この記事では「唯唯諾諾(いいだくだく)」という四字熟語について解説する。

端的に言えば「唯唯諾諾」の意味は「言いなりになるさま」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「唯唯諾諾」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「唯唯諾諾」の意味や使い方のまとめ

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それでは早速「唯唯諾諾」の意味や使い方を見ていきましょう。

「唯唯諾諾」の意味は?

まずは、国語辞典での定義から。「唯唯諾諾」には、次のような意味があります。

何事にもはいはいと従うさま。他人の言いなりになるさま。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「唯唯諾諾」

「唯唯諾諾」は、「唯」と「諾」のそれぞれを繰り返すことで成り立っています。ここで注目したいのは、これらの漢字が表す意味です。

「唯」は、「ただ~だけ」の意味で用いられることが多い漢字ではないでしょうか。それは、「唯一」「唯我独尊」などの言葉にも表れています。

しかし、「唯唯諾諾」では相手に賛成の意を示す「はい」の意味で用いられているのが特徴です。この点には特に気をつけておきましょう。

では、一方の「諾」の場合はどうでしょうか。実は、こちらも「はい」の意味で使われています。

この意味で用いられている「許諾」や「諾否」といった熟語を目にしたことも多いのではないでしょうか。つまり、「唯」も「諾」もほぼ同じ意味の漢字が繰り返されているということになりますね。

こうやって、繰り返し意味を重ねていくことで全体の意味を強める効果があるのは言うまでもありません。それだけ、相手のいうことに「はい」としか答えず言いなりになっているさまが表されているのです。

「唯唯諾諾」の出典は?

次に「唯唯諾諾」出典を確認しておきましょう。この四字熟語の出典は、韓非(かんぴ)の著した「韓非子(かんぴし)」だとされています。

韓非は、古代中国の春秋・戦国時代に法家として活躍した思想家です。彼は、韓非子の「八姦篇」という章で次のように主張しています。

ちなみに「八姦」とは、家来が主君を脅かすさまざまな悪事のことです。その中の「在旁(ざいぼう)」という項目に「唯唯諾諾」は登場します。

ここで言及されているのが、主君が実際に銘じないうちから「はいはい」といって主君の心よりも先んじて動こうとする家来の姿です。こういった姿勢は、君主に仇を成すものだと韓非は説いています。

また、こういった悪事に対しては、家来たちを実際に働かせて余計な口を挟ませないことが必要だということです。

\次のページで「「唯唯諾諾」の使い方・例文」を解説!/

「唯唯諾諾」の使い方・例文

「唯唯諾諾」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

唯唯諾諾と上司の言うことだけを聞いて何の意見もしないことが、果たして本当に組織のためだといえるのだろうか。

いつまでも唯唯諾諾としてばかりではなく、本当の気持ちを主張した方がかえって良い結果を生むことだってあるだろう。

同僚の佐藤が先輩が多少の無理難題を突き付けても文句ひとつ言わずに従う様子は、まさに唯唯諾諾だといえるものであった。

「唯唯諾諾」の意味をきちんと理解するには、「言いなり」「言いなりになる」といった言葉で置き換えて考えるのがおすすめです。こういった身近な言葉と置き換えることで、難しい熟語もぐんと分かりやすく感じられるようになります。

たとえば、最初の例文では「上司の言いなりになっているばかりで」としてみてください。きっと、分かりやすさがぐんとアップしたことでしょう。

あるいは、「言うことを聞いてばかり」などのフレーズでも構いません。これを二番目の例文の冒頭部に当てはめると「いつまでも言うことを聞いてばかりではなく」となります。

このように漢字だらけの表現を「和語」に置き換えてあげるだけで、理解度は格段にアップすることでしょう。

#2 「唯唯諾諾」の類義語は?違いは?

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ところで、「唯唯諾諾」と意味のよく似た言葉にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、中でも代表的なものを二つほど見ていきます。

「百依百順」

「百依百順(ひゃくいひゃくじゅん)」は、「唯唯諾諾」の類義語の中でも代表的なもののひとつです。この四字熟語には、人に言われるがままに従うという意味があります。

この熟語を構成する「依」が表すのは、人によりかかる・人にたよるという意味です。また、「順」にはしたがうという意味があります。

つまり、この四字熟語は、人を当てにして人の言うことにしたがってばかりいる様子を表しているのです。

\次のページで「「付和随行」」を解説!/

「付和随行」

「付和随行(ふわずいこう)」もまた、「唯唯諾諾」の類義語だといえるものです。こちらの四字熟語には、自分の意見というものを持たず他人の言動に付き従ってばかりいるという意味があります。

この熟語の前半部を占める「付和」とは、定見を待たず無批判に他人の言説に従うことです。後半部の随行は、目上の人に付き従っていく様子を表します。

これらを合わせれば、目上の人の言うことに無批判に従っている様子が浮かび上がってくるのではないでしょうか。では、これらの類義語を用いた例文もチェックしておきましょう。

側近たちがいつまでも君主に百依百順してばかりでは、けっして組織は良い状態に向かわないのではなかろうか。

上司の命令やネットの情報にただ付和随行するのではなく、自分自身で見聞きしたことをベースに考えることも必要だ。

#3 「唯唯諾諾」の対義語は?

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では、「唯唯諾諾」の対義語は一体どのようにとらえればよいのでしょうか。言いなりになることの反対は、相手の言い分を簡単には受け容れないことでしょう。

ここでは、そのような意味合いを持った表現を二つほど紹介していきます。

「抗拒不承」

「抗拒不承(こうきょふしょう)」は、「唯唯諾諾」とは好対照の意味を持った四字熟語です。この言葉には、相手の要求に対し激しく拒否して受け付けないという意味があります。

この熟語を構成する漢字が「抗(あらが)う」「拒(こば)む」に「不承(うけず)」では、このような意味になるのも当然だといえるでしょう。

「不承不承」

「不承不承(ふしょうぶしょう)」もまた、「唯唯諾諾」の対義語になりえる存在です。こちらの四字熟語には、嫌々ながら相手の言い分を聞き入れるという意味があります。

結局は聞き入れているので、先ほどの「抗拒不承」とは異なるので注意が必要です。ただし、「唯唯諾諾」とは違って心の中では「ノー」だと思っている点にも留意しておきましょう。

では、これらの対義語を用いた例文も、ここで確認しておきます。

写真は専門店でなければならないといった同調圧力には、抗拒不承の精神で断固として戦っていくつもりだ。

資格を取得するために福島の関連会社へ出向せよという事例を、不承不承とはいえ受け容れることにした。

\次のページで「「唯唯諾諾」の英訳は?」を解説!/

#4 「唯唯諾諾」の英訳は?

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最後に「唯唯諾諾」の英語訳についても押さえておきましょう。

「at someone's beck」

「at someone's beck」は、「唯唯諾諾」の英語訳としてはもっとも典型的なもののひとつです。また、もう少し長く「at someone's beck and call」と表現することもあります。

いずれにしても、個々の単語の足し算ではなく、ひとつの成句として覚えておくのがいいでしょう。

「at the mercy of ~」

「at the mercy of ~」もまた、「唯唯諾諾」の英語訳として十分に通用するものです。こちらは、「~のなすがまま」などと意訳することもできます。

こちらも先ほどのものと同様で、成句として覚えておきたいものです。

「唯唯諾諾」を使いこなそう

この記事では「唯唯諾諾」の意味・使い方・類語などを説明しました。この四字熟語は、相手の言いなりになるという意味でしたね。

よく考えずにとりあえず何にでも反対するという姿勢はほめられたものではありません。だからといって、よく考えずに「はいはい」とただ賛成する態度も同様です。

いずれにしても、思考停止状態にならないように気をつけたいものですね。みなさんも、この四字熟語を使う機会に恵まれたら、臆せずにどんどん使ってみてくださいね。

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国語言葉の意味

【四字熟語】「唯唯諾諾」の意味や使い方は?例文や類語も含めて現役文系講師が詳しくわかりやすく解説!

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端的に言えば「唯唯諾諾」の意味は「言いなりになるさま」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「唯唯諾諾」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「唯唯諾諾」の意味や使い方のまとめ

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それでは早速「唯唯諾諾」の意味や使い方を見ていきましょう。

「唯唯諾諾」の意味は?

まずは、国語辞典での定義から。「唯唯諾諾」には、次のような意味があります。

何事にもはいはいと従うさま。他人の言いなりになるさま。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「唯唯諾諾」

「唯唯諾諾」は、「唯」と「諾」のそれぞれを繰り返すことで成り立っています。ここで注目したいのは、これらの漢字が表す意味です。

「唯」は、「ただ~だけ」の意味で用いられることが多い漢字ではないでしょうか。それは、「唯一」「唯我独尊」などの言葉にも表れています。

しかし、「唯唯諾諾」では相手に賛成の意を示す「はい」の意味で用いられているのが特徴です。この点には特に気をつけておきましょう。

では、一方の「諾」の場合はどうでしょうか。実は、こちらも「はい」の意味で使われています。

この意味で用いられている「許諾」や「諾否」といった熟語を目にしたことも多いのではないでしょうか。つまり、「唯」も「諾」もほぼ同じ意味の漢字が繰り返されているということになりますね。

こうやって、繰り返し意味を重ねていくことで全体の意味を強める効果があるのは言うまでもありません。それだけ、相手のいうことに「はい」としか答えず言いなりになっているさまが表されているのです。

「唯唯諾諾」の出典は?

次に「唯唯諾諾」出典を確認しておきましょう。この四字熟語の出典は、韓非(かんぴ)の著した「韓非子(かんぴし)」だとされています。

韓非は、古代中国の春秋・戦国時代に法家として活躍した思想家です。彼は、韓非子の「八姦篇」という章で次のように主張しています。

ちなみに「八姦」とは、家来が主君を脅かすさまざまな悪事のことです。その中の「在旁(ざいぼう)」という項目に「唯唯諾諾」は登場します。

ここで言及されているのが、主君が実際に銘じないうちから「はいはい」といって主君の心よりも先んじて動こうとする家来の姿です。こういった姿勢は、君主に仇を成すものだと韓非は説いています。

また、こういった悪事に対しては、家来たちを実際に働かせて余計な口を挟ませないことが必要だということです。

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