この記事では「魔がさす」について解説する。

端的に言えば「魔がさす」の意味は「出来心が起きて誤った行動をしてしまうこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で5年間のライター経験を持つEastflowerを呼んです。一緒に「魔がさす」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

語学好きで英語、中国語が得意な5年目のライター。今回の「魔がさす」はみなさんの中でも多くの方が一生に何回かは経験し、あとで後悔する人も少なくありません。この言葉の起源を含めて、どんな場面で使えるのかを解説していきましょう。

「魔がさす」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「魔がさす」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「魔がさす」の意味は?

まずは、国語辞典の意味から見ていきましょう。

悪魔が心に入りこんだように、一瞬判断や行動を誤る。出来心を起こす。「―・して人の財布に手をのばしてしまう」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「魔がさす」

「魔がさす」(まがさす)の「魔」(ま)とは、仏教で登場する魔王である「魔羅(まら)」から「魔」の一字をとったものだと言われています。「魔がさす」の「さす」とは入り込むという意味で、全体的な意味としては「まるで魔王が心に入ってきたように普段の理性的な自分とは異なり、誤った行動をしてしまう」ことです。

「魔がさす」の語源は?

次に「魔がさす」の語源を確認しておきましょう。
「魔がさす」(まがさす)の「魔」(ま)は、仏教で登場する「魔羅(まら)」に由来すると申し上げましたが、「魔羅」は人の心を惑わすためにしばしば人の心に入り込むと言われています。「魔がさす」のは、日常的に法律や規則に違反しても気にしない人だけではなく、普通の人でも「魔がさす」経験した方は多いのです。イエス・キリストや釈迦(しゃか)のように教養が高く責任感の強い人ででさえ、自分の中の煩悩と言う名の「魔」に負けそうになったこともあり、人間とは、男性女性を問わず年齢を問わず、ときには間違い起こす動物なのかもしれませんね。

\次のページで「「魔がさす」の使い方・例文」を解説!/

「魔がさす」の使い方・例文

「魔がさす」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1. 警官はその教師に問いかけました。「どうしてあなたはパンなんか万引きしたのですか?」教師は答えます。「魔がさしたのだと思います。普段このスーパーでたくさんの商品の買い物もしているし、ストレスが溜まっていたので、ついやってしまいました。」

2.「5年ほど完全に薬物を断って健全な生活を送っていたのですが、飲み会のときに顔なじみの知り合いから薬物を無料で勧められて、1回だけならいいかと魔がさしたのだと思います。それからは、薬物使用を再開してしまいました。」

3.「雨の日でしたし、もう駅にタクシーが来る時間もとうに過ぎていました。自分も過去に自転車を盗まれたこともありましたし、かなり酔っぱらっていたので魔がさして困ったときはお互い様だと思ってしまい、つい、自転車の乗り逃げをしてしまったのです。」

「魔がさす」は、そのときはやってしまったが、あとになって行った行為に対して反省や後悔するような場合に多く使われる言葉なのです。

「魔がさす」の類義語は?違いは?

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それでは、「魔がさす」にはどんな類義語があるのかを見ていきましょう。

「出来心を起こす」

「出来心を起こす」(できごころをおこす)の「出来心」(できごころ)とは、「出て来てしまった心」で、その場に直面して急に出てきた理性的でない思い、心のことです。「出来心を起こす」とは理性的でない心がつい起きてしまったことで、以前から深く計画して起こした行動ではありません。

刑事ドラマや昔の江戸の時代劇などを見ていると、犯人が「つい、出来心でしでかしてしまったんです。」と言い訳をする場面が登場しますが、犯人が言いたいのは計画的な犯行ではなく、自分でもきちんと行動の善悪を判断できないまま犯行を起こしてしまったのであり普段の自分ではない、もともとはそんな悪人ではないと訴えているのですね。

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「誘惑に負ける」

「誘惑に負ける」(ゆうわくにまける)とは多くの場合、美しい異性に誘われてつい性行為に及んでしまったなど、理性よりもその場の感情や欲望が勝ってしまい、行為に及んでしまったときに使われる言葉で、「魔がさす」や「出来心を起こす」とほぼ同じ意味で使われます。「誘惑に負ける」対象は異性の場合だけに限りません。例えば、お酒やタバコもその一例ですね。自身の体のことを考えて、禁酒、禁煙を決めていた人が、「まあ、1本くらいなら」「まあ1杯くらいなら」と手を出してしまう場合にも「誘惑に負ける」という表現が使われます。自分の経済力を越えてギャンブルやショッピングにお金をつぎ込んでしまう場合にも「誘惑に負ける」という表現は使われますね。

「魔がさす」の対義語は?

それではどんな言葉が「魔がさす」の対義語になるのかを見て行きましょう。

「克己心」

「克己心」(こっきしん)の「克」(コク)はしばしば「克服する」という言葉で使われていますが、「最後まで成し遂げる」や「困難や苦悩に我慢して耐え抜く」という意味であり、「己」(おのれ)は、「自分自身」という意味になります。

ですから、「克己心」は「欲望や感情に流されることなく、冷静な判断をもって自分の心に打ち勝つ心」という意味になるのです。魔がさすような事態に直面したとしても、普段から克己心を鍛えることで自らに不意に訪れた欲望を克服することができると言われています。

「誘惑に打ち勝つ」

多くの人間に「魔がさす」瞬間が訪れるのは、人間には本来欲があるためです。普段、人は社会の中できちんと生きるために他人に迷惑をかけないように理性で欲望を抑えて生活している場合も少なくありませんが、朝から晩まで、いつでも冷静な気持ちを保つことは難しいことですよね。ふと、欲望を満たすことの方が理性よりも重要だと感じる瞬間もあることでしょう。しかし、それでも自分の欲望を抑えて、理性的に行動することを「誘惑に打ち勝つ」ということなのです。

「魔がさす」の英訳は?

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それでは英語では、「魔がさす」はどのように表現すればいいのかを見ていきましょう。

「Impulse」

「Impulse」(インパルス)(発音記号ímpʌls)は、「外部からの刺激」という意味の他に「心の衝動」や、「出来心」、「一時の感情」など、人間の生理的な感じ方にも使用されることばです。「衝動的な人」は「a man of impulse」と表現されますし、「衝動買い」は「impulse buying」になります。「Impulse」は「魔がさす」と同様に「悪魔が心に入り込むように、突然脳が刺激され行動すること」ですが、その取った行動や判断が誤っていたか否かはこの「Impulse」の言葉の中からは読み取れません。衝動的な行動ではあるものの、その判断が正しかったこともあるのです。その点が「魔がさす」とは異なります。ただ、「Impulse」も否定的な意味で使われる場合は多いですね。

ちなみに形容詞は「Impulsive」、副詞は、「Impulsively」になります。

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1.He is an impulsive person, and he sometimes starts running and swimming suddenly.
(彼は衝動的な人間で、ときどき、突然に走ったり、泳ぎ始めたりします。)

2.I want to treat the sick. I am a kind of impulsive shopper and I often buy everything I saw in the shop, even if they are needless to me. When I come home, I always regret buying those.
(私は病気をなおしたいのです。私は衝動買い人間で、店で見た物は自分に必要のないものでもすべて買ってしまうのです。家に帰るといつも買ったことを後悔しています。)

「魔がさす」を使いこなそう

これまで、「魔がさす」の意味を見てきましたが、「魔がさす」の「魔」とは、仏教の「魔羅(まら)」に由来していたのですね。偉人、賢人と言われる人でさえ、欲望が頭をかすめることがあるそうですから、欲望が湧いてくること自体はそんなに反省することでもないのです。

私の場合、欲望が湧いてきた場合にどうしているかと言うと、深呼吸したり、お茶を飲んでリラックスしたり、その場で結論を出さずに一晩寝てから考えてみたりしています。魔がさして誤ったことをしてしまうことは多くの人が経験することですが、起こったことは仕方がないことであり、きちんと反省して繰り返し誤りが起こらないようにすることが大切なことなのではないでしょうか?

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国語言葉の意味

【慣用句】「魔がさす」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「魔がさす」について解説する。

端的に言えば「魔がさす」の意味は「出来心が起きて誤った行動をしてしまうこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で5年間のライター経験を持つEastflowerを呼んです。一緒に「魔がさす」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

語学好きで英語、中国語が得意な5年目のライター。今回の「魔がさす」はみなさんの中でも多くの方が一生に何回かは経験し、あとで後悔する人も少なくありません。この言葉の起源を含めて、どんな場面で使えるのかを解説していきましょう。

「魔がさす」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「魔がさす」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「魔がさす」の意味は?

まずは、国語辞典の意味から見ていきましょう。

悪魔が心に入りこんだように、一瞬判断や行動を誤る。出来心を起こす。「―・して人の財布に手をのばしてしまう」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「魔がさす」

「魔がさす」(まがさす)の「魔」(ま)とは、仏教で登場する魔王である「魔羅(まら)」から「魔」の一字をとったものだと言われています。「魔がさす」の「さす」とは入り込むという意味で、全体的な意味としては「まるで魔王が心に入ってきたように普段の理性的な自分とは異なり、誤った行動をしてしまう」ことです。

「魔がさす」の語源は?

次に「魔がさす」の語源を確認しておきましょう。
「魔がさす」(まがさす)の「魔」(ま)は、仏教で登場する「魔羅(まら)」に由来すると申し上げましたが、「魔羅」は人の心を惑わすためにしばしば人の心に入り込むと言われています。「魔がさす」のは、日常的に法律や規則に違反しても気にしない人だけではなく、普通の人でも「魔がさす」経験した方は多いのです。イエス・キリストや釈迦(しゃか)のように教養が高く責任感の強い人ででさえ、自分の中の煩悩と言う名の「魔」に負けそうになったこともあり、人間とは、男性女性を問わず年齢を問わず、ときには間違い起こす動物なのかもしれませんね。

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