この記事では「火の車」について解説する。

端的に言えば「火の車」の意味は「家計が苦しいこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「火の車」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「火の車」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「火の車(ひのくるま)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「火の車」の意味は?

「火の車」には、次のような意味があります。

1 「火車(かしゃ)」を訓読みにした語。
2 経済状態がきわめて苦しいこと。「家計は年中火の車だ」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「火の車」

この言葉は、「生活が極めて苦しいこと」を意味する慣用句です。上記引用の通り、「火車(かしゃ)」という言葉が由来となっていると言われています。詳しくは次の語源の項でご紹介しますので、由来を確認してみてくださいね。

見た目のイメージととしては、文字通り「燃えている車」のこと。それが街中を移動していたとしたら、とても恐ろしいと考えられたことでしょう。興味のある人は、ぜひ画像検索などもしてみましょう。言葉のニュアンスがきっと掴めるはずですよ。

それが「家計が苦しい」という意味で使われるとしたら、その困窮具合も生半可なものではないだろうと想像がつきますね。「家は火の車だよ」なんて言われた場合、もしかしたら冗談では済まないかもしれません。

「火の車」の語源は?

次に「火の車」の語源を確認しておきましょう。これは「火車」を訓読みにしたもので、平安時代の『今昔物語集』などにも見ることが出来る妖怪の名前です。

仏教で使われる用語でもあり、「生前に悪事を働いた亡者を地獄に運ぶ、燃え盛っている車」のこと。罪人がそうして責め苦を受けながら地獄に連れていかれるという、当時の宗教観をよく表しているといえるでしょう。

さらにこれが、仏教用語「火宅(かたく)=火事に遭った家のこと」と結びつき、まるで地獄に連れていかれるような苦しさを、経済状況の苦しさに例えたと考えられています。家が火事になってしまい、家財一切を失うくらいの家計の苦しさ、と考えたら、相当なものだということが想像がつくでしょう。このように、語源も意味も非常に恐ろしい言葉なのです。

\次のページで「「火の車」の使い方・例文」を解説!/

「火の車」の使い方・例文

「火の車」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・お店を経営して悠々自適に見えた彼女だが、経営不振に陥っており、実際は多額の借金を抱えて火の車の生活を送っていたらしい。

・たまには外食にしましょうと母が言ったので、うなぎにするか海鮮丼にするか悩んでいたら「うちは火の車なんだから」と、勝手にラーメンにされてしまった。

・幼い頃、家庭はいつも火の車だったが、月に一回、親はレストランに連れて行ってくれて、ハンバーグでもステーキでもお寿司でも、何でも食べさせてくれたのが幸せな思い出だ。

経済状況がとても苦しいこと」のイメージがつきますでしょうか。語源の通り、とてつもない苦しみを表す言葉でしたので、状況によっては簡単には使わないほうがいいかもしれませんね。

もし日常的に使うとしたら、その大げさ加減から逆に、ちょっとした可笑しみや、それくらい「お金を大切にしなければいけないよ」という教えを感じられるかもしれません。

「火の車」の類義語は?違いは?

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「火の車」の類義語は、「困苦窮乏」などが考えられます。

「困苦窮乏」

「困苦窮乏(こんくきゅうぼう)」は、「生活できないほどお金や物がなく、困り苦しむこと」を意味する四字熟語です。同様の意味で「困苦欠乏(こんくけつぼう)」という言葉もあります。「困苦」「窮乏」「欠乏」といった熟語だけでも使われることがあり、字を見ても「何かが足りない、苦しい」というニュアンスが伝わってきますね。

この中で難しいのは「窮」という漢字ですが、「究」と同様に「何かがきわまること」や「行き詰ること」という意味を持ちます。「窮屈(きゅうくつ)」や「窮鼠(きゅうそ)猫をかむ」という言葉はきっと聞いたことがあるでしょう。

「地獄に連れていかれるほど苦しい」も「生活ができないほどきわまって苦しい」も、どちらも味わいたくないものですね。

\次のページで「「火の車」の対義語は?」を解説!/

困苦窮乏の生活を送って、料理も出来ず病院で診断を受けることも出来なかった経験から、周囲の人々の親切に気づくことができるようになった。

「火の車」の対義語は?

「火の車」の対義語は「悠々自適」「億万長者」などが考えられます。

「悠々自適」「億万長者」

「悠々自適(ゆうゆうじてき)」は「自分の好きなように、心穏やかに生活すること」。苦しみや困りごとからは無縁の生き方をしているという意味です。

「億万長者(おくまんちょうじゃ)」は「何億もの財産を持つほどのお金持ちのこと」。そうした人の事は「富豪」などとも言い表します。

どちらも「火の車」とは正反対の言葉となりますが、経済的な豊かさと心の豊かさの両方を持ちたいものですね。

敏腕編集者として名前の知れた彼だが、今は海外に住んで簡単な翻訳をする程度の、悠々自適な暮らしをしている。

億万長者と噂されるあのオーナーだが、若い頃に苦労した経験から、今は無料で様々な慈善活動を行っている。

「火の車」の英訳は?

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「火の車」の英語訳は「be badly off」「be short of money」などが考えられます。

「be badly off」「be short of money」

「be badly off」は「生活に困っている」という慣用表現です。「元気がない」など広い意味で使える表現のため、「火の車」を意味する英作文の場合は、お金に関する理由を合わせて説明するといいでしょう。

「be short of money」は「お金が不足している」という表現。「short」はここでは「短い」ではなく「欠乏した、足りない」という否定的な意味です。特にお金に関して「資金繰りがショートしてしまった」と、日本語でも使うことがよくあります。「ショート」という単語の使い方を覚えましょう。

\次のページで「「火の車」を使いこなそう」を解説!/

Since divorcing, he is badly off for his child support.
離婚してから、養育費支払いのため、彼は火の車の生活を送っている。

Failing to invest, she was short of money.
投資に失敗して、彼女はお金がショートした(家計が火の車となった)

「火の車」を使いこなそう

この記事では「火の車」の意味・使い方・類語などを説明しました。

語源を調べる際、「火の車」が登場する説話はたくさんあり驚きました。強欲な人間がその罪のために地獄に連れていかれるというストーリーも多く、この背景には「お金(目先の利益)にとらわれず、人を大切にしなさい」という当時の教えが読み取れるようです。

もし「火の車」のような状態にあったとしたら何を大切にするべきなのか、想像してみるのもいいかもしれませんね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「火の車」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「火の車」について解説する。

端的に言えば「火の車」の意味は「家計が苦しいこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「火の車」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。
国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「火の車」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「火の車(ひのくるま)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「火の車」の意味は?

「火の車」には、次のような意味があります。

1 「火車(かしゃ)」を訓読みにした語。
2 経済状態がきわめて苦しいこと。「家計は年中火の車だ」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「火の車」

この言葉は、「生活が極めて苦しいこと」を意味する慣用句です。上記引用の通り、「火車(かしゃ)」という言葉が由来となっていると言われています。詳しくは次の語源の項でご紹介しますので、由来を確認してみてくださいね。

見た目のイメージととしては、文字通り「燃えている車」のこと。それが街中を移動していたとしたら、とても恐ろしいと考えられたことでしょう。興味のある人は、ぜひ画像検索などもしてみましょう。言葉のニュアンスがきっと掴めるはずですよ。

それが「家計が苦しい」という意味で使われるとしたら、その困窮具合も生半可なものではないだろうと想像がつきますね。「家は火の車だよ」なんて言われた場合、もしかしたら冗談では済まないかもしれません。

「火の車」の語源は?

次に「火の車」の語源を確認しておきましょう。これは「火車」を訓読みにしたもので、平安時代の『今昔物語集』などにも見ることが出来る妖怪の名前です。

仏教で使われる用語でもあり、「生前に悪事を働いた亡者を地獄に運ぶ、燃え盛っている車」のこと。罪人がそうして責め苦を受けながら地獄に連れていかれるという、当時の宗教観をよく表しているといえるでしょう。

さらにこれが、仏教用語「火宅(かたく)=火事に遭った家のこと」と結びつき、まるで地獄に連れていかれるような苦しさを、経済状況の苦しさに例えたと考えられています。家が火事になってしまい、家財一切を失うくらいの家計の苦しさ、と考えたら、相当なものだということが想像がつくでしょう。このように、語源も意味も非常に恐ろしい言葉なのです。

\次のページで「「火の車」の使い方・例文」を解説!/

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