化学の実験によく登場するフェノールフタレイン溶液って知っているか?

水溶液がアルカリ性かどうかを調べる目的で使用される試薬なのですが、なぜアルカリ性で変色するか知っている人は少ないかもしれませんね。

今回は「フェノールフタレイン」を使った実験や、なぜアルカリ性で変色するかについて、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に解説していきます。

ライター/wing

元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!

1.指示薬とフェノールフタレイン溶液

image by iStockphoto

ここに未知の透明な液体があるとします。この液体が酸性なのかアルカリ性なのか中性なのか調べたいときに、あなたはどのような方法で調べますか?

匂いを嗅いだり少しだけ触ってみたり、五感を使うのも有効な方法ですが、強酸だったりしたら怖いですよね。そんな時には、pH メーターやリトマス紙、そして酸性やアルカリ性で色が変わる指示薬と呼ばれる液体を使って調べることをおすすめします。ではまず最初に、指示薬について解説していきましょう。

1-1.指示薬って何?

ある液体が酸性なのかアルカリ性なのか中性なのか、確認したい時に使われる 1 つの手段が指示薬と呼ばれる薬品を加えて色の変化を見る事です。

1 億個以上あるといわれている化合物の中で、例えばアルカリ性の液体に触れたときに透明から赤紫色に変化するなど、溶液の性質によって色が変化するものを指示薬として利用しています。指示薬とひとくちにいっても、様々な化合物によるものがあり、それぞれの特徴を把握して使用することが必要です。

1-2.指示薬と pH

酸性アルカリ性を判断する指示薬として利用されているものは 20 種類以上ありますが、その中でも中学や高校で習う代表的な指示薬について学んでいきましょう。

指示薬の名称と合わせてお話したいのが、pH がいくつで色がどのように変わるかという事です。

ここで pH について簡単におさらいしましょう。pH(ピーエイチ、またはペーハー)とは、酸性・アルカリ性の程度を表すものさしとして、pH 1 ~ 14 までの数値で表すものです。pH 1 が強酸で、pH 7 が中性、pH 14 は強アルカリと覚えておきましょう。

1-3.代表的な指示薬と変色域

次に、酸アルカリ指示薬の中でも代表的な指示薬について学んでいきましょう。まずは、表題にもなっているフェノールフタレイン溶液からお話します。

フェノールフタレイン溶液は変色域以下では無色透明の液体です。変色域(色が変わるpH)は pH 8.3 ~ 10.0 無色から赤紫色(紅色)に変化します。ということは、酸性からアルカリ性もしくは中性からアルカリ性に変化する時に色がつくという事です。そしてあまり知られていませんが、さらに pH が高い強アルカリ性では再び無色になります。

次は、メチルオレンジ溶液についてです。メチルオレンジ溶液の変色域は pH 3.3 ~ 4.4赤色からオレンジ色さらに黄色に変化します。酸性から中性よりの酸性に変化する時に変色するという事になりますね。

最後に、ブロモチモールブルー( BTB )溶液についてです。ブロモチモールブルー溶液の変色域は pH 6.0 ~ 7.6黄色から緑色さらに青色に変化します。酸性から中性そして弱いアルカリ性に変化する時に変色するという事です。

\次のページで「2.フェノールフタレイン溶液を使った実験」を解説!/

2.フェノールフタレイン溶液を使った実験

フェノールフタレイン溶液がアルカリ性を示す指示薬として使えるという事と、pH 8.3 ~ 10.0 で赤紫色になることがわかりましたね。それでは、次にフェノールフタレイン溶液をどのように実験で使うかをお話していきましょう。

今までフェノールフタレイン溶液の話をしてきましたが、フェノールフタレインの単体は常温で白色の結晶です。水にはほとんど溶けないため、エタノール(エチルアルコール)に溶かしたものを水で薄めて溶液にします。すでに溶液になっているものも売られているので、溶液を作る(調整するといいます)作業を省略したい場合は、溶液になっているものを手に入れましょう。

2-1.中和滴定

フェノールフタレイン溶液を指示薬として使用する実験で、実際に授業で出会う有名な実験は中和滴定だと思います。

中和滴定とは中和反応を利用して、酸(またはアルカリ)の濃度を測定する実験操作です。濃度がわかっている酸(またはアルカリ)をどのくらいの量投入したら中和したかによって、濃度のわからないアルカリ(または酸)の濃度を求めるという実験になります。

しかし、中和滴定は「強酸と強アルカリ」で行う場合と「弱酸と強アルカリ」で行う場合、「強酸と弱アルカリ」で行う場合があるのです。

「強酸と強アルカリ」で中和滴定を行う場合、当量点(中和が完了したと思われる所)は中性で、さらに 1 滴強酸または強塩基を加えると pH の変化が非常に大きくなります。それなので指示薬として、フェノールフタレイン溶液やメチルオレンジ溶液も使用することが可能です。

「弱酸と強アルカリ」では当量点は弱アルカリ性になるため、酸性側で変色する指示薬は利用できません。ですから、アルカリ性側で変色するフェノールフタレイン溶液を使用します。

「強酸と弱アルカリ」では当量点が弱酸性になるため、アルカリ性側で変色するフェノールフタレイン溶液は利用できません。それなので、酸性側で変色するメチルオレンジなどの指示薬を使用します。

2-2.アンモニア水の噴水

2-2.アンモニア水の噴水

image by Study-Z編集部

次に、フェノールフタレイン溶液を使った実験の中でも見た目にインパクトがある実験をご紹介します。実際に理科の授業や動画で、ご覧になったことがある方も多いかもしれません。

まずアンモニアという気体を、丸底フラスコの中に入れて栓をし逆さまに固定します。そして、丸底フラスコに結合させておいたスポイトには少しのを入れておきましょう。丸底フラスコの中と下に置くビーカーとをガラス管でつなぎます。下のビーカーにはフェノールフタレイン溶液を入れておきましょう。

これで実験の準備は完了しました。スポイトの中の水を丸底フラスコに注入すると、どうなると思いますか?なんと、下のビーカーからフェノールフタレイン溶液入りの水が吸い上げられて、赤い噴水のように上の丸底フラスコ内に降り注ぐのです。

なぜこのような現象が起きたのでしょう?丸底フラスコの中に入れた気体のアンモニアは、とても水に溶けやすい性質を持っています。それなので、スポイトから少しの水を送り込まれた丸底フラスコの中は、気体のアンモニアが少し水に溶けて圧力が下がるのです。

そして、圧力が下がった丸底フラスコの中に、下のビーカーの中の水が吸い上げられます。下のビーカーの中には、水とフェノールフタレイン溶液が混ざった液体が入っていましたね。水に溶けて気体のアンモニアがアルカリ性の液体であるアンモニア水に変化したことで、フェノールフタレインが赤紫色に変色し、赤い噴水を見ることができたのです。

3.フェノールフタレインはなぜアルカリ性で色が変わるのか

最後に少し難しいですが、フェノールフタレイン溶液がなぜアルカリ性で変色するのかについて解説したいと思います。

3-1.フェノールフタレインの構造式

{{{画像alt1}}}
パブリック・ドメイン, リンク

フェノールフタレイン ( phenolphthalein ) は化学式 C20H14O4 の有機化合物です。酸性から中性つまり無色の時の構造式は上の図のようになります。

\次のページで「3-2.アルカリ性で赤紫色になるカラクリ」を解説!/

3-2.アルカリ性で赤紫色になるカラクリ

Phenolphthalein-mid-pH-2D-skeletal.svg
パブリック・ドメイン, リンク

pH値が上昇していく、つまりアルカリ性が強くなって変色域に達すると、フェノール基の H がはずれて構造の一部が変化し上のような構造式になります。このキノイド型の陰イオンが赤紫色をしているため、pH 8.3 ~ 10.0 で赤紫色に変化するのです。

フェノールフタレインはアルカリ性で赤紫色になる有用な指示薬

フェノールフタレイン溶液は、液体のアルカリ性を示す有用な指示薬です。

フェノールフタレイン溶液無色透明の液体ですが、pH 8.3 ~ 10.0 無色から赤紫色に変化します。

フェノールフタレイン溶液を使用する有名な実験として中和滴定を紹介しました。中和滴定とは中和反応を利用して、酸(またはアルカリ)の濃度を特定する実験です。

中和滴定でフェノールフタレイン溶液を用いるときは「強酸と弱アルカリ」では当量点が弱酸性になるため、アルカリ性側で変色するフェノールフタレイン溶液は利用できないという事を忘れないでください。それ以外の中和滴定では当量点を見極めるために、フェノールフタレインは重要な役割を果たしてくれます。

またアンモニア水の噴水と呼ばれる実験では、気体のアンモニアが水に溶けることにより、フェノールフタレイン溶液によって色付いた赤紫色の噴水を見ることができるのです。

なぜアルカリ性の溶液に入れると赤紫色になるかというと、フェノールフタレインをアルカリ性の溶液に入れると水素イオンが奪われ陰イオンになります。その陰イオンが赤紫色なので、アルカリ性の溶液に入れると赤紫色になるのです。

" /> 3分で簡単「フェノールフタレイン」溶液の色の変化や指示薬も元研究員がわかりやすく解説 – ページ 2 – Study-Z
化学

3分で簡単「フェノールフタレイン」溶液の色の変化や指示薬も元研究員がわかりやすく解説

2.フェノールフタレイン溶液を使った実験

フェノールフタレイン溶液がアルカリ性を示す指示薬として使えるという事と、pH 8.3 ~ 10.0 で赤紫色になることがわかりましたね。それでは、次にフェノールフタレイン溶液をどのように実験で使うかをお話していきましょう。

今までフェノールフタレイン溶液の話をしてきましたが、フェノールフタレインの単体は常温で白色の結晶です。水にはほとんど溶けないため、エタノール(エチルアルコール)に溶かしたものを水で薄めて溶液にします。すでに溶液になっているものも売られているので、溶液を作る(調整するといいます)作業を省略したい場合は、溶液になっているものを手に入れましょう。

2-1.中和滴定

フェノールフタレイン溶液を指示薬として使用する実験で、実際に授業で出会う有名な実験は中和滴定だと思います。

中和滴定とは中和反応を利用して、酸(またはアルカリ)の濃度を測定する実験操作です。濃度がわかっている酸(またはアルカリ)をどのくらいの量投入したら中和したかによって、濃度のわからないアルカリ(または酸)の濃度を求めるという実験になります。

しかし、中和滴定は「強酸と強アルカリ」で行う場合と「弱酸と強アルカリ」で行う場合、「強酸と弱アルカリ」で行う場合があるのです。

「強酸と強アルカリ」で中和滴定を行う場合、当量点(中和が完了したと思われる所)は中性で、さらに 1 滴強酸または強塩基を加えると pH の変化が非常に大きくなります。それなので指示薬として、フェノールフタレイン溶液やメチルオレンジ溶液も使用することが可能です。

「弱酸と強アルカリ」では当量点は弱アルカリ性になるため、酸性側で変色する指示薬は利用できません。ですから、アルカリ性側で変色するフェノールフタレイン溶液を使用します。

「強酸と弱アルカリ」では当量点が弱酸性になるため、アルカリ性側で変色するフェノールフタレイン溶液は利用できません。それなので、酸性側で変色するメチルオレンジなどの指示薬を使用します。

2-2.アンモニア水の噴水

2-2.アンモニア水の噴水

image by Study-Z編集部

次に、フェノールフタレイン溶液を使った実験の中でも見た目にインパクトがある実験をご紹介します。実際に理科の授業や動画で、ご覧になったことがある方も多いかもしれません。

まずアンモニアという気体を、丸底フラスコの中に入れて栓をし逆さまに固定します。そして、丸底フラスコに結合させておいたスポイトには少しのを入れておきましょう。丸底フラスコの中と下に置くビーカーとをガラス管でつなぎます。下のビーカーにはフェノールフタレイン溶液を入れておきましょう。

これで実験の準備は完了しました。スポイトの中の水を丸底フラスコに注入すると、どうなると思いますか?なんと、下のビーカーからフェノールフタレイン溶液入りの水が吸い上げられて、赤い噴水のように上の丸底フラスコ内に降り注ぐのです。

なぜこのような現象が起きたのでしょう?丸底フラスコの中に入れた気体のアンモニアは、とても水に溶けやすい性質を持っています。それなので、スポイトから少しの水を送り込まれた丸底フラスコの中は、気体のアンモニアが少し水に溶けて圧力が下がるのです。

そして、圧力が下がった丸底フラスコの中に、下のビーカーの中の水が吸い上げられます。下のビーカーの中には、水とフェノールフタレイン溶液が混ざった液体が入っていましたね。水に溶けて気体のアンモニアがアルカリ性の液体であるアンモニア水に変化したことで、フェノールフタレインが赤紫色に変色し、赤い噴水を見ることができたのです。

3.フェノールフタレインはなぜアルカリ性で色が変わるのか

最後に少し難しいですが、フェノールフタレイン溶液がなぜアルカリ性で変色するのかについて解説したいと思います。

3-1.フェノールフタレインの構造式

{{{画像alt1}}}
パブリック・ドメイン, リンク

フェノールフタレイン ( phenolphthalein ) は化学式 C20H14O4 の有機化合物です。酸性から中性つまり無色の時の構造式は上の図のようになります。

\次のページで「3-2.アルカリ性で赤紫色になるカラクリ」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: