この記事では「裏を取る」について解説する。

端的に言えば「裏を取る」の意味は「証拠を集める」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教材系のライターを10年経験した梨子なしこ太朗吉を呼んです。一緒に「裏を取る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/梨子なしこ太朗吉

本や雑誌を作り続ける文章職人。参考書から音楽誌まで、娯楽と言葉と実用をむすびつけることを自らも楽しみつつ、分かりやすく伝える。

「裏を取る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「裏を取る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「裏を取る」の意味は?

「裏を取る」には、次のような意味があります。

確かな証拠や証人を捜し出すなどして、供述・情報などの真偽を確認する。裏付けを取る。

出典:goo辞書

犯罪や事件があった場合、目撃者や参考人の供述は頼りにはなりますが、間違い、勘違い、嘘など、正しくない情報である可能性もあります。ですから、参考人の供述があったからと言って、それを信用してそのまま鵜呑みにしてしまうと危険です。そこで「裏を取る」ことが重要になってきますね。

これは刑事事件だけでなく、一般の仕事の場面でも、ある人の証言を裏付けるだけの別の証拠を探して得ることを、「裏を取る」と言います。

「裏を取る」の語源は?

次に「裏を取る」の語源を確認しておきましょう。

「裏」は、元来、心の中にある本当のこと、だとか、隠してあるものという意味ですが、ここでは、「表」にあらわれた事件や物語を、影で支持するための証拠を指します。

元来「表(おもて)」は、「面(おも)」の方(手)ということで「顔」を、また、「裏(うら)」は、「心(うら)」という言葉もあるように、「心のうち」を表し、「表と裏」には、目に見える部分の「顔」と、目に見えない部分の「心」という対比が、もともとあるわけです。

そして「裏を取る」ですが、誰かから聞いた事件などの情報が本当に真実なのかを確かめるために、根拠となる別の情報や物的な証拠、つまり「裏」を探して「獲得する」すなわち「取る」作業ということになります。刑事事件では、地道な証人の探索、聞き込み、物的証拠の確保という捜査の根幹となる作業ですね。

\次のページで「「裏を取る」の使い方・例文」を解説!/

「裏を取る」の使い方・例文

「裏を取る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.犯罪捜査の基本は、参考人や容疑者の供述をとることであり同時に、それらの裏を取ること、すなわち足で情報をかせぐ聞き込み、証人の確保、監視カメラの回収と閲覧、凶器など物的証拠確保のための捜索、探索である。

2.最近の刑事事件では、参考人の供述調書に単純な誤字脱字がないように注意するのはもちろんだが、犯人かどうか不明の場合もあるのだし、新聞などマスコミで報道される内容にも気を配り、自白の真偽の確定のためにも確実に裏を取ることが重要である。

3.今回の連続する行政関連事件の発生時期については、前後の確認などのために関係者に取材して裏を取る方法を選択し、その他、事件各部分の意味と相互の関連を推測、判断することも当然大事だが、事件後の各方面動向、特に関係者の地位の変動にも注意が必要である。

裏を取るのは、もちろん刑事の仕事ではありますが、一般人も、仕事を進めるうえでは確実に裏を取って物事を進めていくことが必要でしょう。実は生活のあらゆる場面でわたしたちは「裏を取って」生きているのかもしれませんね。

「裏を取る」の類義語は?違いは?

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「裏を取る」と似た意味を持つ言葉として、「確認する」や「証拠固めをする」があります。

「確認する」

「確認する」というのは、日常で使う一般的な用語です。

なにか前提となるできごとがあって、それが本当のことなのかどうかをあらためて確定する作業が「確認」ですから、事件があった場合にそれが本当なのかどうかを確定するための証拠集めとなる「裏を取る」行為は、「確認」である、と言えるでしょう。

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「証拠固めをする」

刑事事件などの事件は、最初は「おそらくそういうことがあったんだろう」という程度で発覚したとしても、その後、目撃者や当事者の話をまとめることで事件の概要、全体像、因果、経過がはっきりとしていき、証拠となる書類や凶器などの物証、利害関係者などによる具体的な証言によって、事件の輪郭とともに細部が確定していきます。

このように事件の外見をはっきりとさせて形を作り、「固めていく」ときの証拠集めが「証拠固め」です。

「裏を取る」のは、事実の確定のために必要な証拠を確保することですから、証拠固めをする、とはほぼ同義となります。

「裏を取る」の対義語は?

「裏を取る」と反対の意味を持つ言葉としては、以下のようなものがあります。

「正面突破」

「裏を取る」という作業は、知的な行為です。ある事実があったということを、人から聞いた話だけで確定するのではなく、自分自身でも確認できるように証拠を集めてくるという意味ですから、地道で遠回りな行為でもあります。

これに対して「正面突破」は、力にものを言わせて真正面から敵に突っ込むのですから、知恵よりも腕力の側面が強いものです。細かい策を使わずに力で押し込むのですから、裏を取るという地道で遠回りな方法とは対極にあると言えましょう。

「裏を取る」の英訳は?

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最後に「裏を取る」を英語で表現するとどうなるのかを確認しておきましょう。

「collect evidence」

「裏を取る」は英語で「collect evidence」と表すことができます。「証拠を集める」ということです。例文も示しておきましょう。

The detective collected evidence and he gave that to the client.

その探偵は裏を取って証拠を集め、依頼者に渡した。

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「裏を取る」を使いこなそう

この記事では「裏を取る」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「裏」は、「なにか裏があるんだろう。怪しい」などと、悪い意味で使われることもあります。表の事情に対して、「裏事情」という言葉もありますね。

一方で、表が表面上のこと、外部に現れたこと、外見という意味を持つのに対して、裏は、心のうち、隠れていて目に見えないが実は本当のこと、といった意味があり、必ずしも悪い意味だけでないということもわかります。

事件の「裏を取る」のは真実に迫るためですね。人の噂や表面的な目に見えるだけのものについて、本当のところ、実際のところはどうなんだろう?というわけで裏を取るわけです。「表と裏」。両方とも味わい深い言葉です。

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国語言葉の意味

【慣用句】「裏を取る」の意味や使い方は?例文や類語を教材系ライターがわかりやすく解説!

この記事では「裏を取る」について解説する。

端的に言えば「裏を取る」の意味は「証拠を集める」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教材系のライターを10年経験した梨子なしこ太朗吉を呼んです。一緒に「裏を取る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/梨子なしこ太朗吉

本や雑誌を作り続ける文章職人。参考書から音楽誌まで、娯楽と言葉と実用をむすびつけることを自らも楽しみつつ、分かりやすく伝える。

「裏を取る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「裏を取る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「裏を取る」の意味は?

「裏を取る」には、次のような意味があります。

確かな証拠や証人を捜し出すなどして、供述・情報などの真偽を確認する。裏付けを取る。

出典:goo辞書

犯罪や事件があった場合、目撃者や参考人の供述は頼りにはなりますが、間違い、勘違い、嘘など、正しくない情報である可能性もあります。ですから、参考人の供述があったからと言って、それを信用してそのまま鵜呑みにしてしまうと危険です。そこで「裏を取る」ことが重要になってきますね。

これは刑事事件だけでなく、一般の仕事の場面でも、ある人の証言を裏付けるだけの別の証拠を探して得ることを、「裏を取る」と言います。

「裏を取る」の語源は?

次に「裏を取る」の語源を確認しておきましょう。

「裏」は、元来、心の中にある本当のこと、だとか、隠してあるものという意味ですが、ここでは、「表」にあらわれた事件や物語を、影で支持するための証拠を指します。

元来「表(おもて)」は、「面(おも)」の方(手)ということで「顔」を、また、「裏(うら)」は、「心(うら)」という言葉もあるように、「心のうち」を表し、「表と裏」には、目に見える部分の「顔」と、目に見えない部分の「心」という対比が、もともとあるわけです。

そして「裏を取る」ですが、誰かから聞いた事件などの情報が本当に真実なのかを確かめるために、根拠となる別の情報や物的な証拠、つまり「裏」を探して「獲得する」すなわち「取る」作業ということになります。刑事事件では、地道な証人の探索、聞き込み、物的証拠の確保という捜査の根幹となる作業ですね。

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