような素晴らしい知恵が出るという意味で、岡目八目とも近い言葉ですね。傍観者である岡目の知恵を当事者に授ければ、それがすなわち複数人の考えが集まったことと同じになるからです。

「三年寝太郎」

『三年寝太郎』は、長い間、何年も寝てばかりいた者が、ある時目覚めて大仕事をする話。寝太郎は寝ているように見えて、実はそのあいだずっと大仕事のことを考え続けていたのですが、これは目覚めるまでは「下手の考え休むに似たり」と同じ状況です。

しかし、最後に大仕事をするべく考え続けていたのですから、ただ休んでいたわけではありません。周りで見ている人にとっては、三年寝太郎は「下手の考え」と同じなのでしょうが、結果を出すと、正反対の評価を受けるわけで、これは結果からさかのぼって、その前の行為を評価している面もあるでしょう。

結果は、事前にはわからないのですから、結果を出す考えは良い考えだ、上手の考えだ、というのは本当は変だと思うのですが、そうは言っても世間は結果から物事を見るものですね。

「下手の考え休むに似たり」の英訳は?

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最後に「下手の考え休むに似たり」を英語で表現するとどうなるのかを確認しておきましょう。

\次のページで「「It’s hard to tell a poor thinker from a sleeping one.」」を解説!/

「It’s hard to tell a poor thinker from a sleeping one.」

下手の考えは、眠っているのと区別がつかない、つまり「下手の考え休むに似たり」ということになります。

「下手の考え休むに似たり」を使いこなそう

この記事では「下手の考え休むに似たり」の意味・使い方・類語などを説明しました。

考えてばかりで動かない人を急かすのに使われがちの言葉ですが、実際、会社の同僚など周りで働く人が「下手の考え」ばかりだと、つかれますね。無駄な考えやおしゃべりをする暇があったら働け、という気にもなるでしょう。

三年寝太郎? それは結果がわかっているし、昔話だし、実際にはそんな人は世の中で相手にされない、そうかもしれません。

そこで自分が下手の考えであっても貫いて生きていくか、それとも下手の考えはやめてしまうか、これは結構重い選択かもしれませんね。

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【慣用句】「下手の考え休むに似たり」の意味や使い方は?例文や類語を教材系ライターがわかりやすく解説!

この記事では「下手の考え休むに似たり」について解説する。

端的に言えば「下手の考え休むに似たり」の意味は「考えるだけ時間の無駄」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教材系のライターを10年経験した梨子なしこ太朗吉を呼んです。一緒に「下手の考え休むに似たり」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/梨子なしこ太朗吉

本や雑誌を作り続ける文章職人。参考書から音楽誌まで、娯楽と言葉と実用をむすびつけることを自らも楽しみつつ、分かりやすく伝える。

「下手の考え休むに似たり」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「下手の考え休むに似たり」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「下手の考え休むに似たり」の意味は?

「下手の考え休むに似たり」には、次のような意味があります。

よい考えも浮かばないのに長く考え込むのは何の役にも立たず、時間の無駄だということ。

出典:故事ことわざ辞典

なんとかよい知恵を出そうと頑張っているのに、それは無駄だというのですから残酷なものです。努力こそが大事という面も人生にはありますが、考えているばかりではだめで、手を動かして働け、という圧力もたしかに世間にはあります。

一方、三年寝太郎のように、ときが経って、役に立つ働きができるようになる場合もありますね。下手の考えのように見えて、そのじつ賢い知恵なのかも。そう反発したくなることわざがこの「下手の考え休むに似たり」と言えましょうか。

「下手の考え休むに似たり」の語源は?

次に「下手の考え休むに似たり」の語源を確認しておきましょう。

この言葉は、もともとは囲碁や将棋から来たようです。対局中、よい手を探して長いこと考えこんでいても結局、下手な指し手では妙手は生まれない、一生懸命に考えてはいるんだろうが、結果を見れば、なにもしないで休んでいるのとかわらない、という意味で、相手が待ちくたびれていらいらしている様子がうかがえる言葉ですね。

でも、一生懸命に手を探して考えるから囲碁でも将棋でも上達をする、これもまた真理のように思いますがいかがでしょうか。

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