この記事では「一言芳恩」について解説する。

端的に言えば一言芳恩の意味は「少し声をかけてもらったことに感謝すること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「一言芳恩」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「一言芳恩」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一言芳恩」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「いちごんほうおん」で、「報恩」と混同しやすいので注意が必要です。意味に加えて語源や使い方にも注目していきますよ。

「一言芳恩」の意味は?

「一言芳恩」には、次のような意味があります。まずは、四字熟語全体の基本的な意味を見ていきましょう。

1.ちょっと声をかけてもらったことを忘れずに感謝すること。また、一言を賜った恩に感じてその人を主人と仰ぐこと。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「一言芳恩」

「一言」は一声やちょっとした一言のこと、「芳恩」とは人から受けた恩義や親切のことです。これをあわせて、ひとこと声をかけてもらったことへの感謝を表しています。

心に余裕がなければ感謝することはできないので、感謝するということは少しでも心に余裕を持つことでもありますね。また、もし心に余裕が持てなくても、あとで振り返る習慣があれば感謝すべきことがあったかどうかに気づくことができるかもしれません。

感謝するということは、自分のことばかりに集中している状態から、自分を客観視して自分の立ち位置を確認するためには大切なことなのでしょうね。

「一言芳恩」の使い方・例文

「一言芳恩」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。文法的な観点からも見ていきますよ。

\次のページで「「一言芳恩」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.あなたが無事就職できたのは、先生方のおかげでもあり一言芳恩の気持ちを持つべきだ。
2.ほんの少し声をかけただけの部下が報告とお礼に来たが、まさに一言芳恩そのものだ。

例文1.は、就職できたことに対して、これまでさまざまな声をかけてもらった先生方に感謝の気持を持ったほうがいいということです。例文2.では、感謝された立場からの文章で、少し声をかけたことに感謝されたということを表しています。

文法的に見てみると、例文1.では「一言芳恩の…」、例文2.は「一言芳恩そのもの…」ということで、四字熟語のカタマリをそのまま名詞として扱っていますよ。こういった使い方が一般的です。

「一言芳恩」の類義語は?違いは?

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それでは、「一言芳恩」の類義語についての説明です。少しのことであっても感謝の気持ちを大切にする意味合いの四字熟語について、いくつか見ていきましょう。

「一宿一飯」

「一言芳恩」の類義語には、「一宿一飯(いっしゅくいっぱん)」があります。意味は、ちょっといた世話になることやその恩義を忘れないようにということです。「一宿」は旅先などで一晩泊めてもらうこと、「一飯」は一回の食事をごちそうになることを表していますよ。

博徒の間で「一宿一飯の恩義」「一宿一飯の義理」として使われていたようですが、うしろに「恩義」や「義理」をつけるということは「一宿一飯」には「恩義」や「義理」の意味が含まれていないと考えられます。場合によって、「恩義」や「義理」の意味を含むかどうかの判断が必要です。

「飲水思源」

もう一つの類義語には、「飲水思源(いんすいしげん)」があります。物事の基本を忘れないということや他人から受けた恩は忘れてはいけないという意味です。水を飲むときに源のことを考えるということがもとになっており、「水を飲みて源を思う」と訓読しますよ。

ちょっとした一言に感謝する「一言芳恩」に対して、源について思いを馳せるという「飲水思源」ということなので少し違いはあります。しかし、どちらも些細なことにでも感謝の気持ちを持つべきであるという意味においては共通です。使う場面はやや違うかもしれませんが、もととなる考え方は同じ四字熟語と言えますね。

\次のページで「「一言芳恩」の対義語は?」を解説!/

「一言芳恩」の対義語は?

次に、「一言芳恩」の対義語についての説明です。感謝すべきであるという「一言芳恩」の対義語ですから、恩を忘れたり裏切ったりという意味の対義語を一緒に見ていきましょう。

「忘恩負義」

「一言芳恩」の対義語には、「忘恩負義(ぼうおんふぎ)」があります。意味は、恩義を忘れて義理に背くことです。「恩を忘れ義に負(そむ)く」と読み下すことができます。「負」は「背く、裏切る」という意味で使われており、「背く」と同義であると考えるといいですね。

「恩を忘れる」=「義に背く」ということでもあり、何もしないということが義理に背くことになります。現代では、「何もしない」=「何も悪いことをしていない」と考えることもありますが、恩義を受けながら何もしないということは義理に背き罪深いことであるというわけですね。

「獅子身中」

もう一つの対義語には、「獅子身中(しししんちゅう)」があります。内部にいて害を及ぼす者や恩を受けていながら裏切って害をなす者という意味です。獅子の体内に寄生している虫が、獅子を死なせてしまうほどのことになるということがもとになっています。

寄生虫が獅子を死なせるということなので、もともととるに足らないように思われていた者が命を脅かすような害になるというニュアンスもありますよ。獅子を死なせるのがゾウでもトラでもなく寄生虫というところに、この四字熟語の特徴が見えますね。

「一言芳恩」の英訳は?

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最後に、「一言芳恩」の英訳についての説明です。四字熟語の漢字そのままにというよりは、意味として近い英語表現について見てきましょう。

「repaying a small kindness」

「一言芳恩」の英訳には、「repaying a small kindness」があります。直訳すると「小さな親切に報いること」です。「repay」は「払い戻す、返済する、報いる」という意味があり、「re(うしろへ、再び、反対に)」と「pay(支払う)」に分けて考えるとわかりやすいですね。

\次のページで「「一言芳恩」を使いこなそう」を解説!/

「一言芳恩」を使いこなそう

この記事では「一言芳恩」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「一言芳恩」の基本的な意味は、少し声をかけてもらったことに感謝することです。少しのことにも感謝できるのは、周りが見えているということでもありますね。感謝するということは、自分を客観視したり人生を振り返るためのいい機会にもなりそうです。

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国語言葉の意味

【四字熟語】「一言芳恩」の意味や使い方は?例文や類語などを現役塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「一言芳恩」について解説する。

端的に言えば一言芳恩の意味は「少し声をかけてもらったことに感謝すること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

10数年間、中高生に学習指導をしているライターヤマトススムを呼んです。一緒に「一言芳恩」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマトススム

10数年の学習指導の経験があり、とくに英語と国語を得意とする。これまで生徒たちを難関高校や難関大学に導いてきた。

「一言芳恩」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一言芳恩」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。読み方は「いちごんほうおん」で、「報恩」と混同しやすいので注意が必要です。意味に加えて語源や使い方にも注目していきますよ。

「一言芳恩」の意味は?

「一言芳恩」には、次のような意味があります。まずは、四字熟語全体の基本的な意味を見ていきましょう。

1.ちょっと声をかけてもらったことを忘れずに感謝すること。また、一言を賜った恩に感じてその人を主人と仰ぐこと。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「一言芳恩」

「一言」は一声やちょっとした一言のこと、「芳恩」とは人から受けた恩義や親切のことです。これをあわせて、ひとこと声をかけてもらったことへの感謝を表しています。

心に余裕がなければ感謝することはできないので、感謝するということは少しでも心に余裕を持つことでもありますね。また、もし心に余裕が持てなくても、あとで振り返る習慣があれば感謝すべきことがあったかどうかに気づくことができるかもしれません。

感謝するということは、自分のことばかりに集中している状態から、自分を客観視して自分の立ち位置を確認するためには大切なことなのでしょうね。

「一言芳恩」の使い方・例文

「一言芳恩」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。文法的な観点からも見ていきますよ。

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