この記事では「手塩にかける」について解説する。

端的に言えば「手塩にかける」の意味は「大切に育てること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

年間60冊以上本を読み込んでいるヤマゾーを呼んです。一緒に「手塩にかける」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマゾー

ビジネス本を中心に毎年60冊読破。本を通じて心に響く生きた日本語を学ぶ。誰にでも分かりやすい説明で慣用句を解説していく。

「手塩にかける」の意味・使い方まとめ

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それでは早速「手塩にかける」の意味・使い方を見ていきましょう。

「手塩にかける」の意味は?

「手塩にかける」には、次のような意味があります。

みずからいろいろと世話をして大切に育てる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「手塩に掛ける」

「手塩(てしお)」とは「手塩皿」の略であり、食膳に備えられた食塩のこと。昔は現代に比べて調味料も少なく、味つけの代表格といえば「塩」でした。今では、ビンなどに入れて使う塩ですが、昔は少量の塩を小皿に乗せて食膳に置いていたようですね。そして「手塩」を使って、自分好みの味つけにしてご飯を食べていたそうです。料理の味を自分で調整する様子から転じて、自分で面倒をみることを「手塩にかける」と表現するようになりました。

「かける」自体も様々な場面で用いられますが、「手塩にかける」の「かける」は、時間や労力を使うという意味。「時間をかける」や「手間暇かけて」などと同様に、大切に育てるために労力を費やした様子を表しているといえるでしょう。

「手塩にかける」の使い方・例文

「手塩にかける」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「手塩にかける」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.手塩にかけた弟子は、立派な料理人になっていた。

2.私達が手塩にかけた野菜なので、味には自信があります。

3.手塩にかけた娘の結婚式に、思わず涙がでた。

「手塩にかける」が使われる場面は、子どもに対してだけとは限りません。動物や野菜、商品や会社など、物や組織に対しても使われます。自ら世話をして大切に育てたと感じているならば、対象物はどのようなものでも構いません。「手塩にかける」を使って気持ちを表すとよいでしょう。

たとえば、苦労して育てた野菜に対して「手塩にかけた野菜です」と言えば、購入者は「おいしい野菜に違いない」と思うはずです。状況によっては「育てた」とアピールされると、上から目線な印象を持つかもしれません。しかし、経験者なら理解できると思いますが、「育てる」という作業はとても大変なこと。「大変だった」と表現するよりは、「手塩にかけた」といったほうが、大切さが伝わりやすいのではないでしょうか。

「手塩にかける」の類義語は?違いは?

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では、「手塩にかける」に類義語や違いをみていきましょう。

「手にかける」

「手塩」でなくても、「手」だけでも構いません。「手にかける」は、自分で世話をすること。ほかにも、自分で行うことや、人に処理を頼んだ時にも使われます。「手」という言葉自体にも様々な意味がありますが、「手にかける」の「手」は「労働力」と考えるとよいでしょう。ただし、「手塩にかける」に比べると、大変さは伝わりにくいといえますね。

使い方としては、「手塩にかける」と同様に「手にかけた野菜」などという表現で問題ありません。ただし、より大切に育てたとアピールしたいならば、「手にかける」よりも「手塩にかける」を使ったほうがよいでしょう。

「育成」

「育成」は、スポーツで選手を育てる際によく使われるのではないでしょうか。意味は、立派に育て上げること。ビジネスでは、よく「人材育成」と表現しますよね。やはり、これからを担う新人や後輩には、少しずつでも能力を向上してもわらなくてはいけません。技術や知識といった専門的な能力は、短期間で習得できるものではありませんよね。だからこそ、将来を見据えて「育成」する必要があるのです。仕事上で「育てる」を表現したい場合は、「育成」を使うとよいでしょう。

\次のページで「「手塩にかける」の対義語は?」を解説!/

「手塩にかける」の対義語は?

「手塩にかける」は「自ら大事に育てる」という意味でした。反対の意味となると、「自ら育てない」となるはずです。そこで今回は、「人に任せる」や「他人にしてもらう」といった意味合いで「手塩にかける」の対義語をみていきましょう。

「人任せ」

「人任せ」の意味は、他人に任せきりにすること。本来であれば、自分でしなければいけないのに、人にしてもらうことを「人任せ」といいます。本当に忙しいのであれば、たまには「人任せ」でもいいでしょう。ただし、頻繁に任せてばかりでは、自分の力で片付けた仕事とはいえませんよね。

「人任せ」にできるなら、楽ができていいのではと思うかもしれません。しかし、技術や知識は、実際に経験しなければ身につかないものばかりです。本人の可能性を潰すだけでなく、周囲からの印象も悪くなってしまうはず。「人任せ」は、ほどほどにしておきましょう。

「他力本願」

「他力本願」は仏語であり、浄土教の言葉になります。仏様と違って、凡人には悟りを開くのはとても難しいこと。そこで、仏様の力を借りて成仏しようというのが「他力本願」の本来の意味になります。すなわち、阿弥陀仏によって誰であっても成仏でき、仏様になれるということになりますね。ところが、漢字の並びが影響して誤用されてしまい、「人任せ」にすることを「他力本願」というようになりました。

意味は、自分が努力するのではなく、他人の力によってことを成すこと。辞典でも、このような意味で記載されています。誤用から意味が変わり、時代の流れから後者の意味が定着してしまった四字熟語といえますね。

「手塩にかける」の英訳は?

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では、「手塩にかける」を英訳すると、どのような表現があるのでしょうか。

「brought up with great care」

英語で「手塩にかける」だけを英訳することは文法上、とても難しいのではないでしょうか。そこで「手塩にかける」の意味「大切に育てる」を英訳してみましょう。今回は子供をどのように育てたのかを説明するために「bring up」を使います。「育てる」は「raise」と英訳しても問題ありません。

「with great care」は「大切に」という意味。「bring」を過去形にして「brought up with great care」で「大切に育てた」という意味になります。「great care」でなくとも、愛情のかけ方によって「much care」や「great affection」にしてもよいでしょう。

\次のページで「「手塩にかける」を使いこなそう」を解説!/

「手塩にかける」を使いこなそう

この記事では「手塩にかける」の意味・使い方・類語などを説明しました。「手塩にかける」は、「育てる」という意味も含まれていることから、様々な場面で使うことができます。しかし、意味を全く知らない人からすれば、「人や動物に塩をかけるなんてどういうこと?」と思うのではないでしょうか。正しい意味を知っていれば、生産者や経営者の熱い思い、さらにはご両親の深い愛が伝わるはずです。なぜなら、人任せにして育てたわけではありません。労力をかけて自ら「大切に」育てたからです。つまり、愛情がなければ出来ることではありませんよね。

「手塩にかける」は、あらゆるものに対して使うことができます。もしも、大切に育てているものがあるならば、ぜひ「手塩にかける」を使って思いを表現してみてください。

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【慣用句】「手塩にかける」の意味や使い方は?例文や類語を本の虫ライターがわかりやすく解説!

この記事では「手塩にかける」について解説する。

端的に言えば「手塩にかける」の意味は「大切に育てること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

年間60冊以上本を読み込んでいるヤマゾーを呼んです。一緒に「手塩にかける」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヤマゾー

ビジネス本を中心に毎年60冊読破。本を通じて心に響く生きた日本語を学ぶ。誰にでも分かりやすい説明で慣用句を解説していく。

「手塩にかける」の意味・使い方まとめ

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それでは早速「手塩にかける」の意味・使い方を見ていきましょう。

「手塩にかける」の意味は?

「手塩にかける」には、次のような意味があります。

みずからいろいろと世話をして大切に育てる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「手塩に掛ける」

「手塩(てしお)」とは「手塩皿」の略であり、食膳に備えられた食塩のこと。昔は現代に比べて調味料も少なく、味つけの代表格といえば「塩」でした。今では、ビンなどに入れて使う塩ですが、昔は少量の塩を小皿に乗せて食膳に置いていたようですね。そして「手塩」を使って、自分好みの味つけにしてご飯を食べていたそうです。料理の味を自分で調整する様子から転じて、自分で面倒をみることを「手塩にかける」と表現するようになりました。

「かける」自体も様々な場面で用いられますが、「手塩にかける」の「かける」は、時間や労力を使うという意味。「時間をかける」や「手間暇かけて」などと同様に、大切に育てるために労力を費やした様子を表しているといえるでしょう。

「手塩にかける」の使い方・例文

「手塩にかける」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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